無意識の脳 自己意識の脳

  • [著]アントニオ・R・ダマシオ
  • [著]田中 三彦

カテゴリ:
単行本 (412頁)
ISBN:
4062118785
発売元:
講談社 (2003/06/20)
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評価: 3.5

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近年、生命科学の分野は発展がめざましい。そのなかでも、脳、心、意識というのは生命科学における最後の、そして最大の謎であり、同時にたいへん魅力的な研究対象と言えるだろう。

本書は、世界中でベストセラーとなった『生存する脳』(原題:『Descartes' Error』)の第2弾。著者のダマシオ・アントニオはアメリカでも指折りの脳神経学者である。本書のテーマは「われわれはどのようにして意識の光へと足を踏み入れるのか」である。「光の中に足を踏み入れる」というのは、意識や認識する心の誕生に対する、あるいは心の世界に「自己感(sense of self)」がもたらされるという単純だが重要な出来事に対する、説得力のあるメタファーであると著者は記している。学習・記憶障害などを持った患者たちの、健常者には考えられないような不思議な行動や発言の観察から著者が最終的に導き出したのが、意識とは「認識の感情である」という考え方だ。

著者は、本書で述べるアイディアが自己という問題を生物学的視点から明らかにするうえで役に立てば、と謙虚な姿勢を見せている。しかし、脳だけでなく身体を考慮に入れて「心」の問題に取り組んでいる著者の功績は評価されるべきであろう。そして、このオリジナリティーあふれる著者の研究の成果を目にすることで、脳神経科学、認知神経科学の面白さを実感すること請け合いである。(冴木なお)

2006
12/22
Fri

残念です

96.3% (26 / 27)
[No.6] posted by ぶーふーうー

内容については、前書「生存する脳」に続き脳に障害を持つ患者さんたちを理解するのにとても参考になりました。
ですが、残念なことに本書では原著には載っている参考文献が全て割愛されています。前書では一部翻訳のし忘れがみられたものの参考文献がちゃんと載せられていたので、より深めたい内容について文献をあたったり引用された研究者名の綴りからPubmedで検索したりすることができましたが、本書ではそれがかないません。関連分野の専門の方などは原著をあたられた方が良いかもしれません。
出版社の意図なのか翻訳者の考えなのかわかりませんが、「良質な科学書」が日本語になったとたんに「科学っぽい読み物」になってしまったようで、がっかりしました。このようなものが世に出たせいで、同じ原著についてはもう他社から翻訳書が出ないと思うと本当に残念です。科学に対して認識の浅い出版社は科学書の翻訳に手を出さないでほしいと思うほどです。

2005
08/16
Tue

意識が生まれるまでの3段階

77.8% (14 / 18)
[No.5] posted by 漆原次郎

 私たちが「意識する」という状態になるには、ある原初的な状態から始まって、意識に達するまでの一連のプロセスがあるという。その仮説をこの本では紹介している。

 そのプロセスをごくおおまかにいうとこんな感じ。
 有機体(つまり人間とかの生き物)は、「原自己」という非意識的で安定した状態を保っている。そこに、カラスの飛ぶ映像とかセミの鳴く音とかの「対象」が現れると、有機体とその対象との間には「二次のマップ」という神経パターンがつくられる。ここで最初の原自己は変化し、「中核意識(その場その瞬間での意識)」へとステップアップする。さらに、その中核意識の状態がしばらく続くなどして強調されると、今度は「昔あんなことがあったよな」という「自伝的自己」の記憶が取り出され、高度な「延長意識(過去や未来のことにも対応した意識)」へとステップアップする。この延長意識こそが、言語や創造性や良心といったインテリジェントな部分をつくる。つまり、「原自己」→「中核意識」→「延長意識」といった流れだ。

