- [著]中山 可穂
- カテゴリ:
- 文庫 (365頁)
- ISBN:
- 4062734346
- 発売元:
- 講談社 (2002/05)
- 価格:
- ¥ 620 (税込)
- 在庫状況:
- 通常24時間以内に発送
ユーズド商品:¥ 1 より
自己憐憫
主人公2人の生い立ちには同情できる点が多くあるが、それを差し引いても全体的に描写が公平ではない。筆者が地の文で主人公2人のみに味方し過ぎており、一読者としては、作者からこちらの膝にすがりつかれて「可哀想でしょ? 可哀想でしょ?」と同意を求められているような気分になった。正直言って、不愉快。
比喩的、もしくは抽象的すぎて意味不明、客観的に明らかでもないような冗長な表現によって2人の関係をまるで素晴らしいものであるかのように飾り立てている。が、冷静に眺めてみれば「似通った境遇の2人が惹かれ合って恋に落ちた」というだけの話。2人の主人公キャラクターの行動論理は特段に魅力的でもなく、なぜこうまで惹かれ合うのか、それ(似ていること)以上の理由は読み取れなかった。
主人公2人が抱える様々な辛さは認めるにせよ、自業自得と言えることも多いし、情動反応や描写が大袈裟な割には実のところ大した悲劇でもない。例えば、ラスト近く。不倫に走って配偶者を裏切り、ないがしろにし続けた那智は、しかし離婚調停ではダダをこねまくって我が子との離別を最小限にまで抑え、結果的に落ち着いた境遇は、有責者のそれとしてはかなり甘いものだったと言わざるを得ない。ゴネ得。
ロクデナシばかりに囲まれて生きてきた半生、色々と苦労することの多かった女性2人の物語。それは良い。一読者たる私にとっての悲劇は、それを小説に仕上げたのが冷徹に公平な描写を綴るということをしない作者だったという点。
ファンだからこそ思うこと
この本の「あとがき」(文庫版のほうではなく)で、著者は「これは私小説ではない」と書いているが、のちに講談社刊の『IN・POCKET』でこの作品を「これは私小説である」としている。実際、同著者『白い薔薇の淵まで』で山本周五郎賞を受賞した際の記念エッセイに、その時パートナーであった女性の子供のためにこの『感情教育』を書いたと記してあった。この本の初めに「Hに捧ぐ」と書いてあることからしても、これは著者の私小説だろう。
中山氏はこの作品を、「わたし」という言葉を遣う一人称で書かず、なるべく説明的にならないように那智(おそらく相手の女性)と理緒(おそらく中山氏)の恋愛を三人称で書いたのだと思われる。しかし、やはり中山氏は自身のこの過去の恋愛を思い、書こうとする時、感情的にならざるを得なかったのだろう。那智が育ってきた過程、結婚し離婚に至るまでの過程がいかに悲惨なものであり、理緒と結びつくことにつながっていったのかという点が、これでもかとばかりに読者に“訴える”ように書かれてしまっている。いかにも「私たちは苦しい恋をしたのだ」と見せつけられると同時に、いわゆる“作家的立場”から書けていないと感じた。当事者としての感情・視点に偏ることなく、強固に“作家的視点”を持ち続けながら書くことができたならば、読み手を納得させ、小説としても感動の深いものになっていたと思うのだが…。
中山氏は、自身の恋愛を思う時は、どうあがいても“作家的”にはなれない人なのだろう。そんな点もまた、人間臭くていいのだが、書くからには、それが私小説でも登場人物に対して心を鬼にしてほしいと思った。
自己満足?
