- [著]上橋 菜穂子
- [イラスト]二木真希子
- カテゴリ:
- 単行本 (275頁)
- ISBN:
- 4035403601
- 発売元:
- 偕成社 (2008/04/15)
- 価格:
- ¥ 1,575 (税込)
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バルサの子ども時代に触れられます。
流れ行く者は、守り人シリーズの外伝で、単一で読むよりもシリーズをある程度読んだ方がより楽しむことができるようになっていると思います。時間軸は、第一作「精霊の守り人」より十数年前に位置し、バルサやタンダの思春期に出会うことができます。本編では二人は成人していて、成長する存在はチャグムの役割でしたから、二人の子供らしい感じをのぞかせてもらって、なんだかこそばゆい気持ち。また大人になっても変わらないところを確認させてもらって、過去からの繋がりをいとおしい気持ちで読みはじめましたが、そればかりですむはずがないことにいやおうなく気づかされることになりました。
「浮き籾」はタンダが主役。
「ラフラ<賭事師>」はバルサが主役。
「流れ行く者」は、用心棒として生きるジグロとバルサが主役です。
「寒の振る舞い」はタンダの待ち続ける運命を示唆する(笑)短いものです。
…とそれぞれ二人が登場するのですが、この本のメインはむしろ、各物語に登場する大人たちにあると思います。バルサとタンダの成長していく存在と対比させて、大人たちの老いや病、末路、死の様が生々しく、容赦なく描かれています。それはバルサやタンダがたどる可能性があった姿でもあると思います。児童書というにはかなり激しい場面もありますし、難解な部分もあると思います。中でも「ラフラ<賭事師>」はかなり難しく、ラストを何度も読んでこういうことなのではないか、と予測するのがやっとでした。
1ページめくるともう物語の中に引き込まれてしまいます。
この作品には抗いがたい魅力があります。守り人シリーズは「天と地の守り人」で一応完結したと思っていたので、また出会えるとは思ってもいませんでした。ですからすごいプレゼントをもらったような気がします。
精霊の守り人ではすでに、養父ジグロは亡くなっていたので、ジグロは主人公バルサの記憶の中で出てくるだけでした。でも、この「流れ行く者」はバルサが子どもの時の話なので、ジグロも生きています。生きて、悩み、苦しみ、慈しむ姿が描かれていて、強く胸を打ちます。この物語は本当に名作だと思います。ハリポタやダレンシャンも素晴らしいですが、読んでいて、これはファンタジーと線をひけます。でも、守り人シリーズはいつのまにか話の中にはいりこんでしまいます。炉端の匂いがし、酒場の喧噪が聞こえてきます。この話こそ、アジアの力を集結し、ハリウッド級の手間暇をかけ、実写映像化して欲しいと思います。「流れ行く者」から「精霊の守り人」のバルサまでさらに十数年の空白がありますが、ぜひこの部分を描いていただきたいと言うのは読者の欲張りでしょうか?
何度でも守り人シリーズを読み返してあきらめずその幸運を待ち続けたいと思っています。
圧倒的な描写力!!
前半は11歳のタンダの家族に囲まれた平和で健やかな生活と、そんなタンダが心惹かれる孤独な少女、一時的にトロガイ師の小屋で暮らす13歳のバルサとの交流の様子が描かれる。
日々の生活は、まるで昔の日本の農村の姿を見ているような描写で、田畑の土の匂いや草の香りがしてくるような見事な描写が続きます。助け合う村人たち、迷信に囚われる人々のちょっと悲しい姿や、祖先を弔う素朴な心情、もはや日本のどこにも存在しない原風景のような光景に引き込まれます。
後半は・・・予想外の展開!!流浪の旅を続ける定めのジグロとバルサには過酷な日常が。用心棒として日々の糧を得るジグロ。共に働きながら行動を共にする13歳のバルサは様々な人々と出会い、得がたい体験をし、そして・・・用心棒としての過酷な現実に直面する!!
