- [著]貴志 祐介
- カテゴリ:
- 単行本 (498頁)
- ISBN:
- 4062143232
- 発売元:
- 講談社 (2008/01/24)
- 価格:
- ¥ 1,995 (税込)
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圧倒的な世界観
人類の大部分が滅びた未来。サイキックを操る人々が一見平和に暮らしているが、それはほんの少しのほころびから崩れてしまう危うい均衡の上に成り立っているものであった。
読み始めたら止まりません。一冊1000ページもある上下巻なのに、2日で一気に読まされました。
とにかく世界観がよく練りこまれており、ディテールも精緻に描かれているため、架空の未来世界であるのに、生き生きと迫ってくるものがあります。伏線の活かし方も見事。無駄な部分がほとんどありません。
読了すれば分かりますが、架空世界のメタファーを使いながら、現実の社会のありように対する深刻な危機意識が伝わってきます。基本的にはエンターテイメント作品でありながら、人間というものの業の深さについて、考えさせられる面もあります。
SFアドベンチャー作品として一気に読める。青春あり、恋愛あり、友情あり、ミステリー・サスペンスあり、風刺あり、社会批判あり。さまざまな要素が詰まった本作は、SF嫌いでなければ、「必読」の作品であると思います。とにかく上巻を読み始めたら下巻まで一気です。上巻だけ買ってもまた本屋に走ることになるので、セットでの購入がおすすめ。
上下まとめてのレビュー
この作品は今までの作風とは違い、SF小説である。上巻のはじめは、ハリーポッターのような超能力を使ったクラス対抗戦の様子が描かれている。正直上巻は物語があまり動かないため、退屈ではあるが、下巻は人間がある集団に攻撃され無残に殺されていき、面白くなっていくので、上巻が我慢できるかが、この作品を楽しめるかどうかの分かれ目だと思う。
今までの作者の小説とは違いSF冒険小説なので、ホラーや推理物が好きな人は楽しめないかもしれない。また私は登場人物の誰が死に、誰が生き残るのかがほとんど分かってしまい、ほとんどの人はバケネズミの正体もわかってしまうと思うので、純粋に物語を楽しむ小説で、謎を解明していく小説ではないので、その点は読むときに注意が必要だと感じました。
レビューを読む前に本を読もう
私が見た時、レビューの最初に「この作品は何も前知識を入れないまま読むことを
おすすめします。下手にレビューサイトは見ないほうがいいですよ!」というレビューが
あったので、レビューを読むのをやめて、本を読み始めました。
最初の方は乗り切れずちょっとだらだら読んでいたのですが、読み始めるに連れて加速度が
増し、一気読みしてしまいました(といっても、途中色々薀蓄が入っている部分は
さらさら斜め読みしまってるんですけど^^;)。
読み終えて、思い起こすと、本当に色々なテーマが詰まっていて考えさせられます。
「ともかく読んでみよう!」と言いたいです。
狂気の渦と冷静な学び。まさに知的格闘家の面目躍如!
SF小説と呼ぼうとファンタジー小説と呼ぼうと、ウェブ世界の進化が想像力を上回る速さで展開しているこの時代に、タイトルになっている全くの「新世界」を書こうとするリスクは相当に大きいものではないかと思う。この点、時代を現代からはるか先に設定し、ウェブというものが死滅している状況にしていることが、そんな時代が現出するに至る歴史の壮絶さも含めて、本書の物語性の豊かさを担保した。
この作家の本はほとんど読んでいる。私の中では『クリムゾンの迷宮』が圧倒的に星5つなので、それに比べると作品としては星4つということになるだろうか。
しかしこの作家は、まるで己の格闘家のような知的体力を試すようにジャンルにとらわれず作品を書き続ける。前作の『硝子のハンマー』は、この作家のファンはまことに意表を突かれる密室ものだった。今回は「新世界」の姿を、どこまで一般の想像を超えるものにできるかに挑戦した感がある。どんなに狂気に満ちた歴史の中でも冷静に生きる方法を学び続ける人間の描き方の中に、この作家がどこか究極的に人間を信頼している様が見て取れるようにも感じた。
そういう意味での貴志祐介の挑戦魂が継続していることに星1つ加えることで、5つにしたい。最新作『狐火の家』はご愛敬として、次作はどんな意表を突いてくれるか。個人的にはノンフィクションもあり得るのでは?と思っている。
ゲーテッドコミュニティへの革命劇
エンターテイメント小説。呪力をもつ人間がゲーテッドコミュニティを形成して、呪力を持たない動物を支配している世界で起こる革命失敗劇。
呪力=資産と置き換えると現代社会の比ゆともとれるか。
欠陥、物足りないところはある。
「呪力」の機能について疑問符がつく点。
(言語習得などとはレベルが違う)生物学的な抑制の作用機序がなぜ後天的環境によって左右されるのか。
物語の叙述が友人関係=水平関係に偏っており、師弟関係、親子関係=垂直関係の入り込む余地が少ない点。
生物史については極めて詳細に叙述されるにもかかわらず、なぜ呪力を伝達する垂直の人間関係が殆ど描かれないのか。
物語自体はかなり面白い。
この著者ならではの筆致、得体の知れない濃厚な闇のような雰囲気が楽しめるのはこの手のモノが好きな小説読みには嬉しい。
想像力こそがすべてを変える
想像力こそがすべてを変える。上下巻合わせて1000ページ以上ですが、一気に読みました。
これは読む側の想像力が試される物語であると他の読み手も言っていましたが、まさにそのとおりです。コロニーの中に住む住民はすべて多かれ少なかれ超能力を有しており、そしてコロニーと外の世界の境界には注連縄が張ってあり、コロニーが結界で守られているのです。個人的には主人公にあまり感情移入できないまま読み進んだけど、それはこの主人公が無意識に(?)投げた愚かな石の波紋が、制御できない大きな悲劇に結びついたからだと思う。第3者の起こした事件であれば、もう少し共感できたと思うのだが、そうすると話が前に進まないしね。作者の想像力には脱帽する。特に突然変異した戦闘用バケネズミの数々は本当にスゴイ。最後の悪鬼を倒す計略は、リーズナブルだけど、それまでの重厚さかからすると、ちょっと軽い?かな。
筆者はじめてのファンタジー!出来良し!
