数学でつまずくのはなぜか (講談社現代新書)

  • [著]小島 寛之

カテゴリ:
新書 (237頁)
ISBN:
4062879255
発売元:
講談社 (2008/01/18)
価格:
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54,664 位
評価: 4.0
2008
11/24
Mon

塾や学校の先生や数学で悩む子をもつ親のために・・・

100.0% (1 / 1)
[No.9] posted by Spring

読んでみて誰でも感じると思いますが、筆者の教育への強い熱意が伝わってきます。この本の中で例として挙げられていることは私自身、塾や学校で教えている中で出会ったことととても似ており、ひとつひとつを実感を持って読むことができました。
 以前、進学校で働きだした頃、ひとりの劣等生扱いされている中1生にがいたのですが、その子に数学の考え方のポイントを少し教えただけでいきなり成績が急上昇したことがありました。そのとき、いままでこの子の教科担当者はどういう教え方をしたのだろう? わずかにポイントを示しただけでその応用力を発揮する子なのになぜこの子の素質を見抜かず劣等生扱いしていたのだろう?と思ったものです。そのこともあって私の所に劣等生という烙印を押された中学・高校生たちが集うようになりましたが、その子達もみな理屈を飲み込んだら成績が急上昇していったのです。
 これらのことはもちろん、個々の先生達が悪いと言う気はありません。学校や国からの注文、またPTAからの理不尽かつ我儘かつ非常識なクレーム、そんな親によって作られている家庭環境に因るところもあると思いますが・・
 話横道でしたが、数学に悩む子を持つ親御さん、そして学校で数学を教えている先生に是非読んでいただきたいのです。私自身、小学生の頃塾の先生にバカ扱いされたのですが、今からみるとこの先生の説明が不十分だったのが原因に思えます。私の疑問を解消する教育意欲のまったくない先生でした。あの頃の先生がこの本を読んでいたら私はもっと早い段階で数学を好きになっていたと思います。

2008
08/04
Mon

著者の考えを綴った数学エッセイ

100.0% (1 / 1)
[No.8] posted by 萩原 湖太郎


 著者の個性の出ようのないタイプの本だと思っていた『ゼロから学ぶ線形代数』(2002年 講談社)が面白かったので、「この人の本なら面白いかも」と読んでみた。内容はタイトルから想像したものとやや異なっていたが、「あなたが数学でつまずくのは、数学があなたの中にすでにあるからだ」という文言と出会った瞬間にシビれてしまった。

 本書は、必要な箇所でそのつど数学史上のいきさつや著名な数学者の名を挙げながら、数学そのものから、数的能力、(具体的な教材・題材までを含む)数学教育のあり方についてまで、著者の考えを綴ったもの。1つの結論に向かって論述していくスタイルの本ではなく、むしろ、様々な思索を関連のあるトピックごとにまとめたような本。

 取り上げられているトピックは、第1章「代数でのつまずき」(中心テーマは文字式)、第2章「幾何でのつまずき」(証明)、第3章「解析学でのつまずき」(微分)、第4章「自然数でのつまずき」(数学的帰納法)、第5章「数と無限の深淵」(1対1対応原理)。前半は数的能力や数学教育に関する言及が多いが、後半は数学的概念そのものの解説が増えてくる。この点、1冊の本として考えると、やや焦点がボヤけてしまっているように感じた。また、最後まで読んで見直すと「なるほど」と思うタイトルなのだが、多くの学生が「数学でつまずくのはなぜか」だけを論じた本ではないため、ややミスリーディングなタイトルだと思う。

 個人的に面白かったのは、生態心理学の「アフォーダンス」の概念を数的能力に適用しようとしている点。人間の側に数学的世界という構築物があると捉えるのではなく、世界を構成する様々な事物の側に「数え上げられる」「数理的に表現できる」等の性質が備わっていて、それを探り出す力として数的能力というものを考えているようだ。

 前著『文系のための数学教室』(2004年 講談社)も是非読んでみたいと思う。

2008
06/14
Sat

数学概念のアフォーダンス?

[No.7] posted by takoika

新書的センスのタイトルと帯がミスリーディングなのでひとつ減点です。
数学を何とかしたい、という動機で中高生が読んでも得るところはあると思いますが、むしろもう数学を卒業している人に向く書籍だと思います。ほんとは数学ってなんなんだろう、と思いながら読んでほしい。学校数学ってそういうことだったのか、という内容でした。
著者が純粋数学者でも学校教諭でもなく、塾講師の立場で生徒と接する中で真摯に教授すべき内容を検討していたことが覗えます。

「ゆとり教育」も単に時間数の話ではなく、本書で著者が導入していたように教授法の根本から考えていればよかったのに、と思います。学会は興味がなく、現場は余裕がなかったのでしょうか。進学校で証明を暗記物にしてしまっている例など驚きです。

