- [著]サイモン シン
- [原著]Simon Singh
- [翻訳]青木 薫
- カテゴリ:
- 文庫 (495頁)
- ISBN:
- 4102159711
- 発売元:
- 新潮社 (2006/05)
- 価格:
- ¥ 820 (税込)
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「過去の奇問」が再び脚光を浴び、ついに解かれるまで
とくに「数学好き」に向けて書かれた本ではない.内容&構成ともにとてもよく,たいへんに面白いノンフィクション.日本語の文章も,訳本とは思えないほど自然で読み易い.
内容はもちろんフェルマーの最終定理が証明されるに至るまでの話.この定理の方程式は,義務教育で誰もが習うピュタゴラスの定理(直角三角形に関する定理)を拡張したもの.このピュタゴラスの時代(紀元前)から,フェルマーの最終定理の誕生(近世),そして現代へと,歴史的な流れをわかりやすく追えるように話が展開.
現代の数学界では,ほんの20年ほど前まで,このフェルマーの最終定理は「過去の奇問」としてキワモノ扱いされていた.つまりプロの数学者はほとんど無視していた.ところが,戦後すぐの頃に2人の日本人数学者が提起した仮説が端緒となって,このフェルマーの最終定理を証明することが,応用上の意義を含めて現代数学にとって絶大な価値をもつことが判明したという(谷山・志村予想).フェルマーの最終定理の解決が,全世界の数学者にとってメジャーな関心事となったのだ.
その大問題に挑んだ数学者アンドリュー・ワイルズの努力の8年,ある致命的な挫折を経てから,改めて証明をなしとげるまでの描写がよく出来ていて,心打たれた.
原作者と翻訳者に適材を得た実に読みやすい本
約500頁の本だが、読みやすく、かつ数論の面白さ・美しさを実感できる好著である。まず著者サイモン・シン(さすがインド系と言いたい)がアンドリュー・ワイルズによるフェルマーの最終定理(正確には証明前は予想)の証明に至るまでの数論の歴史(ピュタゴラスに始まり、フェルマーはもちろん、その最終定理の証明にその事績が貢献した大数学者として、オイラー、ガロア、そして日本の谷山豊、志村五郎等の重要人物が紹介される)をよくわかっていることが、本書の成功の第1の要因だ。フェルマーの最終定理とは直接関係はないが、素数の面白い性質の話等も豊富。また、ガロア、数人の女性数学者、そして谷山氏等の劇的な生涯もよく調査している。
フェルマーの最終定理の証明は結局谷山=志村予想を証明することに帰着する。その谷山=志村予想とは、それまで無縁と思われた数学の2つの領域の統一であって、物理学でいう力の統一に相当する大胆な発想であった。このあたりの記述は、本当は難しい数式ぬきには正しく理解できないことだろうけれども、概要はわかる。噛み砕いて、簡素化した例を交えて説明する著者にまず感謝したい。そして、この革新的な発想を日本人がなしたことを私は誇りに思う。
本書の成功の第2の要因。それは翻訳者が理科系出身で、数学の美を知っている人であり、かつ翻訳が秀逸なことである。原作の素晴らしさ、そして数論の面白さ・美を読者に伝えようという意欲が十分伝わる翻訳で、日本語としてよくこなれている。翻訳者にも感謝したい。
このように原作者と翻訳者に適材を得、古代ギリシャからの数論の歴史を俯瞰し、かつフェルマーの最終定理(谷山=志村予想)を証明するためのアンドリュー・ワイルズの8年間の激闘を数学の専門家でない者でも一気に読ませる感動的な稀有のノンフィクションとして、私は本書を高く評価する。
数は美しいが、数学は斯くも厳格で難しい
フェルマーの定理はピュタゴラスの定理の応用ともいえるもので、問題の意図するところは中学生でもわかるし、証明できそうな気にもなる。
その一方で、当のフェルマーは『この命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない』と挑発。この挑発に対する挑戦が350年も続くことになる。
フェルマーの定理の存在は大学の授業で知り、社会人になってから新聞の社会面で証明されたことを知ったが、フェルマーが挑発的であったことやピュタゴラス教団なるものがあったこと、日本人数学者もフェルマーの定理に関与していること等は本書を読むまで知らなかった。
本書はフェルマーの定理に関与した数学者に関するドキュメントである。350年間の過程、ワイルズが証明に至るまでの過程を丹念にかつドラマチックに描写しており、さらに、π(パイ)と河の長さ、素数とセミ、無限ホテル等、教科書には記載されていないような挿話もある。数のもつ美しさ、数学の厳格さや、捉えようもない難しさを、理系にも文系にも馴染みやすく書いた良質の数学ノンフィクションである。
ただし、以下の2点が引っかかり、読み終わった後に爽快感を感じることはできなかった。
まず、ワイルズが得た感動、爽快感を共有できないこと。ワイルズは20世紀のテクニックを駆使して証明をしているため、証明の内容は高度であり、理解するには相当に高度な数学知識を要する。本書は前半では数学をわかりやすく記載さいているものの、後半に進むについて数学的なテクニックに関する記載は少なくなり、クライマックスのワイルズの証明は、具体的な内容がほとんど記載されていない。本書に責任はないのだが、星5つにし難い点である。
もう一点は、『未解決の大問題』として挙げられている四色問題や球体充填問題が蛇足であること。どうぜ蛇足を書くなら、未だにフェルマーの定理と格闘している数学者を追って欲しかった気がする。フェルマーはワイルズと同じ方法ではなく、17世紀のテクニックで証明しているはず。未だに、フェルマーの挑発に挑んでいる数学者は執念深いのか?ロマンチストなのか?
