フライ,ダディ,フライ

  • [著]金城 一紀

カテゴリ:
単行本 (245頁)
ISBN:
4062116995
発売元:
講談社 (2003/02)
価格:
¥ 1,239 (税込)
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在日コリアンである「僕」の青春をポップな筆致でつづった直木賞受賞作『GO』以来、3年ぶりとなる金城一紀の長編小説。連作短編集『レヴォリューションNo.3』に登場したオチコボレ高校生集団「ザ・ゾンビーズ」が再び活躍する青春小説であるが、今回の主人公は高校生ではなく40代後半の平凡な中年男。家族の崩壊を必死に食いとめようともがく父親が、高校生の助けを借りながら目標に向かって邁進(まいしん)する姿を、軽妙なタッチで描いている。

鈴木一(はじめ)は、大手家電メーカーの子会社で経理部長をつとめるサラリーマン。学生時代に知りあった妻と、17歳になるひとり娘が唯一の自慢である。ある日、そんな鈴木のもとに、娘が何者かに殴られ入院したという知らせが入る。娘を殴った相手は、ボクシングの高校生チャンピオンで、学校では品行方正で通っているという石原。復讐を決意した鈴木は、包丁を手に石原の通う高校を目指すが…。

沖縄出身でアメリカ人とのハーフの板良敷(いたらしき)、4か国分のDNAを持つアギー、ケンカ名人の朴舜臣(パク・スンシン)。差別や偏見の中でタフに生きる若者たちと平凡なサラリーマンとの対比の背後には、日本という国の歪みが見え隠れする。舜臣との奇妙な師弟関係を通じて、「彼の中の憎しみは、私が見て見ぬ振りをしているあいだに育っていったものなんだ」と悟る鈴木の姿が印象的である。ともすれば重くなりがちなテーマを、コミックを読ませるような感覚で、さらりと爽快に描ききってしまう金城の持ち味が、いかんなく発揮された作品である。(中島正敏)

2008
12/18
Thu

「愛する者を守る」という行為の意味

[No.78] posted by 萩原 湖太郎

 金城一紀による2つ目の長編。デビュー作『レヴォリューションNo.3』に登場する、オチコボレ高校生グループが活躍する「ゾンビーズ3部作」の2作目、という位置づけ。

 ストーリーは単純。愛娘に暴力を振るった男子高校生をぶん殴って「参りました」と言わせる、という話。ただし、相手は品行方正とは言い難いボクシングチャンピオン、親は大物政治家。平凡な中年サラリーマンであった主人公・鈴木は、偶然知り合ったケンカ名人の高校生に弟子入りし「強い父親」に変身することを誓う。

 映画『フライ,ダディ,フライ』を先に観てどうにも腑に落ちなかったのは、ケンカ名人の朴が在日コリアンの青年である、という設定の意味だった。小説を読んで謎がとけた。

 著者は「愛する者を自分の手で守る」ということに特別な意味を与えている人だと思う。この「愛する者を守る」という行為の意味が、鈴木と朴とでは全く異なっているのだ。朴は在日コリアンを取り囲む排他的な憎悪の中で育ってきた。その中で生き延びるためには強くならざるを得なかった。その朴にとって「愛する者を守る」ことは、直接的に自らの身体を傷つけて行う行為である。対する鈴木にとって「愛する者を守る」というのは、非常に間接的な行為である。サラリーマンとして与えられた責務を果たすことと引き換えに、自分がその歯車の一員である「社会」に家族を守って貰うのだから。ところが、社会というものは、本当に1人1人の庶民を守ってくれるようにはできていない。社会の綻びの穴に陥って初めて、自分が如何に無力であるかを思い知る。

 鈴木は朴と伴に過ごした一夏の間に、世の中には綻びの周辺で生きていかざるを得ない人々が存在すること、自分が「普通」だと思っていた日常世界が彼らの犠牲の上に成り立っていることを理解し、そういう現実から目を背けず直視する勇気を身につける。これまで見えていなかったものが、ある体験を通して見えるようになってくる…、この小説は、そういう「気づき小説」なのだと思う。おそらくそれが、ケンカ名人の朴が在日コリアンの青年である、という設定の必然性なのだ。

 ところが、著者はこの小説を、平凡なサラリーマンの一夏の冒険譚として書いた。朴は非常に魅力的な人物のように思えるのに、彼の湛える人間的な深みが何に由来するものなのか全く描かれていない。そもそも、著者独特の坦々とした筆致が「冒険譚」にマッチしていないように思う。この小説のテーマを活かすためには、他のアプローチをとるべきだったのではないか?と正直思う。

2008
04/15
Tue

楽しかった!

