- [著]浅田 次郎
- カテゴリ:
- 文庫 (402頁)
- ISBN:
- 4062750414
- 発売元:
- 講談社 (2005/04)
- 価格:
- ¥ 660 (税込)
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紫禁城の珍妃の井戸に行ってきます。
蒼穹の昴に続く、浅田次郎の中国歴史ミステリーシリーズ。
義和団事変の混乱の中、西太后に殺されたとされる、
光緒皇帝が寵愛した珍妃。
彼女の死の謎を追う、4人の外国人貴族たち。
そして、それぞれの思惑で証言する7人の発言。
美しき妃は、なぜ、誰に殺されたのか。
戊戌の新政の失敗で幕を閉じた蒼穹の昴。
その後、更に没落の色を濃くしていく清朝末期の
様子を、光緒皇帝の愛妾・珍妃の謎を追う形で、
描いている。
蒼穹の昴を読んだものとしては、登場人物のその後を
知ることが出来るっていう意味合いもある。
蒼穹の昴では、春児と史了の周りの出来事を中心に
描いていましたが、本作では、同じ「珍妃の死」という
出来事を、7人の証言の元に検証するというスタイルで
描かれている。それぞれの立場、思惑で少しずつ
違うことを言う証言者たち。
最後の光緒帝の発言が事実という形で小説は終わっているけれど、
果たして史実はどうなのか。
答えはひとつなんだろうけど、宮殿の奥深くで起こった出来事の
真相はいかに。
中国人が義和団事変を歴史的にどう捉えているのか
よく知らないけれど、外国人に侵食され、植民地化する
清国を憂い立ち上がった義和団と漢人からの一方的な
支配に耐え切れず声を上げたチベットの人たちと、
どんな違いがあるのだろう。
いけない。話が脱線してしまいました。
また、こうやって紫禁城の中の話を読んでいると、
是非その場に行って、見てみたいという気持ちが
再びこみ上げてきました。
というわけで、この週末にまた北京に行ってきます。
珍妃が暮らした景仁宮を、そして彼女が最期を迎えた
その井戸をこの目で見てこようと思います。
歴史・国際・ミステリー、そして、中国、4つの要素あり
ミステリーとしても面白く、日本ロシアドイツ英国の国民性の違いもよくわかり、義和団事件の清朝への影響なども勉強になりました。
よくできているけど、前作に比べるとやや拍子抜け。
「蒼穹の昴」の続編というか番外編というべきか。実際にあった光緒帝の側室珍妃の殺害事件の犯人を関係者の証言を元に検証する話。(通説は、西太后が命じて殺させた、ということになっている)
「蒼穹〜」の世界観、キャラクターをそのまま引き継いでいるので、前作が好きな人は期待したくなるが、個人的には、犯人を捜そうとする背景や、列強の中国侵略、皇帝という地位と人間性などが短編に詰め込まれている感じで、前作にくらべるとやや拍子抜けという感じ。
春児、文秀、西太后というメインキャラクターが出てこないせいか(敢えてそうしたのだろうけれど)物足りなさもある。ただ、やっぱりよく取材されているんだろうな、という箇所も多いし、「泣ける」シーンもあってよくできていると思う。独特の歴史解釈(というか創作)もさすが。
技を感じる作品?
蒼穹の昴みたいな壮大なスケールの作品の後、
ちょっと軽快な、本作のような作品も書ける浅田次郎のテクニックを感じます。
蒼穹の昴と流れを汲むけれど、まったく別の作品だと思うと
味わい深く楽しめる物語です。
蒼穹の昴を読む前に読んでしまいました。
私にとって初めての日中歴史物だったためか、登場人物の名前や背景を覚えるのがまず大変。更に通勤途中のバスで読んでいたので、毎回読み始めに頭の整理をしなければならないのが厄介でしたが、基本的に「殺人事件」というオドロオドロしい雰囲気もなく楽しんで完読する事ができました。
、が恐らく理解度は正直70%位かも...
