Atonement: A Novel

  • [著]Ian McEwan

カテゴリ:
マスマーケット (496頁)
ISBN:
0307388840
発売元:
Anchor Books (2007/11/27)
定価:
¥ 902 (税込)
価格:
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評価: 4.5

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イアン・マキューアンの『Atonement』はブッカー賞ノミネート作品。1998年ブッカー賞受賞の処女作『Amsterdam』(邦題『アムステルダム』)に続く待望の新作だ。だが短く優美にまとめられた前作に比べ、『Atonement』は壮大なスケールの長篇小説。その随所にマキューアンの遊び、こだわり、実験が感じられる野心作である。

時は1935年の夏、物語は13歳の少女ブライオン・タリスがロマンス劇「アラベラの試練」を書き上げた場面から始まる。それは愛する兄レオンの帰郷を祝して書いた特別な作品だった。だが美人のローラ、双子のジャクソンとピエロら従弟たちは、この劇の上演にあまり乗り気ではなく、ブライオンの創作意欲も薄れていく一方だ。彼女がセンセーショナルな事件に遭遇したのはそんなある暑い日のことだった。裸で庭の噴水に飛び込む姉セシリアの姿を見たのだ。どうやらタリス家に仕える掃除婦の息子ロビー・ターナーが、姉の服をむりやり脱がせたらしい。おまけに彼は姉にみだらな手紙を送りつけてきたのである。

一方兄レオンは、見栄えはしないが金持ちの男をタリス家に連れてくる。チョコレート会社を経営するその男は、新たな戦争を機に新商品「弾丸チョコレート・バー」を売り込もうと画策していた。さらにタリス家の2階寝室では、いつも偏頭痛に悩まされている母エミリーがあらゆる動きに目を光らせていた。やがてタリス家に集まった彼らの秘密が明らかになり、全員の運命を変えていくことになる。

両大戦にはさまれた時代の、比較的裕福な中流家庭を舞台にした第1部の巧みな筆致は、ヴァージニア・ウルフやヘンリー・グリーンを彷彿とさせる。だが物語が21世紀直前まで進み、メインテーマがしだいに明らかになるにつれ、そこにはほとんど独壇場ともいえるマキューアンの世界が織り成されていく。『Atonement』は文芸作品創作にともなう喜びや痛み、危うさを主眼とした小説だが、作品に対する読者の理解を意のままに操ろうとした実験作ともいえる。少なくとも本書でマキューアンが苦もなく読者の気持ちを掌握したことは間違いない。本書は実に意義深く刺激的であると同時に感動的な1冊。読者の賞賛が約束された傑作である。(Alan Stewart, Amazon.co.uk)

2008
09/08
Mon

心理描写がいい

[No.19] posted by ちぇろこ

美しい作品だと思います。特に子供の心理描写が、懐かしい気持ちにさせてくれました。
ストーリーとしては、想像力の行き過ぎたブライオニーが、姉の恋人・ロビーが従姉を襲おうとした、と言って彼を刑務所に送ってしまい、恋人たちが引き裂かれたまま、戦争が始まり…。という話です。
心理描写は美しいのですが、戦争や戦場病院での人々の負傷や苦しみの描写があまりにもなまなましく、ちょっときつかったです。映画を観ずに読んだのですが、映画の方はその辺りは大丈夫だと聞いたので今度観てみたいと思いました。

最後の最後のシーンは衝撃でした。…しかし、ブライオニーはこれで償えると思うのか…?その辺はちょっと理解できません。

2008
04/23
Wed

作家とは何者ぞ−「贖罪」とは「つぐない」か?何をもって「贖って」いるのか?

