氷点 (上) (角川文庫 (5025))

  • [著]三浦 綾子

カテゴリ:
文庫 (364頁)
ISBN:
4041437032
発売元:
角川書店 (1982/01)
価格:
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17,606 位
評価: 4.5
2008
11/17
Mon

大衆小説の親しみやすさに奥深い人間の性(さが)を暴き出す。堂々たる名作!

[No.26] posted by sanjunio

 物語のテンポが良いので、まさか1960年代の小説だとは思わなかった。登場人物のセリフの書き方に特徴があり、それを口に出したと思わせておいて実は心の中で思っただけというパターンが多く、てっとりばやく人物の内面を読み取れる一方、決して格調高い文学では使わないような技法の気がする。

 夏枝と陽子の描き方もステレオタイプな継母と、いじめに耐える明るいシンデレラ少女といった印象で大衆小説的でさえある。

 そういった幼稚な面もありながら、この小説をきわめて面白く魅力的にしているのが「原罪」を背負った人間たちの生き様、そして人間が人間に与える影響が目に見えるように鮮やかにそして躍動的に描き出しているところにあると思う。

 僕がもし北原だったら、「そんなの関係ねぇ!」って一言いってやったのに。

2008
09/15
Mon

時代の違いもあるけど・・・

0.0% (0 / 3)
[No.25] posted by dahooooon

現実離れした思考や言動が多くて、ちょっとついていけませんでした。
最も信頼できるはずの人間が、こんなんだったら……ぞっとします。
ねちっこい愛憎劇が好きな方以外にはオススメできません。

2008
06/19
Thu

やはり得難い一作

100.0% (2 / 2)
[No.24] posted by @poor work

1960年代に一世を風靡した大ベストセラー小説。
長寿番組「笑点」の番組タイトルも、本作のもじりだったとか。

私はどーもヒネたところがあるらしく、いわゆる「ベストセラー本」には食指が動かない傾向があります。
よってこの「氷点」も長らく避けてきましたが、この度ようやく手にとってみました。
しかし一度読み出してみたら面白いのなんの。
どうにも止まらず、上下巻700ページ程を一気に読みつくしてしまいました。
数奇な運命を背負って生まれた少女と底意地の悪い継母、禁断の恋や一家に次々と襲い来る数奇な運命など、
モチーフとしては確かに「大衆的」な要素が数多く見られます。突飛と思える展開も確かに多い。
しかし本作には「大衆小説」として唾棄し去ることのできない何かがあります。

ネタバレになるのでストーリーは書けませんが、展開展開で複雑に揺れ動き、
また絡み合う登場人物たちの心理状況は、リアルに迫ってくる切迫感に溢れています。
「汝の敵を愛せよ」
聖書にあるあまりにも有名なこの一言。
啓造はこの言葉を、自らを律する言葉としても、また復讐を果たすための隠れ蓑としても使います。
自らの中に化け物のように同居する背反する心情に思い悩む彼の姿、その彼と関係する人たちとの駆け引き、騙しあい。
仮面を被った人間同士が、同じ屋根の下互いに愛憎入り乱れた心境のまま同居している・・・
「現実的にはちょっとない」設定だと分かっていても、そこに炙り出されるドロドロとした感情は、
読者である我々にも人ごとでないと思わせる迫力があるのです。

朝日新聞の懸賞小説であった本書のテーマは「人間の原罪」でありました。
その難しいテーマに挑みつつ、大衆的な面白さも併せ持っているという点で、やはり得難い一作だなと思わされます。

2008
05/02
Fri

いつの時代にも考えさせられる『原罪』

[No.23] posted by trancedolphin

最初はこの物語のストーリー性に疑問を感じることもあれど、そんなことはすぐに忘れてしまうほど、人間の本質に迫る物語。

キリスト教の言葉で原罪と言われる、人間の本質にある罪とはいったい何か?日常でおきている何が原罪によるものなのか?

読むたびに、主人公の言葉、行動を考えるたびに、読んでいるこちらが考えさせられる物語。久しぶりに人間の奥に届く物語でした。

人として是非読んでおきたい物語。いつ読んでもその時の自分の状況に合わせて考えることができると思います。それゆえ、これだけ長く読み語られているのでしょう。

2008
03/26
Wed

それなんて韓流ドラマ?

