羊をめぐる冒険〈下〉 (講談社文庫)

  • [著]村上 春樹

カテゴリ:
文庫 (257頁)
ISBN:
4062749130
発売元:
講談社 (2004/11)
価格:
¥ 500 (税込)
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6,473 位
評価: 4.0
2008
09/22
Mon

おとなのおとぎ話で、ちょっとぞくっとする

[No.17] posted by だん

10年ぶりに再読した。後半は一気に読んでしまった。同著者の「海辺のカフカ」のように、村上氏の作品の中には、なにかえたいのしれない、どろっとした悪が描かれている。暴力的でない、軽い空間なのだが、存在感があり、空気が冷たくなりぞっとするような感覚に読みながら驚かされる。再び読んだラストシーンも印象的だった。シンプルな表紙の絵の映画をずっと見ているような、村上ワールドに魅了される。

2008
01/07
Mon

どの程度不自由なのか。

20.0% (1 / 5)
[No.16] posted by grayfalcon

後半部では、北海道に到着して、いるかホテルで
羊博士に出会う。羊博士の「喰いっぷり」が良い。
実に「健啖」である。
人生のある時期に「破壊」を体験し、その後、
傍目からは、「不遇の連続」に見える様な人生を
送っていても、「生きているだけで天国」である。

更に、「僕」達は、問題の「別荘」へ。
羊男に出会い、そして鼠と再会。

最後に、エクスプロージョン!!
「黒服の男」が望んでいたものは
鼠の「弱さ」の強烈なオーヴァー・ドライヴに拠って
微塵に、吹き飛ばされる。

そして、「僕」は、北海道から戻り、
ジェイズ・バーに立ち寄り、
其の後、「喪失の浜辺」へ。

確かに、「星のある羊」に象徴されるものと、
日本近代史、特にアジアに対する外交、
或いは、日本人の精神史的レヴェルでの、
アジアに対する「態度」の問題は、
非常に興味深い。

しかし、10月の雪に埋もれた北海道の山奥の
「別荘」で、「引篭もった様に」、独りで待ち続ける
「僕」の日常生活が、延々と描かれた部分は更に印象的だ。
食事、掃除、ランニング...。
「日常」と言う「不自由」。
しかし、それ程、悪いものでもない。
この「日常」の場面は、丸で「冒険」には
為っていないが、結局の所、「僕」の帰り行く
「不自由」と言う「一つの場所」である。

「喪失の浜辺」が、現実に、完全に
失われて仕舞っても。

・・・・・・・・・・・・・・・・

「先生」が出版とマスコミを
支配する事で、戦後日本を
牛耳ろうとした事について。
「目の付け所」は良いと思う。
要するに「先生」は、広域で
話される・語られる「日本語」を
牛耳ろうとしたのだ。
単一の言語のみで意思疎通が
為される「村落共同体国家」を
支配するには、フツーに「上手い遣り方」
である。「村の言葉」を牛耳って仕舞えば、
「村」を、共同体として、牛耳る事が
可能である。何か、中高生の
「虐めグループ」と遣ってる事が
大して変わらんと言う気もするが...。
しかし、「先生」の支配の
及ばない「全き自由」の
領域が存在する。
それが「金融」の世界である。
『中流消失』の田中氏は
北大の学生だった頃、
1980年頃だと思うが
当時、既に其れを知っていたかも知れない。

また、日本の特質である
「地本主義経済」の部分が
完全に抜け落ちているのは、
如何にも、刊行された当時の
1982年と言う
バブル景気以前の日本を
象徴的に表している作品だと
思う。ロバート・キヨサキの
『金持ち父さん』シリーズが
日本に紹介されて7年以上だが、
21世紀になって不動産投資を
多くの日本人が当たり前の様に
遣っている。バブル期には、既に
普通のサラリーマンが、
ワンルームマンション投資をするのが
ブームに為っていたし。
其の意味では、「隔世の感」が
有り、ノスタルジックに読む事も
出来る。

タイトルでは「不自由」と書いたけれども、

Financial Freedom

の時代である。

2008
01/01
Tue

荒ぶる羊

66.7% (2 / 3)
[No.15] posted by twi

この「羊」はヘッセの描く荒野の「狼」だと思う。
日常とは別の次元に人を高めもすれば突き落しもするもの。
聖痕を与えるもの。
偉大な宗教開祖や革命家、凶悪な独裁者に共通するもの。
三島由紀夫や全共闘の学生達に憑依したもの。
「荒ぶる神」のようなもの。
「先生」の祖先はこのアイヌの羊飼い青年なのだろう。

2007
11/29
Thu

ラストのジェイとのやり取りがとても好き

[No.14] posted by やひろ

『羊をめぐる冒険』の下巻。
本作で、『僕と鼠』シリーズは完結となり、完結らしい展開を迎える。
ストーリー的には、起承転結のちょうど承あたりになる。
前巻で羊を探すことを余儀なくされた『僕』は、
耳専用のモデルをしているガールフレンドと北海道に来る。
手がかりは羊と山の映ったたった一枚の写真。
それだけ。
期限は一ヶ月。
見つけ出さない場合、『僕』は完全に失業することになる。

いわゆるムラカミ・ワールドと言われる
村上氏独自の世界観の原点とでも言うべき展開だ。
村上氏はなにか超常的な描写をしばしばするが
決してそれはファンタジーのような類のものではない。
もっと哲学的で、カフカ的なのだ。
そして本作は普通の本にあるべきものの一種の緊張感のようなものが
あえて意図的にそがれている気がする。
しかしそこで描かれる喪失感はなかなか重量感がある。
ゆったりと、しかし丁寧に描写は進行する。

