日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ (中公新書)

  • [著]飯尾 潤

カテゴリ:
新書 (248頁)
ISBN:
4121019059
発売元:
中央公論新社 (2007/07)
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評価: 5.0
2008
09/17
Wed

日本の政治はどのように動いているのか

100.0% (2 / 2)
[No.15] posted by ex-phenomenologist

日本政府の政治体制がどうなっていて、どのように政策が作られてくるのかを明快に記述した本。各文芸賞を受賞したことも頷ける、素晴らしい本である。

日本は議院内閣制を取っていると言われる。しかし著者は、その実態は官僚が政策を主導する「官僚内閣制」であると主張する。また各国務大臣の力が弱く、官僚組織や族議員の力の強い日本の体制を「省庁代表制」であると説く。適切な概念の設定だ。

しかし単に「縦割り行政」や「族議員」を批判して終わる本ではない。それらがどのような歴史の中で生まれたのか。どのような依存関係にあるのか。そうして政策がどのように立案され、採用され、実行されていくのか。この過程を記述していく様はまさに圧巻である。

日本全体の利害は「省庁代表制」によって調整されていた。しかしこのシステムは、時代の変化によりうまく機能しなくなっている。近年の政治の機能不全が何であるかについても、適切な指摘がなされる。そして、小泉首相時代の改革とは、本当の議院内閣制へと移行する改革だったのだと述べる。ここは評価が分かれるところかもしれない。

概念枠の設定による議論の整理、歴史的経緯への深い理解、国外の事例と比較する眼。これらによる議論は、驚くほど明快で、爽快である。少しでも日本政治に興味があるなら、必読の本である。短命すぎた首相を嘆くTVブルースに付き合っている暇があるなら、本書を読むべきだ。


「大統領制の大統領に比べて、議院内閣制の首相の方が、権力が強い」
「内閣に非国会議員があまりに多いと問題にするのは、議院内閣制と<議員>内閣制の混同である」
「日本人が抱く大統領制のイメージは、アメリカのそれよりむしろ韓国のそれである」
と言った主張を見るだけでも、眼を開かれるものがある。

2008
09/01
Mon

官僚を使いこなし、政治家を育てるための理論武装として

100.0% (3 / 3)
[No.14] posted by 歯職人

 飯尾潤は本書により、2007年サントリー学芸賞(政治経済部門)を受賞し、2008年には読売・吉野作造賞受賞している。
 飯尾は中曽根内閣や小泉内閣の手法に対し、「大統領型」或いは「大統領的」との冠が使われる場合があるが、その誤りの根源として「三権分立」の理解の誤りを指摘する。
 イギリスにおける絶対王政から議会権力による世俗権の奪取の過程における官僚制の変遷から、日本における官僚制の誤解を解き明かし、アメリカの大統領制と並立する三権分立と州と連邦に構成されるアメリカ憲法との比較から、日本における三権分立の俗流理解の誤りを解き明かす。
 明治憲法下の官僚制と戦後憲法下で変わるべきに関わらず運用により保持された戦時総力動員体制下の官僚の行動様式の連続性が指摘される。
 ややもすると選挙制度の変遷や政党の離合集散に目を奪われがちになるが、中央省庁の再編、地方分権、副大臣制。政務官制度等々行政のあり方が近年大きく変わりつつある。本書は、この背景にある「官僚内閣制から議院内閣制へ」の動きをも解明する。
 飯尾は本書で、「官僚内閣制」「省庁代表制」「政府・与党二元体制」等をキーワードに、日本政治の今を解き明かす。
 本書は冒頭に記した様な世間的評価を得たものである。学問的裏づけのある現代日本政治論を、論壇で展開出来る稀な学者が新書を著したことに感謝したい。

2008
08/19
Tue

「日本は誰が動かしているのか?」硬派な一冊

100.0% (3 / 3)
[No.13] posted by おがよし@CSS

久々に硬派な新書に出会いました。かなり読み応えのある質の高い本でした。
議院内閣制における首相のほうがアメリカ大統領制よりも権力が集中している構造を指摘したり、官僚が(民間議員を含めた)審議会を活用して民意を汲み取って政策を立案している(それを政治家がしていない点に注目!)「官僚内閣制」と喝破したり。
日本の統治構造とはよく名づけたタイトルで、まさに日本を誰が動かしているのか、という点に考察を重ねていきます。
諸外国との比較も交えてあり、日本の統治構造の特徴、長所、短所も見えてきます。
個人的には、終章で著者が提言する政党のあり方に強く共感しました。日本でも政党活動が真の意味での国民の政治参加のベースとなれば、日本の政治も成熟するように思います。
硬派な一冊ですが、一読の価値あり、です。