21.4% (3 / 14)
[No.22] posted by 独考

書かれた時代が時代なので現代の感覚からすれば
おおいにそぐわないことはやむをえないのかもしれません。
しかし、まずありえない設定に加え、わかりやすくするためか
あまりに単純化されすぎた人間の描き方、
辟易しながらなんとか本編?の上下は読み終えたものの、
この作品を読むのに費やした時間が惜しいの一言です。

2008
03/13
Thu

心に突き刺さる作品

100.0% (3 / 3)
[No.21] posted by のりぞう

何度、読み返したのか分からないぐらい好きな作品。
今、読み返しても、古さをまったく感じさせない。勿論、1970年の作品なので、女性に対する考え方や言葉遣いなどに古さは感じさせられる。けれども、基本ストーリや登場人物たちの感情の揺れにはまったく古さを感じさせない。
まるで自分のことのように、共感したり、考えさせられたり心を力いっぱい刺激される作品だ。作品終盤の怒涛の展開では高まる緊張に息をすることも忘れて読み、ラストの衝撃の展開では、人間の弱さを突きつけられて、その突きつけられた人間の弱さや醜さが決して他人事ではなく、自分も持っているものだということに、涙腺を刺激された。

人間はなぜ嫉妬や憎しみ、寂しさという感情を持っているのだろう。
なぜ、他人を心から信じることができないのだろう。
なぜ、それでも愛されたいと思ってしまうのだろう。

登場人物はみな、悪い人ではない。しかし、弱い。その弱さゆえに思い合って、愛し合っていても、その想いがうまく絡み合わない。今回の読書では、そのことを自分の体験と重ねあわせて、しみじみと実感し、改めて人間と人間の関係のもろさを思った。

2008
01/14
Mon

<ゆるす>ことができない人たち

100.0% (2 / 2)
[No.20] posted by Jabb

最後の最後で、遺書の中で初めて用いられる「氷点」という言葉が、とてつもなく重い。途中では「氷点」が何を指すのか予測できないのですが、最後で「氷点」の意味が明かされます。

人間の「原罪」を扱った小説なのだと聞き及んだうえで、本著に臨みました。啓三も夏枝も徹も、抗いがたい人間の弱さを持つ者として描かれていて、人間は完全な善ではありえない存在であることが分かります。その中で、陽子は善たろうとする気持ちが最も強い。「どんなことがあっても、自分の性格をゆがませたりする愚かなことはすまい」と。そんな陽子が己の原罪に気が付いた瞬間が「氷点」なのです。

人間は罪を背負っているから<ゆるし>を求めます。登場人物たちも、お互いに心から<ゆるす>ことができたなら、度重なる悲劇を回避できたかもしれません。<ゆるす>ことがどれだけ難しいかを、あらわにした作品です。

また、育児院に勤務し、後に独立開業する産婦人科医・高木の言葉も、原罪に関して問題を提起しています。
「はってでも逃げられるものならまだしもね。腹の中に入っていて、逃げも隠れもできないものを殺すんだ。月の経った中絶児は膿盆にのっかってフガフガとつぶやくように泣いてますわ。何の罪もないものをね。立派な殺人ですよ」
これは、曽野綾子の「神の汚れた手」に通ずるものを感じます。キリスト教徒ならではで研ぎ澄まされた、問題意識ではなかと思いました。

2007
08/29
Wed

心が姿を変える「点」

100.0% (5 / 5)
[No.19] posted by ビイハヴ

水が氷になるように、心の形が突然姿を変える「点」がある。

氷点という言葉は作中に一か所しか使われていないが、そうした心のターニングポイントは小説のあちこちにあって、それがこの本のテーマのひとつであるのだと思う。

著者は熱心なクリスチャンであり、この小説にも聖書の言葉と思想が見られるが、「原罪とはなにか」という本の裏書にあるような内容とは、少し違うように思える。
陽子の導き出した結論と考えは、あまりに突然すぎて驚いてしまった。

人の罪と宗教(キリスト教)で言えば、外国の有名どころではホーソーン「緋文字」、ジッド「狭き門」、ドストエフスキー「罪と罰」あたりだが、そこらへんと読み比べてみてもおもしろいかもしれない。

非常にドラマティックな物語。
「原罪」よりむしろ、人の心が変化するその「点」の描写のうまさを、読んでほしいと思う本。

2007
07/30
Mon

名作を読む

0.0% (0 / 2)
[No.18] posted by starlight

一度読んでおきたい作品と思って、この本を手にした。読み出すと夢中になった。長旅の飛行機に乗っていたこともあり、上下巻それぞれ1日で読めた。
すごいと思ったのは、各登場人物の心の中に広がる苦悩、感情の揺れが幾重にも展開していく様子。人間の心の揺れが実にリアルで細やかに描写されている。
読後感はとても重苦しい。それがこの作品の主題であるので、それはそれで良いのだろう。ただ、このストーリーの出発点となった「原罪」は、やや現実性に欠ける設定であるように思われる。

2007
01/01
Mon

やっぱり小説なんだなあ…

20.0% (1 / 5)
[No.17] posted by black bird

小説と現実を照らし合わせるのはあまりよくないのですが、私はついついしてしまい、夏枝や啓造のような行動をとる人間はかなり少数では(というよりいないのでは?)という疑問を抱きながら読んでしまいました。
それはともかく「原罪」がテーマのあまりに有名なこの作品。
一体物語の原罪はどこにあるのか。解釈は読者によって分かれるでしょう。
キリスト教との関連づけが自然で違和感がなく、見事でした。かといって宗教色が濃いわけでもないので、普通の小説として楽しめます。
お薦め作品です。


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