ジョゼと虎と魚たち (角川文庫)

  • [著]田辺 聖子

カテゴリ:
文庫 (265頁)
ISBN:
4041314186
発売元:
角川書店 (1987/01)
価格:
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評価: 4.5
2008
09/01
Mon

人の心の深い海をのぞき込むような

[No.32] posted by little bird

「ジョゼと虎と魚たち」は、忘れがたい小説です。
水族館の魚たちや、好きな人ができたら見に行くと決めていた動物園の虎、フランスの小説の主人公の名前といった、少女趣味のかわいいものがちりばめられています。にもかかわらず、私はこんな怖い小説は読んだことがないという気持ちにもなりました。幸福の絶頂にいながら、ジョゼは同時にその幸せを死と呼ぶのです。
愛を知る前のジョゼは、まだ見ぬ恋人を夢見ながら、まだ得られない幸せに憧れながら、自分の人生に何かが起こるかも知れないという淡い期待を糧に生きていたと思います。でも、恋人が現れ、ついに完璧な幸福を経験したとき、その先に何を夢見ればいいのでしょうか。まさに、人の心の深淵をのぞき込むようです。
いつもそこにあるのに、自分の目では見ることのできなかったものを見せてもらった気がしました。田辺聖子はすごい作家だと思います。

2008
08/17
Sun

大人の男女のいる光景のスケッチ。女の心情描写がきめ細かい。

[No.31] posted by kunio

大人の男女のいる光景をスケッチしながら、男に対する女のまなざし・心情をきめ細かに描いた9編からなる短編集。犬童一心監督の映画『ジョゼと虎と魚たち』の原作が収られているということで購入した。

描かれている女性心理の機微が、男にはなかなか気付かない類のもので面白い。「そうか!」という発見が、男性読者にはあるのではないか。女たちの操る関西弁も魅力的で、新鮮で味わいがあるし、リアリティを下支えするものとなっているようにも思う。

ただ、いずれも男女関係に対する女の気持ちが描かれている関係上、本全体としては濃厚な香水の香りがたちこめるようで、男性読者にはそれが少し辛いかもしれない。

9編のなかで、映画の原作となっている「ジョゼと虎と魚たち」だけは異色。他の作品はいずれも大人の女が主人公で、それぞれのやり方で自立した、余裕のある人生を歩んでいるのであるが、この作品の主人公ジョゼは大人になりきれていないし、誰かに頼らずには生きていけない存在でもある。ジョゼが出あう恒夫という男性への気持ちは、表現は屈折していながらもストレートで切実だ。それゆえ切ない。

映画の物語と比べると短い内容で、文庫本で25ページほどしかない。ジョゼの少女時代や恒夫側の生活・心情などが映画では追加されているのだが、物語に奥行き・深みを与え、成功だったと思う。

原作と映画という関係では、映画の方を見て違和感を覚えたりガッカリしたりということが多いように思うのだが、これについてはむしろ原作のほうがアッサリした感じで拍子ぬけする感じ。それと同時に、自分の中での犬童一心監督への評価がいっそう高くなる。

2008
08/17
Sun

買いです。

50.0% (1 / 2)
[No.30] posted by yoshioki6

田辺聖子の、映画化された表題作を含む短編集です。河野多恵子にしろ金井美恵子にしろ長く書いている女性作家の作品を読むと、「業」という言葉が思い浮かびます。どこか偏りがあるけれど、なにかを見据える視線にはすこしのブレもないといった腰の据わり方。この作品集を読んで、高橋たか子の「ロンリー・ウーマン」という、これもやはり短編集のことを思い出したのも、それほど由無いことではないようにも思えるのですが、どうでしょう。

2008
04/05
Sat

非常に醒めた目で、相手の男や自分自身について眺める女性視点が印象に残る。

[No.29] posted by 萩原 湖太郎


 短編9篇を収めた小説集。ほとんどは、20代後半から30代前半の仕事をもつ女性を主人公として書かれた恋愛小説。身を焦がすような恋愛小説ではなく、非常に醒めた目で、相手の男や自分自身について眺める女性視点が印象に残る。どの話も一筋縄ではいかない愛の話ばかりで、それを坦々と冴えた筆致で記す。多くは大阪を舞台にした話。会話は関西弁。

 映画『ジョゼと虎と魚たち』(犬童一心監督 2003年)が良くて、それが監督の力量によるものなのか、単に原作小説が良かっただけなのかを見極めたくて読んでみた。結論は「どちらも良い」だ。

