天才ナッシュの実像に迫る
[No.21] posted by yyasuda
ゲーム理論に魂を吹き込んだ男=天才ナッシュの伝記です。アカデミー賞映画『ビューティフル・マインド』の原作として有名な本書では、映画では触られていないエピソードや事実が満載なので映画を見た方でも違った視点で楽しむことができます。
(ナッシュの引き起こした様々なトラブルが載っているのでショックを受ける方もいらっしゃるかもしれませんが・・・)
今年はナッシュ80歳の節目の年です(まだご存命です!)。未読の方はこの機会に本書を通じて生きた天才ナッシュの実像に迫ってみてはいかがでしょうか?
話は興味深いが訳が最悪
60.0% (3 / 5)
[No.20] posted by TI
話自体は大変興味深いものです。しかし訳者が大変不勉強です。
最大の過ちは何といっても本書の表題である"a beautiful mind"を「美しい心」と訳していることでしょう(「訳者あとがき」)。"mind"とは感情の働きとは異なる、理性による論理的思考のことです。アメリカ人は"heart"(心)というとき、胸を指しますが、"mind"というときは頭を指します。したがって本来これは「優れた頭脳」、「優れた思考」とでも訳されるべき言葉です(たとえばロースクールで教えられるところの"legal mind"は「法律的思考」と訳されます)。
普通の日本人にとって"mind"と"heart"という言葉の区別はつきがたく、多くの人が"a beautiful mind"を「美しい心」と間違って解釈していると思います。プロである翻訳家はそれを改めるだけの技量があってしかるべきです。
また本書はアメリカの大学に関する記述が多いにも関わらず、訳者はアメリカの大学制度に関する知識も持ち合わせていません。「教養課程が最もすぐれた大学のひとつ、アマースト大学」(p-516)というのも、訳者が"liberal arts college"と総合大学との違いを知らないことを物語っていますし、"University of Wisconsin"を「ウィスコンシン州立大学」と訳すのも、訳者がアメリカの"University of 州の名前"と"州の名前 State University"の違いを理解していない証左です(訳者はたとえば両方とも州立である"California State University"と"University of California"をどう訳し分けるつもりでしょうか)。
ということで話は面白いのに、時折現れる変な訳が気になってとことん楽しめない作品です。
内容は星5つ
50.0% (1 / 2)
[No.19] posted by kaz-p
ページ数も多く、非常に読み応えがある本でした。
見事な肉体に優れた頭脳。
でも、学問的業績を別にすれば、あまりに幼稚な人間であった
ように思います。
精神分裂病であった時代、数霊術にこったとの話に、
ニュートンの晩年の話を思い起こしました。
ナッシュの件もあの時代では異常とはみなされなかったかも
しれないんじゃないかと。
個人的に一番面白かったのは、ナッシュへのノーベル経済学賞
授与の裏話でした。あまり、語られることのない話ですからね。
訳は、門外漢の私が原文を参照するまでもなく
「ああ、ここはこういう単語の意味をあれと取り違えているな」
と分かるような間違いもある上に、文脈が通じない所も多く、
はっきりいって読み辛いです。
行方昭夫先生に診てもらってはどうか、と思いました。
事実は映画より。。。
100.0% (4 / 4)
[No.18] posted by yutaka
高等数学、経済理論、精神医学、戦後アメリカ政治、どれも一般受けする内容ではありません。主人公自身、はじめは冷酷でスキャンダラスな、親しみの持てないエリートとして描かれます。しかしこの本は、これら全てをある程度理解する知性と、世界中の関係者に充分取材する行動力がなければ執筆できません。一流紙の記者とはいえ、著者ナサー氏が払ったであろう膨大な努力に頭が下がります。おそらく著者には、現在のナッシュ氏がさぞや魅力的な人物に映ったのでしょう。何か原動力がなければ、ここまで密度の濃い伝記は書けないはずです。
そして、現在のナッシュ氏の寛大さにも敬意を憶えます。よって☆5つです。不祥事さえ赤裸々に描いたにもかかわらず、本人現役中(存命中じゃありません)に発表できたのは驚くべきことです。日本版あとがきによれば、ナッシュ氏は内容を讃えてさえいます。不祥事を書かれてあえて讃える有名人など、他に何人いるでしょうか。まして映画化などもっての他です。氏という回復例の存在は、同じ病に苦しむ人々にとって大きな希望である事は疑いありません。その事を自覚しているから、数学と関係のない不祥事やプライバシーに関してさえ、氏は公表を認めたのでしょう。
(ちなみに映画版でナッシュを演じたラッセル・クロウは、若き日の氏の雰囲気をうまく伝えています。それもこの本の写真で分かります)
一個人の伝記でありながら上記の全てが関わってくる上に、下は便所の破廉恥罪から上はノーベル賞受賞まで、毀誉褒貶の人生が600ページ。読みどころは人それぞれで、きっと数学史や経済学史としても読めるのでしょう。
私は、粘り強い闘病記、または傲慢だった天才の人格成長記として読みました。特にナッシュ氏と同年代の患者を身内に持つため、氏の治療法と20世紀精神医療の発展史に深く興味を覚え読み進めました。経済記者の著者には畑違いのはずですが、病気の描写と説明は的確で信頼が置けます。医療史としての史料価値は高いと言えます。翻訳者も苦労されたでしょうが説明は的を得ており、当時の雰囲気も人物も、生き生きと良く伝わってきます。なお、氏が受けた治療とそれへの意見はそのまま参考にはできません。今の精神医療は、当時より遥かに安全で効果の高い薬物療法が主流ですし、治療には当然個人差があるからです。
