審問〈上〉 (講談社文庫)

  • [著]パトリシア コーンウェル
  • [原著]Patricia Daniels Cornwell
  • [翻訳]相原 真理子

カテゴリ:
文庫 (381頁)
ISBN:
4062730456
発売元:
講談社 (2000/12)
価格:
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パトリシア・コーンウェルが生んだ伝説的犯罪小説の主人公、バージニア州検屍局長ケイ・スカーペッタは、ミステリーファンを確実にとりこにしている。しかし、物語の中では、ケイに負けず劣らず個性の強い人間たちが、この魅力的な女性を肉体的、精神的に痛めつけようと躍起になっているのだ。

スカーペッタ・シリーズ第11作、『The Last Precinct』に新たな登場人物はいない。過去のできごとを回顧する形で、『Point of Origin』(邦題『業火』)に書かれたことが蒸し返される。敵も味方もおなじみの顔ぶれがずらりと並び、冷めた読者は「新味がない」と言うかもしれない。マリーノ警部、ケイの姪のルーシー、狼男の異名をとる殺人者ジャン・バティースト・シャンダン、(回想の形で)ケイの恋人だったベントン・ウェズリー、ウェズリーを殺したキャリー・グレセン。ケイは『Black Notice』(邦題『警告』)の最後でシャンダンに怪我を負わせた。これは正当防衛だったが、今回は彼女自身が、腐敗した警察組織から捜査のターゲットにされてしまう。その結果、過去の奥深く隠されていたケイのどろどろした暗部がさらけ出されることになる。

身の潔白を証明したい気持ちと、救いの手にさえかみつく手負いのけものの本能との間で悩みながら、ケイは、過去のおぞましい事件とシャンダンの関係を疑わせる証拠を、法医学的に詳細に検討していく。しかし、破滅的状況は立て直せない。ケイは、「Last Precinct(『ほかに行く場所がなかったら行くところ』がモットーのわけのわからない組織)」の共同創立者で、困ったときには助けてくれるルーシーと、自らの不安と勘違いを分析しようという自分の意思に頼るしかない。

ケイの感情面での変化に焦点を絞った今度の作品は、プロットに不自然なところがいくつかあり、少し無理な急展開もある。新しい方向性を見いだそうとしているのか、コーンウェルがやや行き詰まってきているという印象も受ける。ここでのケイは、過去の作品に見られる苛立たしいほど人に頼らない女とはずいぶん違う。時折ケイが物思いに沈む場面などは、じれったいしおもしろみに欠ける。これまでの作品の印象的が強いだけに、従来の路線をはずしたのは、いささか残念だが、そうであっても、熱心なファンはどのみちこの新作に飛びつくだろうし、次回作であのスタイルが戻ってくることへの期待も膨らむのである。

2007
02/22
Thu

盛り上がりに欠ける?

[No.12] posted by chovitz

前作の数日後が場面設定になっている。

これまで、政治に巻き込まれそうになったり、私利私欲のために利用されそうになったケイ。
恋人(マークとベントン)邪悪な犯罪者の犠牲になり、死んでしまった。
ケイが作品内で何度も触れているが、
歳を取るとともに、かたくなになり、自分好みの自宅で他人が物を動かしたり、
部屋を汚す事に耐えれなくなり、
さらに、一人になりたくなるから、どんなに愛していても、精神的につらいという。

気持ちは分からなくもない。
ただし、いつも彼女は、自分と仕事に厳しい為に、
愛する者が死んでしまったとき、その気持ちに気がつき、悩み、苦しむ。

さらに、ケイを陥れようとする、能力のない権力者達の陰謀(?)や、邪悪な犯罪者。
ケイを取り巻く環境は、時間の経過とともに変わっている。
そして、シャンドンに襲われたことによる精神的な後遺症。
何もかもがマイナスに向かっていく。
その当惑した、裏切られたと思うこと、そんな嫌な気持ちが、
1人称で描かれているので、ひしひしと伝わってくる。

モーテルで、拷問されて殺害された事件は隅に置かれ、
ケイの気持ちが物語の中心である。
だから、疲れちゃうのよね。

コーンウェル作品のいいところは、
その時代の最先端の科学捜査を行うこと。
今では当たり前になっているDNA鑑定をいち早く取り入れているし。

…と、まぁ、上巻の感想なのだが、
もっとスピーディーな話の展開が好きなので、
この回の話は、あまり好きではない。

2003
08/03
Sun

とにかくすごかった。

[No.11] posted by nievejapanska

「警告」から、この「審問(上)、(下)」と続く
話は、スカーペッタ・シリーズの中で、
私にとって最も読み応えのある作品でした。

ケイにとって、一体誰が味方で、誰が敵なんだろう?と、
考え込んでしまうこともありました。
あとは、ベントンという存在が、ケイにとってものすごく
大きいものであることが、痛々しいほど感じられました。