正直よくわかりませんでした。なにか、ほんとに誰かの実態験を小説にするとこんな感じになります的な物語の感じがしました。なぜ、感情教育というタイトルなのかもまったくしっくりこないし、物語のリアリティのはずし方も相当中途半端でなぜこの設定になっているかの意味もまったくよくわかりませんでした。でも、最後までは読めたので星2つ。
ちょっと残念
那智と理緒という、それぞれ過酷な生い立ちを持つ2人の女性が運命的?に出会い、惹かれ合う話。文章は簡潔だが、登場人物の細かな仕草や表情にまで神経が行き届いており、繊細。特に、2人の生い立ちがそれぞれ語られる前半部はテンポ良くダイジェストされていて没入できた。
ただし。2人が出会ってからの後半部は正直期待はずれ。本当にこの2人の恋は運命的なものだったのか、その必然性がどうにも理解できない。2人のキャラクターが、肉体こそ「うりふたつ」だが精神的には完全に凸凹(ある意味シンメトリカルに)として設定されていないことによるのだろうか。その点も含め、「飽きた、もう読みたくない」とは決して思わなかったものの全体に中途半端な、何かが足りないといった読後感を持った。
私だけではなかった、と思えた。
全く違う環境で育ってきた(途中で繋がりはあるらしく思えるが、結局不明)女性二人が、出会って、結びつく…。
中山氏の作品はこれで2冊目なのだが、なるほど、氏の作品には「腰を据えてとりかからねば」ならない時もあるというのが頷けた。
そして氏の作品に出てくる主要人物は、とかく感情表現の起伏が激しい。これは氏の経験によるものだろうかはたまた…。
しかし、これは隣の芝生では決してないのだ。
ヘテロの恋愛もそうだろうが、同性同士の恋愛で修羅場になることだってしょっ中だし、激しく燃えるのもまた事実。
ヘテロの不倫もバレたら修羅場だろうが、それでもまだ世間は納得する。理不尽だが同性が浮気相手となると、更にひた隠しにしなければならないのが実情。本人同士ではなく、周りに理解を得られる事なぞ絶対的に少ないから。
物足りない、との事なのだが、確かに氏の作品ではそうかもしれない。
でも、私は却って安心したのだった(苦笑)
自分もどちらかというと、自虐的な所が「那智」、恋愛観は「理緒」のような人間なので…。
祝福するのは本人達のみでも。
それでもラストは素直にやっぱり嬉しかった。
真実の、恋
著者の作品はすでに何作か読んでいる。
が、この作品を読んで初めて「本当の恋愛というものに性別は関係ない」という、多くの人は決して口にしない真実が理解できた。
帯ほどのものではないような
淡々とした説明文的な文章は、巧いものとは思えないし、
読みにくくとても疲れてしまう。
面白くない―何度そう思ったことか。
けれど、帯のキャッチコピーの意味が明かされるまでは、
と、少し無理して読み続けた。何日もかけて。
結果的には、同性だろうが、異性だろうが、
愛は愛だし、そんな出会いが私にも出来るのだろうか?と
思ってしまったりするほど、深く入り込めるドラマもあった。
が、そんなふうに面白くなりだすのが、
中盤以降だし、
やっと面白くなってきたところでの尻すぼみな結末や、
先の読める展開、表現の巧くなさを思うと、
まあ、平均点というところだろう。
センスはあるので、著者の他作品も読んでみようとは思うが、
先天的な文章力、表現力はどんなに作家として成長しても
今とさほど変わらない気がするので
私にとっての5つ星作品はこれまでのものも、
これからのものも生まれないように思う。
のりこえる人間の強さがある
確かに発達心理学の理論を裏付ける内容だと思います。でも、それを乗り越えようともがいて闘う主人公の強さと生々しさが前面にでていて、心理学という学問が薄っぺらなようなものに感じられました。
中山可穂という人の闘ってきたこれまでの人生に感動せずにはいられません。
本当に魂がゆさぶられる思いでした。
平凡に生きている自分やまわりの人々が色あせてしまいました。
育ちと生き方
主人公は2人の女性。それぞれの生まれから、育った環境、人生感。2人が出会うまでの時間は、それぞれに痛く、辛い。私は、某心理学書を読み終わった後にこの本を読んだので「まるで応用小説みたいだ」と先ず感じました。2人の生い立ちから形成された、人間愛でもあると同時に、純愛小説だと思います。血縁に、他人。信じる心や感情の奥行き。様々な人間臭さを、きちんと生きてける強さの愛の話。
