キッチン (角川文庫)

  • [著]吉本 ばなな

カテゴリ:
文庫 (200頁)
ISBN:
4041800080
発売元:
角川書店 (1998/06)
価格:
¥ 420 (税込)
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23,917 位
評価: 4.5
2008
09/11
Thu

「死」を受け入れるということ

[No.81] posted by 美花絵留

大切な人を「死」という形で失なう。それでも日常は進んでいき、気持が置き去りになりそうになりながらも、自分の人生は刻々と刻まれている。

祖母の死後、みかげを引き取るえり子さん(実は男性)と雄一の暮らしを描いた「キッチン」、えり子さん亡き後のみかげと雄一を描いた「満月」、恋人を失った「私」と彼の弟の喪失感を描いた「ムーンライト・シャドウ」。類稀なる素直な表現力とはっとする比喩により、どれもが新鮮で飽きずに読ませてくれました。

決して感情的になるでもなく、ドラマチックでもなく、淡々と描かれる登場人物の日常に、とても現実的なものを見ました。

よしもとばなな初読でしたが、ファンが多い理由がわかったように思います。
川上弘美、江国香織と似た匂いのする作家さんでした。

2008
08/06
Wed

大人の心の予行練習

[No.80] posted by ぴろっこ

実は今頃(2006年)読みました。



主人公の、語る言葉が遠くから聞こえる。

父、母、そして祖母をも亡くした主人公は
現実と距離をとる何かを纏ってしまった。
ひとりぽっちになるってことは怖い。
私自身、抱えていた「見ないようにしていた怖いところ」
逸らしていた視線を戻しそうになる。

大きく泣いたり笑ったり、ってお話ではないけれど
「物語として」というより「生あるものの得うる感情として」の
訓練、ないし 構える、準備を与えてくれる。予行練習のような。


・・・そんな、「大人なお話」の気がします。
好きです。

2008
07/07
Mon

うはっ。

0.0% (0 / 1)
[No.79] posted by 如那傘如臼太

軽めの恋愛沙汰の話かと思いきや、
読後感が意外とずっしりしていて心地よかった。
主人公みかげととある母子の交わりを軸にしながら、
苦難を物ともせずに突き進む主人公の姿が痛快であった。
女性作家が書く女性視点の小説のなかでは、
登場人物が最もホンモノの女性らしく見えるのではないかと思う。
残念なのが、第一作「キッチン」に対して、
第二作「満月」と第三作「ムーンライト・シャドウ」の雰囲気が違い過ぎていること。
後になるにつれてどんどん物語の語り手がハイテンションになり、
物語の進行も妙に気ぜわしくなってしまうのは、
当時のよしもと氏の筆の安定感のなさの表れなのか。
しかし、それでも十分読むに値する作品だと思われる。
とくに「ムーンライト・シャドウ」は、筋書きのぶっ飛び具合が素晴らしい。
大真面目な作品なのに、その大真面目さが絶妙なギャグと化している。

2008
06/22
Sun

死ぬまで好きなんだと思う

100.0% (1 / 1)
[No.78] posted by バナニ

この本に出会ったのは二年前の中三の春のことです。その時期に選んだ、よしもとばななさんの「キッチン」と江國香織さんの「きらきらひかる」という自分のセンスにぴったり符合する二冊のおかげで、今ではすっかり読書が生活の一部になりました。
「キッチン」は特に、知らず知らずのうちに希求していたようなものが、書き付けられていると思います。よしもとばななさんという、「感覚」を単簡に的を得て文章化できる人が書いた、とても良い本だと思います。むつかしい語彙がなくても、感性があります。万人に伝わるような表現を追求した結果、このような表現手法に至り、心揺さぶられる作品を書き上げることが出来たのだと思います。
自分がこの本を好きになったことの理由のひとつに、時期があると思います。つまりタイミング。中三の春というタイミングを逃していたら、好きにはなっても、これほど彼女の作品に肩入れすることはなかったかもしれません。だから余計、なんだかとてつもない作品のように感じてしまうのです。そういう意味では、縁があったのだと思います。

この本によって自分が一番変わったことのひとつに、景色の見方があります。昼と夜。この二つの単語を聞くだけでなんだかぞくぞくします。それぞれその日ごとに表情を変える、昼と夜。他のよしもと作品でも、そういう場面設定がないがしろにされていません。たぶん。

好きな作家は結構いますが、自分の中で、よしもとばななさんと肩を並べるくらい好きな作家は、たぶん、現れないような気がします。死ぬまで好きなんだと思います。いや、死んでからも好きなんだと思います。

2008
05/02
Fri

日常と、非日常

50.0% (1 / 2)
[No.77] posted by かずろう

キッチン、この作品の持っている空気がいいです。
大切な人を亡くしたのに日常は流れていく。
日常を生きているけど、どこかにぽっかり穴が開いていて、ときたま
そこから感情が溢れ出す。
キッチン、満月のみかげの物語2編で1冊の本にして欲しかったなぁ。

