- [著]乙一
- カテゴリ:
- 文庫 (253頁)
- ISBN:
- 4044253056
- 発売元:
- 角川書店 (2005/06/25)
- 価格:
- ¥ 500 (税込)
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人間でなかったのは誰だろう
「夜の章」の後書きによると主人公の設定は「怪物」ということだった。人間とは異なるがゆえに、徹底的に関わりあえぬ他者。
しかし、本を読み進めるうちに、主人公の男の子も、森野夜という女の子も、黒い色彩の中に徐々に人間的な色合いが移ってきたように見えた。
「記憶」に続いて「声」は、森野夜の変化が読み取れて、割合に好ましく読むことができた。
特に、「声」では、森野夜が「こちら側」に戻ってきた感じがする。夜明けが近いように感じて、意外に読後感がよかったのだ。
つられて、主人公の男の子もうっかり「こちら側」に来つつある様子が感じられた。決定的に「あちら側」に手を染めながら、それでも、少年は始めて名乗りを上げてしまった。
名前は、「こちら側」に来るための魔法。名乗りは作法である。
スリリングな展開。
「僕」と「夜」の2人の主人公は変わらず、1話1話が少しだけ繋がっている部分もあるが、
全体を通して読むと、作品の雰囲気が違うと感じる。
特に時代の空気感に差を感じ、時代設定が明治と言っても信じてしまうようなものもあれば、
昭和のようなラジカセが登場し、携帯電話やインターネットといった現代の機器まで様々。
統一感がない、という批判的な見方ではなく、時代、場所を超越した”どこか別の場所”の
怪奇的出来事として捕らえることが出来、混沌さが面白い。
混沌さの中に、追い詰める人間と追い詰められる人間の駆け引き、焦り崩壊していく人間と
冷静冷酷な人間の対比が鮮明で、魅力となっている。
妄執と狂気の果てに残された、かすかな暖かさ
◆「声」
▼あらすじ
北沢夏海の姉・博子が惨殺死体となって発見された。
明るく、外向的だった博子の死により、灯が消えたように
沈鬱なムードが覆うようになった北沢家。
そんな頃、夏海は痴漢から救ってくれた少年に、
博子の肉声が録音されたカセットテープを渡されて…。
▼感想
未コミカライズ作品。
しかし、本作の設定や趣向は、別作品である「記憶」とミックスされ、
再構築がなされることで、漫画オリジナルの作品となりました。
(作品名は、「記憶」)
本作で“僕”の重大な謎が判明することにより、続篇の可能性は、
ほぼなくなったと思われますが、最後に森野が見せた無防備な
素の表情に救われ、思いのほか暖かい余韻に浸れます。
ライトノベル重傷者に送る架け橋
乙一代表作、とも言われる作品。
わたしはほとんど乙一氏を知らないのだが、この知名度の高い作品は
しばしば本屋で見かけたりなんなりして名前は知っていた。
しかし何故かあまり読む気分にはなれなかった。
それはおそらく、本書がライトノベルという形式を
(まあ少なくとも作者がそう述べているので)とっている、というのがあるだろう。
曲りなりにも読書が趣味、と言える人間ならば
ライトノベルというジャンルに対しあまりいい印象を持たないのが普通だと思う。
本書のあとがきにも少し氏はそのことについても触れている。
本格ミステリとライトノベルを愛好する乙一氏は、
ライトノベルという形式でミステリを執筆することで
ライトノベルという形式しか読んだことがないような読者に対して
「ミステリはこんなにまでおもしろいんだぞ!」というようなことを紹介する
姿勢がうかがえる。
その目論見は成功したといえるだろう。
内容は、「僕」を取り巻くなかで
殺人やら猟奇的な事件やらが連続短編という形態で続いており、
それらをいちおう解決してまわっていくというのが
主たるスタイルなのだが、「正常者」VS「異常者」という
いわゆる勧善懲悪モノなのではなくて僕の視点がいつの間にか
異常者のそれと同視線になっていたりして、あれれ?
という一種のトリックが楽しめる。
他角度から作品を眺めることができる、非常に面白いものだ。
しかし、本書のねらいが
「ライトノベル重傷者に送る架け橋」的要素を持っているため、
本格ミステリがすきな人には少し物足りないかもしれない。
しかし「異常心理」がベースになっているのだといえば、
かなりクオリティは高めだといえる。
乙一氏は「ジョジョ」の大ファンだそうだが、
本書のいたるところでそれを感じることがある。
ちょっといい
殺人者の一人称の部分や、被害者の家族の描写などはかなり迫力があって、首筋をぞわぞわさせながら読んだ。
だけどもこれらの物語を本格ミステリーとして成立させる為に差し込んだトリックや伏線がウザい。
ボクが読みたいのは、手垢のつきまくった作りこんだ作品じゃなくて、処女から生まれた赤ん坊のような作品なのだよ。
乙一の世界に嵌りきれなかった
夜の章で興味をもち、僕の章も続けざまに購入したのですが……
なんというか、構成に難のある話ばかりだったように思います。
文章自体は無駄な贅肉がなく、サラサラと進めていくことができます。その分重要になってくるのが起承転結の「転」なのですが、そこの部分で少し不自然さを感じさせられました。
微量ながらシュールレアリスムのテイストが混ざっていることも、独特の世界観の構築には役立っていますが、首を傾げてしまう要因になっていると思います(特に『土』にその傾向が見られました)。
食指を伸ばす良い機会になると思っていただけに、残念です。
どっちかというと
面白いです。
そりゃ乙一さんの作品ですから、スピード感もありスリリングな展開を楽しむにはいいと思います。
ただ、この方はあまりミステリーの要素を絡めない方が、いいと思うのは私だけでしょうか?
十分おもしろいのに、謎解きのところで若干失速する感じを受けます。
「んっ?」って思っちゃうんですよね。
面白いけど、その点で☆4つとさせていただきました。
これは困った
何が困ったといって、新たに書くべきことが何もないということが一番。書こうとすると、今まで同じ著者の書いた本と同じコメントになってしまう。仕方がないので、あとがきから材料を拾ってみよう、と思ったら、これが本文に輪をかけてつまらない。普通あとがきくらいは気の利いた文章が書かれてあるものだが、そんなことは気にしていないようだ。
読み進むに連れ引き込まれる1冊
高校生の神山と森野の男女がどの事件にも関わってきます。
出だしかなり猟奇的な殺し方の描写があるため、この本は「グロ系」なのかと構えましたが
読んでいくうち、ミステリー色がかなり強いことに気付きます。
「エッ!?」という驚きの結末が読み手を待ち構えています。
特に、「犬」など、まさに『アザーズ』な感じでした。。。
「声」も、驚きの結末です。作者はこの本を「ファンタジー」として書いたそうです。
人によってファンタジーもいろいろな捕らえ方があるのですね。
また、教室では喋らないけど放課後誰もいなくなったら神山と森野は会話をします。
別に「愛情」とかではなく同じ臭いを持つ2人として情報交換というところでしょうか。
この、ベタベタしてないCOOLな感じもこの作品を引き締めます。
残酷な描写が少々あるため、苦手な方もいらっしゃるでしょうが、まぁ大丈夫と言う方にはお勧めです。
これぞ乙一マジック本当やられた
今までの乙一作品の中で1番気に入ったのがこの作品!主人公とクラスメイトのどこか謎めいた森野夜との近すぎない関係の中様々な事件を見ていく!本当に面白い!