80.0% (4 / 5)
[No.18] posted by cinemajin

思い込み、作家気取りの思い上がりから少女ブライオニーのついた嘘で姉セシーリアと将来有望な使用人の息子ロビーは互いの気持ちと欲情に気付いた日に引き裂かれる−所詮身分違いの恋、数年経てば第二次世界大戦が始まるのだから、と思うが、彼らには「あったはず」の3年半が「なかった」ロビーは性犯罪者として刑務所にいたので、面会はできず、手紙も厳しく管理されていた為、手紙で愛や将来を語ることもでき「なかった」。戦時中、姉に続いて看護婦になったブライオニーがセシーリアを訪ね、つかの間のひと時を過ごすロビーとの三者の緊迫したやり取り、それすら「なかった」。そのシーンからほのめかされる海辺のコテージでの日々も、もちろん「なかった」。セシーリアとロビーの二人には図書室での一件と出征前の短くぎこちない再会しか「なかった」。この「なかった」の連鎖によってセシーリアとロビーは実在の人物よりも鮮やかな存在となり、小説は現実を超える−そして、疑念。ブライオニーの「贖罪」とは本当に贖罪なのか?単に作家のエゴなのではないか?ロビーが死にセシーリアが死に、ブライオニーが死んでもブライオニーがいくら小説を書き直しても「罪」は変わらないのではないのか?読み終わってからも何回も咀嚼するように考えは広がり、乱れる。それにしても「かくも作家とは何者ぞ」
小説を忠実に映像化した「つぐない」が公開されている。小説→映画→小説の順に読んで、小説の中に見たものを、映像の中に観て(特に噴水のシーン)、映像で観たものを小説に丹念に色づけをして(ダンケルクのシーン)何回も何回も観て読んでいたい作品である。

2008
04/14
Mon

彼らにキスを

66.7% (2 / 3)
[No.17] posted by ビイハヴ

「神が贖罪することがありえないのと同様、小説家にも贖罪はありえない」(本文より)

物語をつむぐ作家の罪と、つぐないの話。

作家には、のがれられない習性のようなものがある。
物語を探して語ること。
筋と整合性を求めて作り出した物語のせいで、主人公ブライオニーは姉とその恋人の人生を狂わせてしまう。
物語によって壊してしまった恋人たちのために、作家となったブライオニーがした「つぐない」。
それが本編の物語になる。

非常によく作りこまれている。構想と構成がばつぐんにいい。
1,2章は、ものすごく客観的に、かつ丁寧に描かれている。(読むのに苦労するくらい)
そのぶん3章は、物語の流れに一瞬「?」と違和感を覚える部分がある。
しかしそれも構成のひとつで、その違和感、あえていうなら「都合のよさ」が、作家が望んだ願いとなっている。

作家は、物語では罪をつぐなえない。
だけど自分のしたことを思い返して、「こうならなかったら」と願わずにはいられない。
二人の恋人の最後の場面が、ブライオニーの望んだ姿で、架空だとわかっているからこそ、そのシーンは本当にせつない。

フィクションと、作家にまつわる物語。
本が好きだ、物語が好きだという人は、ぜひぜひ読むべき。

2008
04/13
Sun

Fine picture of tense atmosphere before the Blitz together with one girl's struggle to atone her disastrous mistake.

50.0% (1 / 2)
[No.16] posted by fzybb

This story is about a woman who took responsibility for the accident that caused turmoil to her prosperous family on one night in 1934 and had spent all her remaining lifetime to try to atone. She, later became a novelist, somewhat accomplished her atonement that can be only done by someone who belongs to her job, which really surprised me. The story unveils not by a viewpoint of a single narrator but by various perspectives of different characters so that you can enjoy the differences of each character's way of thinking. You can also get a clear image of terrified London just before and during WWII, which will intrigue a history-lover.

2008
03/31
Mon

苦戦・・・。

37.5% (3 / 8)
[No.15] posted by オーナーオブ・ロンリーハーツクラブバンド

読書のジャンルと作者の幅を広げようと手にしました。
英人だからでしょうか、或いは単に小生の語学力不足でしょうか、日頃親しんでいる米人流行作家のペーパーバックに比べて分らない単語が結構多く、苦戦しました。
そのせいもあってか、なかなか作中の人物に感情移入出来ず、また細かい話ですが時々妙な時間の飛び方をするのが気になって他のレビューを書かれている方のように「文学作品」として味わうことは到底かないませんでした・・・。
唯一驚かされたのは、最後に本作全体の種明かしが為された場面で、なかなか考えたものだと思いました。つい先日映画化され、映画も好評、原作もベストセラー入りしています。