[No.77] posted by 虹元ゆう

たくさんレビューがあるんで自分が感じたことだけを。
あらすじで言えば、娘を傷つけられた中年男の変身と復讐という簡潔なものです。
文章も簡単に読めて、最近の本らしく見た目よりも早く読み終わります。
ですが、そのシンプルさや量が内容にちょうどいい。
主人公の揺れ動く倫理観や哲学、感情、意志に納得したりハラハラしたりと知らぬ間に入り込んでました。
男子高校生とじゃれたり、彼らに愛着を感じたり惹かれたり…と同性愛的な感情が少々見え隠れするのもまた青春臭くて爽やかなくらいでした。
主要人物に在日朝鮮人がいる為に「ある種の」不安があったのですが、作中ではそこには深く言及せず、諸問題の末端に生きる高校生に焦点があってむしろ興味深かったです。
先に書いたように読みやすいのでちょっと気になったら読んでみることをオススメします。

2008
03/23
Sun

腕力が全ては好みでない

[No.76] posted by mm2

この作家のレボリューションNo3はとても好きな作品です。
でも、そこで描かれていたものは決して腕力勝負の若者の物語ではなく、人生を生き抜くことの切なさや無力感など、腕力とは別の物語だったように思います。
私としては、もちろん皆さんの所感とは違うことを覚悟して書きますが、レボリューションの登場人物をこの作品に出してもらいたくなかった。
腕力が全てであれば、それは人間の世界ではなくなります。
もっと端的に言えば、理性がきちんと支配する(しなければならない)人間の世界は、格闘技のように力が全ての世界ではないということ。
別に宗教がかった話ではないのですが、この小説は力が支配するような傾向が強すぎるように思うのです。
もちろん、単に物語が漫画的に面白いか、という視点で言えば、まあ確かに面白いのですが・・・  でも、であればレボリューションの登場人物はそっとしておいてほしかった。

2007
02/20
Tue

影響受けました!

16.7% (1 / 6)
[No.75] posted by ドキドキトキドキ

いいよっ!
レボリューションNo.3読んでなくても大丈夫です。(俺は後に読んだ)
ゾンビ―ズが出てきますがレボNo.3の時と時期的に不自然さがあり気になりますのでこれだけで十分だと。
映画も読んでから触発されて見ちゃいましたがひどいです・・・。
これはいいよ、マジで読めよ、おっさん!

2007
01/17
Wed

このスピード感!

20.0% (1 / 5)
[No.74] posted by たかじん

 金城一紀の文章には、スピードとリズムがある。
 このスピードとリズムに乗せられてあっという間に物語に引き込まれていく。気持ちよく読書するためには、こういうものも必要だ。
 
 さて、物語の方は、正直なところを言ってしまうと、少々青臭さを感じる。そして、単純な構成だ。
すべてが最後の決闘に向かい、すべてがそこへ向けて流れ込んでいく。しかし、その単純さが気持ちよ
く、スピードとリズムに乗ってエンディングまで一気に読むことができるようだ。
こういうのも嫌いじゃない。
 
 金城一紀の作品では、キャラクターに個性が光る。
 魅力的な登場人物の朴舜臣は語る。”人間がいくつの細胞から出来てるか知っているか?〜約60兆
だよ。おっさんは、これまでどれぐらい使ってきたんだ?使わなかった細胞をいくつ残して死んでいく
んだ?”

