- [著]中嶋 博行
- カテゴリ:
- 文庫 (313頁)
- ISBN:
- 4062734788
- 発売元:
- 講談社 (2002/07)
- 価格:
- ¥ 560 (税込)
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自信を持って人様に薦められる弁護士モノの作品だと思うです。
同年代(30代前半)で事務所を構える主人公・京森英二弁護士に魅入られたとでも言いましょうか。面白いっす。かなり。短編集で「うわすげーおもしろい」と思ったのってかなり珍しいかも。
時勢柄、法律絡みの話ってすごく興味があるんだけど、同じく興味のある「社会性のある話」が加わって、素材は満足。仕上げ方も、京森氏が変に正義ぶったりデキル弁護士だったりしない分、身近に感じてグー。どのお話も推理モノというよりもサスペンスモノという作りで、読者が京森氏よりも先に事実を知らされている事が多いんだけど、それを逆手に取るような展開が多い。なので、「あぁそうじゃないよ京森君」とか「そっち行っちゃ危ないよ」など、感情移入してしまうのですよ。
5編の中で一番良かったのが、「鑑定証拠」。畳みかける尋問シーンが、素晴らしかったです。
弁護士モノ・法廷モノというと海外モノが多いというイメージがあるけど、司法が身近にないから題材にしづらいという面もあったと思う。でも、ロースクールや陪審員制度の導入と言った司法制度改革が進む昨今、自信を持って人様に薦められる弁護士モノの作品だと思うです。
エンターテインメント作品として楽しめる作品
冴えない弁護士・京森英二が当番弁護士制度によって直面する事件に挑んで行く連作短篇集。
一応、『検察捜査』『違法弁護』『司法戦争』という「法曹三部作」を過去に読んだことがあるのだが、それらは「今の司法界が抱える問題点を抉り出す」という側面が強かったためか、やや、法曹界の対立関係だとかの説明がくどくなり過ぎた感があり、エンターテインメント性で劣る感があった。が、この作品は、リーガル・サスペンスの第一人者らしく法律関連の知識を十分に使いながらも、しっかりと「エンターテインメント性」を全面に出しており素直に楽しむことが出来た。
どちらかと言うと、やる気の無い弁護士である京森という主人公も魅力的だ。
法律の世界が舞台、というと小難しいイメージがあると思うが、全くそれを感じることなく楽しめる作品だと思う。
バランス感覚最高。
法廷物、あるいは司法を扱った作品と言うのはあまりに現実離れしていてリアリティーを感じにくかったり、逆に生々しく描かれた権力争いや足の引っ張り合いといった舞台裏の人間関係で「お腹一杯」な印象を持ってしまいがちだと思います。また、法律に明るくない方には取っつきにくい内容であるということも少なくないでしょう。しかし、この作品で扱われるテーマはいつ新聞等で見聞きしても不思議ではないものばかりですし、事件の調査や法廷でのやりとり等現役の弁護士さんが書かれているだけあってまるで目の前で見ているのかと錯覚する程です。また必要以上にドロドロとした人間関係のない代わりに主人公、京森は「弁護士=エリート、金持ち」という印象と異なり、事務所の家賃の支払に頭を抱え、まるでその辺を歩いている普通のお兄ちゃんの様な印象です。この、リアルなやりとりと親しみやすい主人公のバランスが最高です。内容についても問題となる点等が会話の中でさりげなく説明されていて法律の予備知識がなくても充分に楽しめます。私は法学部の出身ですが在学中にこの作品を知り、学部の友人たちにも熱く勧めました(笑)
盲目的に信ずることなかれ「DNA鑑定」
「リーガルサスペンス」という新分野を切り開いた中嶋博行氏初の短編集。著者の中嶋氏は現役の弁護士。一貫して現在の司法制度の抱えている課題を取り上げている。京森英二という若手弁護士が「刑事当番弁護士」として6件の事件で活躍する。主人公は、秘書の給料にも事欠く状態で、割のいい仕事をやりたいのだが、やむを得ず引き受けた困難な刑事事件に没頭していく。圧巻は「鑑定証拠」。冤罪事件として有名な「みどり荘事件」をモデルにしている。精密な科学捜査というイメージのあるDNA鑑定の意外な盲点を浮き彫りにしている。日弁連が始めた「刑事当番弁護士」の実態、科学捜査への盲目的な信頼の危険を知ることができる意欲作だ。ぜひご一読を。
