- [著]吉本 ばなな
- カテゴリ:
- 文庫 (200頁)
- ISBN:
- 4041800080
- 発売元:
- 角川書店 (1998/06)
- 価格:
- ¥ 420 (税込)
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「死」を受け入れるということ
大切な人を「死」という形で失なう。それでも日常は進んでいき、気持が置き去りになりそうになりながらも、自分の人生は刻々と刻まれている。
祖母の死後、みかげを引き取るえり子さん(実は男性)と雄一の暮らしを描いた「キッチン」、えり子さん亡き後のみかげと雄一を描いた「満月」、恋人を失った「私」と彼の弟の喪失感を描いた「ムーンライト・シャドウ」。類稀なる素直な表現力とはっとする比喩により、どれもが新鮮で飽きずに読ませてくれました。
決して感情的になるでもなく、ドラマチックでもなく、淡々と描かれる登場人物の日常に、とても現実的なものを見ました。
よしもとばなな初読でしたが、ファンが多い理由がわかったように思います。
川上弘美、江国香織と似た匂いのする作家さんでした。
大人の心の予行練習
実は今頃(2006年)読みました。
主人公の、語る言葉が遠くから聞こえる。
父、母、そして祖母をも亡くした主人公は
現実と距離をとる何かを纏ってしまった。
ひとりぽっちになるってことは怖い。
私自身、抱えていた「見ないようにしていた怖いところ」
逸らしていた視線を戻しそうになる。
大きく泣いたり笑ったり、ってお話ではないけれど
「物語として」というより「生あるものの得うる感情として」の
訓練、ないし 構える、準備を与えてくれる。予行練習のような。
・・・そんな、「大人なお話」の気がします。
好きです。
うはっ。
軽めの恋愛沙汰の話かと思いきや、
読後感が意外とずっしりしていて心地よかった。
主人公みかげととある母子の交わりを軸にしながら、
苦難を物ともせずに突き進む主人公の姿が痛快であった。
女性作家が書く女性視点の小説のなかでは、
登場人物が最もホンモノの女性らしく見えるのではないかと思う。
残念なのが、第一作「キッチン」に対して、
第二作「満月」と第三作「ムーンライト・シャドウ」の雰囲気が違い過ぎていること。
後になるにつれてどんどん物語の語り手がハイテンションになり、
物語の進行も妙に気ぜわしくなってしまうのは、
当時のよしもと氏の筆の安定感のなさの表れなのか。
しかし、それでも十分読むに値する作品だと思われる。
とくに「ムーンライト・シャドウ」は、筋書きのぶっ飛び具合が素晴らしい。
大真面目な作品なのに、その大真面目さが絶妙なギャグと化している。
死ぬまで好きなんだと思う
この本に出会ったのは二年前の中三の春のことです。その時期に選んだ、よしもとばななさんの「キッチン」と江國香織さんの「きらきらひかる」という自分のセンスにぴったり符合する二冊のおかげで、今ではすっかり読書が生活の一部になりました。
「キッチン」は特に、知らず知らずのうちに希求していたようなものが、書き付けられていると思います。よしもとばななさんという、「感覚」を単簡に的を得て文章化できる人が書いた、とても良い本だと思います。むつかしい語彙がなくても、感性があります。万人に伝わるような表現を追求した結果、このような表現手法に至り、心揺さぶられる作品を書き上げることが出来たのだと思います。
自分がこの本を好きになったことの理由のひとつに、時期があると思います。つまりタイミング。中三の春というタイミングを逃していたら、好きにはなっても、これほど彼女の作品に肩入れすることはなかったかもしれません。だから余計、なんだかとてつもない作品のように感じてしまうのです。そういう意味では、縁があったのだと思います。
この本によって自分が一番変わったことのひとつに、景色の見方があります。昼と夜。この二つの単語を聞くだけでなんだかぞくぞくします。それぞれその日ごとに表情を変える、昼と夜。他のよしもと作品でも、そういう場面設定がないがしろにされていません。たぶん。
好きな作家は結構いますが、自分の中で、よしもとばななさんと肩を並べるくらい好きな作家は、たぶん、現れないような気がします。死ぬまで好きなんだと思います。いや、死んでからも好きなんだと思います。
日常と、非日常
キッチン、この作品の持っている空気がいいです。
大切な人を亡くしたのに日常は流れていく。
日常を生きているけど、どこかにぽっかり穴が開いていて、ときたま
そこから感情が溢れ出す。