2008
04/23
Wed

日本の統治構造におけるジレンマに根底から疑義を叩きつける渾身の一冊

100.0% (6 / 6)
[No.12] posted by yamasita

 権力の分散を必然とする三権分立と権力の集中を必然とする議院内閣制の採用をとるわが国日本は、このジレンマを抱えているが故に機能不全に陥りやすい。
 野党の審議拒否による与党の強行採決などを見るにつけても自民党の一党独裁体制と揶揄されがちであるが、むしろそうではなく逆であり、権力の分散故に、所轄省庁による法案作成は他省庁や野党への配慮もあって妥協案へと収斂していき抜本的な改革が起きにくい。さらに内閣は省庁を監視、統制する権限が与えられていないが故に官僚の放縦がおきやすい。
 このような内閣による省庁統括権の欠如は、戦前からの遺物であり、こうした権力の分散による足並みの揃わない流動性の欠落が軍の暴走を誘発し、無謀な日米戦争の突入の一因を担ったという。こうした機能不全は、現代においても例えばバブル崩壊後の「失われた10年」に見られる財政政策の後手後手による対応の遅さにおいても散見されうる。
 さらにこの自民党一党優位性は、選挙が政権選挙ではなくそれ故に国民の意見が反映されにくく政党政治として機能していないという問題点も挙げられる。
 そこで本書は、内閣の求心力の強化から権限の範囲を拡張し、本格的な議院内閣制へとシフトすることの必要性を提示する。そのためには一党優位性から二大政党へと確立することで政党政治を機能させることで選挙が政権選挙となり、国民の意見が反映されにくい体質を改善することが必要である。一党優位性を起こしやすい中選挙から二大政党を起こしやすい小選挙への改変や「失われた10年」からの反省による橋本の政界再編改革といった国際潮流に迎合するような日本の統治機構の変遷に逆流せず、本格的な議院内閣制へシフトすることが難題ではあるが急務であると考えさせられる。

2008
03/11
Tue

政治システムがよくわかる書

66.7% (6 / 9)
[No.11] posted by θ

日本の政治システムの実態をわかりやすく説明した本。
新書の中ではかなり良書の部類に属すると思われる。

まず、議院内閣制というものについてのありがちな誤解を解くことから始まる。
そして官僚や省庁の政治に影響を及ぼすメカニズム、内閣と与党との関係などが論じられていく。
他国の政治システムとの比較も交えながら、政権交代や野党の位置づけなども説明される。

学校では、建前的な政治システム(憲法に書いてあること)しか習わないが、本書では実際の政治がどう動いているのかがきちんと書かれている。
学校でも用いるべき本ではなかろうか。


さて、本書が出た直後、衆参で第一党が異なる「ねじれ国会」が発生した。
この点を考えながら本書を読んでみると、またなかなか興味深い。

本書でもしばしば触れられるが、日本の参議院は強い。
多少の衆議院の優越があるが、「日本の二院制は両院対等に近いのである」(p214)。
だからこそ、「ねじれ」た場合には政治的混乱が発生する。
制度上は、衆議院こそが政権選択の選挙となるので、当然そこの選択が尊重されるべきだが、参議院で脱線してしまうのだ。

筆者は、参議院を衆議院と異なる性格のものにしていくことを提起している。これは現実的な策だろう。
しかし、今のところは「民主政の原理を積極的に認めるならば、政権の成立基盤を侵さないよう、参議院は自己抑制を心がけるしかない」(p185)のだ。

参議院第一党は、言ってしまえば国政の半分の責任を負っているのだ。
ただただ「ノー」だけ言っていればよかった抵抗勢力とは状況が違う。
国民もまた、参議院第一党が強大な力を有していることを自覚した上で、その力にふさわしい義務と責任を求めていく必要があるだろう。
そうでなければ国政自体が頓挫してしまう。



最後に目次を記しておく。

官僚内閣制
官庁代表制
政府・与党二元体制
政権交代なき政党政治
統治機構の比較――議院内閣制と大統領制
議院内閣制の成立
政党政治の限界と意義

2008
03/08
Sat

官僚内閣制とは?