精神を病むということ
81.3% (13 / 16)
[No.17] posted by karashi7045
映画版に感動した人にとっては、少々がっかりさせられるな『真実』かもしれない。精神分裂症(現在は統合失調症)に限らず、精神を病むということは、決して美しいことではない。
このぶ厚い本(p.600+)の約90ページはNotes(References)に費やされており、著者がリサーチに費やした並々ならぬ努力を物語っている。ラッセル・クロウ演じるハンサムなナッシュ―周囲から理解されない孤独な数学者は見る者の共感と同情を誘うが、本書において30年に渡り家族や友人も巻き込んで病気に苦しむことになるハンサムで傲慢な天才数学者は、ただただ憐れである。愛人、愛人に産ませた子供、妻との離婚、同性愛……映画からはことごとく排除された事実。人生の絶頂から転落した情けない元天才数学者をどん底から救い上げたノーベル賞、その選考委員会の英断にに心からの賞賛を(どんな経過を経てそうなったにせよ、結果がよければ構わないではないか?)。そして、同じ病気に苦しむ人々やその家族・友人たちに希望の光を。
ナッシュの精神的成長が感動的でした
75.0% (12 / 16)
[No.16]
私は、数学のことや社会的背景のことには疎いのですが、映画にはないナッシュの精神世界がリアルに描かれていたことに感動しました。映画ではストーリー性を出すために幻視を中心にして描いていましたが、本のなかでは妄想体験が中心で、幻聴が少しあったようです。とても印象に残ったのは、発症直前のエピソードです。発症したのは、仮装パーテイの時に裸にオムツ姿、哺乳瓶を加えながらアリシアの膝のうえで丸くなっていた夜を過ごした数日後からなのです。それまで、自然科学から自己の世界を築き上げてきたように見えたナッシュは、そうではない世界もあることを理性ではなく肌で感じ取ったのかも知れません。映画のなかで、「何が現実かは頭で考えるのではなくて、感じるもの」といったアリシアの言葉を思い出させました。現在の日本では精神障害者は薬物治療という名のもとに、化学抑制され、結果的に回復の見込みがない患者が大勢おり、この現実が非常に嘆かわしいと感じざる終えません。ナッシュは薬を飲み続けていたら今の回復はなかったそうです。感動すると同時に胸が痛くなりました。
数学マニア及び学者さん向け
80.6% (25 / 31)
[No.15] posted by azazel
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映画を見た人にはぜひこの本も勧めたい
96.8% (30 / 31)
[No.14] posted by 鈴木純一
映画を見た人にはぜひこの本も勧めたいですね。映画はあまりに美化されすぎていますので(フィクションに近い美談としては楽しめますが)。この本では、元経済面担当記者の著者が数学者ジョン・ナッシュの周辺を丹念に取材して、膨大な記録をもとにこのノーベル賞受賞者を冷静沈着に描いています。司馬遼太郎の歴史小説を読んでいるような感覚がしました。単に天才数学者の生き様を描くだけではなく、彼の業績を持ち上げるだけでもなく、彼の奇行や精神分裂、家族の苦悩、数学と軍事・政治の関係、数学者のコミュニティなどなどさまざまな視点からジョン・ナッシュの周辺を炙り出そうとする著者の姿勢に好感を持ちました。
数学者や科学者を目指す人が20歳前に読めたらいいですね
93.8% (15 / 16)
[No.13] posted by jimmy
まず、この1冊の本を書くために著者が行ったであろうインタビューの総量を思うと気が遠くなってしまいますね。その(おそらく)膨大な取材メモからこの1冊に圧縮・編集する作業はうらやましい気もしました。もし私がノンフィクションライターだったらこんな1冊を書いてみたいと思います。
「冷静な描写というスタイルの伝記」というと、アフリカから米国に連れてこられて奴隷にされた人物を描いた「ルーツ」や、幕末の群像の一人 大村益次郎の人生を描いた司馬遼太郎さんの「花神」を思い出します。
本の売り出しや映画化のために、商業的には「天才数学者」とか「ノーベル経済学賞」、「精神分裂病」とかいったキーワードを前面にだして相当なデフォルメがなされたのは仕方ないでしょう。それがなければ広く知られ、私が手にとることもできなかったですから。
しかし、実際に読んでみれば、ある一人の人生とその人生と交差したさまざまな人々の冷静なありのままの描写です。善悪の判断や都合のいい意味付けなどを廃したクールな書き方になっています。そのような多くの伝記の中から読者が感情移入できるものが選ばれ読まれるのでしょう。
この本であれば、数学者や科学者を目指すヒトが高校生前後の世代に読むと自らの人生観づくりに役にたつように思いました。私も、そのころに読んで、米国の大学の雰囲気や、ナッシュ以外に登場する有名な科学者たちの生きていく様子に触れていたらまた違ったことを考えていただろうな・・・と思いました。
凄い人
26.7% (4 / 15)
[No.12]
ナッシュといえば、経済学のナッシュ均衡で有名なだけの人だと思っていましたが、数学者としても凄い業績を残した人だと分かり有益な本でした。