- [著]上橋 菜穂子
- カテゴリ:
- 単行本 (288頁)
- ISBN:
- 403540280X
- 発売元:
- 偕成社 (2003/01/22)
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この世の不安と生きるための力を考えさせる作品
守人シリーズ初の2冊長編大作だと思います。
国の建国史には必ず作られた部分があります。また、全ての人がハッピーエンドでいられるわけではなく、文化が生まれれば貧富や上下という構造は生まれていくものです。そしてそれは宗教で彩られ、説得力をもち、継続されていきます。
作者は根源的なこのテーマをベースに、守人の世界で大きなドラマを作り上げました。
歴史の中で自分たちが悪であった過去を認め、それを再発させないように見守り続けることを運命として生まれた一族。この発想自体が歴史として次の不安を生んでしまうことは当たり前のようにも思えます。
この一種不健康な発想をベースに次の力を得ていく世代、そしてそれを利用していこうと考える周囲の人々の動きは、バルサとタンダの関与をきっかけに、変化していきます。
バルサの正義、タンダの愛情、人としてどう生きるべきかを幼いときから突き詰められる兄弟、あまりにもテーマは大きく、痛みさえ感じるものでした。
バルサという素晴らしいキャラクターを通して、この現代という不安定な時代を思わせるストーリーを描ききった作者に賞賛をおくりたいと思います。
ゆるやかに広がっていく大河のような物語
ロタ王国ならびに新ヨゴ皇国の西部・国境地域を舞台に、女用心棒バルサが、恐ろしき神<タルハマヤ>を呼び寄せる力を持つ少女アスラを追っ手から守るというのが、本書のメイン・ストーリー。
巻末のあとがきで、作者は次のように語っています。「アスラという少女をバルサが連れて逃げるイメージを追いかけていくうちに、物語の根がロタ王国の創世にまで広がっていき、あれよあれよという間に、枝葉を広げて、とても一冊ではおさまりきらない大樹へと育ってしまったのです」と。話がひとり歩きをはじめ、ぐんぐんふくらんでいくというのは、きっとこういうことを言うのでしょう。「ゲド戦記」シリーズといった上質の海外ファンタジーを読んでいる気分になりましたよ。ゆるやかに広がっていく大河のような物語。素晴らしいですねぇ。
<帰還編>へとつづく本書<来訪編>の中で最も印象に残ったのは、恐ろしき神<タルハマヤ>をめぐる伝説がロタ王国の氏族間で異なっている、というところ。ある氏族の伝説で「恐怖の時代を招いた恐るべき人」と言い伝えられてきた人物が、別の伝説では「善政を敷いた神聖な方」となっている。祖先を美化するためか、それぞれに都合のいい伝説があり、そこから根深い対立と憎しみが生まれている。作品の底に流れるそうしたモチーフが巧みに織り込まれ、作品に深みを与えているのが見事。
また、異文化・異民族の違いを具体的に描いているところも面白い。「ロタ人は、相手の手首を握り合って挨拶する」「タルの民は、額と鼻と口を三本の指でとん、とんと撫でてから、床に頭をつけて、心からの感謝を示す」といった描写が、物語を一層、彫りの深いものにしている印象を受けました。
神とひとつになりし者
12才の少女アスラに宿ったのは神なのか。
かつて人々が戦に明け暮れるとき圧倒的な力をもって戦人を殺し戦をなくし老いるまでその力によって百年国を支配した者。
恐怖の時代か平和の時代か時がたち今ではさだかではない。
その力が再び訪れる。少女アスラに。
来訪編ではバルサが少女アスラを救いだし逃げて帰還編につづく
本書の題名からそれは神なのであろうがアスラが思うときその力は生あるものをことごとく殺す。帰還編への期待大。
ちょっと残念なのは私の好きなトロガイ師を登場させて欲しかった。
神か悪魔か
古の神“タルハマヤ”が宿った少女アスラ。 アスラが望めば、一瞬のうちにまわりの人々を風のように切り裂き殺す力を持つタルハマヤ。 処刑場での見物人たちの大量虐殺からこの物語は始まります。
あまりにも危険な力を持つアスラは、国の平安を保つために狩人スファルたちに追われます。
そんなアスラの前に女用心棒バルサが現れ、行動を共にするようになります。
母の言葉をひたすら信じ、タルハマヤが神だと信じるアスラ。
アスラの力を見て、タルハマヤが神だとは思えないバルサ。
悪魔に囚われし少女をバルサは救えるのか。
2巻組ですがあっという間に読めます。 とてもおもしろかったです。
真の正義とは?
中年の女用心棒バルサが、活躍するのがうれしいです。
女であり、しかも中年なのに強くてカッコイイのです。
今回は、おそろしき神を宿した少女を守っています。
もちろん、バルサの味方になって読みすすめていますが、追っ手であるスファルやシハナの考えにも一理ありという感じで、考えさせられます。
帰還編はこれから読むのですが、わくわくします。
作者の手腕に拍手
心底、この作者には脱帽の思いです。この話では、シハナや王家の陰謀や秘密が絡んできています。思わず息をのむシーンや驚きのあまり声を上げてしまうような展開が盛りだくさん、というか、それのみで創られているような話でした。バルサの思い、シハナの思い、王の思い、そしてアスラの思い、、、。色んな願いや思いが絡み合っていて、本にのめり込むあまり、彼等の言動に怒り、また、思わず涙してしまいます。しかし、ドロドロとすることもありますが、彼等の温かさや優しさも感じました。そしてもちろん、このシリーズの最大の魅力のひとつ、用心棒バルサのアクションも、バルサのやり方や考え方に、思わず拍手したくなるようなシーンも盛りだくさんです。ぜひ、読んでみて下さい。騙された、と思うことはきっと無いはずです。
帰還編にも期待
神の守り人のアスラは世にも恐ろしい”神を招く者”。用心棒のバルサが出くわした最も守るのが困難な相手のようです。バルサの人間性がより深く描かれ、物語はロタ王国の創世まで広がり、新しい登場人物も魅力的なキャラクターでますます面白くなってきたと思います。
なんて力のある!
~作者に敬服します。なんというか、作りに甘さや薄さがなくて、力のある作品だなあ、と、守り人シリーズを読みながら、思ってきましたが、この作品も例にもれませんでした。作品世界や人物のなんと確かな存在感、自然の描写の美しく、生き生きとしたこと! 物語の構成もそうですが、文章も素晴らしく、日本語を堪能できるというのは、翻訳本にない良さでしょ~~う。そして、人間の世界を見つめる、作者の広くて深いまなざしが、読む物の心にも染み渡ってくるようです。
人間の生、社会、文化の、豊かで悲しく、そして、たくましくて、生命力にあふれていることを教えられ、読後しばらくは、自分に厳しい主人公バルサに触発されて、私も少したくましくなれたりするオマケがあって、私には、本当に必要な本です。~
心の闇から目をそらさず生きるバルサ
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