- [著]Arthur C. Clarke
- カテゴリ:
- ペーパーバック (256頁)
- ISBN:
- 1857987217
- 発売元:
- Gollancz (2000/10/12)
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神への兆戦
この小説が書かれたときの作者は、不治の病に侵され、余命幾ばくもない状態だったようです。(後に誤診と判明、クラークは今でも健在です)。
そう考えると、クラークらしくない強引な設定(地理的に)もうなずけます。そこまでして遺したいことが書かれてるのではないでしょうか。
この小説は軌道エレベータの建設物語がメインですが、サブストーリー的に時代も場所も異なる二つの物語が同時進行します。一つは自ら神になろうとした王の物語、もう一つはファーストコンタクトもの。この三つのストーリーで共通するのは神への兆戦です。
この小説は、ただの巨大建造物建設物語というだけでなく、神という存在を仮定を必要とした人類が、神という概念から脱却していく壮大な叙事詩になっていると思います。
クラーク流の詩的で、人類の理性への信頼と優しさがにじみだすような文章で描かれたこの小説は、誰にでも薦められる逸品です。
軌道エレベータ構想
「SFは科学の母」という言葉もありますが、本著はこれに値する壮大かつ有益な構想を示しているものといえるのではないかと思います。
実際本著の構想は「軌道エレベータ」としてこれまで40年以上にもわたり研究が続けられてきているものであり、裳華房から『軌道エレベータ―宇宙へ架ける橋』というわかりやすい解説本も出ています。
カーボンナノチューブも実験室レベルでは成功していることから、当初は遠心力に起因する張力に耐える素材が無いことから夢物語と思われていた軌道エレベータも、より現実味を増しているようです。
何階ですか?
静止衛星と地上を結ぶ宇宙エレベータの建設に奮闘する天才技術者が主人公の物語。
なにより、次々に展開されるクラークらしい壮大なビジョンが素晴らしい。
ジブラルタル海峡に架けられた橋にはじまり、
ギターの絃のように振動してフォボスをわずか数キロの差でよける火星の宇宙エレベータの構想、
そしてもちろん、地球の宇宙エレベータ、さらには・・・。
地球終端駅の建設する為の条件を唯一満たす場所は、仏教徒の寺院が建つ山頂だった。
主人公は、寺院に立ち退きを請願するが、断られる。
世界司法裁判所に持ち込むも、やはり負けてしまうが、・・・。
物語の終わり方が、文字通り尻切れトンボなのだが、まだまだ続きが書けそうなのに、ここでやめるのがやはりプロなのだろう。
とにかく、私たちを広大なビジョンにいざなってくれる一冊。
しかし、終わりのほうの5分の1は、高所恐怖症のひとはたまらないだろうな。
