- [著]金 聖響
- [著]玉木 正之
- カテゴリ:
- 新書 (269頁)
- ISBN:
- 4062879158
- 発売元:
- 講談社 (2007/11/16)
- 価格:
- ¥ 798 (税込)
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豊富な経験、知識、情熱、ユーモアによる優れた音楽書
本書は著者の金聖響さんの次のキャラクターから、深い洞察の上に見事に奏でられた優れたベートーヴェンの交響曲案内であり、9つの交響曲がその当時のベートーヴェンの外的・内的状況やピアノソナタ・弦楽四重奏作品を視野に入れて一曲ずつ解説されていて、それぞれに深みがあります。
1.ベートーヴェンを自分の原点とするほどの強い想いと情熱を持つ
2.実績ある現役の指揮者(演奏家)である
3.ボストン大学哲学科卒で幅広い知識、客観的視点、さらに独自の視点を持つ
4.ベートーヴェンゆかりの地を訪れて得た実感覚や音楽史実を踏まえた上で洞察する
5.大阪人(出身)としてのユーモアを持つ
全体として印象に残ったのは、他の作曲家と違いベートーヴェンの全ての交響曲は一曲一曲の全てが完全に独立していて、第5番の運命は物語性を持つと同時に一音も修正する必要のない完璧な構造を持つ作品という指摘と解説でした。
楽聖ベートーヴェンとその曲に興味を持たれる方はこれ以外にも様々な驚きや発見があると思います。ベートーヴェンは良く知らないと言う方には彼とその作品を知る良いきっかけになるのではないでしょうか。
蛇足ですが、金聖響さんが千住真理子さん出演のヴァイオリン協奏曲を指揮された後に、達成感に満ちた表情でお二人が握手された姿が印象に残っています。これまでクラシックに縁がなかった方もこれを機に聖響さんや千住さんのコンサートに足を運んでみると、何か新しい音楽の発見があるかも知れません。
独断と偏見の放言暴言:愉快にして奇怪
ベートーヴェンの九曲の交響曲について書かれた本、と思ってはいけない。素晴らしい指揮者である金氏が、ベートーヴェンの交響曲をネタにした与太話をしている本である。それぞれの交響曲に大体20〜30頁を充てているものの、実際にその曲に即して語っているところは少なく(例えば四番の第四楽章なんかたった四行です)、話があっちに行ったりこっちにずれたりで横道にばっかり紙数を割いている。おまけに贔屓の引き倒しや(五番は完全な音楽で、構築された完全な構造物だ)、事実誤認(ルイ十四世は「ベルサイユのばら」で描かれた時代だ)、感覚だけの思いつき(智天使ケルビムと地獄の番犬ケルベロスの関係)、自家撞着(「運命」なんて表題は忘れろといいながらあとで自分では使う)など、実に無碍な放言三昧。しかし、それがもの凄く面白い。音楽に真摯に立ち向かっているプロの指揮者、しかも「円熟」とか「完成」とかいう境地でない現在発展形の指揮者の正直な暴言など、聴く機会はめったにない。こういうことを考えて指揮しているのか、ということに感銘をうける。古典派好みの方でなくても一読の価値あり。
こんな本が欲しかった
ベートーベンは子供のころから良く聴いていて少しは知っているつもりでしたが、この本を読みながら聴いてみると、全く新しい音楽を始めて聴くような感じで楽しめます。あまりなじみのなかった1番2番4番8番もいいもんだな。途中の楽章だけ聴いても楽しめるものだ、9番の第3楽章てこんなに美しい音楽だったんだ。フルベン、カラヤン・・・などの大指揮者による演奏とは別に作曲された時代のオーケストラに近い演奏をする人たちがいて、違った発見がありそうだ。・・・
私のような素人クラシックファンにやさしく教えてくれる本です。こんな本をブルックナー、バッハ、モーツアルト・・・と出してくれることを期待してます。
演奏側から見たベートーヴェンの魅力
クラシックのCDを買えば、曲についての解説がついていることが多い。
だがそれは音楽評論家の「聴きどころ解説」が多く、演奏する側が曲について語ってくれることは意外と少ない気がする(著者も書いているが、「演奏された音楽がすべて」という風潮があるからだろう)。
だがそれは非常に興味深いものだし、本書のような存在は、クラシックの裾野を広げるためにも重要な役割を果たすことだろう。
しかもそれが、ベートーヴェンの交響曲すべてについてだというのだから嬉しい。
本書は二部構成になっており、指揮者の金聖響氏とスポーツライターの玉木氏との対談、そして金氏による9つの交響曲の解説からなる。
言うまでもなく本書のメインは金氏の交響曲解説である。
よく知っている曲についての解説が面白いのは当然だ。
「こんなところに気をつけているのか」
「こんな魅力があったのか」
という発見の連続で、どの曲も改めて聴きなおしたくなる。
そして交響曲1、2、8番など、それほど知られていない作品の魅力も、本書ではあますところなく伝えてくれている。
ベートーヴェンの交響曲はどれも一律に高い完成度を誇っているのに、なぜ3、5、9などの有名曲と、そうでない曲との差がついてしまったのかについての金氏の見解は、特に興味深い。
あとがきで「続編」についてちょっと触れていたが、ぜひ出してもらいたいものだ。
ベートーヴェン再入門!