2008
03/08
Sat

「贖罪」の難しさを表現した名作

50.0% (3 / 6)
[No.14] posted by にぼし

 作中においてそれぞれの人物の特徴や性格を緻密かつ明確に描かれており、
かつそれが物語全体を引き立てていると思う。あらすじが書かれた文章だけを
見てもドラマティックな展開だと思うが、本作を読むと魅力的な登場人物たち
が歩む人生や運命の物語にぐいと引き込まれる。

 特にセシーリアとロビーには、まるで仲の良い友人や家族、自分のことのよ
うに感情移入してしまい、彼らの深く、複雑な憤りや悲しみが痛いくらいに伝
わってきた。(個人的な話だが、実を言うと、本作を読み終わった後、半日は
立ち直れなかった。)「せつなさ」という甘い響きを残さない、悲劇的なこの
二人の人生は、「贖罪」というものの難しさを如実に物語っていると思う。

 それから、作者のブライオニーを描く筆致にはその子ども時代においてです
ら全くもって容赦なく、ともすれば穿った見方だと思えるくらい、良い部分も
嫌な部分も分け隔てなく描かれている。物語の中で登場人物を現実的に、正確
に描こうとする作者の姿勢には脱帽した。ふつうの作家なら、無意識に主人公
を擁護するような書き方をするか、妙におどろおどろしい最後を用意しておく
であろう。まぁ、この作品の主人公の最後も残酷と言えばそうかもしれないが。

 また、この作品を読んでいると、作者が人生の中で何度となく自分や自分の
作品を観察し、その欠点を見極め、克服しようとしてきた努力が垣間見える気
がした。小説家として「贖罪」というテーマと誠実に向き合おうとする姿勢が
本作というすばらしい帰結を生み出したのは、作者のこれまでの人生を反映し
た結果だと言えよう。

 誰にでもお勧めできる、時間を推してでも読んでほしい作品である。

2007
12/31
Mon

Review

0.0% (0 / 14)
[No.13] posted by ぷぷぷぅちゃん

文体の格調の高さ、内容の重みや厚さといったことを求める人には評価されない作品だと思います。ただ単にストーリー展開の楽しさを求める人には絶賛されるでしょう。あまり深く考えないで読めば、かなり楽しめる作品です。 私はまた非常に読むことを推薦する--The Fates by Tino Georgiou

2007
11/08
Thu

2週間で読んだ感想を

17.6% (3 / 17)
[No.12] posted by futakoi

この本は、3部構成になっている。第1部はロビー、ブライオニー、その姉の3人の視点で1932年の夏の数日間の出来事を描いている。舞台は彼らの住む館がほとんである。青春時代の悩み・憧れ・恐れなどを饒舌な語り口で描写しているが、癖の無い文体のためかすぐ物語に入っていける。自意識過剰なこの3人を中心に物語の発端が起こり、突然第1部が終わる。
第2部は7年後の第2次世界大戦のダンケルク撤退とロンドンでの病院看護の場面のみになる。ロビーは撤退するイギリス兵、ブライオニーとその姉は看護婦。それぞれの描写は戦争の悲惨な状況に立ち向かう主人公たちの生き方(2人は「愛」、1人は「贖罪」)を映し出す。語り口は淡々として読みやすいが、盛り上がりは欠ける。第2部最後の3人が一同に介する場面の緊張感はすばらしいが、終わり方が平凡である。第1部の謎解きが第2部での主要テーマであるが、単純な真相暴露のためか意外性もないし驚きもない。
第3部は一番短いパートで小説家になったブライオニーの家族が集まるある1日を描いている。
読後感は1部2部が最高であるが第3部は作品の締めであるものの、なにか尻切れトンボのような感じを受けた。作品全部を眺めると1部はもっと短くし、2部、3部で使用人のダニーの意外な人生や両親のその後の人生などが描かれると期待してしまう。400ページを超える単行本を2週間で読ませてしまう本の力はすばらしいが、伏線が少ないという印象は否めない。
図書館で2週間も予約待ちするほど人気なのは、あるFM局が紹介したためだろうか?買うには躊躇する内容といまさら思うが。

