- [著]Charles R. Morris
- カテゴリ:
- ハードカバー (224頁)
- ISBN:
- 1586485636
- 発売元:
- Public Affairs (2008/03/03)
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Agent問題が問題の本質のひとつ
米国金融問題を25〜30年周期の中で捉える考え方もそれなりに納得感のあるもので、且つ今後の中長期的な問題の把握には役に立つものであると思う。
ただ、証券化が進展した現代の金融の在り方に関しては、循環的な問題だけではなく、エージェントの問題として捉えた議論の方が重要だと思う。
直接金融にしろ、間接金融のしろ、信用を作り出す主体がそのリスクを自分のものとして評価しない、つまりリスクを負う主体が複雑に分断されている現代の金融の在り方が非常に問題であり、サブプライムに発した現代型金融危機の本質であると思う。
本書はその構造的な問題を経済学などで扱われるAgentの問題の観点から論じている。この視点は頭の整理には非常に役に立つ。
本書が書かれた時点ではまだ問題の全容が明らかにされていない(今日時点でもまだであるが)ので、その処方箋的な記述の内容に関しては、必ずしも的をえていないと思えるものもあるが、今後数年の状況をきっちりと把握する上での基本的な事項の整理にはなる。
取り上げられている数字にはあまり囚われる事無く読むことが必要かと思います。
いつも時代遅れのシナリオを実行することになる日本
最近出版された作品です。最新の情報が満載です。でも最新の情報はその瞬間に古くなるわけで、それ自体はどうでもいいわけです。この作品の特徴は、1980年代前半に銀行の経営陣だったというold timerによる戦後アメリカの金融史の振り返りです。ユニークなのは、今回の信用市場の崩壊をアメリカの歴史のサイクルの変わり目と位置づけた点です。この考え方自体は、arthur schlesingerの「アメリカ史のサイクル」を参考としたものです。20−30年周期でアメリカ政治の傾向は内向き(introvert)と外向き(extrovert)にガラッと変わるという傾向を持つというわけです。この考え方の今回の危機への適用は魅力的なものです。ヴィエトナム戦争の後遺症から抜け出した1980年以降のアメリカは金融自由化のイデオロギーにすっかり洗脳され、挙句の果てにはそのイデオロギーを普遍的モデルとして海外にまで輸出することにその情熱と知性を傾けてきました。そういう意味では1997年のアジア金融危機も軍事力を使わない戦争だったのかもしれません。しかしいつもながらこれは明らかにバランスを失したところまで行き過ぎたようです。余りにも金融が肥大化してしまったようです。そしてその陰画としての公的セクターの果たすべき役割の余りもの低下です。今後アメリカで始まるのはre-regulation, re-intermediationの長い道のりです。かなりの抵抗はあるでしょう。でももう方向転換はなされたのです。考えてみれば、1980年以降金融危機がない時代なんてはたして何年あったのでしょうか、いつも世界のどこかで金融危機が起きていたような気がします。他国の金融危機は自国の商売の種だったわけですが、とうとう最後にやってきたアメリカの金融危機については、創造的破壊と褒め称えることは無理なようです。ところで、この時代遅れのシナリオをこれから実行しようという日本はいったい何なんでしょうか。