数学を学ぶ理由に関してアフォーダンスという概念を引いています。興味深いのですが、より進んだ数学ではどうなのか。「数学が役に立つ」という表現の胡散臭さは「役に立たない」からではなく、現実での「使い方がわからない」からだと思えます。数学で表現できるものは沢山あることが理屈で判っても、そのことを実感し手なずけるのはムツカシイ。アプローチが間違っているからなのか。でもある程度の訓練がないと腑に落ちるようにはならないだろうしなあ。著者の現在の専門である経済学と数学の関係にもアフォーダンスは潜むのでしょうか。

2008
06/12
Thu

数学教育の思想

50.0% (2 / 4)
[No.6] posted by オバサンジョ

 私は数学は好きですが、あちらからは嫌われているようです。この本は、同じ講談社現代新書から出ている『文系のための数学教室』がおもしろかったので読んでみました。子どもたちを数学好きにするためのアプローチとしては「数学はこんなに魅力的である」というものと、「数学は役に立つ」というものがあるが、いずれも帯に短し襷に長し、という観点に基づいて書かれています。しかしながら、この本を読んで即数学の得点アップにつながるかというとそうは思えません。あくまでも著者の数学教育に対する思想を述べたものといった面が強いからです。
 ちなみに学校教育における数学は、独創性ではなく、正確に公式などを覚え、的確に処理することを目的としているようです。学校教育の目的が有能な社会人を養成するためのものだからです。そのために先生の答案を丸写しさせ、それに外れるものはすべて不合格とするということも行われているようです。この点が子どもたちを数学嫌いにしている大きな理由である。しかもこうした教育法があながち間違いともいえない点が問題であるとも述べられています。
 私自身は数学は必要だと考えています。文系であっても、数学が得意であれば大学受験に有利だからです。文系の人はたいてい数学は苦手だし、旧帝大や一橋大学ともなれば当たり前のように数学を試験科目にしています。
 何より数学はルールに則って論を展開していくものです。この点は法律学にも通じる部分があり、純粋にゲームとして面白いと思うのです。また、一見自由な芸術ですら法則性に支配される面が多々あります。音楽は数学と密接に関わっていますし、写真の露出はどのような画像が得られるかを数値に変換したものです。また、数学のような抽象思考に慣れておけば、現実の問題に対する思考力も向上するのではないかとも思います。悲しいかな、私はこれを実際に形にあらわせません。

2008
05/06
Tue

タイトルは?でも内容は!!

100.0% (1 / 1)
[No.5] posted by itgaki

筆者は自分の体験や今までの研究から、数学でつまずく原因を分野ごとに解明を試みているようです。
それは「代数でのつまずき」「幾何でのつまずき」「解析でのつまずき」「自然数でのつまずき」「数と無限の深淵」と章立てをし、それぞれの分野で難しさ、その背景にある数学理論を語っていることから感じ取れます。

しかしながら、読んでみて思ったのはこの本に書かれていることが「つまずき」の原因かどうか?がはっきり分かりませんでした。
一方で、数学の基本的な事項を教えるにしても学ぶにしても難しいのは、概念の定義や理論の構造、理論の進め方など、過去に数々の大数学者達が悩んだ基礎理論の理解が必要であるためであるということや、生徒とのかかわりの中で色々なつまずきを解決してきた貴重な実体験や解決してきた方法が提示されていることは、読んでいて大変興味深く面白く感じたところでした。
全般的に平易には語られていますが、数学的に深いところを語っていることもあり、それこそこの本で「数学につまずいて」しまう方もいるのではないか?などと思ったりもしました。

書名から想像する以上に数学的な内容が濃いのは、非常に面白いことであるのですが、書名と内容との間にギャップを感じますし、学生向けなのかその両親向け、もしくは学校の先生向けなのか、誰に向かって書かれたものかがはっきりしなくなっている気がします(学校の先生宛なような気がしますが・・・)。

そういった読後感はありつつ、先にも述べたように書かれている内容は非常に興味深く面白いので、数学に興味のある方、特に数学教育に関わっている方、もしくは今後関わっていかれる方には特にお勧めできる一冊だと思います。

2008
03/21
Fri

何年かに一冊の本かもしれない

100.0% (11 / 11)
[No.4] posted by moma

とても面白い本である。特に前半の幾何学の証明問題にとまどう子供達の話は実に興味深い。直感的には理解で
きている図形の性質を中学校になるとユークリッド原論以来の公理系に則って「わざわざ言語化」しなくては
ならない子供達のとまどい。18世紀に日本に原論が輸入されたとき和算学者たちが「当たり前のことをどうして
こんな風に書きあらためなくてはならないのか・」と冷淡だったと紹介されるが、なるほどそこには子供も学者
もないのだ。数学の先にあるものへの理解のためには一応原論公理系に従って記述することもまた必要である
が、一方でリーマン流の非ユークリッド幾何学という「別の公理系」の存在を知らせておくことが大事であると
の論旨は貴重であると思う。さて、このようなとまどいに対する現代風の解決策として「ひとつの公理系で事を
進めていくこと=ひとつのロールプレイング・ゲーム(RPG)を楽しむこと」・・・の導入は面白い。制約だらけ
の閉じた世界でなんとか先に進んでいく現実感は、実は大人よりも現代の子供達の方が優れているのかもしれな
い。そして現実には複数のRPGもあるのだということは、今の子供達には容易に了解されることだろう。

