- [著]フランシス・フクヤマ
- [著]会田 弘継
- [著]Francis Fukuyama
- カテゴリ:
- 単行本 (255頁)
- ISBN:
- 4062820323
- 発売元:
- 講談社 (2006/11/29)
- 価格:
- ¥ 1,890 (税込)
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「アメリカの終わり」にはまだ早いが、すくなくとも、「アメリカの終わり」の始まりを感じさせる本である。
その後の世界の動きは承知のとおり、9.11に象徴されるように、世界各地でテロが頻発するなど、不安定要因が拡大してきている。
そういった中で、自身をネオコンと称していた著者が、今のアメリカの動きを批判し、どういう道を探るべきなのかを提言しているのが本書である。
今の国連は、大半の活動が機能不全の状態に陥っており、改革するよりもむしろ多数の国際機関が安全保障や経済、環境などの問題に分担して担当していく姿が望ましいとしている。
また、「予防戦争」としたイラク戦争は失敗であり、アメリカが侵攻したイラクを見て、北朝鮮やイランが核開発のペースを速めることにつながったと分析し、ここのところの、安易に軍事力に頼ってばかりのアメリカへの、鋭い警鐘となっている。
「アメリカの終わり」にはまだ早いが、すくなくとも、「アメリカの終わり」の始まりを感じさせる本である。
ネオコンの適切な解説と優れた提言
白状すれば私は原書で読んだので、この翻訳書は読んでいない。
ネオコン=新保守主義は、よく語られる割に私も含めて多くの人はキチンとは知らない。そういう人への格好の解説書になる。またネオコンの立場から米外交政策への優れた提言がある。
筆者は自分はネオコンだがイラク戦争には反対だという。今頃戦争反対と言っても後出しジャンケンだ。本書で「自分は反対したのだが無視された」とか「反対しなかったことを後悔している」とか明記して欲しかった。この点が不満な他は、読者に深い理解と発想を提供する優れた本だ。優れた発想の中には次のような考えが含まれ、大変参考になる。
(1)国連のような国家の参加機関ではなく、ISOとかNPO/NGOのような非公式な国際機関が成果を上げている。この分野にもっと注力すべし。
(2)テロは政治問題というよりも本質的には経済国際化の副産物で、西欧の民主国家で孤立化したアラブ移民が原理主義に接して起こしている。
(3)民主国家建設の前に国が確立されなければならないことをイラク政策では忘れている。
(4)外国軍介入で民主国家が出来た例は日独を例外としてほとんどない。
(5)外国から非軍事的Soft Powerで支援された国内勢力が民主国家を建設した成功例は多い。
(6)米国民は国内では権力集中を忌み嫌うくせに国際舞台では「付いて来い」と言う。これは矛盾かつ間違いだ。
これらの考えに基づき、米国が採るべき外交政策の提言に多くの頁を割いている。
「重層的多国間主義」の内実
アメリカの知性の底力を感じさせる論旨である。散々ユニラテラリズムだ、有志連合だと言っておいて、困ったら国連重視の多国間主義へ退却かと思ったらさにあらず。
単独主義か国連重視かの二者択一論はとっくに脱している。国連の非効率、腐敗といった限界は十分踏まえ、一方で企業が先導する経済のグローバル化で民間主導の「多国間主義」が急進展している現実をしっかり捕らえている。
本来、この「重層的多国間主義」のようなコンセプトはやたらに国連や国際機関をありがたがって見せる日本の外務省が真っ先に描いてしかるべきだ。いまだに国連中心の集団的安全保障にこだわっている民主党の小沢一郎氏もこれくらいのオルタナティブを提示できれば、政権交代の資格も出てこようというものだが……。読了後は日本の知的敗戦を感じてしまった。
