- [著]横溝 正史
- カテゴリ:
- 文庫
- ISBN:
- 4041304040
- 発売元:
- 角川書店 (1973/02)
- 価格:
- ¥ 740 (税込)
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金田一耕助、動く。
『獄門島』をクローズドな空間を舞台にした端正なパズラー(静)とすると、
本書は東京⇔関西と金田一耕助が捜査のために移動する、トラベルミステリ
(動)の色合いの強い作品。
降霊術、密室、集団毒殺(帝銀事件がモチーフ)、亡霊など、ディクスン・
カー(カーター・ディクスン)ばりの趣向が凝らされていて、その趣味の
人にはたまらない一冊といえるだろう。
この作品の一番の謎は「椿男爵と思われる人物の正体」にあり、集団毒殺
事件に関する伏線の張り方はさすが大横溝。本格推理としては物足りない
かもしれないが、没落貴族の悲劇を描くなど、風俗作家としての技量が
いかんなく発揮されていると思う。表紙は相変わらず、怖い。
帝銀事件
横溝正史の代表作のひとつ。
帝銀事件をモデルにして書かれたもの。ああ、これが横溝にとって、作品のヒントになったんだなという箇所があり、執筆の跡がたどれたりして、なかなか面白かった。しかし、内容はまったくの別物で、金田一の活躍する本格ミステリに仕上がっている。
旧華族、美人の奥方、黄金のフルートと、道具立てがそろっている。そこに、横溝お得意の味付けがされているのである。陰惨な血の問題、金田一をあざ笑うかのように跳梁する犯人(いつものことだが)と、ファンなら満足できること間違いない。
ただ、本当に傑作かというと、ちょっとためらうものがある。
「自選ベスト10」では6位だが...
本書は推理作品としては「凡作」である。金田一は何一つ推理しておらず、事件が起こり謎があり、真相を説明してはいるものの、真相に至るまでの過程についての説明がないに等しい。
(まさか、「ウィルヘルム・マイステル」のおかげですよ」と美禰子に述べていることを推理だとは、誰も思うまい。)
例えば玉虫伯爵殺しを例にとると、なぜこの人物が犯人であり、どうしてこのような方法で密室が構成されたのがわかったか、という説明がなく、単に事実としての真相を語っているだけであり、全体がこのような調子なので、本書には推理作品としての価値はない。
では物語の面白さはどうかというと、本書は私の好みには合わないので「★3つ」。
好みに合わない理由だが、単に「暗くて救いのない物語」がキライということだけではない。それなら『夜歩く』もそうだが、私は『夜歩く』は『八つ墓村』と同じくらい面白い作品だと思っている。
(にも関わらず『夜歩く』が「★3つ」なのは、アンフェアな記述が多いため)
だから好みに合わないというのは、本書は分厚いばかりで余計な描写が多く、遅々として物語が進展しないことに退屈を感じていたからだと思う。
なお、作者は本書を『真説 金田一耕助』の中で、金田一ものの自選ベスト10の第6位としている。
正しくは、田中潤司が選んだベスト5(1.獄門島、2.本陣殺人事件、3.犬神家の一族、4.悪魔の手毬唄、5.八つ墓村)を「妥当なもの」とした上で、次にくるものとして本書を挙げている。
ただ、次の7位に思い入れがあるという理由で『仮面舞踏会』なんかを挙げており、参考にならない。
作者の思い入れとそれが傑作であるかは別問題で、結局、その作品を面白いと思うかどうかは、作者ではなく読者が決めることである。
史上最恐の推理小説
私が読んだ横溝作品、いやあらゆる推理小説の中で最も恐ろしく、暗い物語。
終戦直後という時代、没落貴族という舞台。そして、血をめぐる悲惨な結末と驚愕の事実。
物語が佳境を迎えたとき、まさしく私にも悪魔の姿が目の前に想像できた。
傑作です!
「悪魔の手鞠唄」の次は「笛」・・・横溝正史は音楽好き?
