- [著]スーザン ヒル
- [原著]Susan Hill
- [翻訳]幸田 敦子
- カテゴリ:
- 単行本 (411頁)
- ISBN:
- 406211299X
- 発売元:
- 講談社 (2002/05)
- 定価:
¥ 2,100 (税込)- 在庫状況:
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弱者強者の話ではなく。
ずいぶん前に仏で映画化されている。いじめる側の少年が美しく描かれていて、それは結びにも表れていた。悪意の代わりに哀しみがあった。違いはあっても、原作も映画も、描かれるのは激しく自立を求める心だ。スーザン・ヒルは、もたれあいの相互依存を描かない。誇り高い嵐のような葛藤は、闇に落ちる結びとなることもあれば、希望の光で締めくくられることもある。どちらの場合も、重たい問いが読者の側に投げかけられる。この作品も、強者対弱者、善対悪の単純図式で捉えるとしたら、本質を見逃すことになりそうだ。いじめられもしいじめもした自分自身の経験からもそう思う。
少年二人の親の描写にもドキリとする。この身勝手な親達も、かつては子供であったのだ。三十年以上も前の刊行時、この本を嫌ったという英国の親達もかつては子供であったのだ。では、この本を支持したという若者達は、四十代五十代の大人の今、この作品をどんなふうに読むのだろう。訊いてみたい。
万人向けの小説ではない。特に日本では毛嫌いされるたぐいの本だ。私の身近にもぼろくそに言うのがいる。それでもこの本のための読者はいる。ほぼ三十年ぶりに新訳で蘇ったのだから、本当の読者に巡りあえよと肩を叩いてやりたくなる。もちろん、原語で味わえるのなら日本語で読む必要はないのだが、ヒルの初期の作品は書きっぱなしふうのところがあって、英語を苦もなく読めるというレベルでないと浸りにくい。
弱者に依存する強者
スーザン・ヒルの作品の多くは、二人の人間の奇妙に(多くの場合は不幸に)依存し合う関係を描いている。
この小説では、それが、二人の少年であり、強い少年が弱いほうを苛め抜くことで自分の存在を確立している。
弱いほうの少年に感情移入して読んでしまうと、ただただ悲しい物語。しかし、何度も読み返すうち、「普通の子供」の中に潜む悪意、強者と弱者のいびつな依存関係、といったものが、淡々としたドライな筆致(しかも比較的平易な英語)の中にいかに見事に捉えられているかに感嘆することになるだろう。
邦訳も出ているが、やはり文章のリズムなど味わえる原書がお薦め。
考えさせられる本です。
少年のもつ残酷性、そして優しさが上手く心理描写されていて、見事としか言いようがありません。この二つの性質は状況に応じて誰もが秘めていると感じさせられました。私自身、あるときはエドマンド、またあるときはチャールズになったことがあると思いました。この物語はワクワクしながら読み進むものでなく、読者自身に考えさせる本です。訳者あとがきより「読者を選ぶ作品です。」とあり、実際そう感じたので星4つとしました。しかし、一度読んでみること請け合いの名作です。
