- [著]ユン チアン
- [著]J・ハリデイ
- [翻訳]土屋 京子
- カテゴリ:
- 単行本 (557頁)
- ISBN:
- 406213201X
- 発売元:
- 講談社 (2005/11/18)
- 価格:
- ¥ 2,310 (税込)
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アジア的独裁者
マオの評伝が出てくることは歓迎です。第1次天安門事変(1976・清明節)に北京にいました。日本の岩波文化人や社会党はマオ主席を礼賛していたのに、現地ではどうも違うなと感じていました。商店には食塩も欠乏する有様で、食料券で餓死を免れていました。
その年の9月にマオが老衰死し、中華人民は解放されましたが、恐怖心は悪夢となって未だに醒めないようです。残忍なマオが台頭できたのは、本書でも明らかにされているように、古代と変わらぬ中国土着民と、軍事組織です。それに相手の国民党が弱すぎた。共産匪を壊滅できる機会は幾度もありながら、最後の詰めできなかったようですね。
文革4人組を逮捕した葉剣英元帥が政治局会議の報告で「1億人に被害をもたらし、3千万人を殺害した」とマオを非難していました。また、胡耀邦主席の演説で大躍進での餓死者を2、7千万人をだした災害であると、報告しています。マオが共産独裁下での殺害した総数は韓国国民総数に匹敵する数になる。「日本人が知らないマオ」としたほうがよかった気がする。ポルポト政権やビルマ政府や多くのアジア支配者はこのマオとそう変わらないと、思わせるにはいいテキストになります。マオを悪く言い過ぎると感じる方は、中国に住んでみると考えが変わりますから。
上巻のレビューで疲れたのでここでは少しくだけてみた
疲れる本、政治やら恐怖やら死が中心の本と言う意味で、なのでレビューを書くのも疲れる。
ここは少しくだけてみる(真面目レビューは→上巻)
上巻の巻頭写真17)の蒋介石がやたらと、たけし(ビートたけし)に似ているのでぷっと吹き出してしまった。
下巻巻頭写真69)、チェ・ゲバラ、超かっこいい。ゲバラファンはそこだけ切り抜いても良いか。で、その下の70)はイメルダ・マルコス。これはこの巻頭写真唯一の西側女性。ここで出てくると魅力的。
悲しいかな、おちゃらけができるもこの程度。
その前の死刑の写真、文革当時の吊るし上げの写真を見ると一気に落ち込む。
私は、57)劉少奇の悟りきった顔と、55)膨徳懐のやたらと人間味のある顔とその隣、同じ膨徳懐が吊るし上げられこれも劉少奇と同じく悟りきった顔がやたらと印象に残った。
勧善懲悪の世の中がいいんだろうな、やっぱり・・・
自分の今の生活環境がやたらとありがたく感じる本です。
毛沢東の実像が浮かび上がる
上・下巻とも500ページを超える大書であるが、上・下巻を合わせてレビューを記す。
本書は10余年に渡る調査、関係者への膨大なインタビューそして最近明らかになった旧ソ連関係の文書などから詳細かつ具体的に毛沢東の生々しい実像に迫ったものである。
共産革命に世界で初めて成功したソ連、特にスターリンが実権を持つようになると革命の輸出と自国防衛を図ってコミンテルンなど諜報活動を活発化させた。中国は辛亥革命に成功したものの群雄割拠の状態であり、蒋介石の国民政府も統一にはほど遠い。中国共産党はソ連の後押しで設立されたが、ごくマイナーな存在に過ぎない。人間性や思想は別として、このような状況下から統一中国を成立させ、朝鮮戦争を戦い、遂にはニクソン大統領に共産中国を認めさせた毛沢東は、その戦略眼の確かさと得た成果の大きさから『中国史・稀代の英雄』と認めないわけにはいかない。しかし、その裏には7000万有余の自国民を死に追いやり、長年の同志である周恩来や妻子に対する仕打ちを知ると目的のために手段を選ばないこの冷酷さこそが中国統一の原動力であったかと妙に納得させられる。
中国共産党が日本軍と戦った事実は、本書を読んでも殆どないことがわかる。ソ連は日本軍の北進を恐れ、毛沢東は日本軍と蒋介石と戦わせ漁夫の利を得るために日本軍を大陸内部に引き込もうとした。両者の思惑は一致し、西安事件が契機となった。日中国交回復、毛沢東が社会党佐々木三委員長に「日本の皇軍に感謝している」と語ったことが知られているが、「さもありなむ」と理解できる。