つまらない数論がどうして?・・・大学時代に読みたかった!!
500ページの大作ですが、この2008年夏休みに一気に読みました。
大学の教養過程の微積分の教科書の最初の方にあった、あの
つまらない数論の背景に、このようなドラマチックなドラマが
隠されていたなんて・・・。大学時代に読みたかったです。
そうすれば、私の人生も変わっていたかも。
サイモン・シン、とんでもない才能です。本書は、
「フェルマーの最終定理」を縦軸に、「ピタゴラスの定理」
から現代数学の最先端までの、数論に関する最良の数学史と
なっています。無味乾燥でつまらなかった数論も、背景を
知ることにより、なんて面白い学問なんだろうと思い直して
しまいました。最良の数学の副読本に出会った感じです。
また、この本を通して、数学者という人種がどのような人間か
ある程度わかったように思います。数学者には「美」に対する
研ぎ澄まされた感覚が必要なこともわかりました。「証明」に
かける数学者の異常とも思える執念も。
文系を含めて誰が読んでも面白いと思いますが、特に、大学に
入りたてで、数論に辟易している教養課程の理科系の学生に
進めます。人生が変わるかも。
論理的思考能力が鍛えられる一冊
数学と聞くとそれだけで拒絶反応を起こしてしまう人もいるかもしれないが、この本はそんな人たちのためにこそ書かれていると言っても良いかもしれない。(もちろん数学好きの人には言うに及ばず)
作者も言っているが、文中において数学の難解な数式はほとんど登場しない。出てきてもおおよそ一般人が理解できる程度のレベルである。
そうした中で数学の性質といった基本的なところから、その歴史、背景、数々の数学者の人物像とそのドラマが論理的かつ多彩な表現であらわされていて、気がつくと数学の世界に引き込まれている自分に気付くはず。
特に1993年ワイルズが証明を発表するまでの7年間とその後待ち受けている1年間の苦闘は、読んだ人にしかわからない面白さがある。
また本書は、英語の和訳本であることそれ以上に非常に論理的な文章で書かれている。
なので本書を読むことそれ自体が数学に欠かせない論理的思考能力を養成することに一役買っている点も面白い。
数学が嫌いな人にこそ勧めたい。
「フェルマーの最終定理」を主題にした一大数学叙事詩
いやー、おもしろい!一気呵成に読みました。
過去350年間にわたって多くの数学者を悩ませてきた「フェルマーの最終定理」がいかなる紆余曲折の末に数学者ワイルズによって証明されたかを、これほど明快にかつ躍動感にあふれる筆致で書き下ろした著者であるサイモン・シンの筆力は素晴らしいの一言です。
ピュタゴラスに始まり、ユークリッド、オイラー、ガウス、ラッセル、ゲーデル、ガロア、そしてフェルマーの最終定理の証明に決定的役割を果たすことになる谷山・志村予想を提出した日本人数学者の谷山と志村などの数多の数学者の寄与に言及し、系統的な数学の歴史をフェルマーに絡めて再構築することにより、ある意味「フェルマーの最終定理」を主題にした一大数学叙事詩とも言えます。それはただ単に一数学者であるワイルズだけの話では収まりきれません。確かに「フェルマーの最終定理」を最終的に証明したのはワイルズですが、ワイルズが証明に成功する背景には、過去350年にわたってその牙城を攻略しようとしてきた数多の数学者の努力があったことも事実なのです。そのあたりのいきさつも全て微に入り細を穿って紹介されています。
ところで、訳者もあとがきで告白しているように、本書の始めの方で、数学に比べて自然科学は劣っていると繰り返し強調されている点には、私も訳者同様少なからず不満を持ったのですが、その不満も本書を読み進む内にきれいさっぱり雲散霧消しました。そんな不満など全く気にならないほどの素晴らしい物語となっています。さらに訳者同様、ワイルズが証明のギャップを埋めることに成功した場面には私も目頭が熱くなりました。
「フェルマーの最終定理」の証明の詳細そのものは残念ながら一般人の理解の及ぶところではありません。それこそ現在考え得る最高の数学のテクニックを駆使しえる人にのみ理解できるのです。それでも本書を読めば、巨大な知性をしてその人生の全てを費やせるほどの魅力が数学にあることを理解することはできます。
最後に、日本語訳も良くこなれており読みやすく好感が持てます。
数学はかくもドラマチックで美しい
日本語訳は2000年1月リリース。文庫化は2006年6月1日。1967年イギリス生まれの著者サイモン・シンは英BBCのプロデューサで、元々TV番組として1996年この作品の元を作成し、1997年この本で作家デビューしている。そういった経緯からかこの作品は非常に映像的で分かりやすい。
