- [著]トーマス ギロビッチ
- [原著]Thomas Gilovich
- [翻訳]守 一雄
- [翻訳]守 秀子
- カテゴリ:
- 単行本 (356頁)
- ISBN:
- 4788504480
- 発売元:
- 新曜社 (1993/06)
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社会科学者の役割。
論旨も明確で読みやすい。人間がいかに騙されやすいか、信じ込みやすいかということを科学的
に紹介してくれる。
超能力の問題、総合的健康法と呼ばれるものなど、具体例も豊富に解説されている。
マスコミなど、無数の事実の中から商業的に受ける内容、側面だけを故意に選んで、歪んだ
情報を流すというのは良くあることでしょう。
これだけたくさんの情報が氾濫し、インターネットの普及によって誰もが簡単に情報にアクセス
できる時代、社会科学者の役割は大きい。物事を正確に判断するための良書と言えます。
「懐疑論者のための認知心理学」という分野における最重要文献にして古典であり開祖
The Skeptic's Dictionaryの自己欺瞞の項目にある「大学教授の94%は、自分が同僚より良い仕事をしていると考えている。大学生の25%は、自分が他人との協調能力では上位1%に入っていると信じている。大学生の70%は、自分が平均以上のリーダーシップを備えていると信じている。平均以下だと考える学生は、たった2%にすぎない。」は本書からの引用である。
ほかにもテレンス・ハインズが書いた教科書、カール・セーガン最後の著作などにも、本書を参照し、引用して書いた章があるほどだ。
これらのことからも本書の重要性は判るだろう。もちろん普通に認知心理学の領域でも古典的名著である。とくに人間の認知の機能そのものが、ニュートラルだと誤信を積み重ねてしまう仕組みになっていることを、実験を交えながら力強く示しているのだから。
まさに誤謬・誤認・誤信形成の専門書なのだ。さらに読み物としても面白いのだから、もう大変だ。
懐疑論者必読なのは当然である。実際に教材として採用している大学もあるようで、特別な知識が必要というほどではない。超常現象領域に関心を持つ向きは、立場に関わらず一読を推奨する。とはいえ昨今ではさらに洗練された類書も登場しているの、必読とまではいわない。
優れた知能とそれ故の誤りを楽しむ
どうしてギャンブラーは繰り返し損をしても「今度こそ儲かる」と信じるのだろう...。
どうして占いは当たる(当たっているように感じる)のだろう...。
どうしてルーキーには「2年目のジンクス」がつきまとうのだろう...。
人の心はさまざまな情報を自ら統合しつつ外の世界を認識しています。情報量は膨大ですから効率的に処理しなければならず、要らない情報は取り除かれ、重要な情報は他の情報と一緒にまとめられて単純な形にされます。この合理化の機能こそ、コンピューターには到底真似のできない、人の心のすばらしさです。
ところが、この優れた仕組みがあるが故に、無いものを認識したり、意味の無いものに意味を見出したり、人はしばしば迷信や誤信や過度な自信に、極めてあっさりと陥ってしまいます。
そんな人の心の不思議な性質について、本書は認知・社会心理学の視点から考察をしています。著者は学術的な心理学のエキスパートであり、多くの実証研究を踏まえながら説得力のある論を展開していきます。
訳文の質の高さもあって文章は判りやすく、内容の充実具合とは裏腹に無味乾燥な学術書からほど遠い読みやすさです。アメリカでの話題が多いものの、心理学には縁遠い読者にも馴染みやすいトピックスが散りばめられており、読後には冒頭の問いの答えに気づくでしょう。
人の心についての知的好奇心を満たすだけでなく、迷信や誤信にできるだけ陥らない為にも大いに役立つ本だと思います。
唯物論的立場からの考察
本書では、人間が思考のプロセスをスキップして、無意識に信じがちな迷信や超能力と言ったものを、唯物論的立場から考察、解説した本です。
人間がなぜ騙されてしまうのか、を追及する事は大変意義深いと思いますし、本書で例に挙げられた、湾岸戦争時のイラクによる原油放出ニュース(後に誤りだった事が判明)などは、その間に実際に起こっていた事が記録として残っている為、”どのように世界の人は騙されたのか”という著者の結論にも説得力があります。
しかし後半で例として挙げられた、信仰及び超能力と言ったテーマに於いては、「始めに結論ありき」(つまりそんなモノは存在しない!と言う考え方)で話が進められているように感じます。
ルルドの泉で、「めがねや、補聴器、杖は捨ててあるのに、なぜ義足が無いのだろう」と言う表現は、本書で奇跡や超能力を否定する立場にある著者自身の考え方と自家撞着を起こしています。
ロジックに凝り固まった人には痛快な本でしょうが、全てを素直に受け入れる事は出来ませんでした。
湾岸戦争の水鳥が教える物--誰がカルト教団の信者を笑えるか?