よって”蒼穹の昴”も既に手元にあるのですが、もうちょっと間を置いてから読んでみようかなと思っています。
各場面に登場する子供の動きが”王妃の館”とちょっとかぶっている気がしたものの、中国感満載で読破後に中華料理を食べに行ってしまいました。
小説の面白さよりメッセージを優先した。
他の方も書いていますが、蒼穹の昴の外伝として読んだほうがよく、したがって、蒼穹の昴を先に読んだほうが本書を理解しやすいのですが、小説の出来としては、蒼穹の昴の方が上なので、蒼穹の昴と比較するとやや失望してしまうという厄介な(?)問題を抱えた本です。でも、単体として十分面白いので星4つとしました。
同じ著者による「壬生義士伝」と同様な手法をとり、いろいろな人物とのインタビューを通して、ある事件(壬生義士伝の場合はある人物)を解き明かしていく形をとりながら、インタビューされる人物や当時の世相までが明らかになっていき、全体としてひとつの真実に収斂して行くという形をとります。あくまでもフィクションですから、この場合の真実とは著者のメッセージに他なりません。ちなみに、壬生義士伝の場合は、小説として十分面白く、「真実」への収斂の仕方が無理なくリアルであったのですばらしい小説に仕上がりました。他方、本書の場合、「真実」への収斂の仕方に無理があります。たとえば、英・独・露・日の高官が、どうして珍妃の死因を必死で探ろうとするのかの動機が納得できません。小説の冒頭で、その理由は示されますが不十分だと思います。また、インタビューする相手によって、相互に矛盾する証言が得られますが、証言をした本人が、その証言を翻すに決まっている人物を次の証人として推薦するというのも不自然です。また、高官たちが襲われる事件が起こりますが、その理由が十分には明らかにはなりません。
名手である浅田さんをして、どうしてそういうことになったかというのは、本書の最後のどんでん返しで明らかになる真実=著者のメッセージで明らかになります。ヒューマニストとしての浅田さんが、蒼穹の昴の創作過程でいきついたひとつの思想(壬生義士伝におけるメッセージとも重なる)を主張するためにこの本は書かれたと私は思います。「歴史は繰り返す」の格言通り、昔、清国で生じたことは、現在も国をかえて行われています。そのことが、本書を書いた浅田さんの動機で はないかと私は思いました。
シナリオの力
『蒼穹の昴』を読破した後に呼んだほうが面白いですが、そういった歴史背景等を考慮しなくても、充分に楽しめる一冊だと思います。
「誰が珍妃を殺したのか?」をキーワードに話が展開していくのですが、若干マンネリ化していた浅田作品に新たな一石を投じたような、改めて浅田次郎のシナリオ力(筆力)に感心できる一冊です。
『蒼穹の昴』が長編すぎて手を出せていない方でも、是非読んでみてください。
「誰が珍妃を殺したのか?」犯人探しだけでも充分に楽しめますよ。
おもしろい but 物足りない
蒼穹の昴を読んでから手をつけないと、最初からなんとなく中途半端な感覚を受けると思います。つまり著者の静かな意図としては、蒼穹の昴の読者が次に読む、という前提があって仕上げた作品だろうと考えられます。もちろん単品として読んでもそれはそれでショートミステリーとしてのおもしろさはありますが、なにしろ登場人物のほとんどすべてが蒼穹の昴出身者ですから、やはりあの超長編を押さえたうえでページを開いたほうが取っ掛かりはいいでしょう。
しかし逆に、蒼穹の昴のペースとノリのまま無邪気な期待でページを開くと、誰もが確実に失速感を味わう事必至です。物足りないのです、内容もストーリー展開も。そして、物足りないままに終わってしまいます。ちょとした不完全燃焼感が残るかもしれません。
西太后との政治対決に破れた光緒帝の寵姫である美しい珍妃は、清朝帝国崩壊寸前の混迷を極める紫禁城の片隅で、何者かの手によって井戸に投げ込まれ暗殺されてしまいます。これは史実で、井戸は現在でも残っています。また、珍妃の肖像も残っているので、興味のあるかたはインターネットで検索してみてください。涼やかな切れ長の目が美しい姫です。
しかし、現実にわかっているのはここまで。西太后の指示による暗殺という噂は絶えないものの真実は依然として闇の底に沈み、判然としていません。その謎の部分に焦点を当てて、蒼穹の昴メンバーたちがひとり語りにそれぞれの思いや知っている事を述べ合い、その話がまたいちいち食い違ってゆく、というミステリーオムニバスのような形式で本書は進みます。
そして著者なりの美しい結果には違和感を覚えるかたも少なくないでしょう。ただ、現実として謎のまま解き明かされていない史実に一応のまとめをつけるとなると、やはりこうならざるを得ないのかもしれない、とも感じつつページを閉じました。皆さん、どうお思いでしょうか・・・。
個人的な意見
本来の話の大筋に対する感想とはいえないが、個人的にはとても読みたかった事が描かれていたので、それだけでも星4つである。
つまり、私は「蒼穹の昴」を読んでいる時点から、「蒼穹の昴」の主人公たる「春児」が、作中の登場人物・第三者からどのように思われていたのか、とう受け止められていたのかという事が気になってしょうがなかったのである。
その一番気になっていた事が、ほんの少しであれ垣間見る事ができただけでも嬉しかったので、全体的な面白さ云々をさしおいて、星4つをつけた。
本編で使い切れなかったスタイルのお蔵だし?
あざとくもありながら一気に読ませきる浅田氏の筆力は、「蒼穹の昴」で如何なく発揮されたが、しかし氏は調べた事は全部出さねば気がすまない性質なのでしょう。ちょっと本書はクールダウンした様な。
閑話休題。
西太后以外にも醇親王、恭親王、李鴻章、袁世凱、珍妃はじめ結構皆、写真が残っていますよ。読後に月餅妃の写真を眺めるのもリアル感があって余韻に浸れます。