フランスの数学者ピエール・ド・フェルマー(1601年 - 1665年)には、ディオファントスの著作『算術』を読みながら本文中の記述に関連した着想を得ると、狭い余白であるために証明を省略した。この省略された証明に挑戦する数論数学者たちの物語だ。しかし物語はそこから始まらず、フェルマーの最終定理の基となっているピタゴラスの定理からスタートする。そして、
1.フェルマー予想が偽である(フェルマー方程式が整数解をもつ)と仮定する。
2.この整数解からは、モジュラーでない楕円曲線を作ることができる。
3.谷山・志村予想が正しいならば、モジュラーでない楕円曲線は存在しない。
4.矛盾が導かれたので、当初の仮定が誤っていることとなる。
5.したがって、フェルマー予想は真である。(背理法)
に到達するまでの間、どれほどの人たちがこの問題に関わっていたが、実にドラマチックに描かれている。最後にアンドリュー・ワイルズが解読した1993年6月23日以降のミスを再度証明し直す部分が最も感動的だ。翻訳も文庫版では以降の発見事実も付加され完璧と言える。最高のドキュメンタリー作品だ。
数学の完全性、美しさに触れた気が
この本は、ピュタゴラスをはじめ、数学史に名を残す人たちのノンフィクションであり、また3世紀にも渡り誰も証明をすることができなかったフェルマーの最終定理(未証明のときはいわばフェルマーの最終予想)の証明を果たしたアンドリュー・ワイルズという数学者のドキュメンントです。
この本の著者であるサイモン・シンは、元々BBCに勤めており、その時代にTVのドキュメンタリー番組として作成した「フェルマーの最終定理」が各種の賞を受賞し、エミー賞にもノミネートされた。その番組を元に書き下ろしたものが本書になります。
フェルマーの最終定理とは、17世紀の数学者であるピエール・ド・フェルマーが、意図的なのか、そうでないにせよ、数学史に残したいわば超難解な謎かけです。
フェルマーが「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない。」といって証明を示さずに残した定理(予想)であり、3世紀にも渡り、偉大な数学者にも完全に証明できなかったものです。
この本ではそうした数学者達のフェルマーの最終定理への取組みと、数学が発展してきたさまが記されており、また20世紀に入ってワイルズが証明を果たした過程がドラマチックに表現されています。
数学が苦手な私でしたが、この本を読んで数学の完全性、美しさに触れた気がしました。
プロジェクトX 「その仮説を証明せよ」
ピタゴラスの定理から派生した一つの仮説。
「フェルマーの最終定理」
直角三角形の直角を挟む2辺の2乗の和は斜辺の2乗に等しい。 x2+y2=z2
nが2より大きい自然数ならば,xn+yn=znとなる整数x,y,zの組は存在しない。
数学界最高の謎とされ、時代時代の数多くの著名な数学者がその真偽を証明しようと挑戦し、
350年もの間解決をみるに至らなかった仮説。
この仮説を検証するに至る様々なドラマやその時代を代表する数学者の取り組みを
描いている数論の歴史物語です。
単純な感想を一言で言えば、「面白い」です。
数学の知識は殆ど要りません。
学生時代、数学に嫌悪感を持っていたとしても、この壮大な数学ドラマに
引き込まれます。
フェルマーの最終定理をワイルズが証明するまでには、幾つかの定義が必要とされます。
その幾つかの定義がパズルのように合わさり、最終形となるのです。
特に一番必要とされた定義は「谷山・志村予想」と呼ばれたもの。
(正式には証明されているので、予想では無くなっている。)
文字通り、日本人が定義している数論です。
フェルマーの最終定理とは直接関係の無かったこの定義が、フェルマーの最終定理が
成り立つ場合には、この予想を証明する事が必要となり、全く関係の無かったピースが絡まり、
数百年証明できなかったパズルを完成させるのです。
海辺のカフカでの、僕、ナカタさん、大島さんが交わる様にです。
(フェルマーの最終定理の場合は、時空を超えて定理同士が交わります。)
快挙を成し遂げたときの感動を味わえる本
「フェルマーの最終定理」が証明されるまでの数学者たちの涙ぐましい努力がわかりやすく書いてありました。話はピタゴラスの時代までさかのぼります。証明に成功したワイルズ氏の、生い立ち、最終的に証明に至った経緯、特に最終段階での矛盾のない論理の構築に成功する場面が鮮やかに描いてあります。
ある海外での番組をもとに書籍化されているので、構成や話の流れが洗練されています。読者を大切にし最後までリードするよう配慮があって、読みやすかったです。
今まで誰もができなかった証明が初めてなされたとき、ワイルズ本人も周りの人も喜び、感動しました。このような成功体験は生きる上で大切なことだと感じました。