 脳の一連のプロセス自体がとても複雑で、話全体が難しい。それに、話のおさらいがあまりないことや、具体例が脳患者の症例に限定されることなども難しさを助長する(ただし、相貌失認や監禁症候群などの症例は非常に興味深い)。
 前作『生存する脳』(これも難しかった)を読んでいないと付いていけないか? 「前作を読んでおくにこしたことはない」といった感じ。意識とは、感情とはといった話を脳と絡めて探求しているような科学好きの方ならば、いきなりこの本から読んでもなんとかなると思います。

2005
07/05
Tue

自意識を問う

69.2% (9 / 13)
[No.4] posted by kentmild

本書を読んでの私なりの解釈です。
まず、意識的な行動というのは何なのかと考えてしまいます。
意識するというのは、自らの身体状態の変化を感じ取ることであって、
常に変化なり行動なりが生じた後での、いわゆる後付に過ぎません。
つまり、行動したから意識するのであって、意識して行動するというのは、あり得ないのです。
だからといって、意識することが人間の行動にとって重要でないかというと、そうはなく、
意識するという脳の状態の変化が、次なる脳内の変化を呼び起こすという点で、非常に重要なのです。
つまり、意識することによるフィードバックが人間の高次の行動に密接に結びついていると言えます。
人間以外の他の動物で考えると、行動性自体に意識性があるかどうかは問題ではなく、
自らの行動を意識することによるフィードバックがあるかどうかが意識の有無の分かれ目になってきます。
一見、人間で言う意識的な行動をするからといって、その動物に意識があるわけではないのです。
以上、あっているかどうかは別にして、持論を述べてみました。
こういった思考を誘発してくれることが、本書の素晴らしさです。
ただ、翻訳本という宿命は逃れがたく、こなれない日本語には苦労させられました。

2004
03/29
Mon

いまここまで書ける脳科学者は彼しかいない!

71.4% (15 / 21)
[No.3] posted by brainbear

原著出版は1999年。現在まで意識の起原についての神経科学的な説明において、一般にも理解できる語り口でここまで踏み込んで書かれた書物はないでしょう。

著者はポルトガル出身でアメリカ屈指の神経科学者であり臨床医としても著名。日本では専門家を除きあまりまだ知られていませんが、アメリカにおける一般向けの講演会では立ち見が続出する程有名な人物です。

本書は前著で展開された感情と意思決定に関するソマティック・マーカー仮説を、生命体(有機体と著者は呼んでいる)における自身の生理的調節機能と外界からもたらされる事象の表象という観点から拡張し、1人称としての自己感が発生する様子を丁寧に描き出します。そこでなされる説明と意外な事実に読者は目を見張ることになるでしょう。

臨床医としての豊富な観察結果や最新の神経科学的事実から紡ぎ出される極めてオリジナルかつ精緻な議論は、このようなテーマに興味を持つ読者の最初の一冊には少し難易度が高めかもしれませんが、じっくり読み込んでいけばいくほど議論の深さに感銘を受けるでしょう。

議論が細かく斜め読みには向いていないので腰を据えて読むことを是非お薦めしたい一冊です。

2003
08/30
Sat

脳の進化と働きを気づかせてくれる

0.0% (0 / 9)
[No.2]

題名が示すように人間は無意識に動いている時と意識をもって動いていることがある。おそらく多くの動物には意識がなく、無意識に本能的に動いているが、それでも生存することはできている。進化の先端である人類に意識があるのは、意識を持つ事によって与えられた環境をより深く理解し、未来の予測を立てて行動できるからだろう。そうした無意識の脳と自己意識の脳を本書は解説してくれる。

2003
07/02
Wed

心理学の本のようでした。

15.4% (2 / 13)
[No.1] posted by masaya3

前著は読んでいないが、非常に考え深い内容である。著者は、人には無意識のレイヤーの中で、原自己が存在し、原自己により中核自己が、中核自己により自伝的自己が、そして自伝的自己により延長意識が支配されると言う構造を豊富な例と体験を用いて説明している。無意識を意識することはできないわけだけれども、そんな状態でも判断を下したり、正確な行動を取る時があるのは、原自己の存在によるものなんだ。何となく、心理学の本を読んでいるようでした。素人の私には、こんな理解しか出来ませんでした。


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