キッチン、満月のみかげの物語2編で1冊の本にして欲しかったなぁ。
全然別の物語の、ムーンライト・シャドウまで一気に読んでしまったので、
印象がぼやけてしまいました。
同じ「死」を扱っていることもあって、一気に読むとなにか「死」と
いうものが安易に描かれている気がしてしまいます。
間にインターバルを設けて読んだほうがいいと思います。
私的再評価
この本は1年に1回くらい読み直しますが、読むたびに発見のある作品です。
文章構成から、ひらがな、カタカナ、漢字、行間、段落、カギカッコの使い方まで、『うまい!』と叫びたくなるバランスを持つ作品です。
読み終えた余韻も心地よい。
吉本さんはこの本で成長し、この本でつまずいたが(本人も記述している)、この本は小さいけれど大きな作品です。
作家は処女作を超えられないとよくいわれますが、その代表格といえるでしょう。
日常の顕在
誰もが目にし、そしてたいていの人が意識しない日常。
潜在的なそれらを顕在化させ、
日常の中にある非日常とともに描く。
この基盤が面白いところなのだと思います。
また非常に魅力的な人物とその心情に惹かれるものがありました。
人間はとにかく生きて行かねばならない
作者の処女短編集。「キッチン」、「満月」、「ムーンライト・シャドウ」の三編から成るが、「満月」は「キッチン」の続編であるし、「ムーンライト・シャドウ」は登場人物を変えただけで同一テーマを扱っているので実質的には一つの作品と考えて良い。
「キッチン」のヒロイン"みかげ"は唯一の肉親の祖母を亡くし、大学の<顔見知り>の雄一の家へ誘われるまま転がり込む。雄一も母親を亡くしていて、ゲイの父親が母親として家庭の面倒を見ている。続編でこの父親は自身が経営するゲイバーで殺される。物語は"みかげ"達の日常の瑣末事を描きながら、掛け替えのない人を亡くした時に誰もが抱く虚脱感・喪失感が周囲との温かい交流によって次第に癒されていく様と、完全な充足感は得られなくても「人間はとにかく生きて行かねばならない」と言うメッセージを優しく伝える。だが、このメッセージに重みがないのである。作者の意図通りかもしれないが、作中の登場人物に肉感がなく、まるで能の舞台を観ているかのようである。「登場人物=シテ」である。作中で、生と死、夢と現実、希望と絶望との境目が曖昧模糊としており、作品全体が誰かの夢であってもおかしく無い。本作を文学的に評価するか否かは見解が別れる所であろう。
実は私は吉本隆明世代なのだが、その娘がどういう作品を書くのか興味があった。意識的に父親とは異なる透明感のある文体にしているようだ。吉本隆明氏が本作をどう評価したか知りたいものだ。
吉本ばななを読んでみた
一度は読んでみようと、吉本ばななを読んでみた。
本書は「キッチン」「キッチン2」「ムーンライト・シャドウ」という3つの短編が収録されている。
制作時期が記載されていないので良く分からないが、「キッチン」は少なくとも彼女が22歳の時に書かれた、もしかしたらデビュー作かもしれない。
あまり期待せずに読んだのだが、「キッチン」を読むと驚くほどの輝きを随所に感じた。
彼女独特の詩的表現が、とても気持ちよかった。
しかし、「キッチン2」「ムーンライト・シャドウ」と読み進むにつれてその新鮮味は薄れていった。
どうも後ろ2つの作品は乙女の恋愛色が強くなりすぎて、男の私には理解しづらいためと思う。
これは一読した感想なのですが、彼女は「キッチン」で描きたいものを描いてしまったのではないだろうか?
後ろ2つは、無理やりひねり出したような話に感じられました。
それでもやはり、著者の独特の表現には美しく驚かされる場面が多々ありました。
そういう独特の表現で成功している割合は、全編通じて打率で言うと「3割」なのですが、後ろ2つの作品は打席数が多いので三振も目立ちました。
とにかく「キッチン」の輝きは、すばらしいものがありました。
生きていく意味
短編2話からなるお話。
やはり、1話目の展開と2話目が
ぴったしとつながっている。
肉親や本当に自分にとって大事な人がつづいて
なくなってしまった”みかげ”が
心休めるところは、キッチン。
冷蔵庫の脇。
そんなところから、孤独な心の・・・・
たよりなさ、さびしさ・・・
何か暖かいものを求めたい気持ちが
伝わってくる。
やさしさは、一緒にいること。
相手を自分のペースで思いやるのではなく、
ただ相手を感じてそばにいてあげること。
きずついた人こそ
相手の気持ちがストレートに胸に響く。
互いに支え合う。
そして生きていく意味を理解していくのだと思う。