2007
07/22
Sun

作家、批評家そして読者の罪悪と責任

0.0% (0 / 6)
[No.11] posted by Yaginuma

『セメント・ガーデン』のような初期の作品のためか、イアン・マキューアンは、挑発的な作家と語られることも多いようです。しかし、近年の『愛の続き』、『アムステルダム』では、緻密な描写と巧みな物語構成が見られ、初期作品の挑発的な内容が意図的なものだったとさえ思われます。
『贖罪』は『アムステルダム』に続く作品ですが、更に緻密になった描写、舞台背景の拡がり、テーマの社会性などにおいて、作家が新たに大きな一歩を踏み出した作品と呼ぶことができそうです。
ブライオニー・タリスは、思春期特有の潔癖さと残酷さにおいて際立っている少女です。使用人の息子ロビー・ターナーが姉のセシーリアに対する欲望を綴った卑猥な紙片、更には二人の性愛の行動を目にしたとき、彼女のロビーに対する憎悪は頂点に達します。彼女は、庭の池の畔で妹のローラを襲った犯人としてロビーをでっち上げ、姉とロビーの仲を引き裂きます。その後、ロビーは世界大戦での労苦を経て再びセシーリアと結ばれるのですが、ブライオニーの彼らに対する贖罪が終わることはありません。
この作品でのマキューアンは、作家としての自らを厳しく諌めると共に、批評家達、そして読者達にも自らの責任と矜持を促しているかのようです。
「訳者あとがき」によると、マキューアンの野心のひとつは、現代における「愛」という問題の探求であったようです。「19世紀の小説においては、愛というのはまったく自然に主題となりうるものでした。20世紀の終わりにあって、それと同じ方法で愛というものを探求することは可能でしょうか?」と語る彼の言葉は、自らを英国文学の遺産の継承者たらんとする意思の表れなのかもしれません。
『贖罪』以降、彼の作品の邦訳は出版されていませんが、上のように語った彼の今後の執筆活動がどのように展開されていくものか、非常に楽しみです。

2006
10/24
Tue

呆然

80.0% (16 / 20)
[No.10] posted by するめいか

 読み終わって呆然として、それから鳥肌がたった。レベルが違いすぎる。真に面白い小説とはこのことではないか。オールタイムベスト3くらいに入れてもいい、イギリスの文豪、マキューアンのまぎれもない大傑作で、作家志望、読者家は必読。
 重厚すぎる文章は読んでいるだけでお腹いっぱいになるのだが、しだいにその重厚さに慣れていくと、もうほかの小説が物足りなくなってくるという、半端ない威力。濃密に描かれた描写力と、類稀なるストーリーテリング。百ページ以上読んでしまったら、そこからいつページをとじていいものだか、わからなくなる。
 小説についての小説、ということだろうか。「小説家」として、いったいどうやって贖罪を完成させていけばいいか、無想家であるブライオニーに、小説家として避けて通れない課題を与えて、ラストでの答え。メタフィクションで凝った構成、小説家ブライオニーのひとつ上のメタには小説家イアン・マキューアンがいる。ブライオニーのやった贖罪は、だから、一種のアイロニーととれば、そこにあるのは堪えがたい悲しみ、そして孤独だろう。
 かつて、高橋源一郎が小説を批評するには、まず批評する小説、それから評論、そして、批評する小説に対しての答えの小説が必要である、と言った。マキューアンもそれに近いことをやっている。「小説」という問題に対して、「小説」できちんと真っ向からぶつけたマキューアンに、最大の賛辞を送りたい。
 最後に、余談だが、アムステルダムでブッカー賞取れて、これで取れないってどういうことだろう? 本人はアムステルダムはしゃれで書いたと言っていたし、しゃれで取っちゃうマキューアンもすごいが、うーん。あと、贖罪、装丁も100点満点。


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