- [序論]Simon Brodbeck
- [翻訳]Juan Mascaro
- カテゴリ:
- ペーパーバック (160頁)
- ISBN:
- 0140449183
- 発売元:
- Penguin USA (P) (2003/02/25)
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クリシュナとアルジュナ
『イリアス』と『オデュッセイア』を足してもさらにその7倍の分量があって、世界で最も長い叙事詩とも言われる『マハーバーラタ』。本書はそのごくごく一部分だが、恐らく世界で最も広く読まれているクリシュナとアルジュナの対話篇。
戦争の相手に親族が含まれることを知って、殺戮に栄光はないという考えから、アルジュナは戦うことを放棄しようとする。これに対して、戦闘馬車の御者の姿をしたクリシュナは、魂は死なないこと、戦うことは戦士の義務であること、そして見返りを求めずに献身的に働くことの重要性を説く。カルマ(業)という考え方では、行為と結果が無限の連鎖を構成しそのままでは救いがない。クリシュナは、神(クリシュナ=ヴィシュヌ神)に帰依してひたすら神の代理人のように義務を履行することを求め、行為と結果を切り離すことによって、アルジュナの苦悩を救済し、俗世間における様々な活動を正当化する。
クリシュナが語る世界は、至高神への帰依を迫るものであり、ヤハウェの雰囲気とも似ている。対極的な概念がクリシュナにおいて縫い合わされるという点で、宗教的な世界が描かれている。この対話ではアルジュナの直面する現世の倫理的な問題とクリシュナの宗教的な啓示とでは、レベルがかみ合っていないという疑問が生じる。
本書で展開される、見返りを求めずに無我に行為することによって救済が得られるという考え方は、強い勤労倫理を含んでいて、資本主義のエートスとして挙げられる「天職」という観念や行動を伴う世俗的な禁欲主義という要素とも親和的というようにも読める気もする。もしそうであれば、Weber自身はインドの救済論を伝統主義の精神と位置づけて資本主義の精神とは異なると整理したようだが、インドの発展が著しくなると、かつて東アジアの発展と儒教との関係が取上げられたようなことが本書との関係でも言われるようになるのだろうか。
