ペイ・フォワード (角川文庫)

  • [著]キャサリン・ライアン ハイド
  • [原著]Catherine Ryan Hyde
  • [翻訳]法村 里絵

カテゴリ:
文庫 (420頁)
ISBN:
4042905013
発売元:
角川書店 (2002/06)
価格:
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キャサリン・ライアン・ハイドの『Pay It Forward』は、よく車のバンパーに貼り付けてあるステッカーのフレーズ、「地球のことを考えよう、まわりの人のために行動しよう」を大前提に書かれたような小説だ。この物語の主人公トレヴァー・マッキーニは12歳。ある日、社会科の先生が出した「世の中をよくするにはどうしたらいいか考え、実践しなさい」という宿題をきっかけに素晴らしいアイデアを思いつく。トレヴァーの考えはまさにシンプルそのものだった。まず、3人に親切な行いをする。次にその3人は、ほかの3人に自分の受けた親切をお返ししていく。
「そしたら9人が助かるでしょ。そのお返しが27人にいく…。そうやってどんどん親切の輪が広がっていくんだ」
だが、トレヴァーの試みは最初の3人ですでに挫折しそうだ。力を貸したはずの麻薬常用者は刑務所へ逆戻りだし、年とった女性の庭の手入れを手伝ったものの、どうしたことか庭の草木が枯れてしまう。しかし、この少年が自分の計画をあきらめてしまったあとも、その親切な行動は思いもかけないところで実を結び、じきにその運動はじわじわと広まり、ついにはアメリカ全土を駆け巡ることとなる。

トレヴァー自身も、少しは救われることができそうだった。彼の父親は家族を置いて出ていってしまい、置き去りにされた母親アーリーンは、アル中と男を見る目のない自分、そして深い絶望と必死に戦っている最中だ。そんなとき、新任の社会科教師ルーベン・セント・クレアを見たトレヴァーは、世の中を変える方法だけでなく、母親の人生をやり直させる方法まで思いつく。

もっともルーベン自身も悩みを抱えていた。ベトナム戦争で深い傷を負った彼は、なかなか他人に心を開くことができない。いやと言えないし、愛を受け入れることもできないのだ。実は、このアーリーンとルーベンの関係が本書の中核である。2人の傷ついた大人たちは、トレヴァーが自分たちに与えてくれた信頼と愛情に「お返しする」ことを学んでいくのである。

ハイドはいろいろな観点から物語を進めていく。手紙を使ったり、日記を挿入したり、トレヴァーの計画に携わったさまざまな人たちによる一人称や三人称の語りを使ったり、と工夫を凝らしている。たとえば、トレヴァーが助けようとした麻薬常用者ジェリー・バスコーニはある晩、ゴールデン・ゲート・ブリッジから身を投げようとしている若い女性にこう語りかける。

    なあシャーロット、俺は麻薬がやめられない。一度もやめられたことがないんだ。どう考えても立派な市民じゃない。でもな、くそっ、思ったんだよ。とにかくお返しだけはしとこうって。あのガキ、俺を助けようとしてくれた。もちろんうまくいかなかったさ。でも、こんな俺でもあんたを助けようとしてる。あんたは飛び込んじまうかもしれない、そりゃそうだ。そんなこと俺にはわからない。でもこうやってあんたを助けようとしてるだろ? なあ、ひとつだけ言わせてくれよ。ある朝目が覚めたら、誰かがチャンスをくれたんだ。降ってわいたようにさ。まるで奇跡じゃないか。それが明日、あんたの身にも起こるかもしれないんだぜ。え?

