- [著]浅田 次郎
- カテゴリ:
- 文庫 (377頁)
- ISBN:
- 4062736098
- 発売元:
- 講談社 (2002/12)
- 価格:
- ¥ 650 (税込)
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皆さん読んでください!
浅田作品が大好きなのですが、この作品は初版が出たときに読み、またしばらくぶりに読み返して、涙が溢れてとまりません。
いま手元に小さな子供たちをおいているせいか、子供に関する描写でもういけません。
もちろん、浅田先生特有の甘すぎる男女のせりふ廻しに、鼻白む箇所もありました。
でも、美しい弥勒丸と彼女に寄り添う男たち…以上に無辜の民2000人が、海に沈んだことをおもうと、胸が張り裂けそうに悲しい。小説はフィクションだけれど実在の事件があったことは、テレビのドキュメンタリーでみました。
悲しいけれど、皆さん読んでください。
戦時と現代を豪華客船が結ぶサスペンス
太平洋戦争末期、国産の豪華客船弥勒丸は安導券を有した緑十字船として艤装され、シンガポールから北上していた。
本来沈むはずのない弥勒丸は途中の台湾沖で米軍潜水艦の魚雷により撃沈される・・・
それから数十年後、小さな消費者金融の社長軽部順一のもとに宗英明と名乗る謎の人物から弥勒丸引き上げの話が突然もたらされる。
弥勒丸と何の関連もない軽部はかつての恋人久光律子とともに、弥勒丸をめぐる人々に翻弄されながら弥勒丸の謎を究明していく。
戦時と現代を行き来しつつ、弥勒丸の謎とそれぞれの人物が抱えた業と想いが明らかになっていく。
物語は実際にあった阿波丸事件をベースとしていて、太平洋戦争における大日本帝国陸軍・海軍の思惑を下位士官の視点から描くとともに、米海軍の思惑を的確に描いている。
また一方で、現代においては恋人に捨てられて10数年を経て再会し、行動を共にすることで、戦時と現代の女性の生き方の違いが克明に描き出されている。
太平洋戦争というテーマに対しては少々軽いタッチという印象であるが、サスペンスとして捉えると浅田ワールドを楽しむことができるのではないだろうか。
戦前に起きたある豪華客船の海難事故の物語
2兆円(という金額のスケールに驚く)の金塊と共に沈んだ豪華客船を引き上げろ。謎の中国人に100億円の融資の依頼を受ける、闇金融会社社長。なんだかとてつもない規模の海洋アドベンチャーが幕を開けるのかと思っていたら、全くもってそういう類の話ではなかった。横浜−サンフランシスコ間を航行するために造られた弥勒丸は、戦時下のもと陸軍に徴用されてしまう。戦争末期にある極秘任務を帯びて東南アジアの各地を巡ることになる。船長を始め関係者一同は何も知らされないままであった。そこにはどんな謎が隠されていたのか。なぜ沈没してしまったのか。「昔」を知る老人たちの重い口が今開かれる。映画「タイタニック」よりもグッと来るモノがあった壮大な悲話。
海の男の誇りに最敬礼・・・
太平洋戦争の結果として日本の商船隊が保有していた船は500トン以上のクラスで2,259隻が失われ、35,092人の船員の命が奪われました。支那事変からの8年間で見ると戦没船員の数は60,331人になります。
当時の日本人船員の死亡率は陸海軍人の死亡率を遥かに上回る43%にも達しますが、これは日本政府・軍にシーレーンを守るという発想がなく、軍に徴用された商船が丸腰のまま物資輸送のために敵艦隊が待ち受ける海を独航せねばならないという異常な状況に置かれがちだったためです。
そんな中でも特に悲劇的だったのは、日本軍占領地帯にいる連合国軍の捕虜に救援・慰問物資を送るべく連合国側から安導券(Safety conduct:安全航行の保障)を与えられた貨客船「阿波丸」が、緑十字旗を掲げて航行していたにもかかわらずアメリカの潜水艦「クイーンフィッシュ」の魚雷攻撃で沈められた事件でしょう。
浅田次郎さんの小説『シェラザード』はこの「阿波丸撃沈事件」を題材にしたものですが、小説の中での船は「弥勒丸」と呼ばれています。
物語は戦争中の「弥勒丸」を巡るドラマと、海底に沈んだ「弥勒丸」を引き揚げるために奔走する現代の人々のドラマを並行させてスリリングに進みます。そして、それぞれの状況において様々な人の思いが錯綜する中で、「弥勒丸」は時代を超え、誇りを持って美しく生きることの意味を人々に問い掛けてきます。
僕にとっても思い入れが強く、是非多くの人に読んでいただきたい作品です。
泣けました・・・
