アンダーカレント アフタヌーンKCDX

  • [著]豊田 徹也

カテゴリ:
コミック (299頁)
ISBN:
4063720926
発売元:
講談社 (2005/11/22)
価格:
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評価: 5.0
2008
09/03
Wed

名作。

[No.23] posted by Bill Evans

個人的には映画1本分どころではない、多分今後も忘れることができない作品。人物描写やストーリー等の秀逸さについては私などが書くまでもないが、特に物語全編に通ずる、人というものに対する洞察が印象深かった。自分や自分にとても近しい人のことを考えると、思わず泣き出したくなってしまう。そんな思いを喚起させる作品だった。

2008
05/16
Fri

いろいろなことを考えさせてくれます。

100.0% (2 / 2)
[No.22] posted by ダイコン・ジャム

まず作者「豊田徹也」とは?知らない人も多いと思います。僕も全然知りませんでした。調べると、1987年に佳作、2003年度夏の四季賞を「ゴーグル」で受賞という経歴を持っている方でした。漫画はこの一冊しかだしていないようです。

内容をざっと紹介すると、町で夫と銭湯を営む女性「かなえ」。しかし夫が組合の旅行中に突然失踪。書置きもなく突然の事にかなえは銭湯の仕事にも手がつかなくなる。ようやく銭湯を再開した頃、組合の紹介により来たという男「堀」が銭湯の仕事を手伝うことになる。夫が失踪した理由は?かなえはなぜ「自分が水の中で苦しむ夢」を見るようになったのか?堀とはどういう男なのか?かなえと堀を中心に個性的な登場人物と共に流れる日常の中から、真相が少しずつ明らかになっていくことになる。

この漫画の一つの特徴としてセリフのない部分にこの話の上で重要な意味を多く含んでいる。その時の登場人物の表情(特に無機的な雰囲気すら感じられる目。作者の画力だからか意識してなのかは判断できないけれど。)や風景が読者がこの物語を深く考え、物語の最後に到るまでの期待感を大いに膨らませてくれている。そして、一人一人の登場人物の個性がとても強く、ユーモアあふれる日常を作り出してくれているかと思えば、話に深みを与え自然な形で真相へと導いてくれている。また、自分は漫画評論家でもないし、漫画の書き方の知識もないのではっきりとは言いがたいのですが、漫画の構成(コマの分け方などのこと)がどれほど重要な意味を持つのか、読者の想像力をかきたててくれるのかということを実感させてくれるている。

自分はこの漫画を雑誌でリアルタイムで読んでいた人を大変うらやましく思います。雑誌だと結末を急いで一気に読んでしまうということもなく、登場人物の心情を深く考えることができ、次の話を読むときにその心情がさらに深く染み渡るんだろうなと読みながら感じたからです。もちろん、単行本で読んでもこの作品の素晴らしさは十二分に伝わるので、今から読む人は何も心配しなくて大丈夫ですよ。

それでは、ぜひこの作品に触れ、読者自身が人を理解することに関し新たな価値観や考えを発見してくれればと思います。

2007
09/05
Wed

誰もが持っている心の底流

66.7% (2 / 3)
[No.21] posted by ちょっぴん

つらい記憶や悲しみを心の中に淡々と日常生活を送っている。
それらは決して忘れられるわけではなく、心の奥底の暗渠に滔々と流れ続けていて、
ふと覗き込んだときに、それはこちらを覗き返してくるのだと思う。
これは、決して特別な人たちのことではなく、登場人物たちと同じくらいの人生を
送ってきた人達ならば、多かれ少なかれ心の底に暗渠を持っているのだと思う。
ここまでだと、ありがちな文学チック漫画になってしまうのだと思うのですが、
なかなかに個性的なキャラクターや、時折見せる哀愁と紙一重のユーモアで物語に引き込まれる。
分かり合うことが大事、とは簡単に言うけれど、皆が分かり合っているつもりに
なっているだけなのかもしれない。
「もっと話し合ってれば」と主人公は言う。
それでも、とも思う。
自分は最後の一コマに救われました。
古き良き時代のアフタヌーンを感じさせる良作だと思います。

