- [著]井上 雄彦
- カテゴリ:
- コミック
- ISBN:
- 4063724972
- 発売元:
- 講談社 (2006/02/23)
- 価格:
- ¥ 550 (税込)
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清十郎
この巻の最初に載っている『背負いしもの』は今までの話の中で一番好きです。前話の『居場所』が武蔵視点だったのに対してこっちは清十郎視点になってますが、短いながら吉岡清十郎が背負っているものがどれほどのものか解った気がしました。武蔵に斬られる瞬間に伝七郎その他の人物が頭をよぎる瞬間の所が一番良かったです。
巨星去って腐りゆく吉岡道場。
武蔵は、吉岡清十郎との勝負に勝利する。これで、武蔵と伝七郎との勝敗はより明らかになった。しかし武蔵は清十郎との戦いで怪我を負い、光悦と妙秀の家で世話になることに。そして偶然にもそこには佐々木小次郎も泊まっていた。
武蔵は勝負を目前にして吉岡伝七郎の一行と出会う。そして背後から祇園藤次に襲われる。清十郎との戦いで片目に傷を負った武蔵は、藤次の相手をするのが精一杯で後ろの伝七郎にまで手が回らない。しかし伝七郎は、武蔵が藤次を斬り伏せるのを黙ってみていた。伝七郎の甘さが吉岡道場を滅びに誘う(いざなう)。
植田は伝七郎に黙って佐々木小次郎に武蔵との果たし合いの身代わりを頼もうと画策する。
この巻では、清十郎の死骸があまりに醜くてリアル。生きている時は美しかった青年も、生気がなくなると魚の死骸と変わらない。やっぱり人間は死んではいけない。生きてこそ人間。
激闘の果てに…
新年を明けての吉岡清十郎と宮本武蔵の壮絶な戦いは武蔵の無意識かに放った神速の一撃が清十郎を切り伏せるという結果で幕を閉じる…。
このバガボンドというマンガは緊張感、臨場感といったものが味わえるすばらしい作品だと思う。
決戦前の鎮魂・・・そして静寂
武蔵が吉岡清十郎という天才を倒し、鎮魂を想起させる雪が京都に降る。
その雪は悲しみとなり涙となり、伝七郎を初め十剣にこだました。
決戦を数日前にして藤次の強襲に、武蔵は十剣を前にしながら止むを得ず斬る。
まるで1年前とは別人と化した武蔵の剣に植田は恐れを抱いた。
そして代役を佐々木小次郎に・・・?
ここで私的に注目するところがあるとすれば、武蔵と清十郎の切り合う瞬間の絵です。
よく見るとわかるのですが、清十郎の体を抜けた刀は「手から抜けて吹き飛んでいる」ようにみえます。
一瞬清十郎の刀が振り下ろす前に抜けて吹き飛んでいるようにも見える構図。
しかし右手に持っていた刀が武蔵の「あれ!?」と、言った時には確かに「消えている」のです。
が、もう一度振り下ろした右手をしっかり見てみると「刀はちゃんと握り締めて」いる。
これは武蔵の心を映しているのでしょう。
異常な集中力を超えた境地は、己の刀・・・いや腕までも消えるほどの速度を持った。
どう切ったかさえわからなくなる意識。
そこに生じた矛盾が「手から刀が消えた」錯覚を感じてしまったのでしょうか。
読む側である我々読者にも、「武蔵の刀は右手から消えている」という点に深い意味を感じさせます。
アー
今どきあえてストレートな宮本武蔵伝。
佐々木小次郎が出てきたあたりから俄然おもしろくなってきた。
この話は、武蔵がどんどん強くなっていく話ではなく、
武蔵がいかにして小次郎に出会うか、っていう話なんだね。
上手いなあ。
孤独の漂流者
この作品の全体を通して、原作者を含む様々なキャラによって放たれる「つながり」と言う言葉。言い換えれば、登場キャラの誰もが、自分なりの「孤独」を抱えて、「つながり」を渇望している姿を描くのが、この作品の本質なのかもしれない。孤独故に命の重さを知らず、孤独故に剣の道に惹かれ、孤独故に命の取り合いの時だけに生じる、真の他者との「コネクト」を求めるのだ。そして孤独な彼等が生き延び、各々の「つながり」を見出した時、各々の形で「命の奪い合いの螺旋」から身を引いていく。「つながった」時に、人は自らの価値を見出し、場合によっては「臆する」のだ。そして強靭な武蔵だけが「孤独」を漂流して流れて行く。つまり、彼が求める「天下無双」とは自らが「孤独である事」を正当化できる、唯一無二の称号なのだ。
そして自分を欺いて生きる又八、無音の世界で過ごす小次郎らが、自らの「孤独」を、武蔵のそれと鮮やかに対比させて行く。
ネットや携帯の過剰な普及で、「孤独」である事の意味を見失いつつある我々にとって、やはりこの漫画は深く響く。時代劇でありながら、普遍的なテーマを描きながら、この作品は「今現在」そのものなのではないだろうか、と思う。
圧巻!