現在の中国も共産党独裁体制は変らない。『毛沢東神話』を揺るがすこの著書を中国人が読んでも軍をもつ共産党の党員エリート達が今まで培った自らの支配体制と利権を手放す筈はない。本書を読んでその感を新たにした。
読み物としては秀逸
上巻と下巻を合わせて読みました。あっという間に読了してしまいました。筆遣いがよく、読みやすく、おもしろくて興味深い内容でした。
「ワイルド・スワン」は下巻だけ読んだのですが、本書も著者の文才が伝わってくるようでした。
しかし、内容の客観的評価となると、正直「?」です。
この本は一応、毛沢東の伝記ということになっています。わたしは、一人の人間を理解するには、「光の部分」と「影の部分」の両方を知ることが必要と考えています。が、残念ながら本書では終始一貫「影の部分」のオンパレードで、本書だけを読んで毛沢東像が形成されるとしたら、それは「真実の毛沢東」からはだいぶ距離が離れていることと私は思います。
たとえば、もしかりに毛沢東が本書で描かれる通り、「100パーセント悪党」の要素しかなかったら、匪賊の頭目くらいにはなれても、建国の父にはなれないはずです。そこにはやはり、否定しがたい「光の部分」があったはずなのですが、本書では描かれていません。
それは、著者が文革の時代をリアルに生き、毛沢東への憧れと幻滅を痛切に感じたことからくるもので、致し方ないことだとは思います。
なので、本書だけを読んで「毛沢東像」を描くのではなく、ぜひ類書を読まれることをお勧めします。
それと気になったのは、「すべては共産党の陰謀だった」というような陰謀史観です。櫻井よしこ氏が本書を引用して、「張作霖爆殺事件はスターリンのスパイが起こした」と書かれていましたが、本書を見てもその根拠となる資料は明記されていません。また、国民党との内戦でも、何でも「毛のスパイが暗躍して」みたいに書かれているのも気になりました。これでは「すべてはアメリカ帝国主義のせいだ」といっていた旧左翼を笑えないと思います。
ともあれ、読み物としては良い出来だと思います。
独裁者マオ
現在の中国の共産主義体制を確立した毛沢東の真の姿に迫るノンフィクション。われわれ日本人が知っている毛沢東とはまったく異なった人物像が浮かび上がってくる。彼は確固としたイデオロギーを持たず、カリスマ性もなく、自己中心的で、その上残酷である。
この本を読めば、どれだけ多くの人間の犠牲のうえに現在の共産主義中国が成り立っているかがよく分かる。彼は決して英雄ではない。毛はただの野心家であり、うまくチャンスをとらえ、その後は武力による弾圧(血の粛清)とライバルを蹴落とすことによって、最高指導者の地位を得たのである。
これまでは、毛沢東は中国の共産主義体制を作った英雄というイメージを持っていた。しかし、この本を読んで、そんなイメージは粉々に打ち砕かれた。
毛沢東の若いころ、旧ソ連でも中国でも大量虐殺が行われていたようである。そこには、自分たちの信念にそわない者を武力で鎮圧するという構図があり、それは現在のイラク戦争などと変わらない。まさに、歴史は繰り返すという言葉がぴったりと当てはまる。
毛沢東の国の支配形態は、紛れもなくファシズムである。彼は恐怖政治によって権力を維持していたのである。毛はその野望のために、何千万という人間を犠牲にしている。その点では、ヒトラー以上の独裁者と言える。
「共産党による統治はつねに殺人を続けていないと不可能だった」という記述から分かるように、共産主義はもともと人間社会の性質に合わない無理な政治形態だったのだろう。その後のソ連の崩壊、世界情勢の変化を見ても、そのことがよく分かる。
独裁者マオ
現在の中国の共産主義体制を確立した毛沢東の真の姿に迫るノンフィクション。われわれ日本人が知っている毛沢東とはまったく異なった人物像が浮かび上がってくる。彼は確固としたイデオロギーを持たず、カリスマ性もなく、自己中心的で、その上残酷である。
この本を読めば、どれだけ多くの人間の犠牲のうえに現在の共産主義中国が成り立っているかがよく分かる。彼は決して英雄ではない。毛はただの野心家であり、うまくチャンスをとらえ、その後は武力による弾圧(血の粛清)とライバルを蹴落とすことによって、最高指導者の地位を得たのである。