2007
04/15
Sun

通して読むと、完成度の高さを感じる

75.0% (3 / 4)
[No.20] posted by デルスー

アフタヌーンの四季賞を受賞した時から、
かなり雰囲気のある人だとは思っていたが、
連載の4〜5回までは、正直、微妙かなとも感じていた。

受賞時から、女性の描き方がどこか中性的で、
(もっとも、この時は女性というより女の子だった)
見ようによっては男にも見えてしまうということが、
欠点といえば欠点かもしれないと思っていたのだが、
実際、最初の頃のかなえは表情が硬いこともあってか、
あまり魅力的には見えなくて、服装や髪型等にも
80年代的なテイストが強過ぎるような気がした。

また、堀とかなえが一緒に朝食を取る場面で、
自殺に話を振るところもいかにも思わせぶりで、
悪い意味で「純文学」しているような気がしたし、
サブ爺が出てくるあたりまでは、
話がやや停滞しているように感じたのだが、
6話で山崎と一緒にカラオケに行くあたりから、
なぜかかなえという主人公に感情移入が出来るようになり、
あとは結末まで一気に引き込まれて読んだ。

とくに、最終話で「もう男には頼らない」と言い放つ
かなえの表情がとても魅力的で、
連載当初にあった絵のクセの強さみたいなものが薄まったのか、
作者が連載途中で腕を上げたのかはわからないが、
もし意図的に描き分けているのだとすれば、脱帽するほかはない。

最後に、これは蛇足を承知で言うのだが、
廃業する風呂屋の設備を引き取りに行く挿話(7話)で、
「戸田さん」はなぜ一昨日の時点で連絡をくれなかったのか、
というのが、連載で読んだ時からやや疑問ではあった。
また、夜の高速でピックアップを運転する堀に向かって、
かなえが「あたしのこと好き?」と訊ねる場面は、
『夏子の酒』にもほとんど同じような場面があったと思う。

2007
04/15
Sun

「痛みを背負って生きることは間違いじゃない」という願いと共に読みたい一冊

60.0% (3 / 5)
[No.19] posted by 黒琥珀

夫が失踪し、そのショックから未だ覚めやらぬまま銭湯を経営する若い女性と、突如そこに住み込みで働くことになった影のある男性を中心に展開される人間ドラマ。中心人物の背負っている痛みの重さは半端ではないものの、読み始めてしばらくは、あまり陰鬱さ、暗さといったものを感じない。彼らの「表」の生活は、とりたてて他の人間と変わりない、平凡、時にはユーモラスとさえいってもいいものだ。しかし、物語が進むにつれて、主人公の心の奥に秘められた「裏」――消えない、深い傷跡が、徐々にその「表」を蝕んでゆく。それはけして、ある特定の人間にだけ与えられる類の傷ではなく、現代の実社会に蔓延する、一種の「病」によって被った痛みであることに注目したい。そしてその「病」が、あまりにも意外な人物にまで深い影を落としていたということが明らかになる終盤――そしてラスト。多くは語らないが、是非読者には、痛みを背負って生きてきた人々の、これからの幸せを願いつつ、この一見難解なエンディングを見送って欲しい。私もそうすることで、どこか暖かい、救われた気持ちになった。

2006
09/22
Fri

きっかけはアマゾンでした。

37.5% (3 / 8)
[No.18] posted by チエベ・チエ

この本を手にしたのは、ココのオススメに載っていたからです。
オススメは定期的に削除(興味ない)にチェックを入れる作業をしています。
しかし、この「アンダーカレント」という作品にはナカナカチェックが入れることが出来ませんでした。
そして先日ついに購入したわけですが、買うかどうか悩んでいた時間が
もったいないように感じました。
こういう作品、結構好きです。
他の皆さんが評されているように、単館系の映画館で上映されるような作品です。
イイ感じの余韻がずっと残ります。

主人公の関口かなえちゃんの旦那・関口覚と、従業員・堀隆之は、
「たぶん私なんだ」・・・そんな気持ちを残して本を読み終えました。

それは私だけの感想なので、なんのことやらと思われるかもしれませんが、
それぞれの全11エピソードが、それぞれ言い終わり方をしています。
中でも印象的なモノが「人をわかるって、どういうことですか?」です。
はたして、どういうことなんでしょうか?
読み終えたときに答えは出たのでしょうか?

