感動した!
[No.16] posted by 斉藤健志
間違いなく近年読んだ小説の中でベストだ。ロリータ以来の衝撃と言って良い(H16.5.16)。舞台は南アフリカ。離婚した壮年文学教授がこうむる、屈辱的な事件の数々。そのエロチックな事件を主軸に、教授の研究対象であるバイロンの恋愛事件のエピソードがその流れを彩って行く。野犬の叫び声と屠殺されて運ばれる犬の足のイメージが強烈に作品のバックグラウンドを形成して、素晴らしい。もし私がこれをドラマ化するとすれば、開幕前に巨大な犬のシルエットを前面に映し出し、野犬の叫び声を流して効果的に舞台を演出したい。
英語も極めて平易で読みやすく、後世に残る傑作として特に「中年男性」にお勧めしたい(H20.4.10)。
訳者に期待
55.6% (5 / 9)
[No.15] posted by 野火止林太郎
クッツェーといえば『マイケル・K』を随分前に読んで以来の贔屓の作家だが、ここは『嵐が丘』の名訳に感銘を受けた訳者を絶賛しておきたい。柴田元幸氏や若島正氏等々英米文学の優れた翻訳家は多数いるが、鴻巣氏も素晴らしい。今後若い作家志望者たちは、この人が翻訳する作品を争って読むことになるのではないか。フラナリー・オコナーやディーネセンを訳した横山貞子氏のような活躍を望むと共に、英文学関係のエッセイなどにも期待したい。さらに、新作だけでなく、『嵐が丘』のような古典的作品の新訳もお願いしたい。
この作品自体が、一編の詩である
63.6% (7 / 11)
[No.14] posted by 七海光一
まず持って英語が素晴らしい。これほど平易な表現でこれほど人の複雑な感情が伝えられるのかと、驚嘆するほかない。これ一編がひとつの詩であると考えて良い。効果的な英語表現に興味のある人は、この作品から相当学べるはずだ。作品自体も、人にとっての性、生の意味を相当深いところで捉えていると思う。主人公のデヴィッドと、娘のルーシーはある意味相似形で、お互いの中に自分を見ているのだと考えられるが、そこにポストアパルトヘイトの南アフリカにおける社会的現実がオーヴァーラップする。出来れば、原文の英語で読んで欲しい秀作である。
私は本嫌いだが
18.2% (2 / 11)
[No.13] posted by めじろっこ
私は本が嫌いで活字アレルギーだが、この本はすらすらと読めた。
現在大学の文学部に在籍中で、教授から薦められた本がこれだった。
面白いとのことだったので読んでみたが、なるほど確かに面白かった。
面白かったというのは、ひとつには展開が堕落であるにせよどこか優雅で、主人公の
芯となる部分が終始一貫しているところである。
主人公の一人称が「私」もしくは第三者の視点の(この作者はこの表現を好む)
「彼」から後半「おれ」になったときは、主人公の心境の余裕のなさがわかりやすいまでにあらわれていた。
活字に慣れる訓練の早い段階で、この本にめぐり合えたことはとても幸運だった。
鴻巣さんの翻訳が素晴らしい
28.6% (2 / 7)
[No.12]
翻訳本は、原作者の筆致もさることながら、翻訳者の力も問われる。
それは、例えばセリーヌの「夜の果てへの旅」の二つの翻訳本を見れば分かると思う。
この本での、鴻巣さんの訳文には、彼女の女性としての生き方そのものを感じるほどに、洗練されたものがある。
Captivating
71.4% (5 / 7)
[No.11] posted by sancho_m1112
This is an incredibly insightful story. With its and deep exploration of the relationship between father and daughter, Coetzee successfully brought out a story that is difficult to forget. The characters are rich and portray deep, though extreme emotions, rationale and impulse. Though quite understated and subtle, the writing is nevertheless rich in so meaning. There is everything to learn from this book. Coetzee's writing style is superb, the setting is ingenious and the pace of the novel is fast and absorbing.
In this novel, J.M Coetzee's brilliantly tells the story of the 52 David Lurie, a professor of communications at a Cape Town University, who is twice divorced and went around with the notion that having a woman is no problem. But when he realest that he is no longer alluring, he sought the convenient service of a prostitute, an arrangement that eventually came to an end, leaving him with no outlet for his virility. David Lurie finally convinced himself that an affair with a young female student was not bad after all and went for it. But then the complaint of sexual harassment turned his academic life upside down as he is fired. The unwritten rules of the society ensured that he longer found a place amongst them.
