- [著]村上 春樹
- カテゴリ:
- 文庫 (214頁)
- ISBN:
- 4062749068
- 発売元:
- 講談社 (2004/10)
- 価格:
- ¥ 420 (税込)
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不思議な書き手。
登場人物はすべて実在する。そして各々のエピソードを筆者に話す。それを筆者がまとめた本。
登場人物は客観的な事実だけをそのエピソードから読み取ると、とても魅力的な人達ではない。ドイツに行った時に夫へのお土産として、半ズボンを買う中でその夫との別れを決心する妻だったり、友人の彼女や妻と寝る男だったり、彼氏と別れて寂しくて売春する女の子だったり。
でもこの筆者が書くと、その人たちはすごく高貴で、その行動はごく自然なことのように感じられてくる。やはり不思議な書き手。
説話のような
人生の信号は、それが危険を知らせる信号でも、
安全を知らせる信号でも、劇的ではなく、静かに起る。
それらは存在感を徐々に大きくさせて、後に影響を残す。
↑
それ→人生の信号
それら→安全を知らせる信号、危険信号
そのような、過去に起った、大きな変化の折り返しを記す。
短編小説のように実話がまとめられた、経験による説話集。
他の村上さんの多くの小説と、ずいぶん違うタイプだと思います。
20世紀から起る説話のような話を、短編でまとめた本。
人生とは何処にも行かない「一つの場所」。
「誰に追いつかれる訳でもなく、誰に追いつく訳でもない。
一つの場所で、グルグル廻り続け、壮絶なデッド・ヒートを
自分自身の『内部』で展開する。」
別に石川R太郎氏に阿呆な説教をされるまでもなく、
こんな事は、20代の頃から知っていた。
その伝で言うのならば、「欝」に為るのは
単なる「デッド・ヒート」の遣り過ぎに過ぎない。
従って、SSRIを飲みながら、自分で治す。
他人は関係無い。そいつ自身の「こころの問題」は
そいつ自身の「個人的な問題」に過ぎない。
他人にとっては、如何でも良い事だ。
そう、確かに「水臭い時代に為った」と
旧人類世代が、嘆いていたのが、本書が刊行された
80年代後半と言う時代だった。
他人の事は如何でも良いし、自分には関係無い。
そいつが如何言う人生を歩もうが、私の人生では無いから、
全然、知った事では無い。
インタヴュー集か、または、ルポルタージュ文学の体裁で編集された短編集。
他人が自らの口で語る「他人の人生」の様々な断片。
しかし、所詮は「他人事」。
未完成ゆえの想像が利く
私が初めて読んだ村上春樹の短編集です。この作品は私にとってはもろツボでその後、村上春樹の他の短編集を買い漁るきっかけとなった本ですが、結局読んだ中では、これがダントツに好きです。
この作品を面白いと感じる最大の理由は、「物語が未完成であるから」だと思われます。実際、著者自身が前書きでこの短編は人間群像を描いたスケッチのようなものであると述べています。しかし、スケッチであり、伝えたいことが曖昧、もしくは無い、からこそ、読者の想像を掻き立てているように思えます。ちょうど、ミロのビーナスは腕が無いからこそ、無限の腕を持っているように。
また、描かれている人々に読者が共感しやすい何かを持っているため、読者の個人的な経験を登場人物に投影しやすい、つまり想像が描き立てられやすいようになっていると思います。
非常にオススメです。
不思議な話が8つ
「原則的に事実に即している」という短編8編。これより後に出版された、筆者が体験したことを書いたという「東京奇譚集」があるが、本書は筆者が聞いたことを書いたという。どちらも読後感は似たものがある。煮え切らない何かが残るような感覚。それが何かを確かめようと読み直すが掴みきれない。
個人的には、「今は亡き王女のため」が一番リアリティを感じる。その逆は「タクシーに乗った男」。どちらのタイプも面白い。
読後感
人間は生きていく以上大切なものをどんどん失っていく。けれどもたとえそうであったとしても別の「何か」を心の支えにして生きていくしかないのである。この社会から降りるという選択肢はないのだ。
悲しみ・どこかずれた感覚・でもそれがふつうである
村上さんが聞いたままの話を書きとめているうちに「話してもらいたがっている」と感じた文章をそのまま公開した作品だそうです。
普通の話のようで読んだあと妙に説明のつかない気持ちになります。「今はなき王女のための」など作品中に筆者も一登場人物で出てくるのでさらに不思議な感じが増します。言葉にしてみるなら悲しみ・どこかずれた感覚・でもそれがふつうであること、といった感覚でしょうか。
このような感覚を楽しみたい方におすすめです。
のちの「アンダーグラウンド」にも通じるような
本書は、村上春樹さんが、人から聞いた話を装飾することなく再現した短編集です。
本当の話でありながらも、ここまで楽しませることができるのは、
他のレビュアーの方がおっしゃるように、村上春樹さんの聞き手としての力量のおかげであると思います。
それは、のちの作品で、地下鉄サリン事件関係者にインタビューをした「アンダーグラウンド」にも通じていきます。
インタビュアーとしての、村上春樹さんの力量もなかなかのものです。
そして、それを文章化することにも秀でているから、本作もおもしろいのです。
得体の知れないいびつさを垣間見る
旦那にドイツで半ズボンを買う「レーダーホーゼン」、自分のために買った「タクシーに乗った男」の絵、知人のパートナーと寝る「嘔吐1979」、好きな女の部屋を覗く「野球場」など、「事実に即して」村上氏がまとめた短篇/ドキュメンタリー(?)8篇を収録。
どの短篇も緻密な構成で、言葉の一つひとつ、単語の一つひとつを徹底的に吟味して紡いだ物語という印象を受けます。その短篇はどれも完成度が高く、よく書けている、と感じさせると同時に、奇妙なあと味を残します。それは、人の感情の井戸の底のほうにある、得体の知れないいびつさを垣間見てしまった、そんな感触なのかもしれません。
スケッチブック・ストーリー
作者が知り合った人々から聞いた話をまとめた短編集です。
全部で八つ、うちふたつは作者自身の体験談でした。
どの話も、現実にありそうな小説のようなって雰囲気だった。
そしてやっぱりハルキワールドを感じた。
小説のベースにしておく話をとりわけたせいなのか、類は友を呼ぶかのごとく同じ人種を引き寄せた結果なのか。
どちらも有り得るけれど、やはりインタビュアーとしての村上春樹の腕によるところが大きいだろう。
それが小説家としての才能なのかもしれない。
村上春樹がまとめることで小説のような日常生活ができあがる。
どんな所にでもドラマがあるんだと思いました。
