- [著]宮尾 登美子
- カテゴリ:
- 文庫 (414頁)
- ISBN:
- 4062756854
- 発売元:
- 講談社 (2007/03/15)
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筋を通した人
結婚したら嫁ぎ先の人間。などと今時言ったら、笑われそうです。 昔はそういうもの。 聡明な分、背負うものも大きく、心労も大きく、大変濃い人生だったんでしょう。 余生も徳川のため。と、気丈な方だったんですね。 女としては幸せ遠くとも、晩年は子や、親族に囲まれ、親しまれ、幸せだったんでは。 参考にします。
宮尾版篤姫にリアリズムと存在感
こちらが原作なのに失礼を承知で敢えて「宮尾版」と銘打たせて頂いたのは、私自身が大河ドラマをきっかけに本書を手に取った為です。
本書は大河の原作ですがそこにには、尚五郎の淡い初恋のエピソードも、後に維新の英雄となる若き日の西郷や大久保との交流も、阿呆を装うインテリ家定との純愛も描かれていません。
代わりに、政争の道具とするために、自分の一生から女の幸せと奪い去った養父斉彬への不信感を募らせたり、
いつまでも皇妹との意識を捨てきれず徳川の女になりきらない嫁・和宮への苛立ちのあまり、自らが嫁を折檻する悪夢にうなされたり、
妊娠どころか生涯男子と交わることなく終わるであろうわが身とひきくらべ、和宮懐妊の噂に思わず悲しい嫉妬してしまう等
等身大の篤姫がそこにはいました。
大河に感動し、本書を手にとられた方には少々期待外れかもしれません。しかし本書の篤姫に圧倒的な存在感・リアリティとそこからくる魅力を感じるのは私だけではないはずです。是非是非大河ドラマだけではなく、もう一つの、そして真実の(少なくとも私はそう信じる)篤姫に会いに来てください。
最後まで読みましたが・・・
和宮が嫁いでくることで、京風と江戸風の対立が起こる。現在でも異なる2つの風土が、情報の少なかったこの時代に理解しあえるはずもなく・・・下巻のほぼ中頃まで続く女のイザコザにうんざりしながら、何とか最後まで読みました。大政奉還、幕府の消滅、その頃になってやっと心が通じる。はたして本当に通じるものなのか疑問です。一見、静かな晩年をおくるようですが、篤姫の一生って何だったんだろう?大河ドラマも後半はうっとおしい展開になるのかな・・・
篤姫
全く本読まないけどめっちゃハマって暇さえあれば読んでます生き方を見直しました人生観変わる
江戸城大奥から見た幕末史そして歴史小説の醍醐味
時代に翻弄されながらも、気高くわが道を往く篤姫の姿を描いた下巻。上巻に続いて、夫(徳川家定)や義父(島津斉彬)の死、幕末の動乱、和宮との確執と和解、徳川家再興等々、波乱に満ちたその日々が流麗な筆捌きで描かれる。(江戸城大奥からみた定点幕末史という意味でも、多くのことを学んだ。)それにしても、男性的視点から描かれることの多い幕末期にこのような女性がいたとは。島津家分家の娘から御台所(御台様)へというその数奇な生涯は、正にこの時期の日本の地殻変動(社会変動)を象徴する出来事でもあるようにも思われてならない。
天璋院の圧倒的格調高さに敬服。
23歳の天璋院には辛い時が流れる。夫の十三代家定の死、島津斉彬の死が相次ぐ。特に家定の死は7月6日、大奥の天璋院へ事実報告が8月1日というありさまに、篤姫は悲しみより激しい怒りを表にぶつけることになる。御台所も将軍の看病は許されず、あくまで表役人の手に任されるという世界だ。よって大奥の篤姫の表に対するイライラは最後まで続く。十四代継嗣問題に絡んでこの時から篤姫の徹底した慶喜嫌いは始まり、最後まで続く。そしていよいよ和宮の降嫁が実現する。しかし京風、公家風を頑なに守る宮、その京方のお付き取巻きの言動、大奥内での対立、誤解が誤解を呼び、天璋院の晴れない気持ちは江戸城明け渡しの最後まで続いた。しかしながら時代の流れもあり、その後に仲睦まじい関係になったことは本書の読後感を更に良くした。天璋院篤姫の運命と一生を見て、素晴らしい才女であることを再認識できた。
この時代に生まれなくてよかった
作者宮尾登美子さんが末尾の「書き終えて」の中で「歴史に女の実績をほとんど記していない日本の男社会の中で,女が如何に無視されていたか,ペンをおいていましみじみ考えています」と記しているが,作者の意図というか感慨どおりの感想を,読後の今,抱いている。
薩摩島津の分家の出ながら一躍「将軍の正室」の座に着き,大奥3000人の女性たちを従える身となる篤姫は,大いに張り切るわけであるが,
歴史を後から眺める我々の目には,彼女が単なる政略の道具として扱われ,崩壊に向かいつつある将軍家に敢えて放り込まれたのだということが明らかである。
