The Amber Spyglass (His Dark Materials)

  • [著]Philip Pullman

カテゴリ:
マスマーケット (480頁)
ISBN:
0440238153
発売元:
Laurel Leaf (2003/09/09)
定価:
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評価: 4.0

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『The Amber Spyglass』は、冒頭のシーンからいきなりスリリングな展開で読者の心をむんずとつかむ。差し障りのない範囲であらすじを紹介しよう。

前作『The Subtle Knife』(邦題『神秘の短剣』)でライラを捕らえたのは誰かという謎はすぐに解き明かされる。だが、その人物のもくろみが善なのか悪なのか、それとも心を決めかねているのかは依然として謎のままだ。また、世界を分断するよう託された剣はまだウィルの手の中にある。そしてその彼をアスリエル卿がいる山頂の要塞まで導くように定められた、翼をもつ2人の天使が仲間に加わる。だが、この少年ウィルの目的はただひとつ。それは、友を救い、彼女に「真理計」(アレシオメーター)を返すことだった。アレシオメーターとは、彼女にとっても『The Golden Compass』(邦題『黄金の羅針盤』)と続編『The Subtle Knife』を読んだ読者にとっても、多くを明らかにしてきた道具である。セラフィナ・ペカーラが腹ぺこのイオレク・バーニソンを捜し出し、アスリエル卿の十字軍に入隊させるときには、読者も「瞬く星明かりのようにぞくぞくした感じ」を同時体験することとなる。

王の心の中でいくつもの思いがクモの糸のように絡まっていった。飢えや満足を超えた何かが膨れ上がっていく。あどけない少女ライラの記憶だ。王がシルバータンと名づけた女の子。スバールバルでいまにも崩れてしまいそうな雪の橋を通り、地表の裂け目の上を渡ったあのときに最後に見た女の子である。そのあと、魔女たちがいろいろなことを言いふらし、協定を結ぶとか同盟をくむとか戦争になるといった噂が広まったのだ。思えば、この新世界が誕生したこと自体が不思議な事実だ。しかも、魔女たちはこういう世界はほかにもたくさんあり、それらの運命がすべてあの子に託されていると言ってきかなかった。

一方、教会は二派に分かれて、ライラを見つけようと躍起だった。そのうち片方は、恐ろしい計画を滞りなく実行できるよう、僧侶に「赦免の前貸し」さえした。こういった暴君たちは、この少女の抹殺を「聖なる仕事」と見なしていたのだ。

3部作を締めくくる本書で、フィリップ・プルマンはこれまで以上に高いハードルを自らに課した。アクションと独創性の点でも前作に匹敵するものを作らなくてはならなかったし、前作で未解決だった謎もことごとく解決する必要があった。うれしいことに、本書には読者を落胆させるような最悪の展開はひとつとしてない。だからといって、息詰まる展開やまさに危機一髪というシーンに欠ける、ということではないのだが。(もし本書にそういった要素が不足しているというなら、十分だといえる本などほかにないだろう)

しかし、プルマンは『Paradise Lost』を彼なりに大胆に改訂したとも思える、穏やかであると同時に悲劇的な結末を用意している。叙情的なSFではあるがわかりやすいこの散文作品の中で、著者は自らのテーマを徹底的に表現している。また本書でほかにもいくつかの世界をつけ加えて表現している。そのうちの1つの世界では、一見すると単純な生物の集まりに、メアリー・マローン博士が温かく迎え入れられる。「ミュレファ」の環境(ここでもこれ以上は明かせないのだが)によって彼らの意識は豊かになり、その生活はゆったりとした一定のリズムが保たれるのだ。ところが、この不思議な生き物たちは、必要とあらば俊足にもなれる(体のほかの部分も素早く動かせるようになる)。

だが悲しいかな、その牧歌的な風景に「ダスト」が流れ込むと、彼らは全滅の危機に瀕する。オックスフォードの秘密研究者メアリーは、はたして彼らを救う方法を発見できるのか? それとも我らが若きヒーローたちの助けが必要となるか? メアリーが治療方法を解き明かそうと必死になっている一方で、ウィルとライラは最も残酷な形での犠牲、あるいは裏切り行為を強いられながらも、すべての光と希望が失われた王国への巡礼へと赴くのだった。