『Pay It Forward』は、フランク・キャプラの代表作『素晴らしき哉、人生!』を思わせる作品だ。あの映画と同じく、この小説の中心にあるのも、楽天的な考え方に決して消されることのない、砂をかむような厳しい現実だ。たしかに、たった1人の力が世界を変えることもある。少なくとももっとましな世の中にする手助けになる。だがそれでも、病気や肉体的苦痛、心の痛みや悲劇は人間の一部であり続けるのだ。まっすぐな気持ちと感傷との間にある一線を、ハイドが踏み外している箇所もときには見受けられるが、鼻につくほどではない。たとえ、ちょっと感情に流されている箇所があったとしても、みんなが悲観的になっているこんな時代に、これほど希望に満ちた物語をさらりと書き上げる勇気に比べれば、どうってことはないではないか。

2007
12/07
Fri

ペイ・フォワード

[No.17] posted by xx

そんなに上手くいくわけないという意味ではファンタジーだとは思う。
それでも心打たれたし、いろいろ考えさせられた。

2007
02/12
Mon

美しい事を語ろう。

100.0% (3 / 3)
[No.16] posted by タック

 本書はぎりぎりの線でリアリティーを保ってはいるものの、
ありえないファンタジーだと批判もあるだろう。

 しかし、誰しも「世界が良くなるためにはどうしたらいいだろうか?」
と真剣に考えた時が(時期が)あるのではないだろうか?少なくとも授業で?

 その答えの一つが本書のなかにある。
 
 考えてもなかなか答えの出る事ではない。世の中を良くすると言って
活動している人や団体を見ても自己目的化しているような違和感を感じる。

 しかし人間は一人一人「世界をよくしよう」という想いを保ち続けなければ
いけないと思う。その想いが過剰になり過ぎず、しかし消えずにあれば
世界はいつか誰にも住みやすい場所になるのではないだろうか。

 そんな理想を思い描いてしまう美談である。
僕は美談が好きだ。

2006
10/07
Sat

ほんの日常的なことが大きな力に

100.0% (2 / 2)
[No.15] posted by のっち

世界を変えるための発端が、「ほんの日常的なこと」だと言うところにわたしは気づきをもらいました。大きなことは無理でも、小さなことなら出来ることはたくさんあるのですよね。

人は毎日、小さな親切をたくさんの人から受け取っていると思う。
その親切を、他の人に渡していけば、理屈的には世界を変えられるとわたしも思う。

そこにボトルネックがあるとすれば、
「そんなことで世界が変わるはずがない」という大人的な思いこみに他ならない。

できることから親切を他の人へと渡していきたいと思いました(^^)

2006
01/04
Wed

善意が生む奇跡の物語

100.0% (3 / 3)
[No.14] posted by Miminha

12歳のトレヴァーは、男運のない母と二人で暮らす極普通の少年です。この本は、そんなトレヴァー少年が、アメリカ全土に広がる善意の奇跡を作り出すまでの物語です。

「よりよい世界を作るための方法を考える」という社会科の宿題で、少年が考え付いたこと、それは「親切の連鎖」というアイデアでした。少年をスタート地点に、まず3人、そして、その3人に「3人の人に善意を返してくれるように」お願いをする。そうして行くうちに、善意の輪が瞬く間に広がっていく...というのが、少年の計画でした。計画通りに進まず、少年すら諦めかけたところで、物語は転回を見せます。

少年の生んだ奇跡がアメリカ全土に広がることや、人々の行う善意の大きさを考えると、「ありえない」と思う箇所が多々あるという点で、リアルなファンタジー小説といえると思います。

映画版「Pay it Forward」は、現実に起こりえるギリギリのところまでしか映像化していないので、映画を見た方も、そうでない方はもちろんのことですが、本で読んで欲しいと思う1冊です。

2005
06/18
Sat

単純で明快なシステムに賞賛!!