用心棒と言う職業である以上、避けては通れないそれを、考えうる限り最も悲劇的な状況で迎えなければならなかったバルサ。その身に迫る恐怖で身動きの出来ないバルサ、目の前で展開する光景に立ちつくすバルサ・・・そして・・・飛び散る血潮!!全てが終わって反吐を吐き、声を限りと泣き叫ぶバルサ・・・・・・・。
一人の人間にはそれぞれの過去があり未来がある、生活があり家族があり、喜びと悲しみと涙がある・・・。その人間を手にかけることの重みと恐怖に震え、身を震わせて泣き叫ぶ13歳の少女バルサの姿・・・。
多くの物語に血と涙は付き物であるが、自分の行動が人の命を左右する事の恐ろしさを、これほどリアルに生々しく描いた物語を私は知らない。眼前に繰り広げられる光景に、言葉を無くして立ち尽くす思いの私がいる・・・。人を傷つけるという行為を漫然と描く物語が多いけれども、その現実の恐怖から目を背けずに、あえて過酷な描写をする作者の覚悟と決意が伝わってきます・・。
そんな風に描かれる後半ですが、巻末の最終場面は心温まる光景・・・バルサとタンダの絆を象徴するような場面で終わります。この優しさが堪らない・・・。
上橋さんの描き出した「守人シリーズ」は、描かれる世界の圧倒的な現実感と登場人物から感じる温もりが特徴だと思います。また格闘場面の描写もまるで実体験しているような臨場感がありますね。シリーズ10巻ではその特徴は維持されているのですが、最後に近づくにつれて、バルサやチャグムたちを取り巻く政治に翻弄される場面が増えるためか、ファンタジックな要素が薄れていくのは仕方が無い事ですが、ちょっと残念に感じましたね。それが何となく創作力の衰えか?というような気も少ししていたのですが、この短編集を読んでその感覚が間違いだったと分かりました。
前半のタンダの家族の日常やバルサとの交流の様子は、柔らかな情感と暖かさに満たされています。それに対して後半は、殺伐とした用心棒家業の厳しい現実がこれでもかと描き出されます。ジグロの厳しい鍛錬と生来の利発さから、大人顔負けの力を身につけたバルサが、想像もしなかった人間の心の闇と眼前の恐怖に打ちのめされるクライマックスの描写は圧倒的です!!上橋菜穂子・・・恐るべし・・・ですね。
あ〜・・守人シリーズ・・・もう出ないのでしょうか。もっともっと読みたい!!そう思わずにはいられない「守人短編集」です。全ての人にお薦め!!
少年少女時代
番外編 守り人シリーズ短編集。
短編といっても全て続いているように読める。
なんにせよ、守り人の世界が再び読めるのは嬉しい。
守り人シリーズを全部読んでから読むべきかな。
賭け事師の話とか、捨て荷の話とか
本編に出てきたセリフが、生きてくるシーンがあり、
微笑ましい。(だけじゃないけど。)
子ども時代だからといって、キラキラ微笑ましいだけじゃない
しっかりとした世界観に安心して読みすすむことが出来る。
幼い頃の物語
『守り人』シリーズ番外編…。短編4話から成り立っています。父を王に殺害され養父(父の親友)のジグロに育てられたパルサの13歳の頃とその友達のタンダを中心に描かれています。★『浮き籾』は、タンダの亡き人に対する思いがギュッと詰まっています。亡きおんちゃんの姉への思い。そして、誰も知る事のないおんちゃんの悲しみをキャッチ出来たのは、それだけタンダが温かい子であるからなのでしょうね。★『ラフラ』は、ススットという賭け事のお話。ラフラというのは、専業の賭け事師の事です。名高いラフラのアズナのお話。勝負師だからこその生き方が良かったです。★『流れ行く者』。流れ者の護衛士の生き方。嫁は去り、一人息子を亡くしてしまったスマルだからこそパルサに教えたい生き方があったのでしょう…。女性として家庭を持ち温かい家族に守られ生きる事。それはスマルが、叶える事が出来なかった現実だからこそ説得力がありました。★『寒のふるまい』は、冬の最中、食べ物が乏しい時期に食料を山の獣達にふるまうことである。★全体を通してやっぱり素敵なお話だと思います。まだ、このシリーズは文庫本化されている部分しか読了済みではないので続きが気になる所です。
バルサ13歳、タンダ11歳。「守り人」シリーズの魅力的な番外編、四つの短編集です
「守り人」シリーズの番外編となる短編集。
女用心棒のバルサが13歳、薬草師のタンダが11歳の時の四つのエピソード。
「浮き籾(もみ)」「ラフラ<賭事師(かけごとし)>」「流れ行く者」「寒(かん)のふるまい」の四編が収められています。
タンダとバルサが魚釣りして遊ぶシーンが、キラキラと光っていた「浮き籾」。
ラフラの老女の姿が印象に残る「ラフラ<賭事師(かけごとし)>」。
バルサが体験したはじめての命のやり取りを描いて鮮烈な「流れ行く者」。
藤沢周平の短編「鱗雲」(『時雨のあと』所収)をふと思い出したラストの映像が素敵な「寒のふるまい」。
四編とも胸にじんとしみる話で、「守り人」シリーズの懐かしい世界に心行くまで浸った気分。細やかで厚みのある世界設定をはじめ、作者・上橋菜穂子(うえはし なほこ)の筆力は、流石に素晴らしいものでした。
帯に記された作者の、「終わったからこそ書けた物語」という言葉も印象的。
二木真希子(ふたき まきこ)のスケッチ風の挿絵もいいですね。短槍(たんそう)を抱えて床に座り、目を閉じたバルサの絵(「ラフラ<賭事師>」の扉絵)、旅の暮らしを送るジグロとバルサのふたりが並んで歩く絵(「寒のふるまい」の扉絵)の二枚には、特に心を惹かれました。
