- [著]有吉 玉青
- カテゴリ:
- 単行本 (240頁)
- ISBN:
- 4062145413
- 発売元:
- 講談社 (2008/03)
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2008
06/19
Thu
「理想の家族」でなくていい。
100.0% (3 / 3)
初出を見ると、1996年から2006年まで「小説現代」に書き継いだものに
書き下ろしの1篇を加えて編んだ六つの連作短篇集。
美名子という主人公が、中学生の頃から40歳を過ぎるまでのほぼ30年間の
心の軌跡をたどっている。
もの心がつく前に両親が離婚し、父を知らずに育った美名子が、
その時々に、母との間にあるふれてはいけない「不在の父」にとまどいつつ
成長してゆくさまが、丁寧に描かれる。
会ったこともない父を恋いはしないが、いつも意識の片隅にぼんやりと
居座っている「不在の父」について、ある時、「不在」の「存在」であると
気づくくだりは、なにかしら親子の絆の業みたいなものを感じさせる。
思春期の母への反発。結婚して婚家の色に染まりきれない自分を客観視する
目線。仕事を再開した後の夫とのいくつもの諍い。
天の計らいのように出会った従姉妹。
そして、母に心から寄り添えるようになった現在までを、丁寧にしかし自在に
描く。母と自分とのあいだにあったものは「空白」ではなく、しっかりとした「絆」
であったと思う場面はなんだか読み手までほっとさせられた。
玉青さんらしい澄んだことばと会話や場の空気が好ましい作品だった。
