- [著]村上 春樹
- カテゴリ:
- 文庫 (302頁)
- ISBN:
- 4062748681
- 発売元:
- 講談社 (2004/09/15)
- 価格:
- ¥ 540 (税込)
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切ない物語
飛行機の天井のスピーカーからビートルズの『ノルウェイの森』が流れてきたとき、
僕は18年前の二十歳の秋を思い出して激しく動揺した。
高校時代に自殺した親友キズキと、その恋人の直子と、僕、そして同じ大学のミドリ。
キズキの死は直子に深い傷を残していった。
冒頭から「記憶は確実に遠ざかっていく」と直子は過去の人として描かれ、
第一章は「直子は僕のことを愛してさえいなかったからだ。」と結ぶ。
回想という形ではじまるこの物語は、「僕」の二十歳の大学生の若さゆえの葛藤と、心の揺れの生っぽさを追体験していく。
静かともいえる描写の中ここに描かれているのは報われない愛。
第一級の切ないメロディ。
登場人物は、みな刹那的で、受身の生き方をしているように思う。
記憶が薄れていくことが冒頭で提示されているだけに、直子との静かともいえる回想は無常観とともに心にしみる。
80年代不良文学
大学は勉強をするところで、
女性と懇ろねんごろになる所ではない。
1987年当時ハードカバーで購入したが
捨て本となってしまった。
東洋作家としての”ハルキ ムラカミ”
村上春樹という作家に対して西洋かぶれしているという批判がなされるのをよく耳にする。
事実彼の作品の中には欧米、とくにアメリカにおいて生み出された大衆文化への嗜好がよく見られる。その上彼独特の気取った文体もあいまって好意的でない人には白人至上主義的なナルシストにしか思われないかもしれない。
しかし、彼は本当には非常に東洋的な思想背景を持った作家ではないだろうか、と私は思う。この作品においては特に顕著にその一面がでているようだ。この作品に現れている無常観、虚無感、縁起的な考え方はまさに原始仏教における考え方そのものではないだろうか?気づいてか気づかないでかはわからないが、彼は自身東洋的な一面を世界的な普遍性を持つ大衆文化でつつみこんで世界中に発信しているのであるのではないか?
切ない気持ちになる、喪失の物語
ワタナベ君と、亡くなった親友キズキの恋人直子との関係が淡々と描かれる物語。
キズキが死んだ時、ワタナベ君は大きな喪失感に包まれる。
直子にとってはそれ以上の、まるで自分自身を半分損なってしまった様な
どうしようもない程の喪失感。
ワタナベ君は直子と共に互いに損なってしまった心の部分を埋めようとしたのだろう。
けれどもキズキと直子の関係は、他人の理解をはるかに超え強いもの。
あるいは直子はキズキだけを自分の人生の中心に置いた、純粋で弱い人なのかもしれない。
努力だけではどうにもできないものが人生にはあると示唆しているようだ。
運命のようなもの、人の気持ち、流れ去る月日など。
読後はたまらなく切ない気持にさせられる。
それでも一種の明るさというか清涼感のようなものも含まれるのは
ワタナベ君の同級生、緑の存在があるから。
季節は人間の意志とは関係なくまわる。
冬がくれば枯れ落ちる運命の草木。そんな事を考えると物哀しい。
しかし風雪にさらされているその枝のなかでは
やがて生命の輝きを見せる新芽も同時に存在する。
緑は名前といいその存在が、前向きな力、生命力、明るい予感といった物の象徴なのだろう。
20年前に読んだが少し過剰な性描写があったのを覚えていた程度。
今回読み直してみて良かった。
基本的に悲しい物語は好みではないのだけども、
春樹の作品で一番印象深いものはどれと問われれば、
それはノルウェイの森になる。
代表作といわれるだけあると思います。
ハードル上げすぎちゃったなぁ・・・
著者の作品は今回初めて読みました。
代表作と言われてますし、評判がかなりいいみたいなので、
かなり期待しちゃったので、うーん・・・って感じでした。
まず、登場人物の会話が人間っぽくないし、みんな妙に理屈っぽくて個性がないというか、
ぼーっと思い返して見ると印象に残る人物が居ないように感じました。
(鮮明に思い出そうとすれば一応覚えてるんですが・・)
自殺してしまった人や、その人達との関係にも感情移入ができませんでした。
まあ、当然主人公にとって悲しい思い出っていうことは理解できるって程度。
ただ、結構引き込まれる雰囲気は確かに有るような気がします。
ストーリーやキャラクターじゃなく、この雰囲気 空気を楽しむ作品なのかな?
