バナナと日本人―フィリピン農園と食卓のあいだ (岩波新書)

  • [著]鶴見 良行

カテゴリ:
新書 (230頁)
ISBN:
4004201993
発売元:
岩波書店 (1982/01)
価格:
¥ 777 (税込)
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42,629 位
評価: 4.5
2008
03/17
Mon

悲しき熱帯

100.0% (3 / 3)
[No.11] posted by しゅてんだる

 かつては高級果物の代名詞のひとつでもあったバナナが今や一房100円で店頭に並ぶ。
 そんなバナナをめぐる残酷物語の裏側を抉り出した名著。

 安く、安定的なバナナの供給を享受する日本。その需要を満たすことで富を得る
フィリピン。その貿易を仲介することでビジネスの糧を得るアメリカ。あまりに甘美な
トライアングル。
 しかし、現実にバナナをめぐって起きたのは幸福極まりない三方一両得などではなかった。
フィリピンを襲ったあまりに悲惨なスパイラルがこれでもか、とあぶり出されていく。
 しかも、その背後に横たわるのは、各々のプレイヤーが最適化を図ることが結果的には
互いを傷つけることとなる、いわゆる「合成の誤謬」がもたらした不幸と片付けるわけには
いかぬ、深い国際的企業犯罪の闇であった。
 
 1982年に出版されたこの本は例えばバナナをモチーフに南北問題を語る。
 しかし、これはすぐれて今日的な問題、例えばバイオエタノールやフェアトレードをめぐる
果てしないペテンの構図もまた、これに似る。
 現代人必読の迫真の一冊。

2007
01/13
Sat

バナナを通して南北問題を知る本

100.0% (2 / 2)
[No.10] posted by あじあちっく

フィリピン産バナナの輸入は1970年代に入って劇的に急成長し、1975年には全輸入量の9割近くを占めるに至ったが、その舞台裏はどのようなものだったのだろうか。著者はフィリピンで日本向けバナナを生産しているのは、デルモンテ、ドール、チキータのアメリカ系多国籍企業と、バナンボ(住友商事)の合計4社にすぎず、典型的な多国籍企業による寡占状況が観察されること、またすべての企業が病虫害に強く生産性の高いキャベンディッシュという品種を用いて、ミンダナオ島の大規模プランテーションで栽培されていることをその特徴としてあげる。本書はバナナのような典型的な一次産品について、消費者である日本人にはなかなか見えてこない、生産国の内情を伝える良質のルポである。

著者はまた、今の日本ではあまり知られていない意外な点にも光を当てている。ミンダナオ島では、化学繊維の普及以前ロープの材料として用いられた「アバカ麻」(バナナと同じ芭蕉科に属し栽培条件もよく似ている)が栽培されてきたが、実はその栽培が主として日本からの移民によって進められてきたという事実だ。1920〜1930年代には日本から多くの資金と移民がミンダナオ島のダバオに入って移民人口が2万人に達し、フィリピン人からは満州国にちなんで「ダバオクォ(国)」と呼ばれたほどだったという。かつての日系移民のアバカ麻農場が、現代の多国籍企業のバナナ農場に変わったわけだが、たぶん著者が言いたいことは、どちらも現地住民による自給自足的土地利用と違って、世界市場への販売を目的とした生産だという点で、だからこそ現地に住む世界市場とのかかわりの薄い人たちとの間で様々な摩擦・問題が起こった(起こっている)ということなのだろう。

2006
12/01
Fri

たかがバナナ、されどバナナ

0.0% (0 / 1)
[No.9] posted by テキーラサンライズ

ふだん食事をするときに、その食べ物に関わるつくり手や流通経路までは意識しない、というか、いちいち意識などしておれないのが本音であろう。それがバナナのような輸入作物ならなおさらだ。しかし著者はそれに対し、「ちょっと待て」と言い、「身勝手にすぎる」と訴える。

本書では、多くの日本人が、著者のその主張に耳を傾けて一考せざるをえない、バナナ栽培における労働者から多国籍企業まで、著者自身のフィールドワークに基づくありのままの事実と鋭い分析が列挙されている。フィリピン産のバナナに経済問題から植民地問題、南北問題、少数民族問題、戦後補償問題等まで関わっているのだ。読了後「されどバナナ」と痛烈に感じることに間違いはないであろう。

本書はあくまで、バナナという輸入食物を通じて、生産者と消費者の意識を身近に感じさせる本であり、食糧自給率の低い日本では、ほかに幾らでも本書におけるバナナの様に当てはめることができる食物があるが、何もその意識を輸入「食物」にだけ限定しなくてもよいことは当然であろう。
また、さきほど取り上げたような問題が様々横たわっているので、各領域の学問への招待として眼差しを向けるに、実に格好の書である。

2005
12/09
Fri

経済や国家について、具体的事例を持って考えさせてくれる新書の名著

85.7% (6 / 7)
[No.8] posted by 石岡岩石

商売の基本は正直でフェアーであることだろう。経済のグローバル化の下では尚更、弱肉強食状態につけ込んで金儲けをする企業は世界秩序自体を破壊する。企業家も消費者もまた、国家とは何か統治とな何かを自国を例にもっと知るべきである。
この本は、新書であっても経済や国家について、端的に具体的事例を持って考えさせてくれる名著だと思う。