しかも,この時代のことだから,大奥3000人の総帥といっても,
それは「大奥」という狭い社会の中だけのことであり,
どんなに息巻こうと歯軋りしようと,男性が仕切る表とは分断されて世の中の情報も入らず,
篤姫は,自分がこうと信じた方向に突き進み,独り相撲をとるほかない。
女の自分としては,いやはやこんな時代に生まれなくて幸いであったというのが正直な感想であり,
自分に否応なく与えられた人生を全力投球で生きた篤姫に対し,切ないような気持ちにもなった。
ちなみに,下巻最後の作者の対談がおもしろい。
歴史の表舞台に登場しないため,篤姫に関する資料も乏しい中,断片的な情報を拾って
その人の人生をフィクションとして構築し,そこに作者の意図を込めるさまが
かなり分かりやすく説明されており,作者自らの解説として楽しめた。
上巻と同じく、女流作家ならではの感覚が見事
篤姫といえば和宮さまをいじめた怖い姑というイメージだったが、
本当にそうだったのかという疑問が生じた。
作者がこの小説を書いたきっかけは、そのようなことだったとのこと。
下巻では、いよいよ、この和宮の降嫁以後が描かれます。
怖い姑といっても、篤姫が和宮の義理の姑になったのは、
なんとまだ26歳のこと。
ちなみに、嫁いだ将軍が死に寡婦となったのが22歳。
小説の中では、ついにバージンのまま寡婦となったとされています。
そのため、若い嫁に対する女性としての嫉妬の感情なども描かれ、
そのあたりの描写がとても興味深かったです。
他方で、大奥に仕える女性の多くは「生涯不犯」を掟とされ、
それなのに将軍のお渡りの際には寝室に不眠で控えなければならず、
女として苦しみに耐えねばならなかったといった描写があり、
ここでも女性ならではの感覚と描写の巧みさが光っていました。
徳川幕府崩壊後、篤姫はある意味大奥から開放され自由の身となり、
和宮ともむしろよい関係を築きます。
そこに大きな救いがあり、読後感はさわやかなものがありました。
完結!
将軍家定の急死、継嗣を巡る幕府内の対立、
養父斉彬の死。
激動の幕府を徳川家の人間として徳川家定の為に生き抜いた
篤姫は明治17年、48才でこの世を去りました。
まさに偉大な生涯。
宮尾登美子さんの本を読んだのは、これが初めてです。
高知市生まれ。他には「義経」等も書いています。
葛藤と耐忍、古い生き方ではあるけれど
『鬼龍院花子の生涯』で土佐の極道とその女達を描いた宮尾登美子が、幕末の大奥にあって“負け戦”を戦い抜いた天璋院篤姫を描く。
二つの対照的な世界にも見えて、将軍職の跡目争いの熾烈さやその手段を選ばぬさまは実にむごたらしいのです。しかし、宮尾氏はそれをむしろ淡々とつづっています。
こうしたなか、“表”(徳川幕府)から隔離されている大奥は、まさに裏社会ながら、将軍の妻として、とりわけその後継者をあげることに関与するだけに、御台所や側室達、ご生母らの実家と幕府の関係づくりにも寄与し、相当な政治力を持っています。
薩摩・島津の一分家から、藩主島津斉彬の養女にとりたてられた篤姫は、さらに京都の近衛家の養女というかたちで将軍家に輿入れした篤姫は、栄達をになったようで、家運の傾きに似て病弱な夫とわずか19ヶ月の結婚生活の後、その死去にともなって尼、天璋院に。その後も大奥の一切を取り仕切る相談役として大奥に、徳川に留まります。
生まれの島津藩とその盟友水戸藩の推挙する慶喜を次代将軍に迎えるためのパイプ役として、しかし婚家の徳川家との間で雁字搦めの立場にあって、女性として人間としての葛藤や苦しみを覚えながらも、江戸城明け渡し、そして「瓦解」(徳川側から見た維新のこと)をみてなお、徳川に尽くし続けました。
篤姫は、徳川のため、天下のため、を、信じる幼い熱血漢として入輿します。武家の娘に生まれた以上、結婚相手もまた奉公先の主人であってロマンチックな期待もしてはいないのですが、権力抗争にもまれるなかで、癇癪を起こして扇子を投げつける、あるいはそれを堪える、といった場面が何度もあります。後ろ盾が次々と没し、飼い猫のさと姫を抱き上げ、桜島の見える光景を、生母のお幸の方を懐かしむ天璋院は、降嫁した和宮が、生母も女中も伴って輿入れしたうえ、何かと天皇を通じて圧力をかけてくることに、辛抱を重ねてはいても耐えかねる思いを抱きつつ、一本気ながらどこかいじらしいのです。
新装版の巻末で綱淵謙錠氏との対談にある通り、厳密な時代考証から見れば問題点もないわけではないのですが、資料を読み込み、郷土史家や、島津家、徳川家の関係者からの取材も踏まえた力作です。
フィクションとしても、ぐいぐい引き込まれて一気に読み通しました。2008年の大河ドラマ化で、これを現代女性の生き方とどう重ね合わせるのか、楽しみでもあります。
