- [著]貴志 祐介
- カテゴリ:
- 文庫 (526頁)
- ISBN:
- 4041979056
- 発売元:
- 角川書店 (2000/12)
- 価格:
- ¥ 820 (税込)
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マゾヒズムの「天使」
傑作だ。
この「天使」は人間のマゾヒズムを極限まで増幅させる存在だと思う。
マゾヒズムぐらい不条理で不可解な衝動はない。しかし人間は大なり小なりサディストであると同時にマゾヒストでもある。性的嗜好として明確に顕在化してなくても、痛み・ストレス・失敗・苦労・不安・恐怖・屈辱・罪責感・後悔・劣等感・拘束・奴隷的隷従のなかに、人は倒錯的な安堵感と快感を感知する傾向がある。
なぜこのような衝動が進化の過程で人間に芽生えたのか。
脳の進化した人間にとって、生はあまりに過酷で苦しく耐え難く感じられるから、痛みや屈辱が感知された時、それを緩和する為の脳内物質が湧出するように進化してきたのかもしれない。あるいは緩和機能を持つ心的機制が心の奥深くにインプットされたのかもしれない。つまり、生は死に至るまで間断のない苦痛と恐怖と不安の連続だが、マゾヒズムとは高等生物がこの過酷な生を維持・克服するための心的・生理的防衛機制として進化の過程で発達してきたものだと思う。
病的なマゾヒストは、こうした万人に通有の心的メカニズムが肥大化した人々ではなかろうか。
登場人物達はこの「天使」に憑依されると、自分にとって最も辛く苦しく避けたい行為に嬉々として励むようになってしまうのである。
全体としてカルトや自己啓発セミナーのアレゴリーのようにも読める。
悩める人々の前に天使が舞い降りる
次々に起きる謎の自殺。アマゾン探検隊が持ち帰ったのは天使か悪魔か。
かなりグロい描写がいっぱいです。人間によく似た猿の捕食、蜘蛛の大群、アオコに覆われた湖、そして「第4段階」に達した人々の姿・・・想像力の強い方にはかなり刺激が強い内容です。映像化したらかなりの衝撃でしょう。
ともすると荒唐無稽で現実感のない印象を与えそうな衝撃のシーンですが、綿密に調査された生物学的、心理学的な理論の裏付けがお話にリアリティを与えているため、「現実にもあるかも知れない」という恐怖を増幅しています。
最後の方に「変貌」があるため、「天使」の存在は人間にとって悪という印象が残ってしまったのがちょっと残念です。ラストシーンは非常に考えさせられるものがあったので、「悩む人々への救済はどうあるべきか」というテーマをより考えさせるためには(ホラーとしての効果を除けば)あのシーンはない方がよかったかと思います。
本に出てくる生物や神話の知識などはネット検索で補完しながら読み進めるとよりリアリティを感じることができますのでおすすめします。細部まで非常にできた小説。お勧めです。
気持ち悪くなるほど恐かった
相変わらずよく調べていてとてもリアリティがあった。人間が次々と亡くなっていくときの描写が特にリアルで本当に気持ち悪くなってしまった。最後まで読み応えのある展開で目が離せなかった。
脳細胞全開。
アカデミックなリアルな視点と、グロさを上手くミックスした傑作!
相変わらず内容が濃く、読んだ手ごたえを感じさせてくれました。
現実的にはありえないと思えながらも、あらゆる知識を総動員して、読者の脳を休ませて
くれるヒマを与えない。決して白けさせないリアリズムの描写、ストーリー展開も
さすがです。
寡作で知られる著者ですが、これだけぎっしりと詰まった作品なら
完成までに時間が掛かるのも納得です。
傑作
かなり傑作です。
以前から気になっていた作家さんでしたが、こんなにおそろしく、
人間の心理をついた記載や細かな動機、また事件の背景の描写、
どれをとっても素晴らしい。
誰もが持ってる何らかのコンプレックス。そこをうまく突いてます。
表現的にグロテスクな表現が苦手な人には、厳しいかもしれないけど、
ミステリー好きな人には、絶対お勧めです。
点と点がつながる瞬間
これはこの作者の作品の中でも間違いなく1、2を争う傑作です。
この本を初めて読んだときの、主人公といわば裏の主人公と言える人物が「出会った」ときの戦慄は忘れられません。
裏の主人公が変貌してゆく様子がリアルタイムで描かれ、そしてその終着地点で二人の主人公が交錯する…まさに点と点がつながる瞬間です。
この本にはそんな瞬間が無数にあります。それは一度読んだだけでは気付くことはできません。
何回も読み込んで、初めて「ああ、ここはこういう意味だったのか」と気付くものもあります。
そうして理解を深めていくと、この物語が持つ恐ろしさや哀しさが増幅していくのです。
何回読んでも新しい発見をする、これはそんな本だと思います。
まぁ…こんなもんかな?
確かにグロイです。(特に蜘蛛のシーンはヤバイ) しかし、私的には「青の炎」や「クリムゾンの迷宮」がかなり衝撃的だったので、最後まで読んでもそれほど驚きませんでした… ちょっとホラーテイスト過ぎるというか、現実離れしているような気がしてあまり感情移入出来なかったです。展開もなんとなく予想できましたし、「青の炎」や「クリムゾンの迷宮」のような読後の喪失感みたいなのが、自分的には好きだったんですが、今回はあまり感じませんでしたねぇ〜…
ただ、続きが気になってどんどんページをめくるハラハラ、ドキドキ感は味わえました。そこはさすが、貴志先生だなぁと思ったので☆3つで。
素晴らしいエンターテインメント
北島早苗はホスピスで終末期医療に携わる精神科医。
恋人で作家の高梨は病的な死恐怖症だったが、新聞社主催のアマゾン調査隊に参加してからは、人格が異様な変容を見せ、結局自殺してしまう。
さらに調査隊の他のメンバーも、次々と異常な方法で自殺を遂げ…
「黒い家」で生身の人間の真の恐怖を描写した筆者は、本作品で、また別のアプローチで読者を恐怖に陥れた。
バイオホラーと呼ばれる種類になるのか。
とにかくグロテスク。しかしグロテスクさに逃げてしまうのではなく、物語前半ではいくつもの不審点を掲示し読者を物語に引き込む。
また、グロテスクという点で言えば、乙一著「暗黒童話」と似ているかもしれない。
しかし「暗黒童話」よりも現実的な内容で、それがもしかしたら現実に起こるのではと読者に想像させ、一層の恐怖を読者に与える。
「青の炎」で珠玉の感動を与えてくれた筆者は、「黒い家」、また本作品でエンターテイメントクリエイターとしての実力をまざまざと見せつけてくれた。
理系の方も是非一読を!
圧倒的な取材力を作者の巧みな構成力でぐいぐいと手繰り寄せられ脳内から虜にさせてしまう本書は、兎角、グロとかホラーとかの既成のジャンルでくくられるのがとても惜しい。生物学的にも充分アリのユニーク(他が真似出来ない)な存在の本です。
理系の方は、検証してみる価値ありです。
読みだしたら止まらない。
タイトルから勝手にサイコホラーかと勘違いしていましたが、とてつもなくコワかった…。 一気に4時間ほどで読んでしまいました。
寄生虫に身体を乗っとられてしまうなんて、想像するのも嫌ですが、この作品を読んで以来、エノキダケが食べられなくなってしまいました…。それにしても、後書きにある瀬名秀明の解説が解らない。何で自分と比べちゃってるんだか…。