個人的には、ラストのジェイとのやり取りがとても好きで感動的だった。
この無口な中国人は、キー・パーソンなのか、それとも単なるバーテンダーなのか、
よくわからないのである。
あまりしゃべらず、ただそこにいる存在であるのに、不思議と一番存在感がある。
どちらかというとハードボイルドなのだが、それとも少しちがうような・・・、
とりあえず涙が流れてきたので、★5つ。

2007
08/08
Wed

再読するほどに味わいが出てくる作品です

83.3% (5 / 6)
[No.13] posted by サトマン


 この「羊をめぐる冒険」では、「風の歌を聴け」、「1973年のピンボール」では詳しく描かれなかった、主人公「ぼく」と友人「鼠」の性格や特徴が詳細に書かれ、物語としても引き込まれる仕立てとなっています。

 まるで、音楽を聴くかのように、小説の言葉がはいってきます。

 羊探しの旅のなかで発見する、様々な出来事。それぞれが紡ぎあい小説を、深く味わいのあるものに仕立てています。

2007
05/09
Wed

ストーリーテラーとして歩み始めた最初の作品

80.0% (4 / 5)
[No.12] posted by cobo

村上 春樹さんが「風の歌を聞け」で、その独特の文体で、しかもいろいろな仕掛けをちりばめた小説でデビューして、続く「1973年のピンボール」でその手法を確かにした後の、鼠3部作の最後の作品。

ここで初めて、村上さんのストーリーテラーとしての小説を完成させます。

この作品から、村上作品には欠かす事の出来ない様々な事柄(主人公はトラブルに巻き込まれ、自身に非は無い点や、魅力的な彼女が大きな分かりやすい理由もなく主人公と行動を共にする事、固有名詞の使い方の絶妙さ、一癖ある脇役、などなど)が表れます。
私個人的にはやはり「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」には劣ると思いますが、素晴らしい作品です。

後の傑作「ダンス・ダンス・ダンス」を読む為にも、オススメ致します。

2007
03/11
Sun

半透明な世界感

50.0% (2 / 4)
[No.11] posted by 高血糖

風の歌を聴け、1973年のピンボール、
羊をめぐる冒険(前編)と少しずつ提示されてきた
ひとつの話がついに結末を迎える。
続くダンス・ダンス・ダンスの序章的ラスト。

*作品紹介には三部作とあるが2007年現在は四部作。
1.風の歌を聴け2.1973年のピンボール3.羊をめぐる冒険4.ダンス.ダンス.ダンス

2007
02/25
Sun

不思議な物語もやがて着地点を見つけて・・・

71.4% (5 / 7)
[No.10] posted by サイケデリック探偵団

 上巻での「僕」は妻に去られようが、会社がトラブルに巻き込まれようが、どうでもいいと思っているかのような無気力な印象の人物。どこか捉え所のない男で、彼が出会う人々も「特殊な能力の耳をもつ女の子」とか「羊に取り付かれた大物右翼」とか現実感が持ちにくい感じだ。そのために物語の世界に入り込むのがむずかしかったが、下巻にはいると大きく物語も「僕」も動き出す。
 下巻では「羊博士」や「羊男」など印象的な人物が絶妙にストーリーに絡んでくる。最後の山奥での出来事は、幻想的でありながら、熱い血の流れを感じさせる感動的なシーンで、この長い小説をほっぽり出すことなく読んだ者へのプレゼントといえる。上巻の停滞感も含めて、細部まで計算しつくされた小説ではある。

2006
07/27
Thu

村上春樹はとっても政治的?

47.4% (9 / 19)
[No.9] posted by オハラ翔子

この「羊をめぐる」は本当に珍しく破綻のないすっきりした長編です。それは多分この当時の作家が大体のラストシーンを想像しながら書いていたからではないかと思います。つまり、目的地がはっきりした旅なので、途中いろいろな紆余曲折があってもそれなりに筋道立ってなんとか最後まで読んで行かれる。でも最近の村上春樹の長編はこうした目的地が不明確でどこに連れて行かれるのかわからない。作家本人も言っていることですが、ロール・プレイング・ゲームのように行き当たりバッタリに物語が続いて行く。だから、「ねじまき鳥」の加納姉妹のように前半は意味のあった登場人物も最後には忘れられて、何のために登場して来たのか判然としなくなる。でもこの「羊をめぐる」には、こうした迷子の手法が取られていないので、従来の小説に馴染んでいる読者には読みやすい作品だったと思います。

結末は非常に政治的な示唆に富む印象的な幕切れです。「ねじまき鳥」も非常に政治的哲学的歴史的な考察に富んでいますが、この「羊をめぐる」にも当時プラザ合意で一気に円高になり、世の中が一変した時代、自分の家が二倍にも三倍にも不動産価値が出た時代に、全共闘学生運動を経験した作家が、何とかしてこうした物質文化マテリアルワールドに順応しようとしてまがりなりにも導き出したそれなりの解決、問題の答えが描かれています。それが、この「羊」の中の副主人公「鼠」の最後の行動に表れていると思うのですが、どうでしょうか?

2006
05/09
Tue

奇妙で、おもしろい。そして、せつない。

50.0% (4 / 8)
[No.8] posted by 天国

と、いうのは糸井重里のマザー3のコピーですが、
まさにこれが本作を言い当てている言葉と言えるでしょう。

上巻では、“奇妙で、おもしろい”小説でしたが、
下巻にはいると“そして、せつない”が加わります。

ネタバレになってしまうので、詳しくは言いませんが、
ラストは涙なしには、読めませんでした。


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