これまでは、毛沢東は中国の共産主義体制を作った英雄というイメージを持っていた。しかし、この本を読んで、そんなイメージは粉々に打ち砕かれた。
毛沢東の若いころ、旧ソ連でも中国でも大量虐殺が行われていたようである。そこには、自分たちの信念にそわない者を武力で鎮圧するという構図があり、それは現在のイラク戦争などと変わらない。まさに、歴史は繰り返すという言葉がぴったりと当てはまる。
毛沢東の国の支配形態は、紛れもなくファシズムである。彼は恐怖政治によって権力を維持していたのである。毛はその野望のために、何千万という人間を犠牲にしている。その点では、ヒトラー以上の独裁者と言える。
「共産党による統治はつねに殺人を続けていないと不可能だった」という記述から分かるように、共産主義はもともと人間社会の性質に合わない無理な政治形態だったのだろう。その後のソ連の崩壊、世界情勢の変化を見ても、そのことがよく分かる。
新しい毛沢東伝記
上巻に続き膨大な資料を元に、1947年から死ぬまでの毛沢東について書かれている。特に、スターリンとの駆け引き、朝鮮戦争、大躍進、チベット動乱、林彪事件、文化大革命などで、今まで書かれていなかった次から次へと出てくる事実に驚愕する。
毛沢東主義を世界に広めるための「飢餓輸出」、「大躍進」での資源と労働力のすさまじい浪費、度重なる粛清と恐怖の支配など、毛沢東の自己中心的、狡猾、残忍な人間性が余すことなく描かれる。
毛沢東が権力を握るために、無実の罪で粛清された人たちの悲痛な叫びが聞こえてくるようだ。もしも毛沢東が権力を握れなかったら、現在中国はもっと豊かで常識的な国になっていたのでは、とふと思う。
恩来さんが疑問になった。
やはり後半が迫力がある。毛さんの悪行は他の書物でも色々出ているから余り驚かなかったが、この本での異色は周恩来に対する評価が非常に厳しいことである。毛は仕方ないとして周は違うとの内外での好意的な評価を粉砕している。まるでドン・ジョバンニとレポレロのようで従僕扱いだ。何を脅されていたのか、ヘテ=コンプレックスというものなのかどうも良く分からない。毛の女好きに対し、外面からでは失礼だが周の奥さんの姿も気になる。この作家には次に周にスポットを当て、その「職業としての侍従」と全生活の内面まで描いて欲しい。
マインドコントロール
私が中学生の頃、共産党かぶれしていた奴が何かと言うと毛語録を引用して進歩人を気取っていた。今に思えば、彼も毛沢東のマインドコントロールに支配されていたと言うことか。
毛沢東の評価がどうであれ、今の中国(特に基礎教育)では歴史の真実を知ることは土台無理なことで、思想教育が主眼と聞く。TOPは代われど、依然としてマインドコントロール下にあるのだろう。そして、日中国友好の美名の下に、我々も埒外ではなかった。
本書は、可能な限りの事実調査に基づき、その取材源も明らかにしている点で、過去のどんな著書よりフェアであり、驚愕の事実をさらけ出す。靖国、上海領事館員脅迫、ソニー製品排斥などの中国のビヘイビアーも、実はここにルーツがあったと気づかされる。
何を今さら・・・・下巻は特にひどい
毛沢東は、類希なる革命家であり、実践化であった。
私の理解するとことの社会主義ないし共産主義という「地上の楽園」を実践しようとした「若々しい時期」があったことも否定しない。
しかし、彼が登場した時には、コミンテルンという教条主義が支配し、ここの人間を人間として扱わないことこそが、「正しい」というマルクスさえも考えもしなかった、捻じ曲がった思想に世界が取り付かれていた。「100人死んでも、200人が幸せになればいい」という発想は、「200人死んでも400人が幸せになればいい」に替わり、その「死んでもいい人間の数か加速度的に」増えたが幸せになる人間の数は、決して増えなかった。
そして、「人民独裁」という、これも、マルクスも考えなかった、独特の「身勝手さ」に、権力の集中が行なわれ、それは、必然的に権力闘争を生み、批判者は粛清された。
これは、果たして、個人の責任なのか、社会もしくは体制の責任なのか?
国民、市民、人民には責任はない。
だとしたら、指導者の責任であろう。
毛沢東は、日本の靖国神社に相当する施設に葬られるべき人間ではない。その人間が葬られる施設をあがめる国家が、靖国神社問題を云々する資格はないだろう。