先ほど、旦那と従業員は私だ、と感じたと書きました。
そして、主人公・かなえもまた私です、ただし途中まで。
かなえの持っていた闇の部分が、そうなんです。
しかし、女性の心が持つ、切り替えの早さと強さは、
さすがと言うべきでしょう。

とくにラストエピソードの後半は、感動です。

まさに映画的な表現で、かなえ達の会話と、
物語の途中から登場するサブ爺達の会話が、
別の場所・別のシチュエーションで、同じコトを話しているように
描かれています。

「アンダーカレント」、中表紙に講談社の英和中辞典からの引用で、
「表面の思想や感情と矛盾する暗流」とありましたが、
タイトル通り、アンダーカレント・・・
そして私自身もアンダーカレントの固まりなのかなと思いました。

2006
06/19
Mon

哀しくも心地よい

84.6% (11 / 13)
[No.17] posted by まめを

漫画には、一度読めば事足りるものと、何度読んでも飽きる事のないものがある。
「アンダーカレント」は、間違いなく後者にあたるだろう。
確かに地味ではあるが、その地味で細かな描写の積み重ねが
人物の魅力を引き出し、最後のページの余韻を引き立てている。
結末を知ったのちに読み返す事で、私達は、各人物の表情や言動の底を流れる感情を発見し、
それに触れることになる。それが「根の深さ」にさらに説得力を与え、
なんとも味わい深い作品になっているのだ。
やや使い古されたような「いかにも」なキャラもあるが、
きちんと、欠けてはならない重要な役割と存在感を持ってこの物語の世界に溶け込み、
程よいバランスで喜劇をもたらしてもいる。
人の弱さを冷静に見つめ、絶望で終わることもなく、大げさな幸福を描くこともなく、
日常の延長上でささやかな希望を見せる、作者の力に恐れ入った。
(作者の音楽好きを思わせる小ネタにもくすぐられた。)
いつまでも浸っていたい心地よさを与えてくれる、そんな漫画だと思う。

2006
05/02
Tue

なんというか…

12.0% (3 / 25)
[No.16] posted by おたっきー

そこそこの出来なんだけど、どっかで見たような絵柄とどっかで読んだような雰囲気とストーリ。
普段あまりコミックスを読まない人には新鮮かも知れないけど、昔で言えばガロとか今で言えばアフタヌーンとかを読んでるスレた漫画読みにとっては特にどうということのない作品…。

2006
04/02
Sun

まあ悪くないけど…

30.8% (8 / 26)
[No.15] posted by undercurrent

帯の絶賛文に惹かれて読んでみましたが…。
悪くないけどそんなに絶賛するほどでもないという感じ。
小説で十分にできることを漫画でやっているだけです。
「人をわかるってどういうことですか?」など手垢のついたセリフにちょっと辟易…。
映画一本より深い読書体験ではなかったです。
でもドジョウ鍋の下りや、サブじいはよかった。堀さんもいい味出してます。

ニックネームが同じなのはエヴァンスの同名CDが好きなので。

2006
02/16
Thu

静かな共鳴

85.7% (12 / 14)
[No.14] posted by まじお

何も大きな事件が起きない小説を書くことが、一番筆力を要するそうです。
この物語には、特別な能力を持った人は出てきません。大きな事件は、水面のはるか下の方で起こったものです。
沈めてしまった傷は、むしろ誰もが抱えているのではないでしょうか。
傷を抱えたり、忘れたりしながら送る生活の危うさやはかなさ。けれども、不意に思い出したように、希望も扉を叩く。
それを描ききっていることが、読者の心を思いがけず共鳴させてしまう、この作品の力なのだと思います。

表面的な感情の機微の描写も巧みですが、その奥にある大きな波の物語をうねらせて行く流れの作り方も絶妙です。
物語の中で過去は現在に響き、この物語全体がいまを生きる生身の読み手に響いてくる。
静かな水面をどこまでも広がっていく、さざなみのような作品です。
読み終えた後、カバーの下を見ると、上質の小劇場の芝居を見た後のカーテンコールにも似た余韻が味わえます。


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