この、衝撃の長編英雄小説を通じて、プルマンは鳥肌が立つほど美しく優しさに包まれた場面を絶やすことがない。またその中には、くすっと笑える息抜きの場面も加えている。ライラの母親が教会の下っぱを痛めつける一連の場面などは、よい例だ。「男はただただひたすら謝り続け、やっと彼女は去って行った。彼女の後ろにいた番人はほっとしたため、ほっぺたをぷくーっとふくらませた」。 コールター夫人が、相変わらず我々を楽しませてくれる目の離せないキャラクターであることは言うまでもない。物語の大詰め、絶望的なシーンで彼女がとる行動は、読者の心に彼女への畏敬の念を育むか? この点でも『The Amber Spyglass』は、真の意味での啓示の書といえるだろう。目前の暗闇から光を放つ真実へと、我々を導いてくれるのだから。

2008
07/14
Mon

琥珀の望遠鏡―ライラの冒険シリーズ〈3〉

[No.12] posted by タココ

読み終えた余韻が、大変心地よい作品でした。
息をつく間もないスピーディーでスリリングな展開は、
予言という一本の道に沿って出会いや別れが次々に展開していきますが、
甘すぎないハッピーエンドで納得の結末でした。
特に終盤は、生きることへの賛歌のようでした。
是非、たくさんの子どもに読んでほしい作品だと思います。
「ライラのオックスフォード」の和訳版が出ればいいのに・・・
また、できれば続きを書いて欲しいです。

2007
11/23
Fri

現実を精一杯生きろ

54.5% (6 / 11)
[No.11] posted by viola菫

・ライラ・・・しばらくコールター夫人に眠らされて、目覚めても元気なし。
       どこがイブなの?
・ウィル・・・引きつける魅力なし。ライラはどこが気に入ったのかな?
・アスリエル卿・・・ライラなんかどうでもいいと言ったと思ったら、ライラを助けろとは?
          なかなか登場しないで登場したら直ぐに死ぬとはね。
・コールター夫人・・・急に優しくなって、娘ライラを溺愛、どの言葉も嘘に聞こえる。
・メアリー・・・どこがヘビの役なの?

・イオレク・バーニソン・・・チョット登場。神秘の短剣を修復する。驚きですね。
・オーソリティ・・・天使は肉体がないから人間より弱いといってもアスリエル卿とコールター夫人との戦いで簡単に死ぬとは弱すぎでしょ。
・天使・・・見えるの?見えないっていいながら、やたら見えてるような場面が多い。

・真理計・・・ライラが愛に目覚めたらなんとなく読めなくなりました。
・神秘の短剣・・・守り手ウィルが愛を思うとき短剣は砕ける。不可解。
・琥珀の望遠鏡・・・メアリーが作った物のこと?望遠鏡が出てきてしばらくして琥珀って言われてもね。

・死後の世界・・・ライラとウィルが死後の世界に行く動機が薄弱。           
・ダイモン・・・ライラの世界に行くと誰でもダイモンが現れるの?
       ウィルの父さんにはダイモンが現れたけどウィルには現れず。
       死後の世界から以後なんとなく魔女のようにダイモンと離れられるようになったライラ。
       なんとなくじゃ疑問です。
・ダスト・・・魔女が異世界の窓を閉じて解決?
・ライラの冒険シリーズ・・・現実を精一杯生きろって作者は言ってるの?

『黄金の羅針盤』『神秘の短剣』『琥珀の望遠鏡』よりも『花火師リーラと火の魔王』が私は好きです。

2005
02/12
Sat

人生の美しさに心を馳せました。

100.0% (2 / 2)
[No.10]

 冒頭の4章ほどが、詩的・音楽的・絵画的・芸術的で、情景の対比のあまりの美しさに、のっけからぐいっと心をつかまれてしまいました。
 またその後も、作者の想像力の豊かさにただただ感心しながら読み進めました。
 3冊の中で一番厚くて、ハンドバッグに入れて持ち運ぶのにはちょっと難があるのですが、それもそのはず、作者のメッセージは、この3冊目にあるようです。
 結末には、悲しい別れが待っています。
 それでも、「自分で考え自分で判断しよう。」「学び、考え、働き、愛し、育み、自分の人生をめいっぱい自分らしく充実して生きよう。」というメッセージと、作者の人間に対する慈しみの気持ちを感じました。
 人によって感じ方は異なると思いますが、私は、読み終わって暖かな気持ちになりました。(でも、まだまだ読んでいたかった。)
 読む人の年齢や人生体験の度合いにより、共感できる部分も変わってきて、いろいろな味わい方のできる作品だと思いました。
 この作品に出会えて本当によかったと思います。

2004
11/11
Thu

うーむ

28.6% (2 / 7)
[No.9] posted by gariben

面白かったし、泣きましたけど、なんというか、
ちと強引すぎやしないか?というのが感想です。
心理描写が少ないというか、登場人物の心の動きが分かりにくい。
前からの複線をうまく活かすことができていない感じもしました。
あと、日本語訳がちょっと直訳すぎる印象を受けました。

