Waiting for Snow in Havana: Philadelphia Selection:book 1

  • [著]Carloe Eire

カテゴリ:
ペーパーバック (400頁)
ISBN:
1416544720
発売元:
Free Pr (2006/10/30)
定価:
¥ 1,449 (税込)
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評価: 5.0
2005
08/10
Wed

キューバ革命に追われた旧富裕階層の少年カルロスの追憶。

[No.1] posted by KOKO

陽光と波しぶきとの間にある世のすべてを手に入れていた日々を突然奪われたカルロス少年。革命政府によって強制的に米国へ送られた14000人の子どもたちの1人として、彼は米国で大人になった。

スペイン語でナンバリングされただけの章がUNOからCUARENTA(40)まで続く。
20章までは、ハバナでの少年時代がつづられる。ターコイズブルーの海、少年たちを満載した車が窓を開けっぱなして、波打ち際を疾走する、ずぶぬれのスリル。トカゲを狙い撃ちし、パーティでシャンパンを飲みすぎて鼻から噴出し、アリとハバネロで死刑ごっこをする。カルロス少年は富裕階級の息子、父は厳格な裁判官で、少年は父の重々しさをルイ16世の面影に重ねていた。屋敷内には実際に、ルイ王朝のクリスタルのコレクションもあった、少年たちがその完璧さをぶち壊してしまったが。そんなときには、父の革ベルトが少年の身体に飛ぶ。父がベルトを腰から抜く音こそは、傷よりも痛く耳に残っているのだった。社会情勢は家庭や学校にも影を落としていたが、子どもの目には全容は見えていない。やがてバチスタの逃亡、フィデル(カストロ)の勝利。
21章で場面は一転、冬のシカゴに少年はいる。すでに子ども時代を失ってしまったカルロスである。22章から再びハバナの少年時代が描かれているが、すでに革命が生活のすべてを変えてしまった。チェ・ゲバラによる通貨の廃止、常にそこにある銃声。両親や親戚の大人たちの表情が変わっていく。終章に向けて、著者ははっきりと革命に敵意を表明するが、自分の無力さを、押し寄せる波の中で、流されまいとする雫のようだった、と回想している。

驚嘆するのは、描写の闊達さと明瞭さ、それと、40章の長さにもかかわらずそのスピード感や明瞭さが失われないことである。時系列にはこだわらず、まるで暗い蔵で古びた長持ちに手をつっこんで、手当たりしだい取り出して埃を吹き払うと、たちまち空中に鮮やかな情景が現れるようだ。思い出というには生き生きとしすぎる告白の珠の連なり。追憶というものにありがちな甘ったるさが無いのは、革命の足音と著者の批判とがベースになっているためか。

日本人が世界史で学ぶキューバ革命は、米国の傀儡政権バチスタがカストロに倒された、という単純な図式だ。それを裏側から見るという点でも面白いし、あるいは、50年代のハバナの強烈な光と影に酔うだけでも充分楽しめる作品だ。


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