不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か (新潮文庫)

  • [著]米原 万里

カテゴリ:
文庫 (326頁)
ISBN:
4101465215
発売元:
新潮社 (1997/12)
価格:
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11,337 位
評価: 5.0
2008
06/30
Mon

一つのロシア語同時通訳バブルの総決算

[No.17] posted by 歯職人

 本書は、米原万里の作家としての実質的なデビュー作である。
 絶妙なタイトルは、本編の内容を期待させるが、裏切られること無く堪能できる。
 同時通訳者が日頃如何なるストレスに晒されているのか、依頼者か、通訳の対象としてのスピーカー・原発言者か、聴衆か、はたまた実は他言語の通訳者か。
 本書によって明かされる、言語の背景をも含めた文化の衝突と相克が、生きた人の現場の右往左往と突発的な自体に遭遇した場合の人間のある種漫画的な突破力・瞬発力を含め、「事件は現場で起こっている。しかし、基礎と蓄積と閃きが無ければ事件は解決しない。」と思わせる。
  同時通訳業界のイメージが、読書前と様変わりし「斬った張った」の世界であると認識された。
 しかし、いま新規に本書のような内容が編まれるすれば、通訳業界のクライアントは許すのだろうか?

2008
06/16
Mon

浮気性の美人と堅い醜女とは、翻訳論?

100.0% (1 / 1)
[No.16] posted by 豚々児

優れたエッセイ、文化論です。「通訳者の資質とは?」これを、しっかりを思い知らせてくれます。通訳になりたかったわたしは、これを読んで、あっさりあきらめました。優れた素質と、途方もない努力なしには、通訳という職業は存在し得ない。しかし、通訳する本人と会って10時間、殺したくなるほど憎くなったりすることも、あるそうです。
ユニークな文化論として、あなたに一読をお勧めします。

2008
06/01
Sun

優れたコミュニケーション論

100.0% (2 / 2)
[No.15] posted by mountainmania

彼女の他のエッセイの方を先に読んでいたため、この書のことも書名から「下ネタたっぷり、世界の恋愛事情」的な内容とばかり思っていたのだが、堅くまじめ、でも読みやすくて笑える「通訳論」の本でした。

私もすごく昔、「(典型的な)英語が好きな(かぶれた)中学生」として、通訳もしくは翻訳業に就きたいと思っていたことがある。でも、この本を読むと、単なる「語学好き」じゃ通訳業は務まらないことが分かる。言葉と言葉を一対一で訳しているのではなく、その発言内容の「本質」を瞬時につかみ取り、文化背景等を咀嚼した上で、正しく訳出する…超人的なコミュニケーションスキルが求められる仕事です。。

目指さなくてよかった、あるいは、本気で目指してみれば良かった、と思いながら読みました。面白い。

2008
03/25
Tue

長く読み継がれるべきエッセイ

100.0% (1 / 1)
[No.14] posted by よむよむ

言葉より意味を優先した意訳(不実な美女)か、単語は忠実に訳されているが意味わかんない逐語訳(貞淑な醜女)か。二人の主に仕える下僕、通訳という仕事は、本当に奥が深い。著者は通訳の失敗談を交えながら、言葉を他の言語で表現することの意味を論じ、それが言語論、語論になり、文化論になり、教育論になっていく。それぞれ内容が深い。著者が若くして亡くなったのは通訳業のストレスからだろうか。名越健郎のあとがきの、エリツィンと著者のエピソードまでおもしろかった。

2007
11/15
Thu

「通訳論」を超えた良質なエッセー

100.0% (2 / 2)
[No.13] posted by ringmoo

この本は「通訳論」なのですが、それを超えた作品になっています。それは、単なる「通訳論」に留まらず、翻訳も含めた「言語論」になっています。その一方で、様々なエピソードを取り入れながら、作者独自の語り口で読むものを微笑ます、良質のエッセーになっています。人の失敗は面白いもので、ここに挙げられた通訳の方の失敗談は、楽しい気分にさせてくれます。しかし、その失敗の裏にあるものを考えると、とても笑っていられないのですが・・・。

実は、私も仕事上で同時通訳の方を使ったことがあります。その時は、随分たかいんだなあという印象でしたが、この本を読んでみて、事前の準備の大変さが良く解りました。当時、前日にレジュメを渡してくれと言われたのですが、準備が間に合わず、結局、2時間前でした。おまけに、喋りが早口になり通訳の方は大変だっただろうなと思います。
確かに、全く違うジャンルのことを常に通訳しなければならない訳で、用語の準備からして大変でしょう。その産業の独自の用語もあれば、M&A独自の用語もあった筈です。つくづく大変だなあと思います。

