かけがえのない人間 (講談社現代新書)

  • [著]上田 紀行

カテゴリ:
新書 (245頁)
ISBN:
4062879360
発売元:
講談社 (2008/03)
価格:
¥ 777 (税込)
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23,144 位
評価: 4.5
2008
08/25
Mon

怒れ!怒れ!

[No.3] posted by ほっぷにくにく

総理大臣も合衆国大統領だっていつも複数人の候補者がいてすげ替え可能なのであるから私たちなんて砂漠の砂粒のような存在なのだろう。確かにそうなんですが、瓜二つまったく同質な人間もいないというのも真理な訳です。

唯一無二なのに交換可能。いつだって世間は矛盾だらけだし、いつも我々はダブルメッセージをたたきつけられる。そんな中で、自分に折り合い付けて生きている姿が著者の書くところの存在感がない空ポジティブエネルギー切れ人間なのでしょう。

「もっと怒れ!!怒っていいんだよ!!!」と著者のインド体験で学んだ自己表現や自己主張の大切さを尊びなさいというところは学ぶべきところがあると思います。読みながら「私も喋り声小さいな〜」「今の自分を振り返ると、なんか気持ち悪いヤツになってないか…」とか日本で暮らす私を顧みるキッカケをくれる本でした。

インドで鬱屈した感情を振り払い、人間らしい感情表現ができるようになった著者が日本に帰ると、時の経過と共にまた元気を失い「日本人」になっていくという話が非常に面白かった。元気を補充しようと世界のあちこちにいってはまた日本に戻りお仕事しながら「日本人」に戻っていく。そしてまた元気を貰いに海外旅行。「旅行」にアディクトしていくという現代人が自己の感情を変えるのに、他の要因が必要という点が浮かび上がる。

感情という「内のもの」を変えるのに「外のもの」が必要とは。本の中では旅行だが、甘いものや塩辛い食べ物。アルコールにカフェイン、音楽読書に映画観賞。スポーツにセックス。行き着くところは犯罪行為に禁止薬物依存など、ただ自分の気分を変えるためだけのものが現代にはあふれているし、また高額で取引されている。

感情なんて内なるものは、自分勝手に内々に静々と自分一人で変えられないのだろうか。

旅行先で「元気」を貰って帰られるんなら元から元気なんじゃね〜の?と読みながら考えてしまった。人間らしい感情を根こそぎ奪うような社会構造や風習がこの日本というお国柄なんだとしたら日本は怖い国である。住んでる我々を幸せにしない国だ。

そんな中でいかに元気にこの日本でいきていくかを読む者に考えさせてくれる本である。働いても金くれない非正規雇用の問題など海外ではかならず暴動が起こる。お店なんかメチャクチャにしたり、火つけに投石行為がTVで放映されている。「無茶するな〜」なんて思ったが、不思議とこの日本では過度な暴力行為に走るような暴動など起こらない。こんな大人しい国民など政府は恐れないだろう。政府に国民はなめられている。

やはり我々は「怒る」べきなんだろうな〜。

2008
07/24
Thu

久々に感動した本

80.0% (4 / 5)
[No.2] posted by hukidera

第2章までは、自分はかけがいのない存在だと思えなくしている社会に対する批判、というよりも怒りが中心となっています。確かに今の社会のあり方に問題があるのは事実でしょうが、私自身は、社会のあり方に怒るよりも、自分の意識のあり方を変える方が問題解決につながるという考えを持っているので、この部分にはそれほど共感できませんでした。
しかし、「自分はかけがいのない存在なのだと思っている人は、情けない行為ができなくなる」という趣旨の部分を読んだあたりから、「この人は本物だ」と感じはじめました。
上田氏は「ネガティブな経験こそが、自分のかけがえのなさを実感する重要な出来事なのだ」と述べ、悩みの多かった過去を赤裸々に語り出します。その率直さ、真摯さが、「私はいま、その数々のネガティブなことに、心から感謝しています。」という言葉に説得力を持たせています。
「誰かのことを深く愛してしまった時、私たちは初めて、『自分の中にこんなに愛する力があったんだ』と気づくのではないでしょうか。」という言葉には、私自身の経験も重ね合わされて思わず目頭が・・・。
きれいごとに過ぎないと片づけられかねない内容ですが、私は、この人は本気で『みんなかけがいのない存在なんですよ』と伝えたいのだと確信しました。

2008
03/23
Sun

父をたずねて三千里

53.8% (7 / 13)
[No.1] posted by よれよれのオヤジ

タイトルを見て、「大学教授が固いお説教をする本」と思われた方。
違うのです。これは上田さんが父を探しあてる長い旅路を描いた感動的なお話なのです。

幼い上田少年と母とを残し、父は出奔した。それから数十年が経ち、上田氏はダライラマに出会う。上田氏はそこで父を見つけたのだ(そうは書いていないけれど)。

人は生涯で2人の父を持つ、という説がある。実の父と、自分で見出す父と。
著者が見出した父はなによりも「愛することのできる父」であり、しかし怒ることを回避しない強い人であった。
前半、上田さんが直球勝負でくりだす人生論は、実は「父に出会うための遍歴の中で感じ続けたこと」なのではないだろうか。
「母をたずねて三千里」の主人公は母に再会するまで、とめどない苦労を味わう。
父に会おうとする人も、きっと同じである。
そう考えると、タイトルの意味も明らかになる。上田さんは、ご自身にとり本当にかけがえのない人に会えたのである。そのよろこびを、評者は読みながら共有できた。

↑このような考え方こそ、上田さんの警告する心理主義のひとつの例だ。そう思った人は本格的なレビューを書き継いでください。


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