蟹工船・党生活者 (新潮文庫)

  • [著]小林 多喜二

カテゴリ:
文庫 (217頁)
ISBN:
4101084017
発売元:
新潮社 (1954/06)
価格:
¥ 420 (税込)
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328 位
評価: 4.0
2008
09/06
Sat

「蟹工船」と「現在」のズレ

66.7% (4 / 6)
[No.35] posted by 柴犬太郎

 学生のときにこの「プロレタリア文学の金字塔」を読んだが、最近、本屋に平積みになっているのを見て読み直すことにした。
 当時は一応「プロレタリア文学の代表作」ぐらいは読んでおこうとして読み、その歴史的意義は理解したが、正直、そのリアルな描写に感心するというよりは、拒絶感を感じた記憶がある。「現在と噛み合う話ではない」と思えた。

 読み直してみた現在の感想は、やはり、しんどいと感じた。
 しかし、この本が現在、若い人などの共感を得ていて、相当数の発行部数を上げているらしい。
 派遣などの非正規雇用の悲惨な実態はある程度、知っているつもりだったが、この「蟹工船」に共感するとなれば、彼らの置かれている状況はかなり深刻だと思える。
 「蟹工船」と「現在の社会状況」と「私の認識」、下手すれば、「現在」とズレているのは「蟹工船」では無く、「私の認識」ということになる。
 この本が売れているという事実をもう少し真剣に考える必要がある。

2008
09/06
Sat

出来はともかく面白い。だが面白いだけだ。

20.0% (2 / 10)
[No.34] posted by すん

生死にもかかわる悲惨な状況を、リアルに、そして多少の諧謔を交え描き出す、
というのはそれだけで充分面白い娯楽小説たりうる要素であり
この作品は充分それに成功している。
「火垂るの墓」や「どん底」「ぼくんち」が面白いのと同じだ。
ただし物語としての出来はそれらに遠く及ばないのも事実。
なぜならこの小説は「赤化運動は必ず成功する」という、まず結論ありきで書かれているからだろう。
今にも臭ってきそうな生々しい描写の奥にあるものはあまりに脳天気なご都合主義的ストーリー。

この時代の共産主義者の「気分」を知り、このような小説を書く人間が警察により拷問死に至るという社会状況に思いを馳せることの面白さを含めれば星五つでもよいくらいだが、
まあそれらは所詮タイムカプセル的面白さにすぎない。

この作品を読むと「なぜ共産主義はダメだったか」という理由の一端がわかるような気がする。
作品の影響で共産党入党者が増えたなどと言うがいくらなんでもそれは与太ではないのか。
それは、戦時中の戦意高揚映画を見てウッカリ自衛隊に入隊してしまうのと同じ程度に浅はかだと思うのだが。


2008
09/01
Mon

やっぱり嫌い!

100.0% (1 / 1)
[No.33] posted by 蝦蟇の油

 あまりに幼稚なタイトルをつけてしまったがやはり嫌いだ。高校生の時に義務的に読んで、また今話題書になっているということで、再読。
 たいていの文学作品は何年後かに読むと新しい発見があったり、気づかなかった箇所で感動したり・・。
 しかしこの『蟹工船』は、また私から「文学の楽しみ」と「気力」を奪っていっただだった。私は、あらゆる作品は現実世界よりも美しくなければならないと思う。たとえそれが殺人だろうが、残虐な話だろうが、グロテスクな絵画だろうが・・。
 しかしこの『蟹工船』だけは違う。私には疲れしかくれない。だから私は高校生の時から『蟹工船』だけは嫌いだった。
 私の「文学は美しくなければ」という考えをひっくり返す。それもものすごい大波で。
 だから、大波にのまれた私は『蟹工船』に過剰に反応しているのだと思う。「労働とは何か」なんて質問に私は一生正しい解答なんて出すことができない。そしてそんな問題を投げかけないでほしいのに『蟹工船』はそんな質問とともに、なんとも言えない哀しさを与えてきて私をげんなりさせる。
 もしかしたらその哀しさこそこの作品の美しさかもしれない。しかし私はまだそれを理解できない。『蟹工船』を好きになれたとき、私の中の何かがかわっているかもしれない。
 そう思ってしまうから、そしてそれがまだ達成できていないからこの本は嫌い。
 どこまでも追いかけてきて、人を追い詰める問題作。だから怖い。