改めてベートーヴェンを聴きたくなりました。
「奇数番号は男性的、偶数番号は女性的という分け方は間違いです」と
言い切るところや「2番は3番の陰になってしまっているが名曲だ」な
ど、我が意を得たりと思うことしきり。かねがね、2番は絶対に名曲だ
と思っていた私としては、うれしい限りです。
曲の解説は金聖響さんが書いていますが、筆致がとてもやわらかく、肩
の力を抜いて読めます。すこし「(笑)」が多いのが気になりましたけど。
LPレコードもひっぱり出して、CD全集ともども聴き直してみます。
魅力,完璧さからダサさまで ?!
本書は序奏とコーダとして対話があり,そのあいだに金によるベートーベンの 9 個の交響曲についての解説 (変奏曲?) がある構成になっている.他の作曲家の交響曲とくらべて非常に特徴的なのは,1 曲 1 曲のすべてが完全に独立していて,構造や作風やつたえようとしたメッセージもすべてちがうと書いている.また,交響曲第 5 番が古典派としての頂点としての完璧な作品であり,同時に作曲された第 6 番がロマン派への入口だという.ここまではだいたい私自身がかんがえていたことと一致している.やや意外だったのは,交響曲のなかにあるダサいところや,よわいところが指摘されている点である.演奏するときに,なるべくはやくとおりすぎたい部分もあるという.いろいろとおもしろい本である.
軽快でユニークなベートーヴェン鑑賞ガイド
ベートーヴェン評論と言えば青木やよひ氏が有名だが、現役指揮者が、しかも交響曲にだけ絞って縦横無尽の解説、というのはユニークだ。
もちろん、玉木氏の金氏に対するリクエストだから、ファン代表の玉木氏にプロの金氏がウンチクを語るという構図ではある。
そうした趣旨だから、金氏は、小難しい理論だけでなく、真実か虚構かわからない多くの伝説にも触れている。ベートーヴェンに影響を受けたとされるワーグナーやブラームス、果てはショスタコーヴィチに至るまでの幅広いエピソードは、内容豊富、読者を飽きさせない。オケを前にした指揮者の心情など、内面を吐露してくれているのも新鮮だ。
とくに「7番」について、某ドラマの主題に採用されたのは有名だが、敢えてそれに触れていないのはひとつの見識と評価したい(某ドラマを貶める意図はない、念のため)。
文字だけで音楽を語るのはたしかに無謀な側面があるし、受け取りようによっては味気ないかもしれない。ことに私は音痴な上に記憶力皆無なので、せっかく五線譜を出されても頭の中で音が鳴らない(泣)。ここは素直に、最近廉価版も多い「ベートーヴェン交響曲全集」あたりをBGMに、目と耳の両面から味わいたい。
玉木氏の手になる巻末の年表も一読の価値あり。学校の授業でこういうテキストを使ってくれたら、と思う。非常に面白い“鑑賞ガイド”である。
ベートーヴェンの「圧倒的感動」に浸る
音楽を言葉で解説することほど難しいものはないと思いますが、本書は、まさに真正面からそれに挑戦したものです。スポーツライター玉木正之氏との十数ページのプレトーク・アフタートークを除けば、本書はすべて1番から9番の交響曲の楽曲紹介・解説に費やされています。
「クラシック音楽をもっと楽しみたい、ベートーヴェンの交響曲ともっと親しくなりたい、と思っている方々・・・へ向けてのメッセージです。」と第1章の冒頭で書いているように、クラシック愛好家なら誰でも気軽に読めます。特にベートーヴェン・ファンならば、金氏のベートーヴェンに対する敬意や思い入れに深く同調することができると思います。少々長いですが、次の文章を引用すれば、その意味がよくわかることでしょう。
「どこが凄い?と改めて訊かれたら、私でも咄嗟には言葉に困るくらいです。ただ『凄い』としかいいようがないくらい、それほど、これは美事な音楽です。異常なまでの力を感じる音楽。しかも作品として、完璧です。ひとつの究極の姿。これ以上のものは想像できない音楽。どのひとつの音も完璧に計算され、構築された完全な構造物。」(交響曲第5番の章)
言葉の限りを尽くし圧倒的なベートーヴェンへの傾倒を示した解説書。私のようなベートーヴェン・ファンにとって、これほどの至福を味わえる音楽書はありません。
ベートーヴェンを聴け!!!
新進気鋭の指揮者・金聖響と評論家の玉木正之の共著であるが、ベートーヴェンの9曲の作品解説は全て金が担当。たとえば、その革命的な作品の価値が軽く見られがちな第2番の前衛性を真っ当に解説してくれているのが嬉しい。
しかし、その中身は結構むずかしい。当方の無知ゆえであることは重々承知しているが、音楽理論が出てくると・・・・。
あと、本書での演奏家としての作品解説は興味深いが、金の演奏自体(CD)はそれほど面白くない場合があるのは、ご愛嬌とは言えないであろう(しかもベートーヴェンだ)。黄金の聖なる響きという素晴らしい名を持つ指揮者なのであるが。まあ、今後に期待しよう。
それでも、クラシック業界衰退の砌、本書がベートーヴェンの比類なき交響世界への導きになれば、著者とともに大いに悦ばしい。