戦争中、米軍の攻撃を受け沈没した弥勒丸。その豪華客船が使われた目的は驚くべきものだった。勝つ見込みのない戦いを続けていた日本。弥勒丸に乗っていた人たちはその犠牲になってしまった。多くの悲劇は、残された人たちの心にも深い傷を与えた。それは何十年経っても決して消えることはなく、彼らを苦しめ続ける。過去と現在が交錯するという形で描かれたこの作品は、読む人に弥勒丸の悲劇をより強烈に印象づける。「その船に乗ってはだめ!」何度もそう叫びたい場面があった。潜水艦隊に包囲され、攻撃・沈没の運命を悟った乗組員たち。彼らの最後まで毅然とした態度は、涙を誘う。「よォそろォー」彼らの声が胸に響いてくるようだ。
弥勒丸と一緒に沈んでしまったものは・・・
終戦直前に誤爆により沈められた船を引き上げるという大業を主題としながらも、人の心を繊細に描いているヒューマンドラマである。
現代と当時のできごとを交互に展開しながら、人々が沈没船「弥勒丸」によってつながっていく構成もとてもよく計算されている。
戦争の時代を知らない我々が、当時のことを軽々しく語るのを軽率と思うが、浅田氏の描く人々の気持ちは、本質的な部分で確信を突いているのではないかと思う。
浅田氏は作中で、かつて人々が持ちそしてなくしていったものを「良心」という一語で表現している。
正しきものと悪しきものを見極めること。そして、真摯な気持ちで行動できる登場人物たちをうらやましく思ってしまうのは、それが欠如しているからなのだろう。
それが今もって失われたままだとすると、浅田氏があえて沈没船に、釈迦の明滅後に衆生を救う「弥勒」の名を付けたことの、真意がそこにあると思うのは考えすぎだろうか。
昭和20年に沈められた豪華客船の謎を巡る物語。
昭和20年に台湾沖でアメリカ海軍の攻撃により沈んだ弥勒丸を巡る謎を追っていく物語。その弥勒丸とは、アメリカ航路に就く予定だった当事世界最高の性能を誇る豪華客船だった。戦争のため徴用され一度も乗客を乗せないまま、ジュネーヴ条約によって安全が保障された病院船として使われていた。その弥勒丸は、魚雷4発で撃沈された。弥勒丸を引き上げたいと申し出る謎の人物が現れ、運命の糸に導かれた人間が引き寄せられてゆく。昭和20年と現代が同時に進行してゆく構成がとられていて、スリリングに物語が進行する。
少々残念
おもしろかったか?と問われれば、おもしろかったと答えるけれど、
少々、雑な文章が散見しているのが気になってしまった。
また、ストーリーの核となる部分は素敵だし、人物を巧みに描いている
ところはさすがという感じなのですが、構成というかストーリーの
導き方が今ひとつで残念に思いました。
過去と現在を行き来する展開なのですが、現在の場面展開がどうにも
稚拙なので、そう思わせたのだと思います。
過去の場面★4
現在の場面★2
トータル ★3
こんな感じでしょうか。
昭和史を題材にした重厚感やミステリーを楽しみたいならば、
ちょっと期待外れな部分があるかもしれませんので、ご注意を。
今日は休みだから、ノンビリと本でも読もうかといった時に、
軽い気持ちで読み進めるならば、うってつけかもしれません。
上下巻に分かれていますが、一気に読み切れるでしょう。
読み応えある沈没の謎に迫るストーリー
第二次世界大戦中の昭和20年4月、国際法で安全な航行を保証されていたにもかかわらず米国の潜水艦に撃沈されてしまった弥勒丸。一つは、この弥勒丸のサルベージの話を謎の台湾人・宋英明に持ちかけられた町金融の社長・軽部順一が、彼のかつての恋人だった新聞記者・久光律子と共に話の裏付けを取り始める現在のストーリー。もう一つは、ナホトカで国際赤十字の依頼による連合国軍捕虜宛ての救援物資を積み込む弥勒丸から始まる昭和20年のストーリー。交互に描かれたこの二つのストーリーから、弥勒丸沈没の謎に迫る過程に読み応えを覚える上巻である。(下巻のレビューに続く)
浅田次郎らしい作品
浅田次郎の歴史小説には、清朝末期を描いた「蒼穹の昴」、新撰組を題材とした「壬生義士伝」「輪違屋糸里」などがありますが、この「シェエラザード」は、時間軸の交差と登場人物の独白という、いまや型となりつつある作者得意の技法が最も上手く使われている、その点で最高のできだと思いました。
まず時間軸の交差では、主人公が弥勒丸引き上げを依頼される現代と、弥勒丸が沈没するまでの過去とが交互に描かれています。ベースは三人称なのですが、クライマックスやラストで、さまざまな登場人物の一人称(独白)に切り替わる構成、重い題材を扱った小説をドラマチックに魅せてくれます。
戦争・大義などのテーマはもちろんですが、それ以上にこの書き方が引き立てているのは一人一人の登場人物の人間としての在り方ではないかと感じました。大きな時代の流れの中で真摯に生きた人の姿、そして時代が移ろっても変わることのない、人としての理想の姿。
NHKで映像化されることになったこの作品、どうか歴史だけでなく人間を描いたドラマとして読んでみてください。きっと楽しめると思います。