天下無双への階段を1段1段確実に昇る武蔵。
天下無双を目指す上で避けて通れない大きな壁を乗り越えた!
そして、小次郎との決戦の扉も開かれた。
少々燃え尽き症候群の武蔵は、次は何を学ぶのだろう。
他のいろんな事を切り捨てて、1つのことに集中する。
やはり、命懸けじゃないとあの集中力は引き出せないですよね。
腹をくくるんだ伝七郎!又八!
二つの運命が交差する巻。
武蔵と小次郎、性格や見た目は違うけどその剣、強さを極めようとするアプローチは似た
二人がついに京都で落ち合おうとしています。
意図した出会いではなく、まだ出会ってもいませんがその出会いに対する助走のような巻でした。
何かを極めるということに今も昔も大きな変りはないとは思いますが、ただこの時代は
各々の"命"をかけて強さを求める時代です。
そのような道を進むのであれば、やはり厳しさやおかれる環境によってその成長が差になって
表れるのでしょう。
伝七郎が強くなれないのは、平和で保守的な家に生まれ厳しい稽古は積んだものの、
土壇場では兄が戦い、家の看板を背負い、家に帰れば嫁と娘がいる点かもしれません。
武蔵や小次郎は常に明日の自分を守ってくれるものがあるわけでもなく、逆に常に不安定な
環境に身をおき続けることによって強さを得るようになりました。
これは現代にも言えることで、いつも身の保身を図ったり、安定だけを望みそれ以上の進歩を
望まない人は没落していってしまう可能性もあるのかなと思っています。
ただやはりこの漫画、何を語るより絵がうまい。
水墨画のような重さと軽さ、深さと浅さが同居するような・・・・
なんとも表現しがたいのですがとても惹かれます。
漫画自体が絵のコレクションのように感じられるものはこのバガボンドをおいて他には
ないと思います。
その後
前巻で清十郎をぶった斬った武蔵。
変わり果てた亡骸と向かい合う伝七郎。
落ちぶれて武蔵の前に現われた祇園藤次。
武蔵の目と鼻と先で生活している小次郎。
吉岡一門と武蔵そして小次郎の距離が近づくこの巻は
新たな火花の火種といったところ。
それにしても清十郎の亡骸の物悲しいこと・・・
伝七郎が涙したところで何度泣いたことやら。
強過ぎる武蔵
相変わらず面白かったです。吉岡家当主であり長男である吉岡清十朗が背負っていたもの。兄を失った伝七郎の心境。伝七郎と、兄清十朗を倒した武蔵との試合を、近日に控えた吉岡一門の者達の動き。
これ以上は言えませんが他にも色々見どころ満載です。
武蔵がこれからどんな答えを出していくのか、次の巻が待ち遠しい作品です。
