- [著]伊坂 幸太郎
- カテゴリ:
- 文庫 (345頁)
- ISBN:
- 404384901X
- 発売元:
- 角川書店 (2007/06)
- 価格:
- ¥ 620 (税込)
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奇妙な現実感。
伊坂幸太郎は実に巧みな文章を書く。伏線の張り方には
独自のテイストが溢れており、テンポの良い文章は小気味良く
読み手の脳内を踊る。固定ファンが多いのも頷ける。
本作のテーマは「殺し屋」、主要人物は2人の殺し屋と妻を
自動車事故で亡くした1人の男。人が次々と死に、それらの生死が
淡々と紡がれていく世界。どう考えても現実離れしているのだが、
にも関わらず奇妙な「現実感」を感じてしまう。そこに伊坂の
表現力の妙がある。
常軌を逸した冷酷無比な表現は好みが分かれるかもしれないが、
独特のブラック・ユーモアがそこかしこに軽快に塗されており、
所謂「ハードボイルド」的な重さは感じられない。
最後まで一気に読めるはずだ。
ナイフ使いの「蝉」、自殺専門の殺し屋「鯨」というキャラ立ちした2人。
主要人物が何しろ「殺し屋」なのだから、彼等に感情移入して楽しむ
タイプの小説ではない。一般人であれば、そもそも殺す側、
殺される側の感情の機微に自分を重ねることなど、はなから
できやしないのだ。無論、フィナーレに救いを求めてもいけない。
法規社会では決して許されない殺しを新しいタイプの「エンタメ」
小説として仕上げた、そこに作者の意図がある。
死者の言葉
「魔王」を読んでから「グラスホッパー」を読んだのだが、舞台装置は全く違うけれども、内容はかなり似ていると感じた。そもそも読もうと思ったきっかけは、週刊少年サンデーの連載なのだが、あちらでは2作品が再構成されている感じなので、そもそも言いたいことは同じだったのかもしれない。
最後まで救いはないし、結局は自分たちの知らない所で事件は収束してしまうわけだけれども、実際の世界もそんなものかもしれない。
最後の1行を読んだ時、もう一度読み返したくなりました
「元教師:鈴木」「自殺専門の殺し屋:鯨」「ナイフつかいの若者」の3人の視点から、「押し屋」と呼ばれる殺し屋を追いかける話の展開。
3人の視点の移り変わりで1つの話が流れるというわけではなく、3人それぞれのストーリーが、どこかしらでそれぞれが関わり、最終的に1つの結末に向かうというストーリーです。
その話の流れ方に特別、目新しさは感じないのですが、「「押し屋」の正体は?その行く末は?」がとにかく気になり、最後まで夢中で読みました。
確かに数多くの人達が、殺し屋達によって何の躊躇もなく殺されます。
そのシーンだけ見たら、非常に残忍で暗くて重苦しいです。
しかしその殺し屋達も、「かつて自分が殺した人間の亡霊」を見たり、映画の不遇な主人公を自分と重ね合わせるなど、今現在の自分にたとえ無意識でも満足していないんだという一面を見せられたり、話の過程で子供がからんできたりする所などは、全体としては暗さ、重さを軽減させる要素となっています。
何より終盤でそれまで思いもよらなかった展開があり、その時点でそれまでに伏線が敷かれていたことに気づくなど、読み終わった今、小説としてよく作りこまれている印象が強いですね。
特に最後の1行を読んだ時、まだ何か気づいていない部分があると感じ、もう一度読み返したくなったのは私だけでしょうか…。
人間は虫に近い
最初の1ページ、人間は、動物よりもむしろ虫に近いのではないか というのが筆者の問いかけかと思います。虫という意味は、感情、愛がないという意味です。4人+αの登場人物がでてきますが、それぞれの登場人物が、人間、動物、虫、植物の象徴になっており、読者は基本的に人間の鈴木以外には感情移入はできない設定だと思います。その象徴の4人は殺し屋で、いずれ対決するのか、いったい誰が勝つのか!?、話の進み方自体非常に面白く読み応えのある展開ですが、いったい最後はどういう結末になるのか読んでいてわくわくする作品でした。世の中にはこんなに虫けらみたいなやつがいるという風刺も、筆者の弱者に対する同情を感じます。
始めて読んだ『伊坂』作品。
読み終わった正直な感想は『面白い!』でした。
書店のポップで店員さんがお勧めしてたので購入しましたが、
良い意味で期待を裏切ってくれました。
読み始めると、次の展開が気になって区切りのタイミングを見失い結局は一気に読んでしまいました。
主人公の鈴木、鯨、蝉の三人が、押し屋と呼ばれる人間を巡って展開するストーリーです。
三人が交錯するシーンなんかは、お互いが何を思ってるんだろう?と各々の章をすぐに読みたくなります。
今まで『伊坂』作品を読んだことが無かったのでこれからジャンジャン読んで行こうと思います。
他の作品を読んだことが無いのですが、『伊坂』作品を読んだことが無い人には、
ぜひのめり込むキッカケの作品に出来る思います。
『読むしかないじゃない!』です!
