- [著]Ronald W. Langacker
- カテゴリ:
- ペーパーバック (584頁)
- ISBN:
- 0195331966
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- Oxford Univ Pr (Txt) (2008/02/04)
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認知文法理論の「今」
以前、アメリカ西海岸のとある大学の言語学者が日本に来た折、日本の(いわゆる)「認知熱」を目の当たりにし、また日本の研究者たちの認知的アプローチによる研究発表を聴いて当惑したと話していた。自分たちの研究分野はまだまだマイノリティーであり、主流学派と比べてとてもestablishされているとは呼べない学派であるのに、と。
一人の「尊師」を中心に発達した主流学派に対して、認知言語学は様々な「認知的アプローチ」をとる研究者が集まってできたいわゆる総称のようなものである。その研究スタイルはオリジナリティーに満ち溢れたものであり、それぞれの研究者が独自の見解、独自の切り口を大切に、独自の関心に従って研究をしている。
Langackerの認知文法もその一つである。なろうと思えば、主流派の言語理論の旗手になることも容易かったであろう才人が、内なる疑問に誠実に立ち向かった結果が認知文法理論だった。すでに二冊の記念碑的な大著を完成させ、さらに二冊の論文集を出版し、言うなれば彼の理論はestablishされたと考えるのが一般的見方だろう。しかし、彼は今、この時期に、Introductionを書いた。これは、入門書などではけしてない。これは一人の研究者が一生かけて自らの疑問と対峙し、他者の批判に答えた自己主張と自己探求の書であり、一つ一つの文章に念がこもっているような印象さえ受ける。自分の理論はいまだ(不当に)誤解されていると嘆き、まずその誤解を解きほぐすことからスタートする。その姿勢にはestablishされたという横柄な態度も、主流派言語理論に対する(認知言語学の議論ではよくありがちな)陰湿な批判も見られない。絶えず、自らの見解を披露し、他者との違いを明確にすることで、自らの理論の立ち位置を明確にしていくのだ。
この本を読んで、先に書いた言語学者の話を思い出した。日本でもこれだけ地道な、信念に基づいた認知言語学的研究が盛んであれば、彼も当惑しなかったかもしれない。何故(認知にせよ生成にせよ)このアプローチなのか、という問いは、どのような枠組みに採用しようとも常に持ち続けるべきなのだ。それを改めて教えてくれる良書である。
本書はかなりハイレベルな内容ではあるが、かなり突っ込んだ面にまで言及され、特に、構文文法理論や談話にまで目を向けている点で、Langacker理論の最新の概説書ともなっている。