1000年後の関東平野の小さな村を舞台に、魔法(サイキック)と呪術を操る人間、
それに遺伝子改変された動物や虫達が織り成す、光と闇のファンタジー。
え?ファンタジー?と聞いて焦る貴志ファンの皆さん、安心してください。
ちゃんと貴志風のおどろおどろしい内容になっています。
ただ、少年少女が主人公なので、やや物足りないと感じるかも知れませんね。
作品全体としてはよく出来ていると思います。
ただ、どうも「この世界をベースに、シリーズを何冊も書いて食い扶持にして行こう・・・」
という邪悪な意思が感じられるので(笑)、マイナス1にしちゃいました。
子供の気持ちを忘れてない、貴志祐介ここにあり
7P「この間、時間を見つけては、過去の歴史をひもといてみたのだが、再確認させられたのは、人間というのは、どれほど多くの涙とともに飲み下した教訓であっても、喉元を過ぎたとたんに忘れてしまう生き物でであるということだった。」 13P「悪鬼の話と業魔の話は、発達段階に応じて繰り返し語られ、学習させられる。」
主人公である早季が体験した悲劇の過去を遡るところから始まります。ですから本の序盤、物語の結論を知ってて話が進行するため、読み手には少し文章に違和感を感じます。しかし2度読み返すとこの理解できないところがわかるので、飽きのこない面白い小説だと感じました。物語では、街にすむ人間はほとんどが超能力を持ち、そして化けねずみというまるで人間みたいに二本足で歩く醜い生き物が住み分けて共存しています。そんな新世界では、街の秩序を維持するために子供たちを学校に行かせ選別します。選別とはいっても、公表はせず先生が秘密裏に行い、性格、超能力等を見極め、落伍者を倫理委員会に報告しそこで審議・判決を下します。はっきり言いましょう、危険と判断された子供は、殺すのです。それは悪鬼、業魔に変貌する可能性があるからである。悪鬼とは、鬼のような人、そして業魔とは、もはや人ではない化け物をさし、過去に超能力を使い町中の人間を皆殺しにした事があったのである。この超能力は、例えて言うなら今の核兵器に匹敵する能力で、町に住む皆がこの核兵器の発射ボタンを持っているようなものなのである。だから過去の悲劇を教訓に、悪鬼や業魔を誕生させないこの法律が生まれた。
作者の力量に感嘆
少女の一人称で語られる物語、描かれる世界は昭和初期を思わせる農村的風景、 世界感を支配する「呪力」に架空の生物たち。なんとなく宮崎駿的ファンタジー を思い浮べながら読みはじめた。
ローレンツの動物行動学に発想を得たという、オオカミなど凶暴と言われる動 物以上に同族への攻撃抑制ができない人間の不完全さが全編に渡って描かれて いる。描かれる人間の業は、後半に向けて繰り返し更に救いの無い形でより深 く描かれていく。
かなり悲惨な展開の中で主人公の強さということが物語でも出てくるが、どち らかというとこれは展開上の必要性で与えられた属性でテーマは人間の業の救 いの無さにあるように読める。
そして、最後の最後で更に救いのない形で世界を反転させてみせる結末ははSF としてもホラーとしても見事と言える。これだけの長編で膨大な伏線とエピソー ドを張り巡らしながら、どれもが無駄なく論理立って繋っていき、なおかつ読 後にテーマが一本の軸でブレれていないと読者を唸らせる作者の力量は並のも のではない。
基本的にはホラーな人なのでかなり描写がグロな部分があるが、それが受容で きる方にはお勧めの一冊。ページ数はかなりあるが一気に読めてしまう。
純和風なファンタジー
ファンタジーというと、中世ヨーロッパ的だったり中国っぽかったりすることが多い。しかし本書では、江戸時代の忍者社会のような、純日本的なパラレル・ワールドが展開する。カヤノスヅクリだとかミノシロだとか、不気味で悪意を感じさせる生物相は、何かこの世界に秘密があることを暗示している。
少女の目から語られる異世界が生々しく、まとわりつくようである。恒川光太郎の世界に似ているが、こちらは背後に物理的・合理的な理論構築がされている気配がある。その分、SFにカテゴライズできる仕上がりだ。
ボリュームも内容も圧倒的。