2005
07/15
Fri

バナナから見えてくるリアルワールド

92.9% (13 / 14)
[No.7] posted by くにたち蟄居日記

 既に岩波新書の古典である趣の名作ではないかと思う。

 バナナという誰もが知っている果物の生産という点に「ミクロに目を凝らす」ことで 「マクロに見えてくる世界の俯瞰図」という手法自体が非常に斬新であり 見事なものである。書かれて30年近く経ち、バナナの状況も様変わりではありながら その手法自体は 今でも新しい切り口ではないかと思う。

 しかし この本を読んでいると つくづく南北問題の難しさを感じてしまう。何が善で何が悪なのかという判断は難しいし だいたい 世界はそんな簡単な区別はできないくらい タフなものかと思う。その意味で 最近の米国が中近東、イスラム等に関連して 簡単に「悪」という言葉を使うことは 本質的に危険であるということことかなと思ってしまう。

 バナナを手にとって見ているが バナナは口をきけるわけではない。但し そこから見えてくる「世界」がある、 それが本書である。

2004
02/01
Sun

名著です!!

92.3% (12 / 13)
[No.6] posted by ara_camus

大学時代に読みましたが、「名著」というのはこういう本のことをいうなだと今でも思ってます。
今では、手垢のついたコトバとなってしまった「南北問題」等、様々な社会のホントーの現実がリアルに語られています。
兎に角、一度読んでください。

2004
01/10
Sat

バナナをめぐる事実

88.9% (8 / 9)
[No.5] posted by 興味津々堂店主

 フィリピンと日本の関係について色々と調べているときに、出会ったのが本著でした。20年前に書かれたもので、現在とは状況も変わっていると思いますが、バナナの安定した価格やフィリピン経済の状況、人々の暮らしなどを考えると、本質的な構造が変わっているとは思えない。

 フィリピンにおけるバナナの生産、日本への輸出、日本国内での流通など、一本のバナナが私の手に届くまでの、様々な現場の様子や過去の出来事などを知ることができる。何よりも日本人が、古くからバナナの生産に深く関わっていたことに驚いた。

 バナナ好きだからこそ深く知りたいバナナの話が、アジアと日本の関係について造詣の深い著者の視点で整理されており、バナナをめぐる事実を知った気持ちに慣れる著作です。

 決してレシピ本やロマンチックな話ではないので、そのおつもりで。

2003
11/11
Tue

バナナの真実

100.0% (3 / 3)
[No.4] posted by borah

 果物と言えば大抵高価なものからお手軽な値段まであるのだが、バナナは例外ではないだろか。高価なバナナや何千円もするバナナを見たことがあるだろか? バナナがなぜ安いのか、この本には書いてある。フィリピンでバナナを作っている農家の厳しい現状、そしてその原因を作っている日本を含めた多国籍企業の資本主義支義が記されている。 バナナを語るのに南北問題が関わっているとは驚きだ。フィリピンのバナナの歴史を解明しよとして、始めに麻の話がでてくるが、ここの話は少し長すぎた感じがした。しかし、全体的には話がわかりやすかった。

2002
07/14
Sun

淡いエッセイではありませんので覚悟してね

76.5% (13 / 17)
[No.3] posted by ほ蘭人

 遠足でリュックに詰めてもらった大切な宝物であるバナナ・・・。今でも小学校の幼い懐かしい日がバナナの香りと共に浮かんできて・・・などという淡いエッセイではありませんでした。

 ずいぶん前にバナナ大好きの私は買って読みました。しかしさすが岩波書店の”調理法”ですね。搾取の観点から捉えています。昔あんなに宝石のようなまばゆいばかりに輝いていた黄色い宝物が今ではすいかやみかんよりたたき売られて最も安い果物の一つになり果てた理由がよ~くわかりました。これで安く手にはいるんですね。なんだか素直にうれしい、と喜べなくなりました。
 重版されたのでしょうか。大量に書店に平積みされています。バナナに興味のある方はぜひどうぞ。郷愁を誘われる方にはあえてお薦めしませんが。

2002
06/08
Sat

身近な食べ物だけに!!

66.7% (4 / 6)
[No.2] posted by takemaru0206

一見タイトルだけ見ると、どんなことが書かれているのか想像がつきにくい。しかし、この本はバナナを通して南北問題を深刻に取り上げている。具体的に、日本とアメリカと第三国(この場合はフィリピン)の関係である。アメリカの企業がフィリピンを通して、消費国日本に輸出。そして、日本の消費者は「バナナ」を安くて、栄養価が高い果物としてしかそれを見てない。そのバナナを生産した、またはそこにたどり着くまでのフィリピン人の辛い苦悩が知られていない。安い労働力で働かされ、人間として扱われていない実態。この事実をどう受け止めるか。その手段が今回はバナナであった。

現地では絶対に食べないバナナ。それを日本の消費者は食べている。大量の農薬を使われていることも知らずに。また、フィリピン人は現地で取れたパイナップルを日本に輸出しているにも関わらず、日本でそれを缶詰にされたものを勝って食べている、摩訶不思議な現象。

大学のゼミの先生に紹介されて一読してみたが、名著とはこのような本のことを言うのだと実感した。


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