- [著]太田 尚樹
- カテゴリ:
- 単行本 (471頁)
- ISBN:
- 4062132001
- 発売元:
- 講談社 (2005/11)
- 価格:
- ¥ 2,100 (税込)
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ノンフィクション?
満州時代の甘粕正彦についてはこれまでにも詳しくしらべた本がいくつかでている.これは,甘粕と岸信介を関連付けたという点で視点の面白さがあると思って買ってみた.しかし,読んでみたところ両者の関連付けが希薄.また,読んだ限りでは著者自身の取材によるオリジナル情報が少なく,既存の文献を甘粕対岸という視点で再構築しただけにとどまっている(その再構築が不十分).さらに,書き方の問題として,ノンフィクションなのか小説なのかよくわからない記述が多い.
普通の人物伝
何故かスペイン史を専門としている研究者の記した人物伝である。
研究書のように注が氾濫していたり、
アカデミックな記述に偏っていないので平易で読み易い。
そのためであろうか、500ページ近い大作でありながら
甘粕正彦や岸信介の他の伝記や
満州関連の歴史書を大きく超える記述・解釈がないのは少し残念。
もちろん両名の繋がりを包括的に知りたい場合には
本書に足りぬところなく十分であろう。
甘粕伝としたほうが
本の出だしに岸を訪ねて甘粕が来るシーンはなかなか映像的で
この先どのような展開があるのだろうと期待させられたが肩透かし
となった。
佐野さんの阿片王もそうだが今の時代からすればもっとドロドロしたところが、読者の方も想像力不足で映像としての読み込みが浅い。
もっと一つの事象に絞って描いたものを読みたいのだが。
戦後自殺した甘粕、首相にまでなった岸。この二人の背負ったものという副題から出てくるものは具体的には何であったのか。
どのくらいの接点があったのか読後も良く分からないで疑問が残ったままでいる。
「ラストエンペラー」とはチト違う。
甘粕正彦、と言えば映画「ラストエンペラー」の坂本龍一がまっさきに頭に浮かぶミーハーなわたくし。
坂本が演じた冷酷な甘粕も確かに一面ではありますが、それ以上に本書は甘粕の義理人情に厚い古風な日本人の側面を強調しています。
理想郷満州と運命を共にした甘粕と、満州を(あくまで結果的には、ですが)出世の1ステップとして首相まで上りつめる岸信介を対比しつつ、当時の日本人の満州への純粋な思いがリアルに語られていて面白い。
ちょっと残念なのは満州の経済面を仕切った岸と、ウラの部分を仕切った甘粕の会話・絡みに言及した部分がほとんどないこと。当然公式な記録はほとんど残ってないでしょうし、当時を証言できる人ももういないでしょうから仕方ないのでしょうが・・・
本書で「ハル・ノートが言う「日本の中国からの全面撤退」の中国に満州は含まれていない」というのは衝撃。これソースは何なんだろうか。
ともあれ、全体的にはテンポよく楽しく読めるノンフィクションでした。