もちろん人それぞれの好みによりますが、話の展開のうまさや
訳の自然さはハリーポッターに少し劣るかな、と。

2004
10/26
Tue

ハリウッドに毒された人間の意見

50.0% (3 / 6)
[No.8] posted by creed

ご購入の参考に否定的な意見を一つ。
異世界の少女、現実世界の少年、と移り変わってきた物語の視点。三部作の最後を飾る本作は・・・群集劇でした。数々のキャラクターが登場し、それぞれの視点で物語が綴られます。純粋にウィルとライラの冒険を楽しみたかった私には少し散漫に感じられました。
途中mulefaなる架空の動物の生態が事細かに説明されるのですが・・・正直、少々退屈。前作で「You must play the serpent(でしたっけ?)」などと予言された「彼女」に過分な期待をしてしまったからかもしれませんが。
単純明快なハッピーエンドを望んでいた私としては物足りない結末。愛を簡単に諦めるドライさは現実的だとは思いますが。

2004
10/14
Thu

素晴らしい

66.7% (2 / 3)
[No.7] posted by ハイエナキャット

何て壮大な物語。素晴らしいとしか言いようが無い。
三冊とも面白かったけど三冊目は別格です。凄い。涙が止まらなかった。何度でも読める、何度でも新たな発見があると思う。
ラストのライラの言葉には、何度でも泣いてしまう。世界を見る眼が変わったのが判る。

私がこのシリーズを薦めた人の中に、13歳の少年がいる。「琥珀の望遠鏡」を徹夜で読み終えた彼は「しばらくこの本以外のことを考えたくない」と言っていた。

全てのこまが、全ての動きを見せる。プルマンの強烈なメッセージは一生忘れられないと思う。

2003
09/06
Sat

かならずはまります!

66.7% (2 / 3)
[No.6]

私は母にすすめられて読んだのですが、・・・はまりました!
ライラの喜怒哀楽や、出会い、友情、愛、などとても先が気になることなど素晴らしい所が多くあります。 ぜひ読んでください!

2002
08/26
Mon

new adventure begins here

75.0% (3 / 4)
[No.5] posted by ショーター

The long adventure of Lyra and Will ends here. And "The Amber Spyglass", the third and last volume of this story is the best of the series.

It gives us solutions to all the frustratingly many mysteries that have accumulated in the previous volumes. But the story does not concentrate into one solution; it expands on toward the ending with new attractive characters like 'mulefa' and Harpies. At the ending, we see a new perspective of our universe and the meaning of life. It exists beyond the boundary of a fantasy and an SF, and it can be read as a love story, a really good one.

Will someone tell me where I can find the Botanic Garden?

2002
06/29
Sat

本当は「愛」の物語

83.3% (10 / 12)
[No.4] posted by めめこ

「冒険」モノとして読み始めたのですが,第3巻の最終ページを閉じた後,「実は,愛の物語だったんだなあ…」と,しみじみ感じました。ライラと熊の王イオニクの互いに信頼しあった愛,ウィルの母を思う愛,ライラの父と母の屈折した愛,そして,ライラとウィルの純粋な愛…登場人物全てが様々な愛で結びついているがために,悩み,苦しみ,旅を続けなければならなかったように思います。このシリーズを通して流れている宗教についての考えには,是非があろうとは想像できますが,それをはるかに越える作者からのすばらしいメッセージが,強く伝わってきます。ハリポタもいいけど,こんな,少しばかり重ための話も,なかなか良いですよ!!

2002
06/04
Tue

ライラとウィルが与えてくれたもの

92.3% (24 / 26)
[No.3] posted by mizue

 とにかく最終巻が待ち遠しかった。

 オックスフォードを出発して北極へたどり着き,異次元の扉をいくつも抜け,スペクターと戦い,どこへつれて行かれるのか先が見えないスリリングなストーリーもついに終わりが来た。「楽園追放」と「黙示録」の聖書のモチーフを下敷きにしながら,しかしこれだけキリスト教を批判し,哲学的なテーマを取り上げたファンタジー作品も珍しい。キリスト教の終末思想に見られる直線的な世界観に東洋思想の循環する世界観を融合させた新しい世界観の構築。生きている意味は自らの手で作るという実存主義的な魂の覚醒。作者の深いメッセージに読後,余韻が醒めやらなかった。ラストは本当にせつない。けれどもまさに神なき時代に生きている私たちに,人生を自らの手で切り開き,歩んでゆく勇気をライラとウィルは与えてくれる。


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