2008
08/31
Sun

感銘は受けなかった

10.7% (3 / 28)
[No.32] posted by 怪人!キモオタ・ニートヴィッチ

自分は感銘は受けなかった
それに、いくらなんでも派遣社員の労働環境はここまでヒドクないと思う
労働環境云々よりも、日本社会は労働時間の短縮に知恵と労力を注いだほうが賢明。
生々しい臭そうな描写が多く全体の8割くらいは占めるので、食事しながら読むのはおすすめしない
また、小説としても、軸となる主人公らしき人物が登場せず、非常につまらない
読後になにも元気がでない、働きたくなくなる。シャンプーして風呂に入りたくなる。そういう話。

2008
08/31
Sun

国家は何を感じているのか?

57.1% (8 / 14)
[No.31] posted by くにたち蟄居日記

 本書が売れているという事実自体が 時代の一つの事件であるという認識のもとで 初めて本書を読む機会を得た。

 まず本書は 非常に迫力のある小説である点に驚いた。方言で構成された会話を駆使して 表現される 戦前の蟹工船の状況にはリアリティーを強く感じた。話の展開も ある意味では紋切型である点で明快である。漫画になっていると聞くが なるほど 筋の明快さとビジュアルなリアリティーから見て 漫画化に非常に向いていると思った。

 あっという間に読み終わって 改めて これが現代の日本の本屋に山積みになっている事実を考えなくてはならない。

 格差社会、フリーター、ニートというような言葉が 新聞、ネット、ブログで頻出する時代だ。その中で 本書が売れているという状況は 平たく考えると 現在の日本に「蟹工船」と同様の状況を読みとる人が多いということだろう。

 流石に 当時の蟹工船のような極端な労働環境は日本には既になかろう。但し 蟹工船という職場を貫く「原理」は ソフトな形に代わって 今なお残っている気がする。特に 最近の派遣社員制度を巡る議論において その「原理」が見えてきており 現代の「蟹工船」の姿が浮かび上がってきているとする向きが多いに違いない。 

 「蟹工船」を書いた小林多喜二は 特高警察の拷問で死んだ。国家が「危険思想」と判定すると 人を殺害することができる乱暴な時代がかつて有った。そんな「危険思想」が現代でかように読まれているという事を 今の国家はどう感じているのだろうか?
 それが最後の読後感である。
 
 

 

2008
08/31
Sun

読めば、見える。

60.0% (3 / 5)
[No.30] posted by ryotaro

「おい地獄さ行ぐんだで!」
という冒頭の台詞から、良い意味で俗っぽい表現で小説は語られる。
作者は、あえて文章を洗練させようなどとはしていない。
登場する労働者達が、肩を叩いて励ませる距離に感じられる。
読んだあと、感動した、で終わってはいけない本。
読んだら、社会を見てみよう。

2008
08/26
Tue

蟹工船に乗せてみろ

70.6% (12 / 17)
[No.29] posted by ロス

やれやれ、モノ扱いの労働で、私は現在、壊れた部品のようです。腰と足と精神を破壊されました。後で明らかになった、死人まで出し06年より社会問題になっている偽造請負でした。ゾッときます。蟹工船と変わりなかったですから。働きたくても、もうどこも雇ってくれません。これはさておき、若者を蟹工船に乗せろという人が、いるそうですね。上等だ!私を蟹工船に乗せてみろ!現代の劣悪な雇用の実態に比べたらいいほうだ。闘いたい時、他人事と思わず一緒になって立ち上がる仲間が大勢いるし。今、糞紙のように使いものにならない体になってしまった。そんな意味で蟹工船からすら閉め出されてしまった。…かえっていいのか。日本が、世界が、現代が蟹工船化してしまっているとよくいうが、まさにそのとおり。決して、誰一人、「蟹工船で描かれたものは自分には関係ない、だって努力が報われたんだも〜ん」なんて、今はいってられても、そのうち、いえなくなるかもしれない。
色んな小説を読んできたが、この一冊の本を読んだだけでいろいろ説教されたりすることもたびたびある。蟹工船を読んでたら親戚から、お前は共産主義者かとまくしたてられた。激しい怨恨すら感じる人も少なくない蟹工船。それだけの力が作品にあるってことですね。かえって興味わきます。