全然別の物語の、ムーンライト・シャドウまで一気に読んでしまったので、
印象がぼやけてしまいました。
同じ「死」を扱っていることもあって、一気に読むとなにか「死」と
いうものが安易に描かれている気がしてしまいます。
間にインターバルを設けて読んだほうがいいと思います。

2008
04/15
Tue

私的再評価

0.0% (0 / 1)
[No.76] posted by みーさんの涙

この本は1年に1回くらい読み直しますが、読むたびに発見のある作品です。
文章構成から、ひらがな、カタカナ、漢字、行間、段落、カギカッコの使い方まで、『うまい!』と叫びたくなるバランスを持つ作品です。
読み終えた余韻も心地よい。
吉本さんはこの本で成長し、この本でつまずいたが(本人も記述している)、この本は小さいけれど大きな作品です。
作家は処女作を超えられないとよくいわれますが、その代表格といえるでしょう。

2008
03/21
Fri

日常の顕在

0.0% (0 / 1)
[No.75] posted by pacman

誰もが目にし、そしてたいていの人が意識しない日常。
潜在的なそれらを顕在化させ、
日常の中にある非日常とともに描く。

この基盤が面白いところなのだと思います。
また非常に魅力的な人物とその心情に惹かれるものがありました。

2008
01/11
Fri

人間はとにかく生きて行かねばならない

0.0% (0 / 4)
[No.74] posted by 紫陽花

作者の処女短編集。「キッチン」、「満月」、「ムーンライト・シャドウ」の三編から成るが、「満月」は「キッチン」の続編であるし、「ムーンライト・シャドウ」は登場人物を変えただけで同一テーマを扱っているので実質的には一つの作品と考えて良い。

「キッチン」のヒロイン"みかげ"は唯一の肉親の祖母を亡くし、大学の<顔見知り>の雄一の家へ誘われるまま転がり込む。雄一も母親を亡くしていて、ゲイの父親が母親として家庭の面倒を見ている。続編でこの父親は自身が経営するゲイバーで殺される。物語は"みかげ"達の日常の瑣末事を描きながら、掛け替えのない人を亡くした時に誰もが抱く虚脱感・喪失感が周囲との温かい交流によって次第に癒されていく様と、完全な充足感は得られなくても「人間はとにかく生きて行かねばならない」と言うメッセージを優しく伝える。だが、このメッセージに重みがないのである。作者の意図通りかもしれないが、作中の登場人物に肉感がなく、まるで能の舞台を観ているかのようである。「登場人物=シテ」である。作中で、生と死、夢と現実、希望と絶望との境目が曖昧模糊としており、作品全体が誰かの夢であってもおかしく無い。本作を文学的に評価するか否かは見解が別れる所であろう。

実は私は吉本隆明世代なのだが、その娘がどういう作品を書くのか興味があった。意識的に父親とは異なる透明感のある文体にしているようだ。吉本隆明氏が本作をどう評価したか知りたいものだ。

2007
11/26
Mon

吉本ばななを読んでみた

50.0% (3 / 6)
[No.73] posted by ペコ

一度は読んでみようと、吉本ばななを読んでみた。

本書は「キッチン」「キッチン2」「ムーンライト・シャドウ」という3つの短編が収録されている。
制作時期が記載されていないので良く分からないが、「キッチン」は少なくとも彼女が22歳の時に書かれた、もしかしたらデビュー作かもしれない。

あまり期待せずに読んだのだが、「キッチン」を読むと驚くほどの輝きを随所に感じた。
彼女独特の詩的表現が、とても気持ちよかった。
しかし、「キッチン2」「ムーンライト・シャドウ」と読み進むにつれてその新鮮味は薄れていった。
どうも後ろ2つの作品は乙女の恋愛色が強くなりすぎて、男の私には理解しづらいためと思う。
これは一読した感想なのですが、彼女は「キッチン」で描きたいものを描いてしまったのではないだろうか?
後ろ2つは、無理やりひねり出したような話に感じられました。
それでもやはり、著者の独特の表現には美しく驚かされる場面が多々ありました。
そういう独特の表現で成功している割合は、全編通じて打率で言うと「3割」なのですが、後ろ2つの作品は打席数が多いので三振も目立ちました。

とにかく「キッチン」の輝きは、すばらしいものがありました。

2007
11/06
Tue

生きていく意味

50.0% (1 / 2)
[No.72] posted by aki

短編2話からなるお話。
やはり、1話目の展開と2話目が
ぴったしとつながっている。

肉親や本当に自分にとって大事な人がつづいて
なくなってしまった”みかげ”が
心休めるところは、キッチン。
冷蔵庫の脇。
そんなところから、孤独な心の・・・・
たよりなさ、さびしさ・・・
何か暖かいものを求めたい気持ちが
伝わってくる。

やさしさは、一緒にいること。
相手を自分のペースで思いやるのではなく、
ただ相手を感じてそばにいてあげること。

きずついた人こそ
相手の気持ちがストレートに胸に響く。
互いに支え合う。

そして生きていく意味を理解していくのだと思う。


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