- [著]上橋 菜穂子
- カテゴリ:
- 単行本 (388頁)
- ISBN:
- 4037500507
- 発売元:
- 偕成社 (2007/09)
- 価格:
- ¥ 945 (税込)
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不穏な嵐の予感
一作目『精霊の守り人』から3年が経ち、14歳になったチャグムは、星読博士シュガと共に、南方の島嶼部にあるサンガル王国へ向かう。
文章を読んでいるだけでも、とても美しい景色が本の中に広がっていくのは、これまでと変わらない。
新しい土地サンガルの熱気に満ちた美しさも、もう一つの世界であるナユーグルの幻想的な美しさも。
独特の言語を適度に交えるところに異世界情緒を感じてしまうが、描かれる人々は生身の悲しみや痛みや苦しみを抱えている。
今回も女の子達がよくがんばっている。そこが私としては嬉しい。
また、チャグムの成長が著しく、眩しいほどだ。この先、つらい人生が待ち構えていなければいいのだが。少し心配になってしまった。
チャグムも、サンガルや新ヨゴ皇国をも巻き込むような時代のうねりを感じ、物語の続きが非常に気になった。
自分の行動を選び取るとはこういうことなんだ!
「虚空の旅人」は、皇太子チャグムが主人公で、その成長の物語ともいえますが、チャグムの成長振りがすばらしいのです。この本には、王族からラッシャローと呼ばれる海のジプシー?まで、実にさまざな階層の人が登場しますが、チャグムは、王族の命であれ、漁師の子どもの命であれ、その命に徹底して向き合うことで、自分の行動を選びとっていきます。その切実さ・誠実さに泣けてしまいます。これほど真摯な「選択」はない。大帝国タルシュの侵略の足音も聞こえだし、外伝とはいえ、物語は大きくふくらみ、シリーズのラストに向けての伏線が出てきます。是非ラスト3巻「天と地の守り人」まで読み進むことをお勧めします。
チャグムという人物に引き込まれます
本書はハードカバーで発売されているものの軽装版です。
児童書としてのハードカバーから漢字の分量がやや増え、
巻末には新たに書かれた上橋先生のあとがきが添付されています。
そして佐竹先生の挿絵もそのまま掲載されています。
また軽装版というだけあって、文庫よりは大きいですが
ハードカバーよりも軽く持ち運べるサイズです。
内容としてはバルサという主人公ではなく、チャグムの足跡を描く
外伝という位置づけとなっていますが、世界観はそのままに作品のおもしろさも
保たれています。
この「虚空の旅人」でチャグムは海の見える隣国へ旅しますが、
読んでいるとまるで自分が海のそばにいるような描写がすばらしいです。
また皇太子としてのチャグムが隣国の王子や王女と知り合う物語は
ハラハラする部分もありつつ、先が気になってしまうおもしろさです。
シリーズを全て読み終えて、個人的にチャグムという人物に
惹かれる部分が多いのはやはりこういった外伝のなかで、苦悩の中にあっても
心情や行動でその芯の強さが伝わってくるからなのだと思います。
バルサとは違った強さを持つ彼の物語は、読み進めるうちに応援したくなったり
共感して涙を流してしまったりすることが多いです。
素敵な作品です。