 ”何も壊さずに新しく何かを作り出そうなんて、そんな都合のいいことなんてありえないよ。”

 何かに向かって挑戦する時に必ず思い出したい言葉だ。

2006
11/23
Thu

奮立たせてくれる本

25.0% (1 / 4)
[No.73] posted by 桑の実からできた泡

サラリーマン鈴木の生活は愛娘がボクシングの高校生チャンプに暴力を振るわれて
入院してしまったことで一変してしまう。鈴木は高校生チャンプに復讐するために、
喧嘩の達人朴舜臣と舜臣の友達の力を借りて体を鍛え始める。
これは冴えない中年サラリーマンの成長物語。
そして成長過程で舜臣と大切な物を取り戻していく友情物語だ。

読んでいて、がんばれ鈴木!と何度も思った。
精神的にも肉体的にも戦っている鈴木は本当に素敵だ。
自分ももっとがんばらねば、と励まされた。
読了したときには何だか無性に走りたい衝動に駆られ
久しぶりにランニングにまで行ってしまった。
そのくらいこの本にはエネルギーが詰まっている。
また、鈴木と舜臣が心を通わせていく過程も暖かい。
舜臣が小さな女の子とじゃれているのを見たときの鈴木の心情、
「出来れば―。私は思った。できれば、男の子が欲しかったな。」には胸が熱くなった。
舜臣の照れ隠しのぶっきらぼうな言動も微笑ましい。
鈴木の人間的弱さを抱えているけれどそれを克服するべく努力する姿や素直な性格、
舜臣の喧嘩は強いし妙に物事を悟ってはいるけれどまだ残る幼さやどこか儚い様子、
二人はお互い足りない部分を補い合っていて、それが物語のよりスパイスになっている。

設定にいくらか無理があるかとは思うが、随所に散りばめられたユーモアと際立った
キャラのおかげですんなりとストーリーが成立している。
ポップな文体なので活字が苦手な人でも読めると思う。

2006
11/06
Mon

この一冊で

0.0% (0 / 4)
[No.72] posted by ライラライ

この本を読んで読書の楽しさを改めて感じました。
いろいろあって読書から離れているとき、僕を読
書の世界へ再び呼び込んでくれた一冊です。

金城一紀さんのゾンビーズシリーズのスピンオフ
作品です。あのザ・ゾンビーズが登場します。映
画化もされた本です。

これを読んで改めて読書の楽しさを感じてください。

2006
05/10
Wed

圧倒的なスピード感!

0.0% (0 / 2)
[No.71] posted by si

一気にひきこまれます。
頼るべき自己を確立していく父親の姿に感動します。
こんな父親になりたいものです。
スンシンをはじめとした周りの人の優しさ、
暖かさにも心を打たれます。

女性の方はお父さんへの贈り物としてもよいのではない
でしょうか。相当な確率で喜んでくれると思います。

2006
05/09
Tue

飛べおっさん!

0.0% (0 / 2)
[No.70] posted by 常に高みを目指す男

主人公はどこにでもいるような平凡な男性で、はじめはあまりおもしろくないかもと思っていたけれど、おなじみのゾンビーズの登場によって作品はかくも見事に青春の色に彩られ、主人公は平凡な男性から娘を守る強い父親、戦うおっさんへと成長していく。

実に「成長」と「家族」、そして「父親」とは何かということを考えさせられる。男としてこんな父親におっさんになってみたいものである。
この作品は個人的に中高年の人々に読んでもらいたいと思う、本当に勇気というか元気が出る物語だ!!!

2005
12/12
Mon

一歩踏み出す勇気

42.9% (3 / 7)
[No.69] posted by occhi

「GO」「レヴォリューションNo.3」に続いて読んだ金城作品。
どの作品にも共通しているのは、今ある現状から一歩を踏み出す勇気を持とうという事。

本作は中年のオッサンの一夏の冒険談。
娘のカタキをうつために死に物狂いで体を鍛える中年サラリーマンとザ・ゾンビーズの交流の物語。
読後は気分爽快。

読む前にブルース・リーの「燃えよドラゴン」を観ておく事をおすすめする。


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