100.0% (4 / 4)
[No.13] posted by trancedolphin

少年の考えた「ペイ・イット・フォワード運動」は、実に単純なシステムであるが、完璧なシステムである。

世の中を悪くしよう思っている人はいない。自分が受けた親切を他の誰か3人の人に見返りを求めない親切で返すというこの単純なシステムは、うまく機能すれば加速度的に倍々で増えていくものである。やるかやらないかは本人の自由。でもやればやるほど世の中は良くなっていくことが目に見えている。

もしかしたら普段やっていることを文章にし、物語にしただけかもしれない。でも、人々が意識していなかったことである。これとは逆にマイナスの連鎖も日常で頻繁に行なわれている。人が意識するだけで、良い方向にも悪い方向にも加速度的に進んでいく。

この本を読むと、日常の行動ひとつひとつを重要なこととして考えることができるようになるだろう。物語としても心が晴れる本書。読むだけでも心に染みる一冊である。

2005
02/07
Mon

Pay it Forward

100.0% (1 / 1)
[No.12] posted by zunta

久しぶりに読み返して、やっぱりいい話だなぁ、と改めて思いました。
嫌な事件の話ばかりが耳に入る昨今、一人でも多くの人が思いやりや優しい気持ちを取り戻せたら、と思います。
私自身、小さなことからがんばってみようかな、という気持ちになります。
以前、映画も見ましたが、本の方が好きです。

2004
10/01
Fri

感動させられます!

100.0% (1 / 1)
[No.11] posted by 読書大好き人間

この小説は中学の社会の先生が出した課題「世界をよりよくする方法をみつけなさい」から展開する小説です。主人公の12歳の少年は3人に対して何かいいことをする。その恩恵を受けた人はまた別の3人に何かいいことをするという非常に感動的な小説です。現代の人々に何か大切なことを思い出させてくれる小説です。何回も読み直しました。お勧めです!!

2004
06/22
Tue

渡される

50.0% (1 / 2)
[No.10]

「世界を変えたい」と考え実行に移している人は限られてくるとしても、頭の奥で願っている人は少なくないと思う。
トレヴァー(この物語の主人公)は、実行に移した人間のひとり。
大人には出来ない機転の良さと、汚れの無い脳は世界を変えることが出来るかもしれない案―ペイ・フォワード―を生み出した。
コロコロとテンポ良く進む「実行」。

決して、有り得ないことは書かれていない。
これを読んだ人はトレヴァーから「渡された」人。
3人の人に「実行」しなくてはならない。
重荷ではない。本当に、世界中の人が実行したら、と考えると鳥肌が立つ。
「渡される」ことをオススメします。
映画版もハーレイ・ジョエル・オスメント君が見事にトレヴァーを演じているので1度見ることをオススメ。

2004
02/22
Sun

フィクションであることが残念な名作

100.0% (2 / 2)
[No.9] posted by ちはる

 意外に字が詰まっていましたが、気が付いたらどんどん読み進んでいました。最初は自信満々だった主人公の少年の、試みがことごとく行き詰まってへこんでしまった頃、彼の知らないところで「ペイ・フォワード」が一人歩きを始める・・・この展開の妙が最高です。一体誰がとんでもないところでとんでもないやりかたで実行したのか、想像するだに笑いが止まりません。それだけに、ラストは悲しくてやり切れませんでした。映像的に美しかろう情景であればあるほど、アメリカ映画的なお涙頂戴に思えて。この点だけが譲れないので星4つです。

 作者がこの作品を書いたきっかけは、ドライバー同士の無償の助け合いだそうです。日本的な「困った時はお互い様」をもう少し積極的にシステム化したのが「ペイ・フォワード」でしょうか。子育て中に通りすがりに受けた恩、育ててくれた親の恩、返せないものは別の誰かに与える。少なくとも努力する。これならできる気がします。

2003
08/28
Thu

純粋であるということ

50.0% (1 / 2)
[No.8] posted by 青木 玲子

世の中と人々を動かすものについて、簡単に、しかし核心を衝いたところを描いている。「純粋さ」だ。ストーリーを読み終えたとき浮き上がってくるのは純粋さの持つ力。一人の少年の日記や言動の中にちりばめられた、純粋な意見や思想や感想こそ、メインテーマと言えるだろう。衝撃のハイライトシーンが、理屈抜きに感動を呼ぶ。

「愛する庭に充分に愛情を注いでやれない、関節炎を患った病気持ちの女のために、庭を愛することができる」子ども。少年はごくふつうの子どもであった。純粋な。


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