- [著]Kazuo Ishiguro
- カテゴリ:
- ペーパーバック (240頁)
- ISBN:
- 0571244998
- 発売元:
- Faber and Faber (2009/05/07)
- 定価:
¥ 1,447 (税込)- 価格:
- ¥ 1,557 (税込)
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哀愁に満ちたBGMが聴こえてくる短編集
どの作品も、味わいがあり、セッティングもキャラクターもよく練りこまれた秀逸なものばかりです。たとえば、最初の作品、Crooner。イタリアのピアザのカフェでBGMを演奏するギタリストが、かつてあこがれていた初老の歌手と出会う。そこで、彼から意外なお願いごとをされる。老人が、妻に最後に捧げる歌を歌うシーンなど、切ない歌声と哀愁に満ちたギターの音色が聴こえてくるほどです。そして、この妻が、今度は4作目のNocturnに登場するから面白い。Nocturnは、続きが読みたくなってしまった作品。実力はあるのに売れないサックス奏者が、妻とマネージャーに説得され整形手術を受けることになるが、入院中に隣の部屋の女性(先ほどの「妻」役の人)と親しくなり・・・。最後の、Cellisitは、最初のCroonerと場面と出だしがほぼ同一。こういうのも遊び心があって面白いと思う。別れていくカップルの切ない最後に流れる音色を、そのまま物語りにした感じの一冊。英語はそれほど難しくないし、構文も複雑ではないけれど、重厚感があるのが不思議!やっぱりカズオイシグロはいいなぁ〜と再認識させられた一冊。
ノクターンは静かに流れる
音楽がテーマの短編が5つ入った1冊。
"ジプシー"のように 定まらぬ状況にある人々が過ごす 数日の出来事が描かれる。
かつて先輩の人気と妻を奪った往年の名歌手は 今 旅先のベニスで 投宿中の部屋の下に
ゴンドラを乗りつけ 窓の中の妻に向かって歌いかける。相棒は 昼間広場のカフェで演奏
していたバンドの雇われギタリスト。
漂うような他の登場人物たちに比べ この妻はなかなか元気で魅力的だ。
彼女は表題になる物語 ノクターンにも登場する。整形手術後 ホテルで静養するサックス
奏者の隣の部屋に 同じ術後の患者として現れるのだ。2人は包帯頭で 深夜の宴会場に
忍び込む。この場面はドタバタなのにエレガント!
現代の話だが イシグロの小説時間はいつも少し紗のかかった向こう側を過ぎていくようで
そこに惹かれる。
英語は易しくはないと思うが 読みやすい。
出てくる曲のタイトルや歌手を知っていると 一層大人気分に浸れる。
ヨーロッパの空気感
将来にもあまり期待できそうにないような、ぱっとしない音楽家ばかりが登場する短編集。どちらかというと、ついていない人生にフォーカスが当てられているのに、なぜか読んでいるとすがすがしい気分になる。励まされる。自分も自分らしい生き方で、自分のペースでがんばっていこう、と思える。楽しい気分になる。
東京の満員電車の中にいながらにして、ヨーロッパの空気感(少し埃っぽくて乾いた空気、高い空、はっきりした太陽の光、コーヒーの香り、ひんやりした石畳の感触、どこからか聞こえてくる音楽、など)を楽しめてしまうのはすごい。
さりげないユーモアがちりばめられている作品で、ところどころ、大笑いしてしまったりもするので、その点はご注意を。
(ちなみに、カズオ・イシグロの作品の空気感は、和訳ではなかなか伝わってこない。原文を読むことを強く勧めます。)
物足りない A bit disappointing
これまでのイシグロ氏の作品の深みと語り口を期待している読者には物足りなさが残る短編集です。いずれの物語も余韻を感じさせる洞察と描写力に欠けるような気がしてなりません。
This collection of short stories would prove a little disappointing to readers who are used to finding depth and the hallmark narrative in previous works by Ishiguro. None of the five pieces has any resonating insight or incision of descriptive writing.
期待しないで読む
凄く期待して読み始めるが、短編集である為に、物足りなさを感ずる。
それでも Remains of the Day のような後に引くもの悲しさは、いずれの
短編にも感ぜられる。一読の価値あり。
静謐な五つの夜想曲(イシグロ・ミュージックワールドへ)
カズオ・イシグロは本当は音楽家になりたくて、若い頃長く髪を伸ばしてしてギター抱えてました。出張先のシンガポールのホテルで見たテレビのインタビュー番組で「作家になるなんて夢にも思わなかった」みたいに彼が話すのを見て、ひっくり返ったことがあります。その彼の永遠に叶えられない想い(これはイシグロの文学作品の永遠のテーマだと思うのですが)から紡ぎ出された五つの短編を編んだのがこの本です。短編だけに登場人物達がどここまでも独白的に自分の想い込みにのめり込んで行って延々と…、なんて風にはなかなかなりませんが、それでもやっぱりイシグロらしいところは随所に見えて嬉しくなります。個人的に一番いいと思ったのは、表題作と言ってもいい(本の題は複数形で、この作品の題は単数形なんだけどね)「Nocturne」でした。後で思い出すとどうしてこの変梃りんな設定の作品に希望を貰わなきゃいけないのか、よく分かんないのですが、読後、えらくこのつまらない自分の人生のこれからに「明るい未来」を感じてしまった私です。
Nostalgic
久しぶりのカズオ・イシグロ作品。
初めてのまとまった短編集ということで、5つの物語が編まれている。
サブタイトルにあるように、5編それぞれに流れ、回顧され、息づいているのが、音楽を通して、人生の黄昏であったり、壊れた夢であったり、新たなかすかな希望であったりする。
一世を風靡した後、再び旅立ちを模索する老いた歌い手・・・・、音楽で共感した若者たちのその後・・・・、創作に励む若者と旅の途中の音楽家カップルとの出会い・・・・。
哀愁に満ちた物語もあれば、シュールな感じのものもあり、コメディ風のユーモアがあふれていたり、5編がそれぞれの味わいである。
ロンドン、イングランドの丘陵地帯、ヴェネツィア、ハリウッドなど、人生の折々の舞台も様々。
イシグロは作家になる前、音楽を志していたことがあり、その感性とイシグロ特有の端正な英文が織りなす物語は一服の清涼感を与えてくれる。
従来の長編の味わいからすれば、淡白で物足りなさを感じるのは、短編であるためで、また短編の良さでもあろうか。