100.0% (8 / 8)
[No.10] posted by ヒューム部長

 本書は日本の政治構造がいわゆる「議員内閣制」ではなく、「官僚内閣制」であることを指摘した好著である。本来の議員内閣制の趣旨から言えば、国民の民意は、有権者(選挙)→議員(首相の選出)→首相(大臣の任命・組閣)→大臣(行政の執行)→官僚(大臣の補佐)という一本の線で国政に反映されるわけであるが、筆者によると日本の現状はそうではないことになる。
 そこには自民党政権の長期化、派閥力学による首相選出、党の意向や当選回数による大臣任命、そして官僚の代理人となる大臣、といった要素が議員内閣制本来の制度を歪めている現状が指摘されており、とても興味深い。また内容の割には読みやすく、初学者にも十分理解できる。

2008
02/28
Thu

日本における政治改革の手引書―新しい切り口で日本の統治構造を概説

100.0% (7 / 7)
[No.9] posted by 仮面ライター


 かつて、中曽根大勲位が「緋縅の鎧を着けた若武者」の頃、あるいは近年、田中秀征氏が「代謝機能働く国家統治を」(1999年8月9日付「日本経済新聞(経済教室)」)という論考の中で、「首相公選論」を提起したことがあった。本書でも指摘されているように、日本では「議院内閣制は権力を分散させる」とし、それ故「権力強化のためには、大統領制(首相公選制)を採用すべきだ」といった考え方(制度理解)が一部の政治家や言論人等にあったことは否めないだろう。

 「首相公選論」については、私はいわば“誤謬の合成”、つまり「一人ひとりの人が、判断力もあり、知的水準も高くとも、彼らの集合的な判断は、とてつもなく愚かな帰結をもたらす」(佐伯啓思『現代民主主義の病理』)という確信にも似た存意を持っている。それはともかく、先進的な民主政においては、実は「(民意が一元的に代表される)議院内閣制のほうが(民意が議会と二元的に代表される)大統領制よりも権力集中的な制度」(本書P.18〔括弧書きは引用者〕)だということを当書は証示する。

 このような議院内閣制の本来的な在り方をはじめ、本書では「官僚内閣制」「省庁代表制」「政府・与党二元体制」などのキーワードを用いて、私たちの抱いている様々な日本政治(統治構造)の通念を改め、政治制度に関する新たな視座を提示する。そして、たとえば著者は、真の意味での議院内閣制の確立は「政党政治の活性化があって、はじめて成し遂げられるものである」(本書P.209)とも述べているが、こうしたパースペクティブのもとに「平成の民権運動」を推進していくものと思われる。

2007
12/29
Sat

現状分析は分かり易く、納得がいく。でも著者の将来展望は、要するに劇場型政治じゃないかと思う。

85.7% (6 / 7)
[No.8] posted by モワノンプリュ

 著者は「日本の統治構造」を省庁の「割拠性」(p38)と「官僚内閣制」(p25)によって特徴づけ、「省庁連邦国家としての日本」(p49)の諸相を分析する。総括的に言えば「多くの政治家は『御用聞き政治家』になり、大きな方向性は打ち出さない。民意集約機能は官僚制が代替してきたが、大規模改革は不可能」(p136)となる。
 その背景にある問題意識は、「決定中枢を欠くため指導者が手詰まり状態になり、決断が遅れ、既成事実の積み重ねで選択肢が狭まる中で対米開戦という破滅的決定に至った」(p17)過去と、「1980年代、戦後日本の政治システムがすでにその存在理由を失いながら、逆に全力稼動することによって傷口を広げた」(p177)結果としての現在の危機を重ね合わせ、そこからの脱出路を探ることだ。
 著者の示唆する方向は、議院内閣制に本来備わる機能の活用。明確なマニフェストに基づいた衆議院総選挙による政権選択を定着させ、この民主的統制の下で首相という「権力核」を強化するというもの(p177)。そして「小泉改革によって日本の議院内閣制は新段階に入った」(p201)、「躍動感ある政治が展開される基盤整備は着実に進んでいる」(p209)と踏み込む。
 他方で著者は、「内外を厳格に区別する硬い組織が時代遅れ」になった現在、「何らかの形でネットワーク型の緩やかな、新しい組織原理による政党の再建」が必要と論じる(p208)。一見もっとも。しかし具体的に考えると、これは小泉型劇場政治の全面肯定ではないか? 私はそこで躊躇する。
 ついでながら、著者はあとがきで「政治家・官僚・報道関係者といった日本政治の実際を知る方々との対話なくしてこの本は書けなかった。執筆の過程では、こうした反応を心のなかで思い浮かべて、理屈を立てていくことが多かった」(p238)と述べている。この種の分析(統治者層の文化人類学)が、同級生に「政治家・官僚・報道関係者」の多い東大法出身者の独壇場なのは当然だナ、と改めて感じた次第。