 表題作『ジョゼと虎と魚たち』は、20代半ばの車椅子の女のコとどこにでもいるような男子大学生との関係を描いた話で、映画を観て予想していたほどヘビィな話ではなかった(映画も別にヘビィな内容ではないのだが、映画の世界観の底にはヘビィな何かが流れている雰囲気がある)。障害者と健常者の人間関係においては、通常いろんなものによって覆い隠されている対人関係の本質みたいなものが生々しく露呈してしまう(そう思うようになったキッカケはドキュメンタリー『こんな夜更けにバナナかよ』(渡辺一史 2003年 北海道新聞社))。それが僕に、例えば「『対等な関係』って一体何だろう?」というようなことを考えさせる。そこが映画の面白さでもあったので、依存や甘え、自立といった事柄をテーマにした話を予想していたら、小説はあくまでも恋愛小説として描かれていた。主人公の女性が生得的な障害をもつ人だという設定はこの小説にとって本質的な要素だと思うが、2人の関係を通して人間関係の本質を描く、というより、この女性その人を描いた、という印象。逆に言うと、このわずか25ページほどの短篇から、(人間と人間の「関係」を描こうとしていたように思えた)あの映画を作り出した犬童一心という人は、なかなかのものなのかもしれない。

2008
03/15
Sat

原作も読んでほしい

[No.28] posted by わたしの個人シュギ

「お茶が熱くて飲めません」と「ジョゼと虎と魚たち」。
この二つは必読でしょう!

田辺さんの、感情の動きの描写は、本当にたまりません。

2008
02/16
Sat

入り口は軽やかな甘さで、後味が濃厚な短編集です

[No.27] posted by Pipo

映画化もされた表題作を含む9編の短編集です。

「ジョゼと…」はこの中でも直球のラブストーリーです。脚の動かない美しい、人にはちょっと高飛車な物言いの女性、ジョゼと、何となく面倒を見るようになってしまった近所の大学生の青年。すーっと引かれるように近づいていって離れられなくなっていく関係がとても美しく、時には濃厚に描かれます。

全編を通じて感じるのは、この「すーっと引かれるようにしてくっついていった(その後別れることもある)」男女の関係と心の動きが本当に穏やかに美しく描かれる(リアルに書けば結構キビシイ状況のものもある)ことです。濃厚な描写も下品さは皆無。「出会って付き合って別れる+ときに涙」が割合はっきりとドロドロ感を交えて描かれる現在の小説とすこし違って、すっきり甘い入り口ながら、実はしっかり味が残るというつくり。それは登場する女性達のさっぱりした人生観に負うところが大きいのかもしれません。男性に引きずられまくっていないキャラクター造形は、まさに田辺作品ならではです。結末も思わせぶりな余韻が残り、つい「それからどうなるの?」と考えてしまう(女性の勝ち!っぽいのが多いかも)…今さらながらに思いますが、「何でこんなにうまいんだろう!」と感動してしまいます。ただ、これは誰のせいでもなく時代の問題なのですが、この作品で出てくるような大阪ことばを話す30代の男性はもうほとんどいなくて…10歳プラスくらいで今風かなあ?と思います。

解説を山田詠美氏が書かれていますが、これがまた一編の短編として素晴らしい完成度です。田辺作品の男女の機微を語りながら、自分の幼い日の記憶につなげていく…この手際の鮮やかさを楽しむのもいい作品集ですのでこの評価とします。「恋の棺」を激賞されていますが、私も同感!

2007
12/05
Wed

映画「ジョゼと虎と魚たち」の原作を含む短編集

[No.26] posted by Tomoco

聖子さんは大阪人を描くのが上手いと思う。ダメ男、料理上手な女達が今にも本から飛び出してきそうな勢いで描かれている。

ジョゼは映画よりもずっと面白かった。この本を男性の監督が読んだのかと思うと、ムフフと思ってしまう。

2007
05/10
Thu

よい作品です。

100.0% (5 / 5)
[No.25] posted by 傘の中は36℃

映画を見た後で読んだのですが、展開も結末も違っていて、これはこれでよかったです。でも違っていたといっても、読み終わった後の気持ちは映画と変わりないのが不思議です。タイトル作品意外も「あ、この心理状態よく分かる」といった箇所が、素晴らしい表現力で描かれており、おすすめ出来ると思います。

2007
05/05
Sat

映画が先か、小説が先か

100.0% (4 / 4)
[No.24] posted by 丸いまりも

映画を先に見て小説を読みましたが、
また違う世界観でした。
小説は短い、私的なものでした。
でも読んでよかったです。
ストーリーは救われなくて悲しいけれど、
なぜか、救われた気持ちになるのです。
逆説的ですが。

2006
12/12
Tue

色香

92.9% (13 / 14)
[No.23] posted by hiraku

8つの短編を収める作品集。大人の色香でむせ返ります。直接的な描写はあまりありませんが、登場人物の女性達の魅力でこちらがやられてしまいます。女性の描写というか、その行間から溢れています。女性にしか書けない、エロティックなのだと思います。男性作家ではここまで視線が行き届きません。皮膚の奥、心の襞に触れてきます。全てのラストも個人的には好きです。含みがあります。この本を読むと女性の奥深さを堪能できます。逆に男の単純さも感じることでしょう。


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