- [著]姜 尚中
- [編集]『アリエス』編集部
- カテゴリ:
- 文庫 (295頁)
- ISBN:
- 4062750449
- 発売元:
- 講談社 (2005/05)
- 価格:
- ¥ 540 (税込)
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姜尚中入門にはおそらく適さない
インタビュー形式なのだが、姜尚中はともかく、インタビュアーのアリエス編集長の言うことは、予備知識(例えば丸山真男の本を読んでるだとか)がないと若干わかりにくい。要するに、自分の言葉で語ってないのだ。地に足をつけず、頭の中で借り物の思想をこねくり回しコミットすべきイデオロギーを探す若者ような、青臭さを感じた(若者っていう年でもないらしいが)。
姜尚中の持論については、対談なので仕方ないが、あまり整理されて書かれてはいない。かといって、「いちげんさん」の心を捉えるようなツカミもない。いかにも一般向けのようなタイトルや帯につられて買ってみたが、中味は専門的、というよりは排他的なのである。「もっと勉強してから読みなさいよ」とでも言わんばかりの雰囲気が満々なのだが、はっきり言って勉強してまで理解したいと思える魅力も感じないのである。
「朝まで生テレビ」などで姜尚中を観て、この人の本を読んでみたいと思った読者(私もだが)は、ちょっと違和感を覚えるかもしれない。
あと、内輪のおだて合いみたいな空気もちょっと気持ち悪い。
おもしろかった
哲学者である姜尚中氏のインタビュー集。
彼自身がメディアに出るようになったきっかけは若一氏との対談で「普段着の人間は物を食べて恋もして、いろんな欲求も持っているし、悩んでいる。そういう多様性を、もっと出していってもいいんじゃないか、自分も在日問題以外のことを発言してもいいんじゃないか、と。むしろ発言しなくちゃいかんと思いはじめたんです。それが、ぼくがメディアに出て発言する理由といいますか、ひとつの大きなキッカケでもあったわけです。ちょうど湾岸戦争の時で、専攻の政治学者として出演するということで。」と述べられている。
たしかに人間とはニートやオタクや学者だけの存在ではなく、恋をするものや悩んだりするような多様性があってもいいのかもしれないし、亜細亜共同の家はその多様性を包括するものとなりうるだろう。
問題は、共著である『グローバル化の遠近法』や『東北アジア共同の家をめざして』での「中国はこれから、最も民主主義的な国になる可能性があるのです。」という言葉の真意である。現時点から考えればアメリカのような民主主義国に陥ってしまう、とも読めるが、『東北アジア共同の家』発表当時(2001/11)からすれば、ネガティブな意味をこめたわけでもないと読める。この整合性の問題を解くことこそ亜細亜コミュニティを作る力となるであろう。
虚妄を希望につなげるためには
姜さんの主張をものすごく単純化すると、
・結局東北アジアがこんなにも分断されもつれているのはいまだにアメリカの世界戦略に組み込まれているからであって
・本来は文化的にも地政学的にも日韓は東北アジア共同体を構成すべきであり、
・その鍵が韓国・北朝鮮の南北統一であり、日本はこれにコミットしながら東北アジア共同体をつくりあげていくしかない
ということになるのではないでしょうか。
マクロ的にはある意味自然な考え方とも言えなくもないけれども、今の状況を考えるとあまりにも遠い虚妄に見えざるをえないのも事実。
むしろ韓中抜きの米豪ASEAN+インドの海洋国家連合論の方がはるかにリアリティがあるように思えてしまう
日本人を啓蒙するのもよいのですが、おそらくそれと同時に重要なことは韓国側の言論をせめて日本程度(十分でないにせよ)には自由化して、活発な議論が可能となる場を相互に持てるという状況をつくることではないでしょうか。冷静に眺めてみても、姜さんがシンパシーを寄せる韓国の386世代(今の盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権を支える世代)はあまりにも不寛容過ぎて議論さえままならないというところに当面の大きな問題がありはしないでしょうか。姜さんには、日本側に対するのと同様に、韓国側にもアナウンスをしていただいて、少しでも議論の場が広がるようになっていくことを期待しています。
最近の姜尚中
「朝ナマ」等でおなじみの政治学者、姜尚中東大教授へのインタヴューを纏めた作品である。時事問題に絡めて、姜教授の持論である北東アジア諸国(同構想の詳細は、姜尚中『東北アジア共同の家をめざして』(平凡社)を参照のこと)の連帯を易しく説く。
最近同教授が「学者としての本業の研究をそっちのけにして」メディアで時事的発言を繰り返すことについて批判があるようだが、教授はこう述べる。すなわち、昨今「強く思うのは、メディアという曖昧な存在によって、これほどまでに歴史が変えられていくのかということだ」。「現代社会にあって商品化されない思想というものはありえない」。そのような現代社会では、マジョリティに訴えかけるには「メディアこそがひとつの主戦場であ」り、同趣旨のことは「アメリカのプロパガンディストも」述べている。自分は「少数者とマジョリティを分断している境界を崩」すためにメディアに出演し、メディアを変える役割を引き受けるつもりだ、と(以上「前書き」より)。つまり、真の共生社会を作るためには、マジョリティにメッセージを届ける必要がある。そのために、自らの政治的発言には自覚的に、メディアに出演すると言うのである。
「戦後民主主義」の位牌を胸に(=戦後民主主義を総括しつつ)、「『新しい』戦後民主主義の虚妄」に賭けてみたい、と教授は言う。覇権国家アメリカ、「帝国」として台頭しつつある中国の二大国の中で、東アジアと世界に安定をもたらすためには? そのための東北アジア共同体構想なのであり、だからこそ周辺諸国との宥和が必要なのだ。また、姜教授の批判者が持つステロタイプなイメージに反し、本書では朝鮮についても従来より踏み込んだ発言をしている。理解しやすく値段も手頃、お勧めの一冊だ。