全てのことが、うまくいかず、どんどん落ち込んでいく中で、
それでも向かってくるものと戦おうとしたケイの
姿は、応援しながらも、「無理しなくていいよ・・・」と
言いたくなってしまうほどでした。

今までの、どの作品よりも、読むのにエネルギーが
いる、と私は思います。
でも、睡眠時間を削ってでも(笑)読んでみたい
作品でもあァ?ます。

2003
03/03
Mon

死の瀬戸際で果たした潔白の証明

0.0% (0 / 3)
[No.10] posted by 北都シンザ

シリーズものの常とã-て、登å '人物のキャラクター設定、æ'»èºã™ã‚‹åœ°åŸŸã€åœŸåœ°æŸ„の設定が読è€...にæ-¢çŸ¥ã§ã‚ã‚‹ã"とは避ã'られないã"とでã-ょう。初めての読è€...のために多å°'の付加的な説明が加わると、シリーズにé¦'æŸ"ã‚"できたCornwellianにとってはスローテンポになるã"とは否めないとã"ろです。Benton, Marino, Lucyとおé¦'æŸ"みの登å '人物に加え、Anna, Bergerとæ-°ã-いキャラクターが加わってきます。Annaのカウンセリングは圧巻です。推理が本筋とすると、本筋とはやや離れていますが。
ã"の作å"ã¯å‰ä½œBlack Noticeさらには前前作からの続きになります。Key Scarpettaの一人称で物語が語られ、職業とã-ての検死解å‰-ã‚'通ã-て推理が進ã‚"でいくのですが、そのãƒ-ロセス自ä½"に罠がã-かã'られたとã-たら、容æ˜"に殺人è€...の汚名ã‚'着せられ、職ã‚'失い、身のç 'æ»...になるã"とはå¿...至でã-ょう。推理すべきはフランス渡来の狼ç"·loup-garouなのに自分自身の(心の)解å‰-もã-なã'ればならない。二重苦、三重苦ですが、シリーズの始めではä»-人の推理ã‚'客観的に語ってきたものが、最è¿'の作å"ã§ã¯æ‹äººã®æ­»ã€è‡ªåˆ†è‡ªèº«ã®æ½"白の証明と話がæš-くならã-るã‚'å¾-ませã‚"ね。着せされた汚名は自らはæ™'らすã"とができず、事件ã‚'追及ã-ていって殺される瀬戸際までいってã-まうã"とがじれったいとã"ろです。

ともあれ最後は過去にもふっ切れ、æ"¿æ²»çš„æ€æƒ'にもç...©ã‚ã•れない確固たる地位ã‚'å¾-たかに見えます。ã"のã!¾!!まバージニアにとどまるか、ニューヨークへ移るか。私とã-てはニューヨークへ移りそうなæ°-がするのですが。“The Last Precinct is where I will end up, Anna. It is where I will end up.” “When shit hits, call the Last Precinct--where you go when there's nowhere left.”

2002
07/28
Sun

急展開!

100.0% (1 / 1)
[No.9] posted by オオノ

翻訳版の発売が遅れたため、待ちきれなくなって原書に初挑戦しました。
専門用語などが心配でしたが思っていたほど読みにくくもなく、特に私は途中から時々翻訳版と読み比べながらでしたので、わりとすんなり読むことができました。

前作までに終わったと思っていた過去の件がほじくり返されたり、登場人物たちの意外な一面などを垣間見る事ができて、また彼らに少し近づけた様な気がします。
初めての方も、一度翻訳版を読まれた方も、たまにはマリーノの毒舌を原書で楽しんでみませんか?

2002
06/15
Sat

スカーペッタ今回は大ピンチ!

100.0% (1 / 1)
[No.8] posted by gonza

 前作"Black Notice"で不気味な存在の狼男ことル・ガロウを捕らえたものの、今回はこの件でスカーペッタ自身が窮地に陥り、辞職の危機にあう。一連のスカーペッタ作品には毎回やり手の美人が登場するが、前作のダイアン・ブレイは良かった!無残な殺され方はおおいに気になるところではあるが。今回はマンハッタンの美人検事jaime Bergerが登場する。それとは関係なしに、スカーペッタは友人で精神科医のアンナのもとに身を寄せ、精神鑑定を受けることになってしまう。裁判では次々に不利な証拠が出され、検死官の職が危うくなる。さて、どうなるのでしょう?