2007
08/15
Wed

「風が吹けば桶屋が儲かる」のロシア語バージョンは「肉を食うと風邪をひく」だそうです

0.0% (0 / 5)
[No.12] posted by ib_pata

 「いいかね、通訳者というのは、売春婦みたいなものなんだ。要る時は、どうしても要る。下手でも、顔がまずくても、とにかく欲しい、必要なんだ。どんなに金を積んでも惜しくないと思えるほど必要とされる。ところが、用が済んだら、顔も見たくない、消えてほしい、金なんか払えるか、てな気持ちになるものなんだよ」「だから、売春婦に倣って、通訳料金は前払いにしておいたほうが無難だよ」と、のっけから師匠の「通訳=売春婦論」を披露するのが素晴らしい。タイトルの『不実な美女か貞淑な醜女か』のタネがあかされるのは三章。イタリアに《「翻訳は女に似ている。忠実なときには糠味噌くさく、美しいときには不実である」》という格言があり、フランス語でも「美しいが、原文に忠実でない翻訳」をBelles Infideles(不実な美女)というそうな。

 テレ朝の秋山さんがソユーズで宇宙飛行する際の選抜テストでは、徹底的な癌検査が行われていたというのは知りませんでしたね。男性の場合は「陰嚢の鞘膜腔」を医師が引き延ばしながらシコリがないか調べたんだそうですが通訳として付き添っていた米原さんは《「えーとですね、Oさんのキンタマのシワをですねぇ」》と怒鳴ったそうです。

2007
02/25
Sun

著書のエッセイの中ではやや硬めです

71.4% (10 / 14)
[No.11] posted by 紫陽花

故米原女史は言うまでもなくロシア語通訳の第1人者であったが、同時にエッセイ家としても有名であった。しかも、印象とは異なり下ネタをふんだんに交え、自身の通訳経験を踏まえながら、ユーモアの中に国の相違による価値観の違い、相互理解の難しさをサラリと語って読者を楽しく啓発してくれた。本書の題名は同時通訳にあたって「意訳ではあるが相手の顔を立てる訳を選ぶか、原文に忠実ではあるが相手には真意が伝わりずらい訳を選ぶか」という通訳者の究極の選択を意味している。

本エッセイも他のエッセイと同様、同時通訳における失敗談(他の通訳者も含む)や、相互理解の難しさをユーモアを交えて語っていて期待を裏切らないが、いつもより、言語論、比較文化論と言った点をキチンと語りたいという趣旨があったように思う。米原さんクラスになると通訳の対象となるのは政府要人クラスである。下手をすれば、国家間の問題となるような席で長年同時通訳を務めた米原さんならではの、言語観、国による価値観・文化観の違いを聞く事が出来、啓蒙させられる点が多かった。それも肩肘張らず楽しくである。

旧ソ連の政府高官にとっては日本の政治家より有名だった米原さん、ロシアの艶笑小話にはロシア人より詳しかった(?)米原さん、そんな米原さんの言語論、比較文化論が楽しめる爽快エッセイ。

2006
09/10
Sun

下ネタがスパイス!

58.8% (10 / 17)
[No.10] posted by benkeiu

仕事で通訳まがいのことをよくやらされて、その度に冷や汗でなく
文字通りあぶら汗をかき、挙句の果てに先方のアメリカ人から「よく
わからないのですが」と言われ、こちらの日本人の上司からは「おまえ
何しにアメリカに来てるんだ?」と罵倒され(「通訳しに来たんじゃ
ないやい」と心中叫びつつ)、大きなスコップで穴を掘りたくなる
気分を味わっている身としては、本書は骨髄までしみる感動を与えて
くれました。

それにしても、この過酷なお仕事について、よくもまあこんなに面白く、
かつわかりやすく解説してくれる著者の日本語能力はすごい。通訳・
翻訳というのはやればやるほど、日本語の能力の高さを問われる、と
本書にもありますが、その通りだと思います。だからこそこんなすばらしい
本が書けるのでしょう。ちょくちょく入っている下ネタの利いている
ことといったら!これも著者の類まれな日本語能力の賜物でしょう。

「惜しい人をなくした」という表現はこういう方のためにあるのでしょう。

2006
08/08
Tue

通訳のエピソードから文化論まで

75.0% (6 / 8)
[No.9] posted by muiku

通訳という仕事の中身とその困難、そして、やりがいを米原さん本人と通訳仲間のエピソードを盛り込みながらユーモアたっぷりにつづったものです。培われた経験から述べられる言語と文化の関係はずっしりと重く感じられます。

消極語彙と積極語彙、冗語についてなど、語学を学ぶ人にとって有用なことがたくさん書かれています。盛りだくさん

2006
01/05
Thu

文句なしに面白い

75.0% (15 / 20)
[No.8] posted by 未来を案ずる凡人

どれほど面白い本が、推して知るべしです。
言葉を扱う仕事をしている人、国際社会における日本を知りたい人、将来の職業に通訳や翻訳を考えている人、外国人の特性に疑問がある人、高度な笑いがほしい人、この本を読んで損はないでしょう。
頭脳明晰な人の陰にもこんな苦労があるのだ、とすっごく感動しました。
知的財産になることを請け合います。米原万里さんに感謝、です。
ちなみに、本書に名通訳者として「松岡祐子さん」が挙げられていますが、ハリー・ポッターの翻訳で有名になった静山社の松岡女史のことでしょうか。
こんな昔から国際舞台で注目されていた松岡女史、さすがだなあと感嘆しました。


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