2007
12/21
Fri

思考を刺激する良書

95.7% (22 / 23)
[No.7] posted by 馬場伸一

これほど堅い内容でありながら、これほど面白い本は久しぶりだった。
赤線を引きまくりながら一気に読了した。
これからも、ことあるごとに読み返すことになると思う。

特にエキサイティングだったのは、日本の官僚制を「省庁代表制」と喝破したことだ。
なるほど、日本官僚制がまったく民主的正統性を欠きながら「清潔で有能な官僚」という神話を享受できていたのは、そういう仕組みがあってのことだったのかと深く納得した。

おそらくは戦時中の国家総動員体制に発するのだろうが、省庁が国民生活の隅々まで統制できていた時代が確かにあって、それを前提とすることによって、官僚が「政治家は選挙区の利害しか代表していないが、われわれは、関連領域では日本全体の代表だ」(75p)と言うことができたのだろう。

しかし、「省庁代表制」が「代表」することができた「国民」とは、戦時中ないしせいぜい50年代までの利害集団であって、その後に発生した社会集団の利害が「代表」されることはなかった。それはまさに官僚制が民主的制度の裏打ちがない閉じたサークルであったことの限界であり、高度成長以後に発生した重要な社会集団の利害を代表することに失敗しているということが、今日における政策の「手詰まり感」「閉塞感」に直結していると考えられる。

極めて明晰な分析と、有用なキータームを提示してくれることにより、色々なことを考えさせてくれる、本当に刺激的な本である。文句なくお勧めしたい。

2007
12/19
Wed

日本の政治制度とその運用の現状分析

100.0% (6 / 6)
[No.6] posted by bons

「指導力を発揮できる政治家がでてこない」「官僚のセクショナリズムが弊害をもたらしている」「政権交代が起きない」「政治がどこで行なわれているか見えてこない」「政官財が癒着している」など、日本の政治に対してしばしば批判されているこれらの問題に対して、本書は正面から答えようとしている。

この本の価値を評する際に、「日本の政治問題は議院内閣制に起因するものだという誤解を解き、本来の議院内閣制から逸脱した『官僚内閣制』という日本独自の体制があることを指摘した」という点を高く評価している例が多く見られる。しかし、筆者のこのような言説は全く目新しいものではない。むしろ、政治学の古典的な理論である。佐々木毅の『政治学講義』(1999年)でも、第2部第3章第2節「議会制と大統領制」(p.p.166-172)にて同様の指摘がなされている。

本書の最大の特徴は、第7章の末尾で筆者が書いているように、「古典的な政治制度の活用がいかなる意味を持つのかを、現状分析を通して探求した」(p.236)という点にある。その現状分析をするうえで貫いているテーマが「官僚内閣制」である。この官僚内閣制を軸にして、現在の日本の政治制度がどのように規定されているか、どのように運用されているかを明らかにしている。官僚内閣制によって起こる問題が、責任を負うべき権力の核の不在である。

もっとも筆者は、近年の行政改革や選挙改革によって、首相の地位が強化されたり二大政党制に近付いてきたため、これまでの日本政治の問題点が解消に向かっていることを示唆している。今後の日本政治の展望を見るうえでこれらの変化は軽視すべきものではなく、日本の統治構造が再編されようとしているのだろう。

以上の問題について本書は実に雄弁に語っており、読者の理解を促してくれるだろう。だが、疑問に感じる部分がないわけではない。特に第7章でなされている提言は、そのまま素直に受け取れない。ここでは参議院の役割の大胆な変化や、司法改革、国民の政党意識の醸成などを進めるべきだとしている。これらの提言は、そのまえの議論から大きく外れており、たいした考察もなされないままに、結論が導かれている。全体的に第7章は、内容の現実味が薄れているように見受けられた。


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