読んでる時はスリリングで面白いし、犯人の意外性も見事だけど、獲得形質は遺伝しない(分かりやすく言えば、腕を骨折した親から生まれた子供が遺伝的に腕を骨折しているということはありえない)のだから痣の件は非科学的では?あと、旧華族の普通じゃない言動が「華族だから」「平民とは違うから」という理由で簡単に説明されちゃうのも華族の存在しない現代に生まれ育った自分には理解しにくい。というわけで一点減点。
装丁のイラストが怖すぎる
月並みですが、金田一シリーズの中では一番好きです。
館に響く妖しげなフルートの音、常に先手を打ってくる姿を出さない悪魔。
妖しげでスリリングな展開に、一気に読んでしまいました。
そして、悪魔が最後に笛を吹くときに起こること!
ミステリに興味がある人にはぜひ読んでほしいと思います。
表紙のイラストが怖いです。
なぜ悪魔になったのか
個人的に横溝正史の最高傑作だと思っています。
横溝氏はトリックで勝負する作家というよりも、不気味な
仕掛けで読者をゾクゾクさせるのが上手い人だと思います
が、この作品ではそのテクニックが存分に発揮され、最初
から最後まで、こちらをゾクゾクさせてくれます。
この作品にはリアリティーがないという批判がありますが、
この手の作品にリアリティーを求めることはナンセンスだと
思います。
映画「スターウォーズ」が徹底的に非現実的でも面白いのと
一緒で、現実には実現不可能なトリックでも、その世界の
中で納得できれば、私はいいと思います。
この作品はタイトル通り、笛(フルート)がキーワードで、
作中で本当に悪魔が笛を吹くわけですが、はたしてその悪魔とは
誰のことなんだ?というのが最大の謎になっています。
そしてその謎が解けたとき、私は戦慄を覚えました。
その悪魔の正体にではなく、その人物がなぜ悪魔になったのか、
その理由にです。
映像化された作品もいくつか見ましたが、はっきり言って原作の
足元にも及ばないと感じました。
この作品を知らない人はぜひ原作を先に読んで、金田一探偵と一緒に
悪魔の足跡を辿ってみてください。
悲しい物語です
2007年正月のドラマの原作だそうで、稲垣吾郎が演じる金田一がこの作品に挑戦するらしいです。
この作品の感想は、やはり悲しい!ということ。
没落貴族の行く末、出生の秘密、フル−トのメロディ―の秘密。
どれをとっても、悲しく救いようのない事件です。
昭和の転換期に社会に翻弄される、特権階級の無軌道な行動が数々の悲劇を生む。
視点を変えて読めば、日本戦後の不の遺産を表面化した作品とも読めると思います。
ドラマが楽しみです
黄金のフルート
黄金のフルートから奏でられる悪魔が来たりて笛を吹くのメロディ。そこには悪魔を暗示する秘密が……
没落貴族ものとしては太宰治の斜陽より面白かった。ただ近親相姦ものなので全体的には暗い。そこがまたいいのだか……
何度読んでも飽きない。傑作!!
個人的には「獄門島」と並ぶ著者の最高傑作である。最初に読んでから25年以上経っているのだが何度読んでも飽きない。
著者の“推理”小説で扱われる題材は、古い因習が色濃く残る農村(岡山・長野)、戦後の没落貴族の血の因縁を描いたもの、そして東京を舞台にした一般人?を扱ったものの3つに分類されるが、中でも最も陰惨なのが没落貴族を描いた作品である。その代表的な作品が「仮面舞踏会」とこの「悪魔が来りて笛を吹く」であろう。前者もいい作品なのであるが、やはり推理小説としての出来が素晴らしいのは本作である。数多く張り巡らされた伏線が良く練ってある。言葉のイントネーション、登場人物の発する一言、小物の使い方、どれも素晴らしい。そして何より最後に明かされる「悪魔が来りて笛を吹く」の“意味”…。
著者の作品の特長の一つはセリフを読んだだけで誰が話しているのかがすぐにわかり、その人となりまでも表現してしまう“会話体の上手さ“である。これが作品を魅力的なものとしているのだが、この作品ではその特長が際立っている。この事件の捜査は東京と関西(神戸・淡路島など)をまたにかけて行われるのだが、東京からきた刑事(あるいは金田一)と関西弁を話す旅館の女将の会話などは素晴らしい。
金田一耕助は名探偵ではないという意見は結構ある。否定できない部分も確かにあるが、これ程数多くの人に愛された探偵はいないのではないか。
すでに古典とされる作品であり、粗探しをすればないこともないが、日本的な設定やトリックを描き続けた作家横溝正史が生んだ傑作の一つである。