2008
08/25
Mon

こんな時代だから・・・

33.3% (3 / 9)
[No.28] posted by 乱読者

 こんな時代だから、再読されるようになっているのでしょうか?
 時代背景を頭に入れておかないと、わからないところがあるかも
知れません。
 読みやすい内容だとは思うのですが、主人公がはっきりと定義されない
(誰だかわかりにくい)ことや、どこか宣伝(プロパガンダ)の匂いが文章
から漂ってくるところは、やはり作品の書かれた背景をよく知っておく必要
はあると思います。
 あの時代ということを考慮して読む必要はあるとおもいます。

2008
08/24
Sun

ヘタレ社会には刺激になる

30.0% (3 / 10)
[No.27] posted by klarinon

最近、本書がブームになっていると聞いたので、数十年ぶりに
購入して再読した。
なるほど、現代社会が発する腐臭に、新鮮な空気を入れるには
向いているかも知れない。ただ、その新鮮と感じる傾向も長続きは
しないであろう。このブームに乗って資本論をも売り出そうとする
出版社の商魂には感心するが、これは読者に無用の投資を勧誘する
だけのことだ。

解説で、蔵原惟人は本書を「民主主義文学」だというが、今だに
そういう幻想を持っている人物がいるというのも、それはそれで
興味深い。だが、共産主義者の言う民主主義というのは、言葉の
遊び、欺瞞以上の何者でもない。現実は一党独裁そのものである。

まあ、そういう堅いことは抜きにして、本書自体は、現代の熟れた
社会にいる人間にとっては、まさに瑞々しさ、あるいは物珍しさを
感じさせるに十分であり、本書がブームになっていると言うことは、
なるほど納得がいくことである。

2008
08/15
Fri

共産党がオルグに成功する話

40.0% (16 / 40)
[No.26] posted by crites

 突然のブームに乗って読んでみたが、正直、呆れた。あまりにも単純な話なのだ。

 労働環境の悲惨さの描写は良いと思う。これはルポルタージュ的な価値があっただろう。しかし物語自体は、呆れるほど単純な勧善懲悪である。悪党はひたすら悪く、弱者はひたすら善で、労働者間の裏切りのようなテーマさえない。薄っぺらとしか言いようがない。

 これが若者に受けるのは、敵をやっつけるテレビゲームと同じだからだ。悲惨な労働環境には共感できるし、テレビゲーム感覚の勧善懲悪の単純な話だから、物語にも入り込めるわけだ。

 しかし物語の本当の結末は、最後の「附記」に「この後のこと」として書かれている:

「漁期が終って、函館へ帰港したとき、「サボ」をやったりストライキをやった船は、博光丸だけではなかったこと。二、三の船から「赤化宣伝」のパンフレットが出たこと。」

 何のことはない、悲惨な労働環境につけこんで、共産党のオルグが成功しただけなのである。

 その共産党の支配下で、いかに労働貴族が生まれ、自由が剥奪されたかという「この後」のさらに「後」を知っている人間は、こういうお話を読んでも、呆れてため息をつくばかりである。

 共産党の入党者が増えているのだという。それでは支配者の顔が変わるだけだろう。所詮、大衆は支配されたがっているヒツジなのか。あるいは「支配されたい」というよりも「面倒見てもらいたい」のかな(笑)。これじゃ共産党も大変だな。まったく世も末だが、まあ、マルクスも言ったとおり歴史は繰り返すのかもしれない。一度目は悲劇として、二度目は喜劇として。


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