ところで本書では別のRPGの例としてMIUシステム(もともとはゲーデル,エッシャー,バッハに出てくるらし
い)というものが紹介されている。子供達に面白がってもらいながら、公理系というものの本質をつかんでもら
う工夫としては非常に良くできている。・・・このような数学の本は読んだことがなかっただけに、大いに感銘
を受けた。

本書の後半は無限について人類がどのように理解を進めてきたかを、怒濤の勢いで紹介してくれる。あまりの
テンポの速さについて行けない部分もまた多い。

さて、筆者は読者としていかなる人々を想定しているのであろうか?数学者・・ではない。教育者・・なのだろ
うか?私には(自分のような)「学童期の子をもつ親」がターゲットに思えるのであるが、それならば後半は
余りに高級であり、目がくらむ。

いずれにせよ、非常に質の高い書物であり、途中でわけがわからなくなってもいいから、中学生や高校生にも
読んで欲しい本であると思った次第である。

2008
01/26
Sat

つまずきは大切

69.2% (9 / 13)
[No.3] posted by はな

数学なんかつまづきだらけだったワタシ。だから現代新書の前にレビューかいた本とか本書とか、つまづきとりあげる企画大賛成!でも本書は少しレベルがハイかな?。つまづきって、思いやりないと書けないわよね。

2008
01/24
Thu

疑問

47.1% (32 / 68)
[No.2] posted by 数学次郎

昔数学科を卒業したことをなつかしく思い、この手の本はたまに買って読む。扱っている素材は興味のある面白いものだ。しかし疑問も多くある。「数学は役に立つ」という主張に対する著者の批判はとても論理を扱う資格などない。「数学は役に立たない」と世間が誤解して言っているから「役に立つ面もある」と多くの数学者や数学教育者が言っているのが現状だろう。実際、大学に残って教授をしている友人は「最近日本数学会で数学はどの分野にどのように役立つかをまとめた」と言っている。恐ろしいのは「「役に立つものしか必要ない」といった発想が見え隠れすることも見逃せない」と勝手に決め付けて、「自分の利益になる人とだけ友達になります」というような浅ましい根性と同じだと批判している部分である。数学的な読み物は相当読んできたが、こんな勝手な想像で他人を批判している著者は初めてだ。私が習った数学者や友人の数学者は「数学を役に立つと思って学習するのもよし、役に立たない内容だけど面白いと思って学習するのもよし」と異口同音に言っている。
ゲーデルの不完全性定理は昔習ったが、素因数分解の一意性を使っていることが気になって仕方なかったことを思い出した。ユークリッド幾何の公理系を積み上げるのに自然数の概念が使われてるかもしれないと書いてあるが、著者の気持ちか否かが不明だ。二つの帰納的な集合の共通集合が帰納的の証明はわかり易くてよい。ただ、「クリア」という語を使う部分には抵抗を感じた。
推論規則の説明部分に「君は頭が悪いか性格が悪いかのどっちかだ」という例がある。主観的な用語をこの手の例に使う著者は他にはいないと思う。著者は主観的なことを客観的なことに平気で置き換えるようである。εーδ論法は苦手であったが、高校の微積分が簡易化したバージョンと書いてある部分も疑問だ。バーコードに対する簡易コード、トイレに対する簡易トイレのようなものではなく根本的に迫り方がちがうと思う。もっともこれは私の主観である。

2008
01/23
Wed

つまずき?

88.9% (16 / 18)
[No.1] posted by 亜里沙

現代新書の以前に出た別の著者の本{算数数学が得意になる本}がありました。その本は今まで数学者がつまずきを恥ずかしいものと思って?取り上げなかったことを、研究された論文を紹介する形で算数から高校数学までのたてのつながりを意識してつまずきを解説していました。それで新鮮で一般読者にはかなり受けたようでした。でも私はまだ学者っぽいにおいがして70点ぐらいの点をつける本でした。そして今回の著者の本が出たので、もっとつまずきをていねいに書いてあるものととっても期待して買ってもらいましたが、正直いって専門の数学書という感じの本です。章の題は代数のつずずき、解析のつまずきとなっていて、つまずきという語はあっても???でした。ところが高校で習った数学の先生にもっていったら、数学の専門書としてはベリーベリーグッドと。代数学と解析学という分野の専門的な考え方をこの本を使って教えてもらっているうちに専門の数学の世界が少し少しわかった気になりました。代数学は仕組みで、解析学は動きです。数学を専門的に勉強する人にとっては絶対にすばらしい本でしょう。


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