With that realization, David Lurie travels to the country side to a dangerous and isolated farm to write and spend some time with her daughter who ran an animal refuge and sold produce and flowers. Lucy as she is called is violated by thugs and with that David's disgrace became complete. David suddenly finds himself re-evaluating his life, his ties to people, his relationship with his only daughter, as well as his relationships with women. In all of those, he learnt that love is two-sided, a matter of give and take. In this novel one makes sense of the universally acknowledged fact that a man can understand who he is only when he comes to terms with his past.
Similar disturbing but riveting tiles are: DISCIPLES OF FORTUNE, CRY THE BELOVED COUNTRY
あえて反発をかってみせる実力
84.6% (11 / 13)
[No.10] posted by ryouka1197
「若くて美しい女性が好き」
この美意識に反感を持つのは、なにもフェミニストばかりではない。
若い男性からすれば、年寄り世代が自分のGFを横取りしている。さらにその理屈が、
自分はインテリで若造よりモノが分っているから、女子大生のうぶな美しさを摂取するのにふさわしいというものだ。
このいけすかない初老の教授と、それに追随して起こる社会的地位の転落は読んでいて気まずい。
女子大生のBFに車がいたずらされても訴えず、アフリカの農園で車を盗られて訴えようとするところなど滑稽なほどだ。
これは、「差別」ではなく「区別」の物語である。
教授は、インテリな自分とバカ学生を区別する。美人と不美人を区別する。
皮肉にも彼の娘は美しく装うことに無関心で、異性に関心がない。
そして南アフリカの白人の世界で「セクハラ」「重婚」にあたることが、黒人の世界では「女が生きぬく術」とさえなる。
どちらが正しいわけではない。境界線を引いた向こう側にはちがう理屈がまかり通る。
それに従えなければ、自分の居場所はないということだ。
教授は自ら境界線を引く人間でありながら、白人世界の掟を破り、境界線を越えていく。
最後に仔犬が登場する。足は不自由であるけれども、音楽を理解する賢さをもつ。
この仔犬のあり方が、その場所で認められないものの末路を象徴する。
小説家クッツェーの新境地
80.0% (4 / 5)
[No.9] posted by shakti
『恥辱』は、ある意味では、『夷狄を待ちながら』の続編だ。来るぞ、来るぞ、と待たされながらも、最後まで来襲しなかった、あの「野蛮人」が、今度は本当に来襲してきたのだ。西欧都市文明を担い、明晰な英語を話す「文明人」の「男性」が、今度は審判を受ける番だ。白人が暴力を被り、都市が農村に浸食される解体する番となったのだ。
しかし、このクッツェーの小説は、今までの彼の作品とは、かなり違う。寓話だとか、メタテキストの仕掛けとかは、いっさい取り払われている。ポスト・アパルトヘイトの南アフリカが、あくまでもリアリズムの小説として描かれているわけだ。そのために、一読するだけでは、ピンとこない小説にすら思える。作者の理論的な問題意識を掴みにくいからである。だが、ちょっと辛抱して、このリアリズム小説を繰り返し読んで欲しい。クッツェーは、この作品で、従来の生硬さを克服し、小説家として新しい境地を開拓したからだ。
たとえば、ラウリーが大学辞職後、農村で従事するのは、犬の安楽死という仕事だ。うっかりすると、いい加減に読み飛ばしかねない。しかし、後期クッツェーの他の作品(『動物のいのち』『エリザベス・コステーロ』)を読んでから、もう一度読み直してみよう。リアルな描写の細部を読み返してみると、きっと読者は考え込まざるを得なくなってくる。メタテクストの謎ではないからこそ、深く迫ってくるものがあるのだ。
「人」とは?と考えさせられます
66.7% (6 / 9)
[No.8] posted by naonao-703
ちょっとした恋愛から52歳男性の人生が転落、道徳とか常識が覆され、財産や地位も尊厳も失ってゆく。
この小説の語り口調が、終始一貫して淡々と語られていく様が審判を受けているようだ。しかしながら、絶望感や嫌悪感は感じない。
ドラマティックな転落だが、熱い(?)小説をお望みの人には物足りないかもしれない。深夜ひっそりと読むに最適です。
ちなみに、イギリスの権威ある(?)ブッカー賞受賞作品です。
犬も女も愛し
16.7% (1 / 6)
[No.7] posted by eyr4yrey4y
とても読みやすい文章だなぁと、まず思った。現在形で言い切型の文体で内容がするすると心地よく入ってきた。 52歳にもなって若いねーちゃんの尻追っかけて、ほとんどムリヤリにヤっちゃって詰りは仕事辞めるはめに…そんな前半の流れでもういっぱいですが、娘の農場へと移ってからなんだこの本。南アフリカの街や田園のイメージがどんなか読んでてなかなかつきにくかったけど、まぁイギリスっぽい感じを浮かべて読んだです。男の目線からの正直な女性の見方の感じ、私は心地よかったなぁ~。