別に読みづらいわけでもないし、悪くはなかったです。
ただ、ちょっと期待が大きかったのでやっぱり星3つがMAXカナ・・
ボンボニエール〜想い出の玉手箱
めくりめく長い月日を経て、自分の全身全霊をかけて愛し抜いた直子という女性の記憶の断片が、飛行機の中で流れていたビートルズの「ノルウェイの森」の曲と共に、デ・ジャ・ヴュとしてよみがえってくる・・・。
時代は学生運動の全盛期。大学生活を送っている主人公の「僕」は、自殺していった姉や恋人の死に打ちのめされ、まるで三途の川をさまよう亡霊のように生きている直子へ、ストイックな愛を捧げる。
肌を重ねながら「僕」の周りを通り過ぎていく様々な女達の事は何も思い出せないけれど、美しい直子の事は、一つ一つのしぐさ、くせ、ほくろの位置まで鮮明に脳裏に焼き付いている。
死という荒波に押し流されてしまいそうな彼女を、苦しみの世界から連れ出して、二人で明るい生活を築いていきたいけれど、もがいてももがいても「僕」の心の中でずっと咲き続けている直子という花の花びらが散っていくのを、どうする事もできずに遠くからじっとながめているような焦燥感と絶望感。
そこはまるで、ノルウェイの森のように深くて暗い闇の世界。
そして、結局直子は自殺した人々のあとを追うように、自ら死を選んでしまった。
彼女を失ってから、廃人のように旅をしながらさまよっていた「僕」は、今を生きる人たち〜直子が入院していた精神病院のルームメイトのレイコさんや、大学で知り合った緑という温かくて一風変わった人々に支えられ、生き延びていく事を決意する・・・。
最愛の人を失った哀しみを乗り越えて、緑という女性と新しい愛を培って、自分の居場所を見つけながら生き抜いていくというラストシーンは、ノルウェイの森という深い暗闇の中に差し込んだ一本の光の矢のように輝いていました。
私はこの本を読んでいる時も、このレビューを書いている時も、ずっと涙が止まりませんでした。
「人を愛するという事は、どうしてこんなにも哀しいものなのでしょうね。」
村上春樹の恋愛世界
他の村上作品よろしく、「普通」のパーソナリティーを持った人は一切出てこない。
主人公の「ワタナベ君」やヒロインの直子はもちろん、僕たちの平衡感覚とは明らかにことなる登場人物ばかりである。
さらに奇異なのは、登場人物のうち4人もの人々が「死」んでしまう点である。
それも「自殺」という形によって、である。
特に、この恋物語のキーになっている「キズキ」(=ワタナベ君の親友であり、直子の恋人だった。)の自殺の理由は必ずしも明らかでない。
とまあ、相当におかしな物語なのであるが、私は個人的には好きだ。
その理由の一つが、類まれなる比喩のジャンプである。
その中で最も印象に残った台詞が
「世界中のジャングルの虎が溶けてバターになってしまうくらい好きだ。」である。
はっきり言って、意味が不明!と言われてしまえば、返す言葉はない。
しかし、世界中のジャングルや、その中の虎、そしてその虎たちが溶けてゆく様を想像すると何とも面白く、またそれほどまでに「熱い」思いを自分を抱いているだろうか?などと考えると何とも感慨深い。
そのような「村上ジャンプ」が隋所にちりばめられているのである。
この点については好き嫌いが大きく分かれるであろうが、私は好きである。
理性の愛への挑戦
この小説のテーマは、理性の愛への挑戦であろう。
好きな人、愛する人のために、若しくは、見知らぬ人間のために、
その人の気持ちになろうと一生懸命になったことはありますか?
この小説は、そんなあなたに読んでもらいたいと思っています。
特に、次の言葉に同調するあなたに。
「どうしてこんなにがんばっているのに気持ちが伝わらないのだろう?
でも大丈夫、もっとがんばればいつの日か。」
愛や好意といったものには「相性」など、人間にはほとんどどうすること
もできない「不条理さ」があります。しかし、この小説の主人公のワタナベは、
あくまでも誠実に、不条理さと向き合っていきます。
こんなまじめな、誠実な人間はなかなかいません。
私にとってワタナベは大切な友達だし、これは最も大切な小説です。
そこまで惚れ込ませる小説です。
哀しみからの再生の物語
主人公と直子との恋。それは、表面上は静かで穏やかに見えた。
けれど、心の中ではお互いがお互いを激しく求め合っていた。
だが、求めても求めても決して得ることのできないものもある。
二人は、寂寞感を抱えながらも一生懸命生きようとしたのだが・・・。
ほかに道はなかったのか?こんなにも哀しい生き方しかできな
かったのか?激しい哀しみは、時に人から生きる意欲さえも
奪ってしまう。そこからどう立ち直り、どう自分を再生すれば
いいのだろうか?読んでいて胸が痛い。ラストに、ある女性が
主人公に言った
「痛みを感じるのなら、その痛みを残りの人生を通してずっと
感じ続けなさい。そしてもし学べるものなら、そこから何かを
学びなさい。」
という言葉が強く心に残った。
音楽を聴いている様な感じ。
この小説は感覚で理解するものです。この切なさは何!?私は読んでいると息が詰まる程に切なくなりました。話の内容を理解するというより、主人公になった気持ちで読んでみると、青春時代のあの胸苦しさが蘇ってきます。大人になった今だからこそ読みたい作品です。