不思議な感触
表紙が綺麗だなと思って手に取りました。あと、聞いたことのある作者さんだし、って。
過大な期待や思い込みもなく読みましたが、な〜んか不思議な感触の読後感ですね・・。
みんな現実離れしてて共感できる登場人物が出てこないので、読み進めながらひたすら成り行きを静観してる感じ。とはいえ、作者さんの伝えたいメッセージもあるはずだろうに、イマイチ読み取れず・・。何だったんだろう?みたいな感触・・。きっとこれが狙いなんでしょうね。
重力ピエロも読みましたが、比べると格段にこちらのほうが重みがあるように思いました。
うん、オモロ
3人の視点で描かれていて、「押し屋」を通じて繋がっていく。
蝉が押し屋を捜す動機等は多少、無理矢理な感じが否めなかったけど、それぞれが繋がる場面は「やっとか!」と思いました。
この作品の中で、唯一平凡な登場人物の鈴木が、最後の最後で殺されやしないか、押されやしないかとハラハラしました。
それにしても自殺屋ってすごいなぁ〜。
相手の心の内側の、誰しも持っているであろう罪悪感。死ななければと思い起こさせる威圧感。
誰もが死にたがっている。
誰もが、は言い過ぎだけど、私はドキリとさせられました。
また読み返したくなる一冊。
妻の仇を探す「鈴木」
自殺専門の殺し屋「鯨」
ナイフを使う殺し屋「蝉」
1つの事件が3人の視点から語られる。
暗く重い影をひきずるような内容だけれど、
まさかの展開に読み出すと止まらない。
人間が壊れていくさまがリアルな描き方で
目の前に生々しい映像が浮かびあふれて、
裏の世界に生きる人々の姿を垣間見た気がした。
「死んでるみたいに生きたくない」
復讐とは……
あらすじから、復讐の善悪を巡る描写が展開されると期待して読んだが落胆してしまいました。
主人公の復讐観念が物語の根幹となるかと思いきや、それは単なる状況設定に過ぎず、これは殺し屋達を巡る単なるエンターテイメント作品でした。作中、罪と罰が登場したことから多分に期待をよせてしまっただけに、個人的にはう〜んという感じです。
動きがある作品なので小説よりも、原作にして実力のある漫画家に作画させたほうがエンタメ作品として楽しめるのではないでしょうか?頭をからっぽにして楽しめば、それなりに楽しめます。
ただ後半、ちらりと命に関する作者の観点(結局は命よりも利便性が優先される)には、看過できないものがあると思いました。とても短く、この場合は交通事故とテロリストという比較のみを取り上げていましたが、内省してみればこういう観点は世の中の色々な場面で確認できるはずです。人の命は、意図的にせよ無意識にせよ誰かの都合で日々失われていくという厳然たる事実を感じざるをえません。何より主人公は復讐の為に、多くの人を犠牲にしてきました。そして、それも仕方のないことだと言います。清廉潔白な主人公ではなくこのような主人公を設定したことで、作者が意図的に復讐の是非にゆさぶりをかけてきたようにも思えます。
虫たちの闘い
多彩な作風を持つ作者のハードボイルド風サスペンス小説。三人の特徴的な殺し屋が織り成すスリリングな交錯が物語を引き締める。"もう中盤かよ"、と思わせる冒頭から始まり、ノン・ストップの軽快なテンポでストーリーは展開する。もう一人、ドラ息子に妻を殺され、そのドラ息子が所属する非合法組織に潜入する鈴木と言う元教師が唯一マトモな人間役で登場する。非合法組織に潜入すると言う大胆さの割には、お人好し過ぎるのだが、本作の他の登場人物との対比と言う事か。
"蝉"は根っからの殺し屋で、罪悪感とは無縁。大量殺人を好み、「無駄だっつうの」と軽いノリで相手を殺す。"鯨"は相手を自殺に追いやる"自殺屋"と言う変り種。彼の眼光に射すくめられると相手は深い欝に陥ってしまうと言う不気味な特技を持つ。ポケットには常に「罪と罰」を持ち、過去に自殺に陥れた被害者の亡霊に悩まされていると言う設定。各章には鈴木、"蝉"、"鯨"の名前が付けられ、三人各様の視点で物語が綴られる。もう一人の殺し屋は、相手を道路や線路に押し出して殺す"押し屋"の"槿"。"槿"がドラ息子を殺し、"蝉"が"鯨"の殺人依頼を受ける事により、三つ巴(軽、重、静)の闘いが始まる...。
物語に散りばめられた遊びも面白い。"蝉"の兄貴分が引用するジャック・クリスピンなる(架空の)人物の警句は勿論作者が考えたものである。また、作中には"虫"に関する話題が頻繁に出て来る。これが題名の由来(グラスホッパー=バッタ)だが、ある地域にバッタが多くなり過ぎると、あるバッタは変種して飛翔力を増して他の地域に出て行くと言う話は面白かった。殺し屋の論理では、"そうなる前に数を減らす"だろう。ホームレスの田中の老師ぶりも印象に残る。作者の魅力を再認識させるサスペンス小説の秀作。