2001
09/19
Wed

第一部終了(勝手にだけど)

100.0% (1 / 1)
[No.7] posted by acry

何で私だけがこんなひどいめに・・・(byスカーペッタ)という事の連続です。シリーズ中、最も人間臭い部分が露見され、今までのシリーズを読み返したくなります。第一部終了という感じ。今後、大きく状況が変わりそうなので必読です。スカーペッタ同等クラスのまたまたいい女登場!これくらい、いい男も出てきてくれればスカーペッタさんにとっても読者にとってももっと良いのに・・・

2001
04/14
Sat

おさらいとつなぎ?

33.3% (1 / 3)
[No.6] posted by 小さな灰色の収獲

本の最初と最後で事態はほとんど変わらない。無論、何人か殺されたりするのだが、前作の最後でケイが傷を負いながら捕まえた狼男Chandonneの裁判をはじめ、物事があまり進まないのだ。とくに、前半のテンポはのろく、ケイが精神分析治療を受ける場面は、探偵スペンサーと恋人スーザンの会話に匹敵するほど退屈。死者も含め、シリーズのこれまでのメイン・キャラクターがつぎつぎと登場する。作者はどうも、この本をこれまでのおさらいと次作品へのつなぎに位置付けたようだ。

2001
02/07
Wed

ケイのキャリアの分岐点になった上下巻

[No.5]

全作の続きなので、この2冊を初めて読む方にはちんぷんかんぷんかもしれないです。

一貫して、ケイの怒りや人間不信がつまった話ですし、ネガティブな感情以外はほとんど描写されていません。逃げ道もあるにはあるけれど、仕事も失い、大切だと思っていた人も失い、家も車も失い、あと頼りになるのは自分が育てた姪だけ、というのは少しみじめすぎるような気がします。そして姪のルーシーも新しい恋人を作っているし。ただ、人生の底を見たような気持ちになってもへこたれないタフさが、さすがケイだ・・・と思わされますが、前回までと違ってそういうケイから元気をもらうほどではありませんでした。 ひとことで言うならこの作品は、ひどいことが起こりすぎてケイに対して気の毒だなあと思うばかりです。

2001
02/05
Mon

不在者の存在感

33.3% (1 / 3)
[No.4] posted by よんひゃん

『警告』から始まり、『審問』上下巻と続いた、長い事件がやっと一段落した。シリーズ自体はまだ続いていくようだが、主人公の身の上に大きな変動があり、次巻からは新しい局面を迎えることとなる。

『警告』は、主人公ケイの亡くなった恋人ベントンが知人に託した「死後に読むべき手紙」が、ケイに届けられるシーンから始まる。とにかくこの3冊は、強烈に「ベントンの不在」という色に彩られている。

恋人の死というのは、それだけで計り知れないストレスもたらすが、殺人の嫌疑をかけられる、という破滅するかどうかの瀬戸際という状況もワンセットでついてきたわけだ。当然ながら、ケイの心象風景は荒涼としていて、感情を剥き出しにする場面もいくつも出てくる。読んでいて気が滅入る。しかし、だからこそ、物語の問い掛けるものは、重く心に響く。

いままであまり語られなかった、郡の検屍局長で、医者にして弁護士、というスーパーウーマンのケイの隠された心の暗がりが照らし出される。そして、すでに存在しないベントンの心の中も。いままでの巻では、主人公の恋人という重要な役回りにも関わらず、ベントンの存在感は、わたしにとってもうひとつ薄かった。ハンサムで有能で他人の心のひだを理解する繊細さを持った男。もちろん、魅力的な人物なのだろうが、どうもできすぎという感じ。先回りして考え、状況を支配しようとする人物を、わたしがあまり好まないということもあるかもしれないが。

しかし、自分のおかれている立場の重要性を理解し、それに見合ったふるまいをする、というのは、それはそれで誠実なことなのかもしれない。自分を過大評価するのはこっけいなものだが、過小評価するのも、現実を直視できない弱さを持っていることを意味する。まわりの状況をきちんと冷静に判断して行動できる人間でも、自分自身を直視することはつらく厳しい作業だ。だが、ケイは、弱さをさらけだしながらも、また一つ切り抜けた。ラストの謎解きの衝撃はまた次巻にあとをひきそうだが、これもまた人気シリーズをここまで維持してきた作者の力量だろう。

2001
01/23
Tue

スカーペッタの内面を掘り起こした秀作

100.0% (2 / 2)
[No.3]

これほどまでに主人公の内面を掘り起こしたサスペンス小説があっただろうか?恋人のベントンとの心の葛藤、知らされていなかった恋人の苦悩を知り、さらに苦しむ主人公。友人であるマリーノとの心の交換などなど。前作『警告』で死に直面した主人公が、自らの内面だけでなく周囲の人々、そしてすでに死んでいった人々、そしてその家族の心の動きに敏感になり、そして最大のなぞへ挑んでいく。  前作までのストーリーがすべてスカーペッタが最大のなぞを解くための、準備段階であることがわかり、作者の遠大なるテーマが理解できるようである。


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