湾岸戦争(1991年)の時の事である。アメリカがイラク空爆を開始した直後、或る衝撃的な映像が、テレビを通じて、世界に流された。それは、原油にまみれた真っ黒な水鳥の映像であった。そして、その際、その映像に加えられた解説は、イラクが、ペルシャ湾に原油を放出した為に、ペルシャ湾が原油で汚染され、ペルシャ湾では、この様な深刻な環境汚染が発生して居ると言ふ衝撃的な物であった。
この映像に、世界各国で、イラクに対する怒りの世論が湧き上がった。そして、一部の国では、「イラクに対して、戦術核兵器を使ふべきだ。」と言ふ声すら上がったのであった。--この「イラクに対する戦術核兵器使用の声が上がって居る。」と言ふニュースを聞いた時の衝撃は、今も忘れられない。
ところが、それから間も無く、海流の速度などからして、その映像が撮影されたとされる場所で、報道が伝えた日に、「イラクが放出した原油」が海岸を汚染するとは、到底考えられない事が、指摘された。それから、テレビは、その水鳥の映像を伝えなくなり、更に後、湾岸戦争が終結して数ヶ月後、その海岸が原油で汚染された原因は、実は、何と、アメリカの空爆によって破壊された油井から原油が海に海に流れ出し、そこに流れ着いた為らしい事が、確認されたのであった。つまり、「イラクがペルシャ湾に原油を放出した」証拠は全く無く、それどころか、アメリカこそが、その水鳥を油まみれにした張本人だったらしい事が明らかに成ったのである。ところが、それにも関わらず、その映像が放送された直後には、世界中でイラクへの怒りが巻き起こり、一部では、イラクに対する戦術核兵器使用の声すら上がったのであった。--もし、あの時、あの水鳥の映像に関する解説がそのまま信じられ続けて居たら、一体、何が起きて居ただろうか?
人は、騙されやすい。そして、騙されやすいが故に、「国際世論」すらもが、この様に、核兵器の使用にすら、容易に傾く事を、この水鳥の事例は語って居る。--人間は、どうして、これほどまで、騙され易いのだろうか?
本書は、そうした人間の騙され易さを、様々な事例から分析した、アメリカの心理学者トーマス・ギロヴィッチ(Thomas Gilovich)の著作の日本語訳である。--心理学者である訳者(守一雄、守秀子、両氏)の日本語は、読みやすく、明確である。--本書を読むと、容易に騙され、踊らされるのは、カルト教団の信者ばかりではない事が、痛感される。この情報過多の現代社会で、人がどの様にして騙されるかを理解する為に、この名著が、多くの読者に読まれる事を切望する。
(西岡昌紀・内科医/オウム真理教信者による坂本弁護士一家事件から
16年目の日に)
迷信・誤信はなぜ排除できないのかがわかります
誇大広告はなぜいまだになくならないのか。迷信、ジンクスと呼ばれるものが、先進国でも幅を利かせているのはなぜか。怪しげな民間信仰が現れるのはなぜか。超能力者が減らないのはなぜか。
これらの疑問は全て人間個々が生み出す「信念」による誤解の結果である、と筆者は説く。実験社会心理学・認知心理学の準教授を務める筆者の主張の展開は非常に示唆に富んでいて、興味深い。また、「こうであるかもしれない」というあいまいな(この「曖昧性」が筆者の攻撃目標の一つでもあるのだが)論理展開で話を進めていくこともないため、科学教養書として安心して読むことができる。
人間も動物である。進化の過程で、外界から全ての情報を得ようとし、それを元に推論を立てたり、その後の行動の予測につなげたりすることは実際的ではない。そのため、必要最小限の情報に基づいた判断(=信念)を確立し、それに則って行動を行う。その情報の取捨選択の中にこそ、「誤信」の生まれる余地があり、冒頭に述べたような、第三者的に冷静に見た場合、眉唾的なものに走ってしまうことになる、と筆者は述べている。
「ものを幅広く見て偏りを排除する」ことが大切だとよく言われる。しかし、本書を読むとなかなかそうしたことは現実には難しく、「誤信」がいかに生まれやすいものであるか、ということが良くわかる良著である。
日常での知性の働きを説く良書
迷信や誤信に引っかかるのは、人間の知性が拙いからではなく、実は極めて優れているからであるというい逆説的な事実が本書によって理解できると思います。事象が複雑に絡み合った世界の中で、因果や秩序を人間が如何に巧みに洞察するか、ということが「ヒューリスティクス」という概念によってわかりやすく説明されています。
生存のためには(とりわけ人間が進化した原環境である野生環境下では)物事の因果関係を見逃すことは即致命的なミスにつながることがあるので、因果の兆候を検知するとそれを確証する前に速やかに「実在する因果」として同定してしまうという(野生環境下では「正確さ」よりも「迅速さ」のほうがより重要になります)、いわば「生存知」とでも言うべき知性を人間は備えています。この知性は通常は極めて適切に「因果」を見出すのですが、それでも百発百中というわけにはいかず、実際には存在しない「因果」を存在すると誤認識することがあります。これがつまり迷信・誤信の由来なのですが、こうした迷信発生のメカニズムを身近な実例をもとに(例えばツキのような)丁寧に解説してくれています。
ロジカル・シンキングの入門書としての用も果たしているのではないか、と思います。本書の内容を理解すれば、「ルルドの泉」や「宝くじの当たる神社」、「地震雲」、あるいはテレビでよくある「性格テスト」のような迷信やインチキ実験のからくりを看破できるようになって、小気味よい気分を味わうことができるでしょう。
人の解釈は千差万別
魅惑的な目次通り、本文も人間を知りたい者にとっては魅惑的な内容。
人間がいかに信じやすく、自分に都合よく考え、あいまいな生き物かを、実験と例文で淡々と述べてゆく様がなかなかに好み。
読み続けると、何故情報が人づてに伝わると次第に変化するのか、その答えまでおぼろげに浮かんでくる。
目から鱗が。
厚い本でしたが、一気に読んでしまいました。特に記憶に関することは
いかに先入観で汚染されやすいか、また、何故に短絡的に関連付けてしまう性質が人間にはあるのかが実験例と共に説得力をもって語られています。故に裁判などでは文章などの物証が証拠として重要視されるのだと改めて納得。日記をつけておいてよかった、と思ったことが私の実体験であったので。小難しい本かもしれませんが、読んでおいて損はしないです。ものの捉え方が確実に変わります。特にトンデモのもにはまりやすい人はぜひお読みください。(トンデモものにはまる人がそもそもこの本に出会うこと自体、まれかも。私も、もっと早くに出会いたかったです。しくしく・・。)
